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[『お前がもう少し大きくなって、分別がつくようになったら、野茨城を訪ねて見るが良い――』
どちらかが父親ならば、真実を話してくれるかも知れないよ…――。
そんな母の声が遠くへ――*]
あ、貴方は――
[反らすように視線を外した、紅髪の野茨公がすぐそこにいた。
首筋の違和感に気が付き、手のひらで触れると、うっすらと滲んだ朱が指先に着いてきた。]
神子 アデルは、野茨公 ギィ を投票先に選びました。
― 三階への階段踊り場 ―
[目覚めた場所は先程戦った場所からは遠く離れているのか、やけに静かな空気が流れている。]
どうして僕を、助けたりしたの…――薔薇の精、
いえ…、野茨公…――
[随分と負傷しているようすに眉をしかめる。
相手は敵を束ねる城主だ。
情けをかけてやる義理なんか無い――。
そうやって、ざわつく自分の心を押さえ込む。]
僕…は…
連れて行かれたんです…――
[ギィの身体から、そっと離れようと身体を動かす。
が、もし気づかれて捕らえられれば、すぐに腕の中だろう。]
――ここに来るまでの森の匂いや。
この城の茨に触れて…気が付きました。
(もしかしたら、僕の父さんかも知れない…――)
(でも、吸血鬼を倒さないと街のみんなが…――)
[ここで見つからないように聖剣で貫けば、今なら野茨公の息の根を止めること出来るかも知れないのに。
思考に反して、指は動かない。]
[やはり引き戻されてしまった。
軽く力を入れただけのように見えても、野茨公の腕はしっかりと身体を腕の折へと閉じこめる。
服越しに感じる筋肉の流れは固く引き締まり、とても1人で抜け出せるものではなかった。]
僕は――……
僕は……
[貴方を殺すと言い切れない。
もし父親だと知れば、どうしたらいいのか。
仲間を裏切って、吸血鬼の手に身を委ねるのか。]
わからない…――
貴方は人の女性を愛したことがありますか――?
名前は――聖フレデリカ…。
[知らないと言ってくれれば、容赦なく戦える。
そう信じて――。]
[野茨公の瞳をじっと見つめる。
もはや自分の意志で逃れようとするよりも、真実を知りたいと思う気持ちの方が強くなっていた。
何かを語ってくれたとしても、それが真実とは限らないのに。]
野茨公…――
[力強い腕の中で、形の良い唇に釘付けられて。
目を逸らせない――**]
…聖フレデリカ?
[アデルの問いに、言葉は途切れる。
記憶を探る、数秒の間。]
―――ああ、あれは…
離して下さい、野茨公…。
[しっかりと回された腕に自らの手を添えて、静かに懇願する。
自分にも魔血が流れている可能性が濃くなった今、抜け出そうともがいてみたが。
大人と子供の差か、あるいは実力の差か、それでもやはり腕は鉄のように硬くびくともしなかった。]
――離して!!
[野茨公の目的が何なのか、まだわからない。
ただ少なくとも、自分なんかを腕に抱えたまま戦う事など、ありえないだろう。
それに父親かも知れない吸血鬼が、仲間である騎士と傷つけ合う姿など見たくない。]
こっちに来ちゃだ――…
[ここには最も危険な城主がいると。
近づいてくる仲間に向かって、警告を発し遠ざけようと声をあげるが。
それは野茨公によって、何らかの方法で塞がれたかも知れない。**]
――― もっとも。
君の仲間すべてが私を認めるならば、
違う道もあるだろうけれど。
[囁くのは、言葉の毒。]
……――違う道…?
[囁かれる言の毒に、瞳が揺れる。
仲間のみんなが彼を認めたら、それは――]
…――っ
[牙が薄い皮膚を突き破り、深く食い込んだ。
痛みに、ギィの服を握る手に力が篭もる。
目覚めた時に触れたのと同じ箇所から、今度は野茨公に力を分け与えるための血液が吸い上げられている。]
…――は…
[魔血と混ざり合い融合した聖血は、ユーリエのように魔族にダメージを与えることはなかった。
2つの力を併せ持つ、中途半端な血。
むしろ魔を誘うように甘くまろやかな芳香を放ち、馴染み深い魔の血が野茨公を傷を修復し始めるだろう。
それは自然界に存在する、純粋な魔力にそのものに近かった。]
っ、…ぁ
[痛みだけではない感覚を覚えはじめ。抑えきれない溜息が甘く、浅く、漏れる。
果たして野茨公が感じた味は懐かしさか、あるいは"良く知る同族"の誰かの味か。
それを知る術はない。**]
…――ふ…ぁ…ッ
[強く吸い上げられて、目眩が襲う中、背中をなぞる指先の感覚に堪らず大きく仰け反る。
性的経験など皆無な未熟な身体に受ける官能は強く、牙を抜かれ、傷口を舌で擽られて、はあはあと肩で乱れた呼吸を繰り返し、震えを抑えきれずに野茨公を見つめる。]
――!
[>>163跳躍する音と、躊躇無く振り下ろされる風圧。
>>172騎士の刃を己の身で受け止めるより先、ギィによって突き飛ばされた身体はあっけなく放り出され、代わりに無数の蔓によって受け止められる。
これで正しいのだ、クルースニクとして彼は何も間違ってはいない。]
……――っ
[立ち上がろうとして、グラリと視界が揺らぎ。
力が入らず両膝を突き、次に両手を床につける。
全て吸い尽くされて命を落とさずに済んだとは言え、野茨公を身体を修復出来るほどには、血を吸われて。
想像した以上に血を失っていた。
身体の中に快感の痺れが燻ったまま、霞んだ視界の前で城主と騎士の対決が繰り広げられるのを見守るしか出来なかった。]
兄さん…
[無力感と脱力感に押しつぶされて、兄のような存在を探す。]
ジーク兄さん……
[どうしたらいいのか、わからない]
どこ…――
[野茨公に庇護を受けた彼もまた、吸血鬼だったが。
迷いに何も答えを見つけられぬ今、直接彼に会って話を聞いて欲しかった。]
わからない…、多分、2階か3階…
階段の踊り場――…!
[目眩の中、なんとかそれだけを伝えた直後。
野茨公の意思を持った蔓に絡め取られ、天井高く止め置かれる。]
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