情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 エピローグ 終了 / 最新
― 邂逅の後 ―
[後宮侵入事件が発覚してからは監視が厳しくなって、どこへ行くにもお供つきになった。
行動範囲が限定されるのは昔からだったし、訓練に打ち込んでいれば何も言われなかったので苦ではなかったけれど、皇子がどうしているのかは気になった。
お元気になられた、と教えてもらえたのはずいぶん後のことだった。
やっぱり自分が正しかったと胸を張って、監督官に殴られたものだ。]
[その頃、静かにしていると時折誰かの声が聞こえてきた。
どこから聞こえるのかも、何を言っているのかもわからない、不明瞭で遠い声だ。
側にいる人には全く聞こえず、どうやら自分だけに届く音らしい。
気のせいだと無視することにしたが、謎のこえはその後数年続いた。
正しくこえの相手を見いだすまで。*]
― 宴の後 ―
[明るさを落とした天幕内でうとうととまどろんでいたが、ドロシーが入ってきた気配に薄く目を開ける。
言葉紡ぐ唇を見つめていたが、祭の後の話に再び瞼を降ろした。]
魔法を根絶やしにできれば、後はどうでもいいんだ。
けど―――、世界の覇者になる、なんていうのもいいかも。
[目を閉じたまま、熱の無い声で言う。
その間にも、喉元に伸びてきた手を押しのけるように払おうとした。*]
[夜明け前の急襲であり、指揮官の錯乱じみた命令もあり、部隊は混乱気味に展開していく。
準備の整った部隊から順次鉱山へと出発し、全部隊の8割ほどが鉱山へ向かった。
しかし派手な音と光ばかりで敵の姿は見えず、ろくな指揮系統もないまま兵たちは鉱山を闇雲に駆け回る。
後から次々に来る部隊をまとめて指揮する者もおらず、鉱山周辺は混乱を極めた。]
― 宴の後 ―
[嫌です、の言葉に、もう一度目を開けた。
包む手を振り払いはせず、一度ドロシーを見た後は視線を天幕の天辺に向けたまま、黙って聞いている。
息を吐いただけでなにも言わなかったが、この場合は肯定の意味だ。
それも、若干気まずく思っているときの。
胸元に伸びる手を今度は止めはしない。
服をはだければ、胸に巻かれた包帯が露わになるだろう。*]
[包帯はあっけなく引きちぎられ、その下に隠されていた傷が露わになる。
小さな刃物での刺突痕と、周辺の肌にうっすらと浮かぶ文字。何らかの術式だということは、ドロシーにはわかるだろう。
発動していない今は、判別まではつかないかもしれないが。]
学長だ。
死んだよ。兵が確認してる。
[悪さが見つかったという顔で、やはりそっぽを向きながら答える。*]
[震えるドロシーの指先を、今度はこちらから握る。
彼の感情の昂ぶりにうろたえるような手つきで。]
油断した私が悪い。
街に帰ったら、削るなり焼くなりするさ。
[それで消えるとも思っていないが、そう口にする。]
だから、 …怒るなよ。
[相手が何の感情を抱いているかわからないまま、ただ絆の響きが乱れていることだけを感じて、落ち着かせようと試みているのだ。*]
― デメララ駐屯隊 ―
[街での騒ぎに、収容施設の警備隊も浮き足立っていた。
街に襲撃があれば収容所への襲撃も予想されるため、本来なら街から部隊が回されてくるはず……なのだが、当然のように警備の増員は無い。
今いる人員で入り口を固めたため、むしろ建物周囲の巡回は減った。
収容所内を巡回している数人は、騒ぎ出した収容者たちを鎮めようと棒を振り上げ殴りつけている。*]
― デメララ駐屯隊 ―
[指揮官が無能ならば、いくら兵が精強でも駄目という見本のような状況で、兵らは各自の判断での戦いを強いられている。
そのうえウル服用の許可もいまだに出ていないので、魔導師相手に普通の兵が対処している状態だった。
ベルガマスコ氏はようやく武装を身につけ終わり、全身くまなく板金鎧で覆った巨体で、駐屯隊本部の中を意外に身軽に駆けていた。
ようやくやる気になった、のではなく脱出の手はずを整えるためである。
そこへ、本部の前にひときわ派手な光が降り注ぎ>>101、氏の心臓を跳ね上げさせた。]
「わ、私を守りなさい!
そこの部隊、本部の前を固めるのです!
あいつ、あいつに矢を、ほら、撃ち落としなさい!」
[本部入り口から外の様子をちらりと見て、周辺の部隊を慌てて呼び寄せる。
指さす先には、正しく先ほどの術者がいた。*]
[ドロシーは、やはり怒っていたらしい。
間違ってはいなかったと妙な安堵をするが、差し出されたナイフはなにも終わったわけではないと突きつけられるかのよう。]
あのときのように?
私は、死に掛けているわけでは……
[彼の血を口にしたあのとき、絆の路が完全に開いたのだ。
だが今は過去に思いを馳せるどころではなく。]
―――…わかった。
[ドロシーに差し出されたものを、断ったことなどない。
自分に刃を突き立てるよりもよほど神妙な顔で彼の手を取り、手首に刃を滑らせて、唇をつけた。
流れる熱を舐め取り、呑み込む。
体の奥から力が湧き上がってくるのは、ウルを飲んだ時と同じ。
絆の赤いいろが目蓋の裏に広がって、体を巡る。]
[血を飲んだことで、ドロシーの怒りは収まったらしい。
最強皇帝の名なんて初めて聞いたけれど、ヘタっていたら名よりもドロシーが泣きそうな気がしたので、しゃんとしていようと思う。
まだ繋がるこころがざわざわしていたが、抱擁されれば気にならなくなった。]
―――覚えておく。
[神妙に頷いて、彼の背に手を置いた。]
/*
日付動かした後のログをもりもり書きためてながら眺めているのだけれど、フレデリカのあれ、誰かが反応書かないと恥ずかしい奴ですよね。
えっ?私?
やっぱり私かなぁ。(暇人)
― デメララ・収容施設 ―
[年若い娘が頭を下げる様子に、ざわめきが広がる。
浮かぶ表情の多くは、学園が落ちたことへの驚愕や、ついにという無力感、そして突然協力を求められた事に対する困惑だ。
ざわつきがひときわ大きくなった時、ひとりの男が掴みかからんばかりの勢いで飛び出した。]
「居場所を取り戻すって言うけどなあ!
マンダレーも落ちた、ロンリコも落ちた、
どこにも行く場所なんて無いじゃねえかよお!
帝国から逃げるなんて、できるわけねえだろ!」
[男の口から溢れたのは、絶望の叫びだ。
周囲の者たちは男を押しとどめているが、何も言わないのは彼らの中にもいくらか同じ諦念―――絶望があるからだろう。*]
/*
あなたの本気の叫び(説得)が聞きたいんです。(まがお
「首都に家族がいて、俺が逃げると殺されるかも」
…は、エグすぎるので却下しておきました。
― 宴の翌朝 ―
ドロシーは今日も嬉しそうだね。
[今日のドロシーは夜の始めの空のようだった。
掛けた言葉は、装いを褒めているつもりなのである。]
武闘大会?
[きょとんとしていたが、説明を聞く内に楽しげな様子になった。]
それは面白そうだ。
きっと楽しい見世物になる。
[主に前座の部分が。]
平定記念ならすぐにでも、
[言いかけて、はたと止まる。
戦意向上を言うなら、皇帝臨席だろう。
けれども自分には、逃げた魔導師を狩り尽くす楽しみがまだ残っている。]
……やはり魔導師を根絶やしにするのが先だな。
その方が前座も盛り上がるだろうし。
それとも、おまえが主催で開いてみる?
おまえの手で勝利の冠を乗せられたい奴もいるとおもうけど?
― デメララ・収容施設 ―
[語り出した若き解放者の言葉に、人々は耳を傾ける。
怒鳴っていた男も、小娘と思っていた相手が纏い始めた強い気配を感じてか、口をつぐんだ。
人々は黙ったまま言葉を聞き、聞き終えてもやはり沈黙していた。
先ほどのようなざわめきは無い。
互いの顔を見合わせて、息を潜めるような空気が続く。
そんな人々の間を抜けて、前に進み出た男がいる。
別の者に支えられながら歩く、年老いた男だ。喉に大きな傷跡があった。
声を無くした老人は人々と解放しにきた者たちの間に立ち、体の前で小さく素早く指を動かした。]
「みんな、聞いて欲しい。
外に出ても、私たちは殺されるかもしれない。
けれど、ここにいても、殺されるのは同じ。
それならば、この娘さんを信じてみてもいいのでは?
私は、もう一度太陽の光が見たい。
同じ死ぬのなら、太陽の下がいい。
私は、この娘さんと一緒にいくよ。」
[老人を支えていた者が主に解放隊に向かって老人の"言葉"を伝える。
人々の沈黙の色が、少し変わった。
やがて、「それもそうだな」とどこかで声が上がり、「私も外に出たい」「こんな暗い中はいやだ」と賛同の声が続く。しきりに指を動かして会話する者たちもあちこちにいた。]
[人々の間にある空気が変わってきたところで、老人は解放隊に体を向けた。]
「娘さん、私たちの命はあなたたちに預けます。
みんなを導いてほしい。」
[通訳を通して伝え、感謝の仕草をする。*]
― 宴の翌朝 ―
[ドロシーとのこんな会話は、彼が学園に行っていたころと変わらない。
絆のこえを通して、ふたりでこんな風に相談したものだ。]
なるほど。
隠れてる連中を釣り出すのか。
探し回るよりも簡単でいいな。
[理解すれば納得の顔になる。]
いいよ。わかった。
なるべく大きい釣り餌を捕まえてこよう。
楽しみだな。
[準備は任せるよと機嫌良く許可を出す。*]
/*
こそっと言うんだけど、
実はデフォルトのCSSで見ていると、リヒャルトの呪歌部分がほぼ見えないんだよね。(反転させて見てる)
わざと隠してるのかなと思ったけど、多分違う。
― デメララ ―
[街に響く大音量に、家に閉じこもっていた人たちがちらほらと顔を覗かせる。
そして、空に浮かぶ光の竜の姿に息を呑んだ。
一方、竜に睨まれた帝国軍のほうは息を呑むではすまない。
闇雲に竜に向かって射かけるが、無駄というもの。
ベルガマスコ氏はといえば、突っ込んでくる竜を目の当たりにして、清々しく逃げ出した。]
「やめろ!
来るな!
みな私をかばえーっ!」
[《ウル》の膂力で手近な兵を片端から捕まえては竜に投げつけながら、建物の奥へと逃げていく。
板金だるまになっていても超速だった逃げ足が、不意につんのめった。
ウルが、切れたのだ。]
「ひいっ、
たす、たすけ……!」
[檻となった鎧の中で動けないままベルガマスコ氏が上げた悲鳴も呑み込んで、竜は建物を内側から白く輝かせた。]
[本部崩壊の一部始終を見ていた駐屯部隊の副隊長が、ため息をついてから声を上げる。]
「全軍、撤退だ!
デメララを放棄する!
《ウル》使用を許可する!退路を切り開け!
各方面に伝令を出せ!」
[撤退、という一方向への命令を与えられた兵たちは、ようやくウル服用の許可が下りたこともあって、次第にまとまった動きを見せ始める。
ウルを携帯しているのは一部の兵だけだったが、それでも撤退を援護するための矢は威力を増した。
街から鉱山まで伸びきった軍全体に命令が行き渡るには時間が掛かるだろうが、帝国軍は緩やかに街から離れ始める。
なお、本部建物内で倒れていたベルガマスコ氏は、ウルが残っていたためか気を失っていただけだったものの、誰かがざっくりと背中からとどめを刺していた。*]
情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 エピローグ 終了 / 最新