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[ 律動を伴う言葉に快楽を刷り込まれる。
感覚が遮断できないのは、あまりに深くつながっているせいか、あるいはギィの方で何か送り込んでいるのか。]
あ、あ、ああ、あ
[ 懸命の努力も虚しく、いつしか甘い喘ぎをもらすばかりとなって、肉体の交歓に奉仕している自分がいる。
腰を揺らして奥へと誘い、突き上げられて獣の呻きを漏らす。
そのすべてを見られている。
死ぬほど恥ずかしいことのはずが──気持ちいい。]
[ 茎立つものに冷たい手が添えられた。
それもまた、官能の源であると。
形だけ模していたはずのものが彼の手の中で脈打ちはじめる。
かさを増し、形を変えてゆくそれを、つい凝視してしまった。]
こい、 とは?
[ また逃走劇を繰り返すつもりかと迷走する思考の中で戸惑ったが、ギィの手管は優しくも容赦なく導いてゆく。
自分を穿つギィの熱も呼応しているのがわかった。]
[ こんなもの、制御できるはずがない。
壊される── (
ギィっ、 もう …──!
[ 請い求めれば、ひときわ大きなうねりに持ち上げられ、視界がくらんだ。*]
[何もかも初めてだという顔をする彼は、おそらく自慰もしたことはないのだろう。
つまりは全てが処女地であり、全てはこの手が開拓する場所だ。
快感の路を開き、官能の沃野に雫を降らせ、恍惚の頂を極めよう。]
愛しい子──
おまえはこんなに、私を熱くする。
[熱の無い身体に熱が生まれるのは、愛しさに満ちた時だけだ。
純粋な魂が初めて咲かせた花は、性愛のなんたるかを知り尽くしている夜の生き物をも魅了した。]
[求める声の切なさは、愛しさの閾値を振り切って欲望を溢れさせる。
自身の快感の制御も忘れて、溺れるように貪った。
深く深く突き上げた先で、臨界の火花が散る。]
――― いくよ …ッ !
[掠れた声で告げ、彼の手首を押さえこんで精を解き放つ。
絶頂の歓びは、長く尾を引いた。]
[やがて、穏やかな失墜の感覚と共に、彼の身体に胸を重ねて伏す。
猫のように髪を摺り寄せながら、彼の頭をゆるく抱いた。
繋がった部分はまだ熱を持っているが、しばらくはこうしていたい。*]
[ 望みはすぐに叶えられた。
肉体が頂きを極わめ、魂はさらなる法悦へと投げ出される。
手首を拘束される圧さえ繋がりを感じさせて焦がれた。
これを知ってしまった以上、自分は ──
仰け反り、墜落した。]
[熱を吐き出して、ギィもまた至ったようだ。
脱力した身体を重ねてくる。
その肌は、今は、冷たくない。体で分かち合ったものは、確かにあるのだ。]
── …、
[余韻をあじわうように腕をまわしてくるギィから顔を背けて、乱れた息を押し殺す。
体内でいまだに痙攣する肉が、咥え込んだ固さがそれをむずかしくするけれど。*]
[抱え込んだ頭がそっぽを向く。
その反応までもがまさに初々しくて、耳朶を軽く噛んだ。]
とても良かったよ。
おまえも、喜んでくれたようだ。
―― ああ、でもおまえのここはまだ私を欲しがっているね。
続きをするかい?
[腰を揺らして快楽の熾火に息を吹き込む。
このまま彼と再び性愛のるつぼで溶けあうのは魅力的だけれども]
………。
[無粋な訪問者の接近を感じ取って、小さな息を吐いた。
どうやら楽しみは暫くお預けのようだ。]
惜しいけれど、またあとで、だ。
零さないように気をつけなさい。
無理なら、これをつけておくといい。
[何をするかの説明はしなかったけれども、身体をゆっくり離していけばわかるだろう。
己を抜き出した後の空隙に、素早く小さなプラグを差し込んでおく。
闇を喚んで形作ったものだ。自在に形を変えてぴたりと嵌る。]
これを。
[体を離したあと、これも闇から織り出した大きな布を彼の上に広げ掛けた。
身にまとえばガウンの形になる。
同じものを自分も羽織って帯で止め、近づいて来るものを待った。]
[ 耳朶を甘噛みされるだけで、身体に電流が走ったようになる。
効果付与は自分の十八番だというのに。
続きをするかと囁かれて、男を包み込む鞘と化した肉洞がキュッと窄まる。
恐怖と表裏一体の欲望。
職業柄、強姦に関する知識はあった。
望まぬ性交であっても、肉体は傷つかぬよう防御反応を示すのだと。
拷問されても勃起はするのだ。
これもきっと、そういうものであると、言い訳しなければ正気でいられそうにない。]
[ 反応を確かめたかっただけなのか、ギィは楔を抜く。
またあとで、との言葉に血がのぼった。
治療のつもりではないだろうが、何か代わりに差し込まれる。
裡でするんと動いた。
かろうじて声を抑え、足をおろす。
関節が軋んで、今までどんな無理な体勢を強いられたまま激しく動いていたのか、あらためて思い出した。]
[口撃の代わりに枕を投げつけようとしたところへ黒い布が降ってくる。
上質な肌触りのガウンだった。
彼とお揃いというのがいささか難だが、さきほど影たちがだしてきたハロウィン・コスプレのような衣装よりはまともかもしれない。
いや、これは屋外で着るべきものではないし、扇情的だ。
横目で見れば、ギィは居住まいを正して何かを待つ風だった。]
[ギィの贈り物をどうしようか逡巡している隙に、初めて会う男が忽然と現れた。
反射的に布を被って隠れる。
といっても、一瞬とはいえ視線があったから、そこにいるのを見られたのは確実だろうし、顔を隠したところで何を変えられるというわけでもなかったが。
現れた男に対するギィの対応は、知己とは異なるように感じられた。
丁重だが、親密さは薄い。
ギィは城主(?)の申し出を断り、そのまま男の気配は消える。]
それともはやり、先ほどの続きがしたいかい?
[置いた指をつと滑らせて下肢へと差し向ける。]
ここはまだ、疼いているだろう?
[彼の中に忍ばせた闇に呼びかけ、小さく揺らした。
悪戯な指先の動きに合わせ、左右に揺れる。
熱を思い出させるためだけのほんの少しの動きで、指を離した。]
もう透明化はとけている。
[続きをしたいなどと思うものか。
あんな狂おしいこと、もう二度と必要ない。
自分が自分でなくなるのが、いやだ。
そう思う端から、身体の中で蠢動するものに屈してしまいそうになる。
いささかきつく帯を結んでベッドを離れた。]
[いずれにしても、というギィの指摘にはうなずく。
求めるものに関してはそのとおりだろう。
ただ、]
盗品をどこにやった。
[真面目に問いただす。
伸ばされた手をとるのではなく、手首を掴んでつかまえた。*]
[捕まってしまった、と晴れやかに言う盗人は、案外、殊勝に手帳を返してくれた。
翼ある猫は使い魔のようだ。体のサイにズあった小さな背負い袋が場違いにキュートである。
繋がっている云々は敢えて無視して、手帳を受け取った。
挟んであった"お守り"が落ちたので、急いで拾おうとして、ギィの手を離して自由にしてしまう。
ギィは羊皮紙に記された文字を見たか。見たとして読めるだろうか。]
他にも盗んだものがあるだろう。
[確信の口調で問いただす。]
夜明けまでに元の場所に戻すならば、事件は胸に収めておく。
[交渉を持ちかける。
どのみち、彼を起訴することはできまい。
被害を最小限に抑えるためには、妥協するしかなかった。*]
[ギィはタクマの知らない話を語った。
不意に涙が溢れるが、それを拭うことはしない。]
…馬鹿だな。
[誰に、ともなく言う。]
盗品だから盗んでいいという法はないぞ。
だが、もし一週間たっても、被害届が出なかったら、
もともと、その店の品ではなかったのだろう。
[翳された宝石には触れず、己の見解を述べる。]
無茶はもう…、充分だ。
── 元の世界への鍵を探そう。
[ギィはもう、鍵のありかの手かがりを得ていたらしい。
何もかも彼の手の内のようだが、異を唱える気はなかった。
向かった先の城壁には出口らしきものはなく、どうするつもりかと見守れば、ギィは最短ルートを選択した。
タクマが知る剣よりは華麗な方法で乗り越えてゆく。
瓦礫の山は残らない。]
[西の沼にたどり着くと、さっそく出迎えがあった。
沼の主であろう
あの手の輩と戦った経験は?
[知っているかもしれないが、毒のことや再生力のことを簡潔に告げておく。
こうしたサポートをするのもいつぶりだろう。*]
[支援を、と言われたがどうしろというのか。
拳銃もライターも露天風呂騒ぎで失くしていたし、この肉体はあくまでも人間規格である。
多頭竜の牙にかかればひとたまりもない。
別にそれで命を落とすわけでもないのだが ──
戦闘向きではないと言いながら、躊躇いなく突込んでゆくギィを見ながら思う。]
[斬り落とされた瞬間に再生した頭が両側からギィを襲う。
その片割れの前に身を投げ出して、ギィを庇った。
竜の顎門はたわいもなくタクマの上半身を薙ぎ払い、消滅させる。
本体である鞘のみを剥き出しに残して。]
《さらば与えん》
[魂の声で、ギィに呼びかけた。*]
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