情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 エピローグ 終了 / 最新
……難しい。
[初めての食事の出来は少々難がある。
濡れた服は随分と色を変えている事だろう。
血も随分無駄にしてしまったが、体内にはまだ沢山詰まっている。
装飾のついた邪魔な服を取り去ってから爪で肉を裂き
まだ温かな心臓にゆっくりと牙を立てた。
ひと口ごとに渇きが癒される。
一片を腹に入れるにつれて腹は満たされて。
即物的な欲求が治まってからも、足りないと魂は急き立てる。
やはり顔も知らない人ではだめ。
私が欲しいのは、知りたいのは―― ]
― 駐屯地の異変 ―
[その日は規定の起床時間より早くから、やけに慌しかったろう。
上級職が難しい顔で方々を駆けては会議室に籠もっていく。
緘口令が敷かれても人の口に戸は立てられない。
『敷地の外れでローゼンハイム少将の死体が発見された』と
間もなく駐屯地内の人間の耳に入った事だろう。
現場はすぐに片付けられたが、数名は目撃したかもしれない。
亡骸の上には彼がよく持っていた薔薇の花が添えられ、
胸部を中心に食い荒らされたような痕跡と
肉片及び心臓などの内臓のいくつかに明らかな欠損が見られた。
致死傷は喉を鋭利なもので数回裂き抉られたもの。
周りの地面は血で染まっていたという。
それはさながら獣による食事にも似て。
過去の記録にある狼化病発症者が起こしたものと類似していた。**]
[少女が夢の中に立つ。
ゆるく波打つ金の髪に赤い服を身に纏い
唯一蒼を湛える眼が物言いたげにこちらを見ている。
これは“私”。
同じだけど違うもの。
もう夢を彼女を通して見る事はもう叶わない。
視る側から視られる側へと存在を変えてしまったから。
ねぇ“ドロシー”。
私はあの唄の未来を証明することができるかしら。
声にならない問いかけに、少女はただ蒼を向けるのみ。]
― 早朝 ―
[始めて夢に少女を見た。
赤い服の彼女は何も告げなかったけれど。
消灯時間まで感じていた飢えや渇きは治まり、
短い休息だったが体の調子はいい。
夢に伴った胸の痞えも、もう感じる事はないのだろう。]
騒がしいわね。
[起床時間前にも関わらず、廊下を駆ける音がする。
その原因は最初から知っているため、取り立てて急ぐ事はなく
普段通りに身支度を整えた。
役目を失った小瓶は机上に残したままにする。
湯を沸かす時に『うっかり燃やしてしまった』灰は水に流し
廊下へ出て適当な下士官を捕まえた。]
少将が……――471が?
[まだ緘口令が敷かれる前だったのか、
素直に発令された内容を告げられ眉を寄せてみせた。]
『羊は、いつも食べられてしまうことが悔しくて
最初は力が欲しい、強くなりたい、と願ったのだと思います。
そして力を手に入れるのと引き換えに
狼がどんな気持ちをしていたか、を知る。
この羊の、魂が巡ってまた生を受けることがあれば
きっと優しい人になるような気がするのです』
[――あなたなら、その気持ちを教えてくれるかしら。]
― 中佐の部屋 ―
ご多忙のところ、時間を割いていただきありがとうございます。
はい――Code 471と、ローゼンハイム少将のことです。
[緘口令の無意味さは中佐も理解しているようで、
ドロシーが口にしてもどこで聞いたかを訊ねてくる事はなかった。]
少将を最後に目撃したのは私かもしれません。
夜中に護衛もなく歩いてみえたため、一時同行いたしました。
安全な駐屯地内といえ、銃も持たない散策慎むべきと
お伝えしたのですが……はい、その後もお一人で。
[少将の深夜の徘徊癖は中佐もすでに承知していたらしく
目撃情報を集めていたところのようだった。
表情からして、護衛を進言し機嫌を損ねられた経験持ちらしい。
遭遇した事も同行した事も事実だ。
ただ、ひとつをぼかしただけ。]
はい……はい。失礼いたします。
[自ら容疑を被りに来ないだろうという判断だろうか。
軽い監視を一応付けると言われたものの自由行動は許可される。
……そもそも監視を付けると明言するのもいかがなものか。
温情を感謝する旨を代わりに口にし、
一礼と共に辞去してからは通常任務へと移行する。
……今日の休息時間には、久々に銃を握りに行こうか。*]
― 訓練場 ―
[上からの任に従い過去の狼化病の記録を提出した。
事務的な報告記録に期待はできないが、上も必死なのだろう。
最上級官が殺されたために
自分も狙われるのではと恐れているのかもしれない。
――あれは偶発的な出来事で、あなたに用はないのだけどね。
残った資料をまとめて片付ける。
先日見つけた手記>>1:22は軍の正式な記録ではないから
抜き取って胸ポケットへと忍ばせた。
射撃場はすでに使用されていたようだ。
数名の知り合いとは擦れ違いになったらしく>>26>>34
姿を見ることはなかった。
最初はじっくりと狙いを定めて一ダース。
次は照準合わせから射撃までを最短時間で半ダース。
胸部に集中していた前半と違い、ばらけた後半の射撃痕に苦笑う。
軍人としての最低限の訓練はしていても、
実戦部隊でない以上反射的な動作精度は低い。]
[まさかね、と思う。
女性の新兵なんていくらでもいる。
疑いをかけられているのがサシャだなんて根拠はない。]
――もしそうだったらどうするの?
[……いいえ。違う。
もしそうであったとしても、今度はきっと。]
――守れる? ううん、あなたじゃ無理よ。
だって“私”と同じだから。
自分が一番かわいい、優しくない人。
― 記録保管庫 ―
[提出する書類を整えた頃合>>46にカスパルが姿を見せる。
中佐からの指示なのか、監視も信用しているらしく
書類を持っていく間の監視代理を頼んで退室していった。]
まだ、ね。
[主語がなくても先日の会話があれば通じる。
ゆるく首を横に振り、簡潔に答えれば「次」があるとも分かるだろう。
その時よりも近くまで歩み寄ってきたカスパルの忠告は
額面通りに受け取ればまるで本物の騎士のようだ。]
ありがとう。
……最初に少将を見つけたのはカスパル?
だから心配性なのかしら。
大丈夫よ。自衛もするし、気をつけるわ。
[詰められた距離の意味も控えめな声量の必要性も察すれば
応答もいくらか言葉を省いたものになった。
確かに深夜で人気のない場所といえあれは不用意だった。
第一発見者の「少尉」であるかの確認を取りながら
次は慎重に行うと暗に含める。]
/*
フィオンすまない…
でもだからこそ食べたいよね(げすい
察してくれているけれど
フィオンの希望どうだったのかなーとごろごろ。
やりたいこととかあったろうか…
― 次の羊は>>65 ―
[書庫で午後を過ごしているとフィオンが入ってきた。
まっすぐこちらへ向かってくるから用は自分にあるのだろう。
どこかでここにいる事を聞いてきたのだろうか。]
それは、今ここではいけないの?
[時間を作ってほしいと言う。
部屋の外にいるであろう監視役に声は聞こえないはずだ。
首を横に振られれば、少し考えて小声で伝える。]
……ここで。
[時刻の指定がなければ日付が変わる頃の密会となる。
フィオンの耳にもあの噂は届いているだろうに
夜に会おうというのはドロシーが潔白と思っているからか。
それなら人気のない今でもいいはずで。
「夜」に「人目のないところ」でなければいけない理由。
思いついてしまうのは、
ドロシー自身がその条件が揃う時の行動を分かっているから。
見返したドロシーの目に映るフィオンは
どんな意志を持った顔をしていただろうか。]
― 昼食時・食堂>>68 ―
ああ、それで。
……緘口令が一応出ているんだけどね。
[機能していないと苦笑する。
配属されていきなりの封鎖令に同様も大きいだろう。]
大丈夫よ、すぐに終わるから。
夜はきちんと部屋の鍵をかけて寝るように。
[その時には数名欠けているだろうが、
カシムはその数にはおそらく含まれないはずだ。
真実に辿りつきさえしなければ。
優しく忠告する上官の顔をできているだろうか。
サシャが夜に外に出ていた事をカシムから聞いたとしても
一瞬顔を曇らせ、曖昧に相槌を打つだけだったろう。
疑いをかけられている新兵の正体が分かっても
状況を変えられる位置にいるドロシーは何も変えない。
よくよく夜には注意するよう告げて、席を立つだろう。*]
/*
赤が墓下から見えるのをすっかり忘れていて
遊んでいたあれやこれやがエピ前に全部見られるのか……と
チワワのように震えているなう。
― 綴り手不明の手記 ―
『XX年X月X日
本日○時○分に駐屯地に緊急指令が出された。
今後一切、外への接触を断たれる。
緘口令が敷かれているがおおよその人員は知っているだろう。
Code471。狼化病の発令だ。
軍内に狼がいるとそこら中で騒ぎになっている。
駐屯地全体の空気が重い。
だが、同室者のあいつはむしろ俺に気を遣ってくれる。
死んだ奴が俺と一番親しかった事は周知の事だったからだろう。
だから誰も俺を疑いやしない。
どいつもこいつも軍人のくせしてお人よしすぎないか。』
『XX年X月X日
また一人死んだ。前に俺の指導教官をしてくれた上官だった。
窓を破られたらしく、警戒の隙をついて襲った形だ。
故郷に祖母がいて心配だと言っていたっけ。
その前日に、疑いをかけられ尋問を受けていた新兵が自殺した。
この空気の中で感染以外の理由で何人が死んだろう。
軍内に漂う疑念は一層強くなっている。
新兵の無実は証明されたが、尋問役を引き受けていたあいつは
今もベッドに腰掛けうな垂れたまま動かない。
知っていたさ。その新兵を妹のように可愛がっていたことを。
だからこそ尋問役を引き受けていたことも。
抜け殻のようになったあいつが俺を見て言う。
お前が発症者なら、次は俺を殺してくれたらいいのにと。
……ごめんな。』
『XX年X月X日
最後まで言い出せなかった。
そのせいでどれだけの犠牲が出ると分かっていても。
どうして発症なんてしまったんだろう。
生まれ変わるなら、俺は喰われる側でいたい。』
― 夜半・書庫 ―
[フィオンはまだいなかった。
密会という形を取るなら灯りをつけるべきではないだろう。
そもそもドロシーには必要ない。
しばらくその場で待てば、
やがて扉越しに小さな伺いが聞こえた。>>92]
大丈夫よ。
外にいたら人に見咎められるわ。
[声をかけて扉を開けばフィオンは入室しただろうか。
上着を着ていても分かる物々しさ>>81に苦笑するしかない。
自衛というには正しいけれど、
本当に自衛するならここに来るべきではなかった。
だからフィオンは「まだ」と聞いた。
ドロシーの意識が発症時には病に飲まれると考えているのだろう。
騙すようだが、ドロシーはいつだって平常のままなのだ。
夢を見た時からずっと、何も変わらない。
フィオンが奥へ入れば後手にそっと扉の鍵をかけた。]
それで、伝えたいことと言うのは?
[薄い笑みを刷きながら声の通る距離まで近づく。
どこまでをフィオンは許してくれただろう。
あまりに遠ければ、声が外に漏れると零して距離を詰めた。*]
/*
格好いい。サシャ。
前世も今世もその佇まい好きよ。
ところでこれ普通に軍規違反でドロシーわるくない()
間接的な原因だろうって?知ってる。
尉官 ドロシーは、下士官 フィオン を能力(襲う)の対象に選びました。
情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 エピローグ 終了 / 最新