情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 6日目 エピローグ 終了 / 最新
……だが、これだけはもう一度言うぞ……。
馬鹿野郎が。
[短く短く。
紡いだ声が、大気に溶けた、その後に。
その来訪者は訪れた]
……シンクレア卿?
俺に……何か。
[訪れたのは、予想外の人物。
居住まい正し、話を聞くにつれ、男の表情は目に見えて、変わる。
……具体的には、「あ、こいつなんかやらかす気だ」と。
そんな危惧を抱かせるような──そんな、不穏な笑みへと]
……了解した。
微力ながら、お手伝いさせていただこう。
だが。
……今のままでは、俺自身が納得できぬ所もあるのでね。
その筋だけは、通させていただこうか。
[それがどんな筋かは、その場では、口にすることなく。
同意を返した男は、一先ず、なすべき事のためにと動き出す。*]
― 野営地・会議天幕 ―
[根回し、と言ってもできる事は限られるが。
必要な事と割り切り、動くだけは動いた。
そうして迎えた会議の流れは予想通りの堂々巡り。
それに正直、飽き始めた頃]
……威勢のいい事で。
[天幕に現れた若手たち。
口は挟まず、語られる言葉を──示される思いを、聞いて。
会議の方向性が定まりかけたタイミングで、す、と手を上げた]
……お前たちの想いは、理解した。
"鍵"の継承者を立てるに不服はない……が。
一つだけ、問わせてもらいたい事がある。
[口の端に笑みを刻みつつ、視線は真っ直ぐ、"鍵"を手にした青年騎士へと向く]
……その想いに、伴う『力』。
それが、あるか否かを、な。
[力伴わぬ想い、思い伴わぬ力。
どちらも無為と見なすが故に。
そこを知らぬままでは、
/*
いや、ほんと。
もっと早く出せてればよかったんだけど、ね……!
まさか、あそこまで残業長引くとは思わなんだ……読み、甘かった……。
[用意させたのは、こちらも鍛錬用の長槍。
剣も不得手ではないが、手を抜いた、と思われては色々と厄介だからという読みもある]
……加減はいらん。俺も加減はせん。
遠慮なく、打ち込んでこい。
[礼を返した後、右手に槍を提げる。
先は下を向いて、一見すると、踏み込む隙はあるようだが。
纏う気迫は、戦場に立つ時と変わらぬもの。*]
……だが。
それだけでは、先へは進めんっ!
[真っ向からの一撃は、一歩引く事でいなし。
返し放つはこちらも真っ向からの突きの一撃。
加減はしない、との言葉の通り、迅雷の一閃に容赦はない。
初手を受けても立ち上がってくるか、否か──見定めるためのものだから。*]
[素質は十分にある、とは。
何かの折に聞かされていた。
それを見たい、と思ったのも、この勝負を仕掛けた理由の一つで]
……なるほど、な。
[一つ一つの動きは荒い。
だが、磨き上げれば、玉となる──そんな輝きの欠片を伺わせる。
[幾度転がされても、立ち上がる気迫。
さて、次はどう出る、と思いつつ、返そうとした槍に力がかかる]
……なんっ……!
[槍の動きそのものを止めら、自然、動きが止まる。
そこに繰り出された一撃は、避けるを叶わず。
衝撃と共に、手から力が抜けた]
…………。
[力が抜けた手から、落ちた槍。
その様は、周囲からどう見えるか。
何れにしろ、男の表情にあるのは──楽しげな笑み]
……ったく。
さすがは、アランが見込んだヤツ、というべきか。
そこで、そう来やがるとは……面白い。
……俺の負け、だな。
想いの一太刀、確かに受け取った。
[一呼吸おいて、笑みを消し。
宣する声は、周囲にも大きく響くもの]
"鍵"の継承者、ヤコブ・バルド。
お前に……いや、貴公に我が槍、しばし、預けよう。
[正式な礼と共に紡がれた言葉にあるのは、認める、というはきとした意志。*]
― 朝/騎士団野営地 ―
……こちらこそ、だ。
[返された短い言葉>>347に、こちらも小さく返し。
上がる歓声の中、一つ、息を吐く。
あらゆる意味で、思惑は当たった、と思える反応。
形だけではない、言葉だけではない、という証。
屈せぬ意志を、それを貫く力を形にして見せる事で、揺らぎは抑えられる。
難色を示していた古参も、自身が認める事で折れるだろう。
そう、できるだけの積み重ねは、してきている心算だ]
……さて、後の懸念は、と。
[救護班によって運ばれていく姿を見送った後、小さく呟く。
過るのは、戦場で対した狂戦士の姿]
[厄介な相手だ、と思う。
同時に、妙に寄せられるから質が悪い、とも思う。
普段は沈めているもの──戦人としての、いや、個としての本質。
闘う事に己が在り方を見出す、闘士としての本能が呼ばれる心地がする]
(……どーにも、天災みてぇなもんだな、ありゃ)
[己が立ち位置思えば、その心地に酔い痴れるわけにもいかぬのに、と。
戒めてはみれど、再び見えた時にどうなるかは――はきとは言えぬ事]
[問答が終われば、自身は再び会議の席へ。
相変わらず、この空気は好みではないが、文句を言える立場でもなく]
……先の戦いの影響で、騎兵動ける騎兵の数は減っている。
調達する、と言っても即時の補給がきくものでもなし。
立て続けの先陣は、無理だな。
[騎兵隊の状況を問われるならば、端的に状況を説明し、それから]
防衛主体となるなら、遊撃を請け負おう。
……俺としても、その方がありがたい。
[自在に動ける身軽さは、ある意味では自身の流儀に最も沿うし、何より]
……敵陣に、危険なヤツがいる。
アレの相手は、そう簡単には務まらん。
[そう前置きして語るのは、前線でぶつかった狂戦士の事]
無論、陣としての動きを優先するつもりだが。
対応できる余裕がある方が、ありがたいんでな。
[言いながら、浮かべるのはどこか危険ないろを帯びた笑み。
諫めの声もどこ吹く風、と受け流す様子に、一部の古参は頭痛を覚えていたとかいないとか。*]
……まあ……言いそうな気質かとは思ったが。
[本当にいうか、と。
過ったのは、そんな感想。
黒馬の世話をしつつ、一頻り愚痴に付き合い。
それが終わった所で、ひとつ、息を吐いた]
なんというか。
……嫌いじゃないんだが、な。
[個人的には、好感の持てる気質──ではあるが。
状況を思うと、少しだけ、不安が過る。
周りに諫め役もいるようではあるが、どうにも一抹、不安が過って]
……やれ、やれ。
どこまでも、意表をついてくれる、なっ……。
[零れたのはこんな呟き。
声音に滲む、楽しくて仕方ない、と言わんばかりの響きに、配下の騎兵隊は違う意味でぽかんとしていた]
……そんな顔するな。
悪くない、だろ?
[評しながら、柔らかな笑みを見せる。
これが滅多にない事、と知る配下にとっては、何気に驚天動地の事態だったりするのだが、それはそれとして]
[鎧の上から、胸元に手を触れる。
リンドブルム家の長子に刻まれる、妖精の祝福と称される『印』。
直接他者に見せた事はないが、そう言ったものを背負い、先駆けとなる一族である、という話は騎士団では知られているか]
……本気で使う必要があるか、ね。
[呪印は、刻まれている事で微弱な守護を織りなし、それによってじりじりと
最も強き加護を望むのであれば、正式な手順を踏んで、発動させる必要があるが。
それを行えば、一気に死が近づく、文字通りの諸刃の剣。
こんな危険なものは、後に託すべきではない、と。
そう思うからこそ、独り身を貫き、妹にも呪の紡ぎ方は伝えていない。
そして、呪の終焉を望んだ代に、"鍵"が目覚めたのは偶然とは思い難く。
必要とあれば、それを用いるに躊躇いはない──が]
(……最期まで、使わずにすみゃいいんだがな)
[叶うなら、人としての己が力で最期まで駆け抜けたいと。
それもまた、偽りなき思いなのだった。*]
情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 6日目 エピローグ 終了 / 最新