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― 本隊行軍中 ―
[駆けていく先に土煙が見え始めた。
交戦中のケファラス隊と見て間違いない。
重装歩兵の足ではもう少しかかるだろう。
そこへ、軽歩兵から敵兵接近の警告が発せられた。]
来たか。
数百規模か。寡兵だな。
[何が目的だ?と思案する。
罠か。兵力分散の誘いか。
半端に兵を差し向けるのはうまくないが、無視していい数でもない。]
[フェリクスの隊は、動きの柔軟さでは軍随一だ。
戦況が不利になれば退くだろう。
相手が罠を張っているのなら、それを凌駕する力で当たるべきか。
そこまで思考して、麾下の兵とクレメンス隊に命令を伝えた。]
全力をもって、新たな敵を叩く。
行くぞ。
[号令一下、兵たちは南へと進路を変えた。
矢が降ってくれば盾を翳し、速度を落とすことなく駆けていく。*]
王弟殿下?
あの目立つ優男か。
確かにあいつがいたのなら、指揮権引き継ぎでもたつくこともないか。
とすると大将自ら出てきたということか?
思った以上に剛毅だな。
[ちょっと見直した、とばかりの鼻息ひとつ。]
― 平原南 ―
[南から攻撃を仕掛けてくる王国兵の中に、明らかに武装がまちまちの一団がいる。
あれが、義勇兵か、と目を細めた。
農民が武器を取るなど考えられないこと、と思っていたが、かつて己を助けた少年も、農民の子だと言っていた。
王国では自由民が田畑を耕し作物を育てるらしいと知ったのもその時だ。
少年とその家族の元で過ごした数日は、ゼファーでの暮らしとはまるで違っていた。
とりたてて裕福な家庭とは見えなかったが、食事には色とりどりの野菜が入ったスープが振舞われた。家の外で指導官の怒号が響くこともなく、1日の仕事を終えた夜には温かな一家団欒の光景を見た。
多少、居心地が悪かったのは、縁のない穏やかさだったからだろう。]
[少年が纏わりついてきたのには閉口したが、恩人には違いない。
せがまれるままに、ゼファーのことを話して聞かせた。
男子はみな、お前くらいの年にはもう親元を離れるんだとか、1日中行われる軍事訓練だとか、食料を持たずに山に入って生き延びる訓練だとか。
物騒な話ばかりで子供の母親には嫌な顔をされたかもしれないが、聞かれるままに話した覚えがある。
動けるようになれば、ひとつだけ少年に技を教えた。
剣の持ち方と、人の殺し方だ。
本気で人を殺すつもりなら、剣を振り回すな。
低いところで構えて、切っ先を相手に真っ直ぐ向けて、身体ごとぶつかるつもりで貫き通せ、と。
それくらいしか、礼代わりにできることはなかった。]
[今にして思えば、余計なことだったかもしれないと思う。
あの後、少年が武器の訓練などに目覚め、戦うことを覚えていたら、あの義勇兵の中に入っている可能性が上がる。
手に掛けることに躊躇いはないが、少年の親は嘆くだろう。
運命の女神はやはり皮肉が好きなのだなと、見えない神に唾を吐いた。]
[弓矢や投石は、掲げた盾に弾かれる。
盾の隙間を抜けて身体に突き立っても、ゼファーの戦士は容易には倒れなかった。
致命傷でなければ、構わず進む。
隊列を乱さないことと駆け続けることがなにより優先だった。なにしろ倒れれば後続の味方に踏まれ、運が悪ければ命を落とす。
それでも何か所かに開いた穴は、後続が詰めて埋めた。
肉薄する前に相手の弓兵や投石兵は後退し、代わって前方に出てきたのが槍を構えた軽歩兵だった。
ぶつかろうという構えに、得たりと笑う。]
押し潰せ!
[重装歩兵の最前列右端に自らを置いて、吼える。
肉と鉄の塊は、勢いを緩めることなく槍の壁に襲い掛かった。]
[最前列の兵は剣を手に槍衾の穂先を斬り払い、二列目以降の兵は槍をもって突きかかる。五列より後ろの兵は盾を頭上に掲げて投射武器への防御としつつ、前方へとひたすらに進み、圧力をかける。
衝突の勢いは、青銅の槍をして鉄の盾をも貫く力となり、最初の衝突でいくつもの血の華が咲いた。幾人もが倒れ、同じだけの人数が後ろから押し出されてくる。
衝突する重歩兵の左右からは軽歩兵が、こちらは隊列を組まずに散開しつつ前に出て、敵兵を左右から包囲攻撃する動きを見せた。]
― 回想 ―
[元首に選ばれてからほどなく、王国の使者がゼファーを訪れた。
元首就任を祝いにとの連絡は事前に受け取っていたから、こちらも歓迎すべく盛大な宴をひらくことにした。
とはいえゼファーの宴には歌も踊りもなければ女の影もない。
ひたすら飲んで食べて、政治や軍事の話をするだけだ。
興が乗れば即興でレスリングや剣戟が始まるし、大乱闘になることもある。
が、王国の流儀に合わせる必要は感じなかったので、普段の宴を通した。]
[現れたのは女と見まごう程の長い髪と整った顔立ちの人物で、あいつは男として役に立つのかなどと下卑た噂も飛び交うこととなった。
だが一見嫋やかな言動と印象に反して、烈火のごとき熱情と鋭く長い刃を秘めているという見立ては、当時元首になり損ねた男>>0:44と同じだった。
その一端が垣間見えたのは、宴も進み、無礼講となり、あちこちで杯が飛び交い始めたころだ。
王弟の問いは、単純な好奇心からとも思えた。>>235
だがその奥に、国を負った矜持と意地のようなものを感じた。
なるほど。試そうというつもりか。
挑まれて逃げるのは、ゼファーの流儀ではない。]
酔ってくると、無い、とは言えない。
だが怪我人はめったに出ないな。
良かったら、試してみるといい。
[肉切りナイフを押しやりつつ、正面に座る男を指す。]
/*
今、やる気はあるけど暇なので灰が量産されるタイミングです。
王国の子たちみんな可愛い。若いっていいよねってフェリクスと一緒にしみじみしそう。
怖いおっさん連中が相手でごめんね、ほんとに。って気分になる。
/*
いまさー。全力で罠に引っかかるぞ!って気分なの。
(叢雲でやれ)
やー。叢雲をミヒャエル君にしたのはちょっと失敗だったよね。あの小部隊じゃ、罠に引っかかっても面白みがない。
もっとがっつり部隊動かせる設定にしておくんだった。
[泥に嵌って動けなくなった兵は肩を組み、肉の橋を作り出す。
後続の者はそれを乗り越えて進み、先で沼に落ちたものはまた道を伸ばした。
同胞の肉体を持って沼地を踏み越え、部隊は再び敵兵を押し潰すべく進み始める。*]
― 回想 ―
この猫の顔した虎は、そんな単純な男でもないだろう。
向こうがそう思うならそれで、たいした相手じゃないってことだ。
[しれっと答えたあと、一拍の間が落ちる。]
…それもお前が無事だったおかげだな。
今度、なにか奢る。
[若干の謝罪と安堵の念がコエに漏れた。]
/*
う、ふ。
さすがに川まで行くのは、己の距離感的に無理ー。
ちょっと、なんか、罠があったから乗ってみたけれど、そこまでは許してw
― 平原南 ― >>280
[橋となっている兵たちは、無論動けない。
だが戦えぬというわけではない。
ゼファーの兵は"ただで死ぬな、死ぬなら戦え"と叩き込まれているのだ。
両端になった兵は空いている手で盾を構え、仲間と己の身を護る。
盾の隙間からは、余力のあるものが槍を突き出した。とはいえほとんどめくら打ちだ。多少の牽制にしかならないだろう。
一方で橋を渡る者達は、高さの利を得て上から槍を打ちおろす。勢いのついた槍は、常以上の破壊力を持つだろう。もっとも、足元まで盾で守るのは難しいから、これも諸刃の剣だ。
本隊を援護するべく、両側面で遊弋していた軽歩兵を投入する。
隊列を組まず、散開して進む軽歩兵は左右にそれぞれ100程度。本隊を側面から攻撃している敵軽歩兵と、乱戦に持ち込むことを狙う。敵味方が入り乱れれば、矢も飛ばしづらくなるだろうと狙って。]
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