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− 西門付近 −
[クレステッドは西の跳ね橋へと向かい、自分と馬を外へ通してくれるよう頼んだ。
妖術師のものとおぼしき輿と鱗をぬめらせた魔物はもう視認できる距離まで迫っていたが、まだ壁に取りついてはいない。
今ならばクレステッドが出た後、敵に侵入されないうちに跳ね橋を上げることもできよう。
門番はクレステッドの身を案じたが、壁の上に待機する射手たち>>17を一瞥すると、承諾してくれた。]
感謝する。
[上からの支援>>25に守られて駆け出せば、背後に続く気配があった。>>28
視線を流し、その姿を確認する。
あからさまに速度をあわせたりはしないが、彼の位置には気を配っておこうと考えた。]
祖霊の加護を。
[微笑みひとつ投げて、槍を構え、騎馬の突進力をもって魔物の群れに躍り込む。
足を止めぬようにして薙ぎ払った。
ベルガマスコへの最短距離を辿る。]
[風を切って飛来する矢があちこちで魔物をもんどりうたせる。>>40
ありがたい援護だった。
ベルガマスコの意識もこちらを向いたろうか。
そう願いたい──と、
どこを見ているのかよくわからない魚眼の魔物たちが転げて算を乱す中、直立するワニに似たひときわ大きな魔物が行手を塞ぐ。
手にしているのは藻の絡んだ投網のようだ。]
古巣に戻れ。
[クレステッドは慎重に間合いをはかって槍で突く。
だが、その緑の鱗は槍を跳ね返した。]
なるほど。
[目を細めはしたが、退く気はなかった。
投げかけられる投網を先の潰れた槍で払い、噛みつかんと牙を剥く魔物の口に、とっさの動きで抜き放った剣を押し込む。
さしもの魔物も、口の中までは鱗に守られておらず、ぐげえと鳴いて倒れた。
力尽きれば悪霊から解き放たれて湖の生き物に戻る。]
…悪しき業だ。
[と、足元から瘴気のような黒い霧が噴き出した。
ベルガマスコの術だった。
狙いを定めて呪文を唱える余地を与えてしまったらしい。]
… くっ
[クレステッドの姿が闇に包まれる。**]
[イェンスがベルガマスコを狙って攻撃を仕掛け、術中にあるクレステッドに鼓舞の声を投げる。>>80
すると霧は急速に薄れていった。
が、そこにクレステッドの姿は ない。
後には、主の重さを失って戸惑う様子の芦毛の馬が残されているばかりだ。]
− 西門方面 −
[しばらくたった後、魔物の群れの後方から何かが運ばれて来た。
横木を渡した大きな柱。
そこに人が縛りつけられていた。
腕を広げた姿勢で、茨めいた漆黒の鎖に拘束されているのは、妖術で連れ去られたクレステッドである。
意識がないのか、その顔は力なく俯いて垂れていた。]
[ベルガマスコの呵々大笑が周囲に広がる。
遠方に声を届ける魔術を使っているのだろう。
「偉大なるベルガマスコ様に歯向かった愚か者は捕虜になった。
おまえたちも無駄な抵抗はやめて、すぐさま降参いたせ。
ローズマリーおよび、聖殿のありったけの金銀財宝をワシに差し出して許しを請うのだ。
そうすれば命は助けてやるぞ。
時間稼ぎなど小賢しいことを企んでも無駄だ。
日の暮れるまでに言われた通りにしなければ、こいつを火あぶりにしてくれるわい」
そう言って、柱の根元に薪を積み上げさせる。]
− 聖殿(ローズマリー姫) −
[一方。
クレステッドの一件を聞きつけたローズマリー姫はスカートの裾を払って立ち上がった。
「門を開きなさい」
ざわめく周囲に、揺るぎない笑みを向ける。
「むろん、わたくしは妖術師のものになどならなくてよ。
思い上がったベルガマスコの顔を平手打ちして、騎士エンバーを連れ戻します。
誰か、案内してちょうだい」
悪に屈したりしない、誰一人として見捨てはしないと、その意志を示すために。*]
[呼びかける声が届く。>>127
身体は鉛のように重たく、言うことを聞かない。
それでも、彼方で聞いた言葉>>80や、家族の顔を思い出して気合いをいれれば、意識は次第に明瞭になっていった。]
負けて たまるか
[救援に来たカスパルらが磔刑の柱から解放してくれる。]
礼は勝利の祝いの際に、改めて言わせてもらうぞ。
[支える力に励まされ、努めて顔を上げた。]
[ローズマリーまでもが前線に出ていると知れば、地面を踏みしめて立ち上がる。
馬を借りられるか、と言おうとしたところで、芦毛の愛馬が主を見つけて駆けて来た。
そのたてがみを撫でてやりながら、凱風騎士団の誓いを吟ずる。]
我らは、最初に戦場へ馳せ参じ、最後まで踏みとどまって戦う者なり。
[姫、そして魔術師と対峙している勇敢な男>>139が安全な場所に戻るまでは、壁の中には戻らぬ、との決意で再び馬上の人となる。*]
[捨て台詞を残してベルガマスコが雲隠れする。>>147
片手だけで妖術師のわざを凌いでみせた男に、クレステッドは胸に拳をあてて敬意を表した。
騎士のようには見えないが、あの腕前。]
あの御仁、どこで武術を身につけたのか…
[近くにいた騎士に、人を問えば、キサンに住む鍛冶屋との答え。]
なるほど、彼の鍛えた武器ならばわたしも一振り欲しい。
[親玉の退却により、魔物軍の攻勢も収まった。
取り残される者のいないよう確認のために後詰めにいたクレステッドに、
帰途につく騎士団から離れて声をかける騎馬の女性がいる。]
…ジェスタ! どうしてここに。
[驚く夫に、ジェスタは微笑んだ。
「ローズマリー姫のお伴ですわ。本当に勇敢な方なの」]
君もだ。
[敵の手中に落ちた身を心配して乗り出してきたのだと思う。
危険だと叱るべきなのかもしれないし、自分の不甲斐なさも身にしみる。
だが、それ以上に愛しさがつのった。
手を伸ばして妻の髪を撫ぜる。]
わたしたちのトビアスが待っている。 戻ろう。
[そうして、松明のあかりの灯り始めた聖地に向って、駒を並べて進むのだった。*]
− 聖殿 −
[聖殿へ戻り、怪しげな術をかけられていないか念のために司祭らに調べてもらってから、妻ともどもローズマリー姫と騎士団に挨拶にゆく。
その後で、先の鍛冶屋の居場所を問い、街の食堂で見かけたと教えられる。
会いに行ってみることにした。]
− 食堂 −
[先程、戦場で見かけた男の姿を認めて、活気のある食堂の中でも盛り上がっている一角に歩いてゆく。>>152
樽で酒が供されているようだ。
注文する前からグラスを渡され、棟梁の奢りだと言われた。>>150
テーブルに乗っているのは’戦果’なのだと、徒弟風の青年が誇らしげに説明する。]
なるほど、大活躍だったようだな。
街の皆の協力あってこそ、だ。
この地にどうして軍が不要かわかった気がする。
──相席させてもらっていいだろうか。
クレステッド・エンバーだ。よろしく。
[鍛冶屋と棟梁に、献杯の所作を送った。]
[相席を快諾され、一礼してテーブルについた。
食事は家族で済ませてきたので、酒で唇を湿らすだけにしておく。]
お気遣い感謝する。
司祭に調べていただいたが、何も問題はないそうだ。
とはいえ、あれでベルガマスコが引き下がるとは思えない。
次はどんな手に出てくることか。
[サシャの問いに「大したことはねぇ」と答えてみせるチャールズの所作をそっと見守る。]
槍で突き通せない硬い鱗を持った魔物がいた。
武器職人として、アドバイスはいただけるだろうか。
そちらの棟梁やサシャからも何かあれば、是非。
[サシャのどこか背伸びしたような挨拶に、息子の姿を重ねて柔らかに頷く。>>182]
ありがとう。
あとは、よく眠ることだ。
これをあげよう。いい夢が見られるおまじないだ。
[ポケットからポプリの小袋を取り出してサシャの手に落とす。
サシャとゲオルグのやりとりは、親しさゆえのじゃれあいを察してそっと見守っていた。>>176>>189]
[有鱗魔物に対する棟梁のアドバイスに真剣に聞き入る。>>192
喩えに出されたのは大工道具だったが、想像することはできた。]
戦槌やモーニングスターのような武器ならば、確かに。
さすがに巡礼に来るのにそんなものは持参していないけれど、守護者たちの武器庫にはあったりするのだろうか。
あとで、ウェルテクス殿に諮っておこう。
[料理を運んで来た食堂の跡継ぎも魔物相手に派手に立ち回ったと棟梁から聞いて、労をねぎらう。>>197]
帰ってきて、こうした温かい料理にありつけるのは、人として本当に嬉しいことだよ。
少しでも君が早く休めるよう、皿洗いくらい手伝おうか。
これでも、騎士練修場で調理当番の経験はあるんだ。
[チャールズからのアドバイスも打撃武器が良いとのことだった。>>201
あるもので何とかする技も大切だと頷く。]
お二方とも、ありがとう。
やはり、情報交換は役立つな。
貴殿らはキサンに居住しているとか。
そこで、ご助力願いたいことがある。
[グラスを置いて、ここへ来た趣旨を告げることにした。]
わたしは夜明け前にここを出て、キサンに身を潜め、迂回してベルガマスコを挟撃しようと考えている。
その水先案内を頼みたい。
ご両者とも、快諾感謝する。
戦槌の件もありがたい申し出だ。
できれば、気づかれぬうちに回り込みたいのだが…
そう、相手の肝っ玉抜いてやりたい。
[ゲオルグには挟撃作戦の肝を説明しつつ、落ち合う時間や場所を取り決めておく。>>217]
[食堂の跡取り息子には、底知れない笑みで手伝いをお断りされてしまったので、このまま引き上げることにした。>>226]
君は戦いの素人だというけれど、これほど信頼できる素人集団と共に戦うのは初めてだ。
とても助かっている。
わたしも、本分を尽くして、
明日の晩は、より楽しく祝杯を交わせるようにしよう。
ごちそうさま。
[グラスを干してテーブルに置くと、皆に挨拶をして席を立った。
サシャの言っていた浴場に少しだけ寄り道していこうか。>>212**]
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