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3人目、八華家の公子 タイガ が参加しました。
八華家の公子 タイガは、共鳴者 を希望しました(他の人には見えません)。
− 召喚室 −
[魔法陣の前に立ち、腹の底まで深く息を吸う。]
神神、
いざ、起たせ、
照り満つ蘇枋の実の、
こよなし、よく染みぬ。
神神、
みそなはせ、
はららぐ鷲の羽の、
こよなし、よく飛びぬ。
さっそく入ってやったぞ
>>2
北原白秋「猟夫」より (改行は元テキストと異なる)
興味あったら青空文庫でどうぞ
http://www.aozora.gr.jp/cards/000106/files/52353_48552.html
[それは、呪文の詠唱ではなかった。
抑揚と情感に彩られた「歌」だ。
熱意と覚悟を乗せた男らしい歌声が、魔法陣をくぐり抜けてゆく。]
[美声ではあるが、いささか力みが勝つのは、これが初めての披露だからである。
理論は叩き込まれている。練習も積み重ねた。
師は上達を認め、幸運を祈ってくれた。
それでも、初めての海釣りにも似て、何と遭遇するのか、成果を出せるのか、すべては未知数である。
気負いと焦燥を強い使命感で鎧って声を送り出した。*]
[目の前に出現した光に息をのむ。
応える者があった ── 召喚が成功したのだとわかった。
それにしても、なんという圧倒的な化現だろう。
銀細工のような両翼は羽ばたくとも見えないままに、宙にとどまっている。
一糸まとわぬ艶やかな肢体は慈愛以外のいかなる感情も伺わせない。
上位の精霊か、それに比する太古の存在に違いなかった。
己はこれを従わせることができるのか。
否、しなければ召喚師になれないのだ。]
[ほんの一ヶ月前まで、タイガは軍人だった。
馬を駆り、槍を振るい、兵らを鼓舞する士官だったのである。
体格は人にすぐれ、武芸にも自信はあった。
建国の頃より続く八つの名家のひとつ、レスタリオール家に生まれ、末は将軍になると誰もが疑問を抱かなかった。
それが、国の顧問召喚師から後継者指名を受けて、急遽、軍を除隊し、召喚士育成学校に入ることになったのだ。
立場は異なれど国のために働ける ── 栄誉なことだろう。
実際、兵らの攻撃がまったく通用しなかった災厄を、召喚師とその使い魔が退ける現場を見たこともあり、召喚師の価値はわかっているつもりだ。]
[幸い、この光に満ちたネイバーは友好的な反応を示している。
自分が何かのために求められたことも理解しているようだ。]
よく来てくれた。
おれは、まだ正規の召喚師ではないが、おまえを喚んだのはおれに相違ない。
[言葉を失っていたのは一瞬のこと。
カツリと踵を鳴らして居住まいをただすと、銀翼に正対する。]
この世界は、
対処するのに、異界の者であるおまえの力が必要だ。
おれと共にあれ。 加護を与え賜え。
[毅然として告げ、自身で戦う能力は備えていることを示すように、手にした槍の石突きで床を打った。**]
[音楽的な声が恩寵を告げ、その存在がすぐ近くまでやってくる。
光に質量を感じるほどだが、しかと踏みとどまった。]
…我が
[与えられた響きに呼応する。]
おれの名は”タイガ”だ。
タイガ・エン・デ・レスタリオール。
正式な契約を交わすまで、おまえは長い時間、この世界に居続けることができない定め。
けれど、おれが、
[槍を左手に持ち替えて矛先を下に向け、銀の流れる姿へ手を伸ばす。*]
[銀に切り取られた空間の中、天使は召喚師の唇を刹那奪った。
羽根触れるほどの接触は、熱とごく微かな痛みをもたらす。
唇の間に光の粒子を注ぎ、代わりに唇の端を薄く噛み裂いていった天使は、舐め取った命の雫を味わうように、一拍ほど口を閉ざす。]
これが、私があなたに与える最初の加護。
もう、あなたを見失うことはない。
[息のかかる距離で告げて、微笑んだ]
[天上の音楽で己が名が紡がれるのを聞く。
澄んだ中にも甘やかな響きが耳を洗い、繰り返し聞きたいと望む。
続けて銀のネイバーが告げたのが己が姿も、新鮮な発見だった。]
かくあれかし。
[誓いを返せば、魔法陣の縁でふたりの身体が触れ合う。
たおやかな指の間に、自身の節高い指をくぐらせて繋いだ。
瞬間、銀の翼に覆われる。]
[それは天蓋にも似て、小さな世界だった。
銀の光が流れきて、唇を掠める。
刹那の痛み。
初め、噛まれたとはわからなかった。
桜色の唇に、より鮮やかな緋を認めて、ようやくそれと察する。]
──…ッ!
[反射的に、強制送還を発動していた。
かろうじて、武器を振るわなかったのは武人としての冷静さだと思いたい。**]
[手の甲で唇を拭い、軽く噛む。
しばしの黙考の後、召喚室を出て教官室を訪なった。]
シュナウザー先生、おいでですか。
報告と ── 質問があります。
− 教官室 −
ネイバーの召喚には成功しました。
が、そのふるまいに理解しかねる部分があり、強制送還してしまいました。
[教官に、これまでの経緯を簡潔に語る。
シュナウザーは頷きながら聞き、アドバイスをくれた。]
ああ…
言葉は通じても、異世界とは文化背景が異なる、と。
[タイガの認識では天使のように見えたが、アレは異世界では飛行大陸の民だとか、誘鬼の類なのかもしれない。]
ご助言、感謝します。
「郷に入っては郷に従え」との格言どおり、
この世界の流儀を学んでもらい、摩擦の起きないよう躾けるのも召喚師の任務と心得ます。
幸い自分は、軍におりましたから。
[軍隊式にキッチリ礼儀を叩き込んでやろう、と決意する。]
[シュナウザーに挨拶をして教官室を出る。
再び、召喚室に向かいながら、ふと、他の候補生たちはどうしているだろうかと考えた。
後で、時間を作って、皆のところはどんな様子か聞いてみたい。]
ゆめゆめ警戒を怠らず ── だぞ。
[ひとつ息を吸い、召喚室の扉をくぐった。]
[歌を用いるまでもなく、再び現れた銀の人は、先ほどよりももっと潤って甘く香り立っていた。>>62
強制送還したことに苛立っていない様子なのは見て取れる。
あくまでも純粋で献身的な言葉に、やはりこれは天使であろうと考えた。
ひたひたと寄せてくる光の波紋も感情を伴うかのように美しい。]
──…。
[初見ではないとはいえ、つい見入ってしまう。]
…ああ、いや。
今のところは、我らが動員されるような災厄は発生していない。
その日のために備える時間が与えられているのは幸いだ。
[努めて事務的に応対する。]
まずは、おまえに、この世界やおれのことをもっとよく知ってもらう必要がある。
おまえの優れた性質を曲げるつもりはないが、おまえの善意がこちらの世界ではタブーである可能性を認識し、トラブルを避けるようにしてもらいたい。
同様に、おれもおまえを知りたいと願っている。
── ついて来い。
[端的に告げて、踵を返した。*]
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