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……っせえ、のお!
[地へと降り立ち、気合を入れて糸を引っ張る。
何はなくとも相手を引きずり出さねば話にならない。
見目に正しく重量級の相手、引きずり出すのは容易くはないが。
糸に通した念動力と、生来の力──獣の特性を持つ『新種』としてのそれは、重ね合わせる事で瞬間的にだがそんな無茶を可能にしてくれる]
いよっとお!
[気合と共に引きずり出したザリガニを近くの岩場へと叩きつける。
強靭な殻も、こんな衝撃には弱い──というのは、幾度か同系のものを狩って身に着けたもの]
Halten Sie einen Faden an.
[短く紡いだキィワードで糸の動きを止め、くるり、手首を返す事で引き戻す。
直後、一つ息を吐いて走り出し]
……観念、しやがれっての!
[叫びながら再び地を蹴り跳躍する。
ザリガニは未だひっくり返ったまま、比較的柔らかい腹部を晒している。
ここに一撃加えればこっちの勝ち、と。
そんな思考を遮るように、ザリガニが鋏を振り回した。
絶妙のタイミングで振られたそれは、降下する身を捕えたかのように見えた──が]
……おせーよ。
[鋏が触れた瞬間、青年の姿は消え失せて。
直後、鋏の軌道から逸れた所に現れた。鋏は大きく空を切り、ザリガニは無防備な状態のまま、軋むような音を立てる。
文字通りの瞬間移動──それが青年の生まれ持った力の行使、とは、ザリガニには知る由もない事で。
捕らえたはずの獲物がそこにいる、という事態に対するより先──鋭い一撃が、腹部に落ちた]
……ったく。
手間取らせやがって。
[そこだけ黒い毛皮に覆われた左の手、その先の鋭い爪を突きたてつつ。
は、と口をつくのは、ぼやくような一言だった]
― 『聖都市』近辺・スラム街 ―
あー……今回は割に合わなかったなぁ。
[巨大ザリガニを仕留めた後。
いつものようにハンターたちのギルドに報告して、いつものように賞金をもらったものの。
一週間追跡の苦労に見合う対価だったか、と言われるとかなり悩むところだった]
こーゆーのを地味に重ねて、実績稼げ、とはいうけどなぁ。
[聞くところによれば、母も祖父もハンターとしてはかなりのハイランクまで上り詰めた実力者だという。
そんな話を聞いていると、自分ももう少し……と、思ってしまうのはある意味已む無しか。
ともあれ]
ま、一仕事終わったにかわりねーし。
久しぶりに、のんびりすっかな、っと。
[気持ちを切り替え、呑気に言って歩き出す。
通い慣れた下街、そこにある異変には全く気づけないまま。**]
― 4年前 ―
[事の起こりは、4年前。
大物狩りの仕事が少ない時期、ならばと参加した賭けストリートファイトの後の事]
は?
いや、独学じゃない。
っつか、こんなん独学でやるとかかなりきついって。
[唐突に声をかけられるのも、戦い方について聞かれるのも良くある事だったから、それ自体は特に気にならなかったけれど]
……似た戦い方する人って、そんなにいねーと思うけど。
師匠、俺以外にも弟子いたのかな……。
[むしろそっちが気になったから、ぽつ、とそんな呟きを漏らしていた。
その呟きが何か思わせる可能性など、全く考える事もなく]
[それから、気が付くと行く先々ででくわすようになった人物。
基本時に群れたりつるんだりは好きじゃないから、正直戸惑った。
特に、仕事先で出くわした時はどっから突っ込みを入れればいいかわからなくなった。
だからと言って、別に嫌う理由もなく。
顔を合わせれば挨拶するくらいの気安さはある、のだが]
/*
まあねー、絶対影の人なら喰いつくよねー、って思ってた。
故に、対戦は逆に避けたんだよな……うん。
あ、ちなみにこいつは4代目ですよ、直系の。
半竜鴉と天使から、真っ黒狼が生まれました(ぇ
― スラム街 ―
[自分の師匠については、あまり他者には話さない。
師、自身がそれを好まなかったのもあるけれど。
言葉で語れるようなひとじゃない、と言うのが自分の中で大きいから。
だから、それ以降話題にされなかったのは、ある意味ではよかったのだろう。
それがされていたら、多分、今より距離を置いていたから……というのはさておき]
あ。
[不意に飛び立った鳥。
それが顔面を直撃する様子に、惚けた声が出た。
さすがに、そのままおちる、という事はなかったが、しかし]
……いきてるか?
[しゃがみ込んで顔を覆う仕種に、取りあえずこんな問いを投げかけてみた。**]
面白い事、なぁ……お前が落ちてきた展開くらい?
[もう一つの問いには、さらっとこう言って、それから]
……ってはさておき、俺もなんかないかと思ってふらついてたとこ。
[多様な住人の集うこの場所は、所により物々しくはあるが飽きる事はないから。
仕事の合間にふらりとするのは良くある事だった。**]
― スラム街 ―
[物言いがばっさりしているのは生来気質。
「ハンターもある意味客商売なんだから、もーちょっと愛想よくしとけー?」とは父の弁ではあるのだが、こればっかりはどうしようもない。
それでも、労いの言葉>>48にはあんがとさん、と短く返して]
それ以外っつわれても、なぁ。
あんな絶妙のタイミングの衝突とか、ふつーにないし。
[わたわたする様子と揺れる尻尾>>49に、く、と一つ笑み落とし]
ま、ここんとこずっとターゲット追っかけてたから、そーゆー話と縁がないんだよ。
[それもあって楽しみ探しにふらついていた、というのは伝わるか。
自警団に何やら連行れされていく様子にはちらり、と視線を向けて]
……厄介なの、は。
厄介の質によっては、歓迎だけどなー。
[にっこり笑ってさらっという。
取りあえず合法的に殴ってもいい系の厄介なら、そんなに気にしない。
そんなちょっとヤバい思考を軽く言いながら、誘われるままに歩き出して]
……ん?
[数歩、歩いた所でポケットから振動が伝わる。
ありゃ、と思いつつ、中から引っ張り出すのは通信端末]
あー……やべ。
連絡いれんの忘れてた。
[モニタに映る表示は、狩りの仕事や情報を回してくれる情報屋の名前。
今回のザリガニ追跡でも色々と世話になった相手ではある]
あー……わり、予定変更。
ちょっと、やる事できたから、後から行くわ。
[ここを怒らせると色々と厄介だから、と。
ため息混じりに落としたのはこんなぼやき。*]
― スラム街 ―
対策とか、どーなんだかねぇ。
そこらしっかりしてりゃ、反抗組織とかでないんじゃねーの?
[『聖都市』では、『女神』の方針に反発する者たちが集まり、反抗組織を作っている、というのはよく聞く話。
『聖都市』に近づくなら、そこの抗争には関わるなよ……とは、師匠から何度も言われた事だった、というのは余談として。
通い慣れた街の様相変化やら何やらに思う所はある、というのは声音にも滲んだか]
[『厄介事は回避が一番、でも、避けられないなら実力行使でさくっと片づける』。
そんな家訓がある、というのもさておいて]
売られた喧嘩は、高値で買うのが基本だろ。
……自分から売る気はねーけど。
[やるときゃあくまで正当防衛からの倍返し。
そんな風に荒事をこなしてきたのもつき合いが続けば知られた事か。
ともあれ、そんな雰囲気だけは和やかな間は、端末の乱入によって途絶え]
ああ、ここないがしろにしちまうと、次が辛いんだよ。
でわけで、またなー。
[ひら、と手を振り、奥へと向かうノトカーを見送る。>>68
直後には、とため息ついて、届いたメールを確認し始めた。**]
― スラム街 ―
[送られてきたメールの内容は端的だった。
『連絡寄越せ』のただの一言。
仕方ないから音声通信の方で連絡を入れたわけだが]
……っかたねぇだろ!
てゆーか、ターゲットがあんなに動き回るとか、事前に聞いてねーぞ!
[開口一番、「なんで経過報告寄越さんのだこのボケ」と詰られ言い返す。
こんな調子なのはいつもの事。
ともあれ、クリーチャー対峙の顛末と結果を相手に伝えた]
あ、これから?
……取りあえず、ちょっと休む。
動けるようになったら、また連絡……って、は?
今いるのはいつものとこだけど?
[連絡事項の伝達が終わった後、これからどうするのかと今いる場所を問われて。
それへの答えに対して聞こえた「あーらーらー」という声にひとつ、瞬いた]
なんだよ、妙な声出して?
『いやな、なんかそこの近くで『獣神』が動いてるらしい、ってネタが転がり込んでてな。
お前、あの手になんかモテるから、伝えとこうと思ったんだが……』
……『獣神』って…………アレ?
[露骨に嫌そうな声で問うと、そう、と軽く肯定された]
まあ……避けられそうなら、避ける。
あいつら、うぜーからな。
[そう口にする瞬間、飴色の瞳が思いっきり遠くを見た……というのはさておき。
『ま、気ぃつけろや』というとても軽い言葉を最後に、通話は終わった]
……人事だと思って、気軽に言うよなあ……。
[そんなぼやきと共にこちらも通話を切り、端末をポケットに押し込んで]
……って、あれ?
[歩きながら感じたのは、違和感。
言葉で言い表せないが、何か、妙な感じがする。
ただ、それをはっきりと言い表す事はできなくて。
結果として、そのまま歩みを進める事となるのだが。*]
― スラム街 ―
……なんだ、これ?
[歩けば歩くだけ、募る違和。
その理由に気付いた頃には、日は大分傾いていた]
さっきから、同じところ歩いてるっつーか。
なんつーか……空間、歪んでんのか、これ?
[そこに思い至ったのは、自身も空間を歪める事による瞬間移動を用いるから]
ちょっと、やってみっか。
[小さく呟き、意識を集中させる。
持って生まれた瞬間移動の能力は長距離の移動はできないものの、落ち着いた状態であれば街の端から端程度の距離なら跳ぶ事ができる。
呼吸整え、スラムと表通りの境界辺りをイメージしながら力を発動させる、ものの]
……へ?
『同じ』……って?
[警戒含む声音に飴色を一つ瞬き、微妙に逸れた視線の先を辿る]
あ、やべ。
[揺れる黒耀石色に、またやっちまった、とぼやきを一つ、落とした後]
……その『同じ』っつーのが、獣人型の『新種』か、っつー意味なら、当たり。
ま、『始祖』じゃなくて第四……くらいの世代らしいけど。
[さらり、そんな答えを返して。
それから、がじ、と後ろ頭を掻きながら暮れて行く空を見上げた]
あー……そーなるとこれ、アレかねぇ。
『獣神』の連中が、ちょっかいかけてきてんのかな。
…………めんどくせぇ。
あいつら、しつこい上に見境ないからやなんだよなぁ。
[同じ状況に囚われているのが、同じ存在だというなら、思い当たるのはそこ。
これまでも揉め事を起こしている相手だけに、物言いには一片の容赦もなかった。*]
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