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3人目、尉官 ドロシー が参加しました。
尉官 ドロシーは、人狼 を希望しました(他の人には見えません)。
― 基地 ―
…………。
[額を押さえながら息を吐いてドロシーは寝台から抜け出した。
またあの夢を見たのだと、胸に蟠る不快が教えてくれる。
幼い頃から同じ夢を見ているが、
ここ最近は殊に頻度が増えている気がした。
夢の内容は覚えていない事がほとんどだ。
断片的に残るのは、闇と、時折混ざる光と、赤い色。
そして必ず胸を抉られるような感覚と共に目を覚ます。
夢を見たことすら覚えていなくても、それが夢の存在を知らしめる。
そうして痛みともつかない違和を、一日抱えて過ごすのだ。]
[最近はそのせいで碌に眠った気がしなかった。
だが、今日から向かう赴任先はさしたる変事もないと聞くから
休むにはちょうどいいかもしれない。
記録官としての仕事も、主に古い資料の整理に終わるだろう。
机に置かれた小瓶からカプセルを掌に振り落とす。
零れそうになる溜息ごと水で飲み下してから、
日々と同じように軍服に袖を通した。**]
― 駐屯地・指令室 ―
本日付で配属となりましたドロシー=ディレイ中尉です。
[踵を付けた挨拶を駐屯地の上級官へ向け、
当面の仕事の指示を受ける。
上官のスケジュールの都合だろう、
同時刻で着任したらしきもう一人の挨拶は>>12
随分と声が若々しく、零れそうになる笑みをそっと隠す。]
随分と緊張していたわね、初めての配属?
[指令室を出たところで声をかけた。
相手が階級に萎縮するようなら軽く笑みを浮かべて
士官学校を出ただけだからと答えるだろう。]
大した仕事はしていないの。
同じ日に配属された縁として、よろしくね。
……カシム君、でいいかしら?
[初対面にしては馴れ馴れしいだろうか。
だけどなんだか親しみを覚えてしまうのだ。
部屋へと荷物を運ぶ彼とは反応に応じて別れたけれど、
きっとまた話しかけてしまうのだろう予感がした。]
[他にも同日で数名が着任しているという。
そのうちの一人とは、知らぬ間に廊下で擦れ違っていた。>>10
その時のドロシーはちょうど荷物を抱えていて
どこかへ向かう途中らしき青年の通行を阻害しないよう
脇へと数歩ずれ待機していたのだが。]
…………。
[不躾にならない程度の視線を去る背に送る。
どこかで会っていただろうか。
これでも職務柄記憶力には自信がある方だったのだが、
いったいどこで見かけたのか。
記録官として渡り歩いた基地のどこかだろうかと
記憶を探るもののどうしても思い出せない。
首を傾げながらも肩から落ちかけた荷にはっとして
まずは自室へと荷物を置きに行く事にした。]
/*
あのね。まだ前村の記憶をひきずっているので。
うっかりするとカシムにぃとか言ってしまいそうになるのです。
(うっかり)最年長だよしっかりして。
― 記録保管庫 ―
[前線においては正確かつ迅速な情報伝達が急務とされ
記録の類は常に厳重に管理されていた。
が、国境から近い位置といえ長閑さの体現だろうか。
ここでは随分とそれも緩いようだ。
明日はまず記録を順列に整理するところから開始しようと
雑多に詰め込まれている記録誌を数冊抜き取る。
仕事は明日からだが、今日は他にする事もない。
紙が潮で傷まないようにと配慮された造りの部屋は
思いの他居心地もよさそうだった。
奥の椅子に腰掛けて紙を捲り始める。
朝に感じていた胸の痞えは珍しくも薄れていて、
これも環境の変化だろうかと、小さく唇を綻ばせていた。]
― 少し前・指令室前>>32 ―
任務外では楽に接してくれて構わないわ。
[明らかに緊張している様子に笑いながら
そっと階級章を掌が隠してみたが、手遅れのようだ。
『メアリー』と呼ばれて瞳を瞬かせる。
カシムはそれよりも指令室の前という位置が気になるようで
ドロシーのその様子に気付く様子はない。]
そう、ね。
同じ駐屯地にいるのだし、次の機会にまたゆっくりね。
[見るからに緊張で手一杯な彼に
今ここで名前を訂正をしたら大変な事になりそうだ。
次にそっと訂正するとしよう――それはそれで大変そうだけど。
敬礼を返し、ドロシーもまたその場を離れた。*]
― 現在・記録保管庫 ―
[管理は甘いが粗雑ではない。
丁寧に記されている文章に目を通しながら
まだ半日にも満たない記憶をゆっくりと思い起こす。
初めて訪れる場所であるのに
時折ひどく懐かしく感じる場面がある。
そこに在る数名の姿との結びつきにはまだ気付けない。
ただ、上官を含めここを訪れてから会った顔ぶれの内
数名に対して衝動にも似た思いを抱いていた。
中には一言も言葉を交わしていない人もいるというのに、
会って、話をしたいと思う。
それはどこかで出会った事があるのを思い出せなかったり
十年かけて薄れていった若さに触れたいからだろうと
自身の感情に整理をつけていると、足音が聞こえた。>>40]
[小さく零した声は相手に聞こえてしまっただろうか。
服についた徽章は同階級だが、
今のは無作法にあたるだろうと立ち上がり敬礼を示す。]
本日よりこちらに記録官として配属になりました
ドロシー=ディレイと申します。
無作法、失礼いたしました。
[名乗りながらも相手から視線が外せない。
――この色は、どこかで。]
……いえ。
こちらこそ……と言うのも堂々巡りでしょう。
[なぜそのように取り乱したのか
カスパルの口から理由を語られることはなかった。>>51
ただ、どうにも線を引かれた気がする。
任務外では気安く呼んで構わないと新兵にも言う程だ。
同輩であれば尚の事その気があるのだが、固辞されそうだと
固い表情に感じ取る。]
以後、よろしくお願いします。
ズィーネ中尉。
[不可解な初対面の区切りとして握手を求めた。
一瞬だけ触れた掌はやけに冷たく感じる。>>52]
……なんだろう。
[カスパルがここに何か用事があったのではないかと
彼が立ち去り椅子に腰を落としてから思い至り、
しかし今から追いかけて再度声をかける気は起きない。]
[敬礼と共にまっすぐな視線が向けられた。>>71
下官から先に挨拶があるのは当たり前に慣れているはずなのに
なぜだか熱いものが胸に込み上げてくる。
数秒……数十秒だろうか。
反応のないドロシーの様子にサシャは何を感じただろう。
僅かにでも戸惑いや訝る気配があればそこで我に返った。]
……失礼。ドロシー=ディレイ中尉です。
先程の船で来ていたの、声が中にも聞こえていたわ。
[気を抜くと涙腺が緩みそうになるのを堪えて敬礼を返した。]
私は水上列車で来たから船の様子を知らないの。
よかったらどんな感じだったか聞かせてくれない?
[緊張に固まるような感じがなければ歓談に誘う。
本当は、話しかけられて嬉しくて。
少しでも話をしていたいなんて思うのはなぜなのだろう。]
― 記憶の欠片 ―
[そう変わらない年齢だろうに
冒険をしている少女はキラキラと輝いて見えていた。
話をしてみたくて、だけどなかなか機会に恵まれなくて。
思い切って自分の方から話しかけてみたけれど、上手く話せずに
結局癇癪を起こした子供のような別れ方になってしまった。
そうして向かえた行く末は
彼女に謝る機会も失ってしまった。
だから、今度は――*]
[随分と萎縮させてしまっただろうか。
だけど、初手の挨拶が聞かれていたと知って恥ずかしがる様子は
年相応でとても素直だ。>>73]
元気があるのはいい事よ。
へぇ、船の方はそんなに豪華だったの。
[微笑を心がけて緊張を解そうとしつつ
腰掛けるよう促したら近くの椅子に座ってくれるだろうか。]
航路は思いの他短いのね。
……誰がそんなもの置いたのかしら。
[相槌を打ちながらサシャの話を聞く。
随分と色々なものを詰め込んだ船だ。誰の趣味だろう。
水上列車について話を振られたら、
若者には退屈な旅かもしれないと前置いて話し出す。]
水上列車の中は普通の列車と内装は変わらなかったわね。
波で横倒しにならないためなのか、すごく遅いの。
おかげで少し退屈だったわね。
でも水の上に線路が走っているから
満潮の時はまるで海に浮いているようで素敵だったわ。
あとは展望車両の床下が硝子造りになっていて
下を泳ぐ魚が見られたわ。
[そちらの方への興味はあるだろうか。
少し話をしたところで、喉の渇きを覚える。]
よかったら食堂に場所を移さない?
[了承してもらえたなら共に移動を開始しながら、
ここに残るようなら去り際に、
任務外ならば官位を気にせず気軽に声をかけてほしいと
告げただろう。*]
― 知らない記憶 ―
[村への帰り道を辿るうち
洗い流してきたはずの臭いが濃くなっていきます。
それに気付いた男の足は、自ずと早くなっていきました。
村には男の娘がいます。
たった一人で男の帰りを待っています。
まだ幼い娘を残していくのは心配でありましたが
“狩り”ばかりは仕方ありません。
今回もいつもと同じように
おかえりなさいと妻によく似た笑顔で出迎えてくれると
血の臭いが嗅ぎ取るまで男は信じていたのです。
濃い血の臭いが漂う村の中に、
男の帰りを待つ者はいませんでした。]
[娘の亡骸の前に膝をつき、男は哭きました。
色を変えた服に額を擦りつけ
冷たくなった頬を何度撫でても娘は目を覚ましません。
抱きつく腕はすでに失く、砕かれた喉が父と呼ぶこともありません。
どれくらいそうしていたのでしょうか。
空に冴え冴えとした月が昇るころ
男は空ろになった娘の亡骸に自らの血を数滴落として
月に宿る我らが神へと祈りを捧げました。
―娘が生まれた時のように
――妻に狼を殺す力が宿った時のように
―――愛する者の命を自ら摘み取った時のように。]
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