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―――、
大佐の命は聞いたな。
[執務室を出て、重い口を開いた。]
敵兵が未だその辺りに留まっている可能性もある。
俺の隊からファロン少尉と面識のあった者を数人同行させる。
日が落ちては視界も狭まり危険性も増すし、獣による損傷の可能性もある。
迅速に彼女の遺体を拠点までお連れしろ。
泣いてる場合じゃねえぞ。
……フレデリカは、
お前らにぐずぐず泣かれる為に死んだんじゃねえ。
そんなことは教わってねえはずだ。 …だろ?
四半刻以内に準備して、厩舎から馬を引き、出口で待ってろ。
………さ、行け!
[真っ赤に腫らした眼で二人は此方を見、
それから、深く一礼して兵舎の方に走って行く。]
[新兵達の姿が見えなくなると、ディークの執務室の扉の前に控えていた兵に言付ける。]
ベルンシュタイン大佐からの伝言だがな。
酷くお疲れで、一刻ほど休息を取りたいと仰せだ。
用のある者は多いだろうが、代理が利くのであればそいつを使え。
今暫くは…… 俺からも、頼む。
[何事か問いたげな視線が向いたが、今ここで説明は行わない。]
…ありがとな。
[切実な声と表情とで何かを察したのだろうか。
兵が首肯するのを確認して、その肩をぽんと叩く。
自分の部屋とは別の方向に歩き出したのは、見知った姿を見つけた為でもある。]
ああ、伝えてある。
フレデリカの迎え――もとい、遺体収容には、彼女の小隊を向かわせる。そいつらは元俺の配下に居た奴らだから、増援手配もこっちで行う心算で手配をしておいた。
交戦があったからな、念には念をだ。
……、何か問題でもあったのか?
[確認の声に何か常ならぬものを感じ取り、問えば]
…、一刻ほど時間が欲しいとのことだ。
人払いして、部屋に近づけぬよう言ってある。
ウーツ中尉の件も含めて、報告はもう少し先が良いだろうな。
[ゆるく首を振った。
フレデリカの死が総指揮官に与えた影響については、
口にするまでもないと、眼と眼見交わすのみだった。
時間を置いてベリアンの報告が行われた後、それに続いてフレデリカの遺体を無事収容、安置したことを報告することとなる。*]
― 安置所 ―
[フレデリカの死、そしてウーツ中尉の訃報。
流石に表情が曇るのを隠せずに、安置所に赴いた。]
……ダーフィトと相対して死んだのか。
[偵察か哨戒か、公国陣深くまで攻め来て共に命を散らした。
否が応にも、トールとリエヴルの姿が重なってしまう。
「クロイツ」と名乗った男が旧知と似ているからこそ引き起こされる感傷だろうか、と、一度かぶりを振るも。本当に、それだけだろうか?]
クロイツ。
やっぱりお前って、―――。
[ヒンメル先輩、と、口中のみで呟く。
ヒンメルの卒業後の行方も経緯も知れず、
彼とクロイツとの関係ももはや知る術もない。
最初の対面の時、問いに返された言葉通り、全く赤の他人であるのかも知れない。 ・・・それでも。
あの頃、ヒンメルの傍には大抵、ダーフィトの姿が在ったから。
彼に似た男と、その相棒とが。
二人並んで安らいでいる様に、何とも奇妙な安堵があったのだ。]
……。
[今までも、一足先に死の河を越えた者たちにはこうして対面をしてきた。
してきたけれども―――次なる帝国軍との衝突を前に、もう一度この戦にて命散らした旧友らと語らっておきたくて、安置所を回る。既に埋葬された部下や、本国に搬送された者らにも、意識を向けながら彼方此方を回る。
建て直しの時間の一部をそうした物思いに充てることを、部下らも黙認してくれていた。]
戦場で散った旧知の名を数え上げることは、もう、やめた。
けれど、絶対に忘れねえよ。
意思を、想いを継いで、先へ進む為に剣を振るう。
[前進拠点の一角。
しんとした空に、声は届くか。]
……お前らの命を奪ったこの戦も、きっと、次が正念場だろう。
俺もどこまで生きて居られるかは分からん、が。
必ずこの戦を、終わらせるから――― だから。
[死んだらまた酒でも飲もう。
猫やら兎やらもいて。美味い飯も酒もあって。
なにより、旧友達の笑顔があって―――]
もしかすると、先に逝った誰かなら、縁起でもないと叱るかも知れないけどさ。
先の約束は、多い方が良い。だろ。
[絶望でも悲壮感でもなく、希望の一端。
死によって分かたれても、繋がり続けることは出来ると。]
………出来れば。
お前らと居た、学び舎で。
[過去に還ることはもう、出来ないが。
せめてそこが平和の象徴として在る夢は、抱き続けても良いだろうか。
独白を終えたなら、敬礼して踵を返した。
前に進む為の一戦が差し迫っている。*]
― 出撃前軍議:ディークの個人執務室 ―
[召集がかかったのは、フレデリカの訃報を届けてからきっかり一刻後。
ベリアンに続き報告>>59を行いながら、その目元が初めて見る色に充血していることに気づいて、そっと視線を外した。]
クロイツ…ウーツ中尉と通信?
敵国との間で、か?
それとも―――?
[途中、齎された報告>>79>>80には眉根を寄せて兵に問うが。
未だ解析がなされていないと返答が返れば、そうかと頷く。
ここに来て不穏な介入のあった可能性が出てくるとは。
だがしかし、こればかりは専門員の解析と情報を待つよりない。
ディークの命により兵が下がるのを見届けてから、前へと向き直った。]
[ディークからの報告として告げられた言葉には、僅かに目を瞠る。
淡い色の石が卓上に転がるのに視線向け、それからディークの所見に耳を傾ける。]
―――、
[暫し思考の時間を置く。
騙し討ちの可能性は元より考えてはいない。
本来ならば頭においておかねばならぬことだろうが、ジェフロイ個人の人物像をもって判断材料とするならば、それは限りなく低い。
前回の軍議で意見述べたときと、変わらぬ見解を弾き出した。]
……。
総大将が知己であることが幸いした――といった形ですか。
[対話が成されたことは聊か驚きでもあったが。
ディークの言うよう、帝国兵も同様に疲弊しているという見解は概ね同意見であった。
もう少し私情に踏み込んで期待をかけるのであれば、これ以上無駄な死者を出さぬようにと双方の総指揮官の意識が一致したのだと思いたいところではある。]
[帝国軍がシュヴァルベに陣を置いたことで。
懐かしき学び舎の風景がごく僅かでも影響し、何かが動き始めたのであれば―――いや、これは感傷に過ぎるかもしれない。けれど。]
最善ではなくとも、より最悪の形を避けて、
戦の幕引きが見えてきたというのであれば。
[旧友らの面影を描けば、想いは千々に乱れもするが。
それらに身を浸すことの出来る時間は、まだ先だ。]
我々は、それを掴むよう動くより他はないでしょう。
…ってのは、戦の最中にあって、妙な言い回しかもしれませんが。
……なんとしても。
[歩んだ道の先にある光を掴む為に。
未来を描き出す為に。
目の前の琥珀に、傍らの紫眼に。
強い眼差しを向けた。*]
/*
わかめえええええェ
ってなってたけど、やっと出撃までは追いつけたろうか…。
この正念場に来て、帰宅遅いのが連続して申しわけなかったなぁほんと。
難産しすぎた所為もあって大変だったわ。
― 出撃前 ―
[全ての準備が整えば執務室に戻り、身支度を整える。
少し前に公国より届いた手紙が卓上に広げたままになっていた。
最後の手入れを終えた剣を腰に確かめながら、一枚紙にもう一度視線を落とす。
それからゆっくりと折りたたみ、上衣内側に収めた。
自邸へ宛てた返信は、出撃の直前に通信兵に手渡した。*]
― 戦場北 ―
少し、距離がある。
………見えるか?
[軍議で決めた通り、北側に隊を布陣させ、
騎兵と歩兵の混成軍にて待ち受ける。
自軍から見て戦場左翼、敵軍からは右翼側にあたる。
敵影を捉えたとの報告により正面を見据えるが、まだ少し遠い。
土煙の距離、騎馬が土踏み鳴らす音から、我彼の距離を測る]
………まだだ。
まだ。十分に引き付けろ。
…、全軍突撃構え。
[すらりと剣を引き抜き、その片腕を空に掲げる。
整然と居並ぶ騎兵の間にぴりとした緊張感が伝播するのを感じる。
悪くない、士気は高い。]
――――かかれ!!!
[空を切るように前方に鬨の声を上げ、馬影が一斉に駆けた。
蹄の音が地を打ち鳴らし、がんがんと響く。
軍馬の嘶き。両端が敵軍と衝突したらしいと識ると同時、]
………ジェフロイさん。
[前方、敵陣の先端で指揮を執る敵将の姿。
会わないとは思っていなかった。…が。
無意識、剣を握る指に力が篭った。]
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