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― 帝国拠点・執務室 ―
帰還を待ちわびた。
ファロン少尉。
[フレデリカの入室に頷く。
控えの部下に目配せし、部屋の外で待機を促した。]
報告は聞いていたが、まずは無事でなにより。
お前の希望で配属したあの新兵はきちんと戻ったか?
迷子になって泣いてやしなかったろうな。
[言うまでもなく伝令に往復した兵のことだ。
恙無く戻ったことを示されれば頷く。]
― 回想・作戦中 ―
[ベリアン軍から准将の隊への援軍要請を持った早馬とすれ違う。>>398
前線はよもや、要である准将その人が本陣をあけていることなど想定の外だったろう。であれば、伝令が即座に機能するとも限らない。]
ベリアン、いや、アリー大尉に伝達。
駐屯地東側河川ならば第一隊を置いてきた。
取り逃がした輩の掃討を援護する、と。
准将の軍が追い付くかもしれんが、
それまでの時間は稼げるはずだ。
急げ!敵兵の南下を許すな!
[指令を持った騎兵がフォルテア下騎兵隊第一小隊へと駆けた。
敵兵との接触後、帰還命令が下れば、彼らもまた本陣に戻るが。
帝国兵の手練とかち合った者も多く、結果、死傷者は想定したよりも多かった。*]
― 執務室 ―
性格はああだが、あれでお前のことは憎からず思っているみたいだぜ。
いちど、食って掛かったとは聞いてるが、な。
ま、上手いところ調教してやってくれ。
[新兵のことについてはそう締めくくり。
良いものと悪いもの。ふたつの報告に耳を傾けた。
その際、腕の包帯にちらと眼を走らせる。
傷のことは知る由もないが、案ずるような視線は向けたか。]
[ある程度のことまでは想定していたが、
フレデリカの報告には、思わず口が開き、暫く言葉が接げずにいた。]
……リ……っ。
リエヴル……!?
待て、お前と准将が出歩いたのは前線だと聞いたぞ。
それも普通じゃあ在り得ねえけど、のこのこ敵将まで出歩いてたのか!? 前線に?
[思わず頓狂な声が出る。
人払いをしてあるが、していなくともきっと口調は崩れたろう。]
帝国も、我が軍も、どうなってる…。
[准将お出かけの通信を聞いたときは耳を疑った。
報告を受けたのは出てしまった後であったから、制止の声を上げることもできず、准将とフレデリカとを信頼し、せめてお守りしろと託すより他は無かったが。]
よりによって敵将同士が、か。
それで、剣交わすようなことにはなってないだろうな?
まさか、仲良く思い出話に花咲かせてご歓談……なんてわけじゃねえんだろ? どういうことだ。何があった。
[リエヴルとトールの睦まじさは根強い記憶のうちの一つ。
だから、軍指揮官という立場も勿論だが、それ以上に個人感情での憂慮が先立つ。
言葉少ななフレデリカに再度問いかけ、状況を掘り下げようと。
彼女が隠す隠さぬは別として、確認するのは当然の責任だ。]
問題も大問題だが―――
………いや。
とりあえず。
起きたことは起きたこととして胸にとどめておく。
[先の会議での、トールの態度はどうであったか。
一軍を担う立場であるから、表に出しはしないだろうが。
がしがしと頭を掻いて、机に肘をついた。]
お前に責を問うのもどうかと思ったが、
こればっかりは俺より上が判断することだろうからな。
准将が何か仰るようならそれに従ってくれ。
[現状、直属の上官として責を問う心算はないことを、婉曲に示す。]
[リエヴル・ド・トゥーレーヌ。
敵将となったその人の名をフレデリカの口から聞いたものだから、
頭は一瞬だけ、過去の記憶に飛んだ。]
― 回想:在学中―
[8年前。
トールやジェフロイ、ディークの卒業パーティで約束をした通り、
士官学校在学中、何度かの手合わせの機会をリエヴルは設けてくれた。
卒業までの1年間限定の、稽古の場。
好敵手として肩を並べた、カレルと一緒に。]
「ってて………あと1歩だったと思うんだけどな。
初太刀は決まったのに、どこで崩されたんだ…?」
[強かに打った脛を擦る。
構えを取り直して木剣を振り下ろしながらぶつくさと首を傾げていれば、リエヴルはいつもの自信家な笑みを向けてきただろうか。]
「ちっ。その顔、やーっぱ腹立つな。
カレル、お前は頑張れよ!やっちまえ!」
[眉間に皺を寄せて、声援を送る。
カレルと、自分、自分と、リエヴル、リエヴルとカレル。
二連続の手合わせとは元気だったものだ、と今ならば思う。]
[狙った位置に刃落とす腕は必要だが、それだけではダメだ。
振りぬく速度と精度が敵を上回っても、それだけではダメだ。
必要なのは、剣を持つ腕の技量だけでなく、“眼”。
癖を見抜くことが出来れば、より優位に立てることを知った。
相対する相手との距離感、視線を据える位置。
一撃一撃が、その全ての集約なのだと知った。]
[士官学校での実技で培ったものが、剣交える度に確かなものになってゆく実感。
ジェフロイに稽古をつけてもらったことも、その後に同室者となったソマリと手合わせを行ったこともあるが。先輩であった3人、それぞれに学ぶものは大いにあった。
充実していた。互いに切磋琢磨した好敵手、同級生の友人らにも、何物にも変えがたいものを受け取った。]
[だが。
軍に所属し人を手にかけて初めて、実戦と稽古の差を思い知ってからは。
純粋に剣を振り、刃を叩き下ろすことの出来ていた頃の記憶は、眩しさと苦さばかりを連れてくる。]
―――、
[そしてまた、こんな風に戦場で、
敵軍に在る知己の名を耳にするたびに。*]
― 執務室 ―
[フレデリカの声が近づく。
顔を近づけられているのだと気づけば、過去に飛んでいた想いは自ずと振り払われた。意識を報告へと引き戻す。]
それは………
二重スパイの可能性―――ってことか?
[声を落として囁かれた内容に、双眸がすうっと細まる。暫し、逡巡するように口を噤んだ。]
おんなじように、帝国側からの密偵の入り込まないと言える要素もない、か。
[それにはまず、新たな顔ぶれから疑うべきとの考えも理解は出来る。]
わかった、警戒するよう努める。
確証がない以上余り先陣きって騒ぎ立てるのも拙いが、念のため上にも進言しておこう。
[ごく近くにあるフレデリカの顔に視線だけを向け、頷いた。]
………ああ。
二度目になるが、無事が何よりの知らせだ。
お前にいきなり何かあれば、ディーク先輩にも顔向けが出来ないからな。
[フォルテアの隊にフレデリカが配属となったことを、出撃前、顔を合わせた折にさらりと伝えてはあるが。
安心しろと大口叩いた手前、彼女が無事でなければ始まらない。]
報告ご苦労だった。
[そこでようやく、笑みを浮かべた。
次に伝えるべき内容を、一時、逡巡する。]
………ああ。
二度目になるが、無事が何よりの知らせだ。
お前にいきなり何かあれば、ディーク先輩にも顔向けが出来ないからな。
[フォルテアの隊にフレデリカが配属となったことを、出撃前、顔を合わせた折にさらりと伝えてはあるが。
安心しろと大口叩いた手前、彼女が無事でなければ始まらない。]
報告ご苦労だった。
[そこでようやく、笑みを浮かべて―――
次に伝えるべき内容をここで伝えるべきか、一時、逡巡する。]
/*
あ。ステファンはB村前に死んでるんだっけか…!!
まずい、死亡をついさっき知ったばっかロールを落とそうとしてしまtt
プロローグまで居たわけだからな。
つい、シェットと同じ頃にお亡くなりになったのかと……。
あぶねええ。
でももしかして:触れそこなった
[――――が。]
[コツ。]
[握った拳がフレデリカの頭めがけて落とされる。
音からみても、底の小指が当たった程度の力加減だが。]
ばーかやろ。
アレと斬り交えるなんざ正気の沙汰とは思えない。
やむを得ぬ事情があるにしろ、
[言葉が一瞬切れた。
以前の所属で、彼女が行った任務。
手にかけたとされる相手と、リエヴルとの関係に思い至ったからだ。]
…………、
「討ち取ることは出来ませんでした」じゃねえ。
討ち取られない自信があって、向こうも出てきたんだろうよ。
じゃなきゃただの阿呆だ。敵将だぞ。
………んっとに。気をつけろ。
[頭の上に置いたままにした拳を緩めて、
くしゃりと金糸をかき回した。
"問題"について、今ここでこれ以上は言わぬ。]
[報告を終えた直後に見せた弱音に口元は一旦緩みかけたが、差し出された認識票を受け取り確認して、緋は翳る。>>785]
マルシュナー少尉。
シェットラント、もか………。
[戦死者の情報が取り纏められるのは、大抵が帰還後だ。
情報が後方に回れば、もっと早く、戦場でも知ることが出来たかもしれないのだが。]
第5補給部隊隊を勤めていたバウムガルテン中尉もだ。
…覚えてるか。俺と同学年だった、カーク。
西寮だったけど、あいつともよく一緒に馬鹿やったからさ。
[兵の死に動じなくなった今も、慣れ切ることの出来ない、割り切ることの出来ないもの。]
あいつの作るクッキーが本当に美味くてな。
いや、何でも美味かったんだけど。
購買に下ろしてんのがカークだって知ってからは、直接頼みに行ってたもんな。あれが食いてえ、これが食いてえ、って。
[本当に気のいい仲間だった。
戦場で太刀筋に綻びが出てはいけないと、思い出せばキリのない幸せは適度なところで蓋をする。]
……戦地では感傷は捨てるべきものだが。
感情まで捨てちまえば、それもまた人の戦じゃねえ。別モンだ。
感情持ったままで剣を握るんだよ。
葛藤抱えたまんま、血ぃ浴びてな。
苦しむのも傷抱えんのも、軍人の役目だ。
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