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たた か ―――
[周囲を包んでいた気配が遠のいていく。
名残のような声が、途切れて消えた。]
惜しいことをしたな。
[声へ投げかけるのは、揶揄。]
しかし惜しいことをした。
[胡坐をかいて地面に座り込み、"目"の消えた手を眺めた。]
あの目を土産に持って帰れば、ツィーアが喜んだだろうに。
[引っこ抜いて、植える。そんな動作をしてみせる。]
記憶を封じるなどということをしなければ、
我が自ら、世界を破壊する気分になったかもしれぬのにな。
[去っていく気配へ、声を投げかける。
嘲笑と、怒りを乗せて。]
我を意のままにしようとした代償、小さくはないぞ。
[低く呟くような宣言は、もう誰にも届かない]
それで、
おまえたちは何と戦っているのだ?
[目の前のロー・シェンと、近づいてくる召喚師へ、のんびりとも聞こえる声で問いかけた。*]
/*
おはようただいま。
シメオンのひとはお大事にだ。無理しない大事。
思った以上にラスボス的になったまおーさまだが、こいつで説得する側になったらおもしろいよね、とか多少思ってたこともある(
/*
やあ、我が最初の臣下が見えたぞ。
途中の灰でも見かけて楽しかった。
ゴーレムだらけ、良いな。
ふ。樽ひとつ開ける程度の用意をしておくといい。
赤窓残ってるの、やっぱり楽しいな。
/*
暴風のとオズとのバトルは、安定の安心感というか、
何処かで暴風のひとも言っていたが、無茶仕掛けてもきっとなんとかなるという気分で好き放題させてもらえるのがな、良いよな。
あの二人も出会うたびにバトルしてるから結構な回数やってるけど、毎回違って面白い。
[説明しろと要求したが、ロー・シェンはもう限界だったらしい。
召喚師ともうひとりがグリフォンに乗って上がってきたのを見た後、意識を手放したようだった。
今なら、この人間に受けた数々の屈辱を容易に晴らせるか。
などとちらと考えたが、そんなことでは屈辱を晴らすどころか、さらに塗り重ねることになるだろう。
我を挑発した魔術師への怒りも、置いておく。
そんなことより今は、あの声の主だ。]
[説明を求めたくせに、話は退屈そうに聞いていた。
世界を救う話が出ようものなら、あからさまに面倒だという顔をするだろう。
"侵略者"の話をあらまし聞き終えたなら、そこで話を切った。]
その"侵略者"とやらが、あの目の飼い主か。
なるほどな。
[凄みを効かせた笑みを浮かべる。]
世界のことなど興味はない。
だが、その侵略者とやらには礼をさせてやろう。
[あくまで自分のために動くのだ、と言わんばかりの宣言をする。]
[殴る対象は定まったが、いくらなんでも存在を減らしすぎた。
これではろくに動けない―――と、思うが、ここは異界だ。
魔にとっては、ずいぶんと都合のいい世界だった。]
来たれ、我が源。最も熱き魔の胎よ。
来たりて我が血、我が肉、我が熱となれ。
[求めれば、あらゆるものが現れる。
魔界の深淵に澱むマグマでさえ、呼びかけに応じて足元より噴き出した。
細くうねる灼熱の流れは魔に巻き付いて少しずつ染み込み、文字通りの血肉となる。
しばらくすれば、傷どころか失われた左手さえ再生した。]
余禄だ。
[ついでとばかり、寝ているロー・シェンの前に魔界の果実を一つ転がしておく。
見た目は相当アレだが、食べれば甘い。
肉体の治癒力を高める魔力も少量含まれている。
やや瘴気も含んでいるのは、産地が産地だけに仕方のない話。*]
望んで火中に手を突っ込むような真似をするとはな。
呼ばれてやった代わりに一発殴らせろ、と言いたいところだが
今の我の怒りは他へ向いている。
[良かったな、の口調で言ってから、寝こけるロー・シェンをちらりと見た。]
それに我は、既に一度殴り合って満足しているからな。
あとでそこで寝ている奴に、感謝しておくといい。
[存在が危うくなるほどやり合うのは、そうそう無い。
さすがの魔も、幾分毒気が抜けていた。*]
/*
別に我が云わずとも、女の勘は鋭いというがな?
それに、貴様の嫁なら魔界の瘴気にも気づくのではないかな。
今、嬉々として食べたやつの。
やあ、シメオンは復調してきたならなにより。
無理せずに、だが来てくれるのは嬉しいものだ。
/*
ふはは。まおーは見栄っ張りである。
しかしそこふたり、良い具合にらぶらぶだな。爆発しろ。
[どかーん]
[話している間に、遙かにそびえるは奇怪なる"木"。
伸びゆく枝を見据えて、凶悪な笑みを浮かべる。]
あれが侵略者とやらの本体か。
ならば、殴りに行くとしようか。
[言った瞬間、移動城塞ごと転移すべく魔力の手を伸ばす。
傍らに誰が乗っていようと気には留めないが、]
― 混沌の神殿 ―
[現れたのは、木にほど近い場所。
神殿の残骸を纏った木が枝をうねらせ、
周囲にのたうつ根から吐き出された怪物が一斉にこちらを向いた。]
雑魚どもが。
[くだらなさそうに言って、怪物どものただなかへ飛び降りる。
紛い物と理解した城塞には、これ以上乗っている理由もない。]
カナン・ディ=ラーグの前に立てると思う奴は、来い。
[拳を打ち合わせて火花を散らし、大地を蹴りつけて疾駆する。
それは、凄まじい勢いで連鎖する爆風のようなもので、
魔が駆け抜けた後は、千切れた根と怪物の残骸が敷かれた道となった。]
["木"に近づけば近づくほど、その異様さが際立つ。
魔界にも悪夢じみたものは溢れているが、これは全く別物だ。
発散される力も異質で独特なもの。
だが力の凝る場所はいくつか感じ取れた。]
巨体を維持するには核が必要らしいな。
ならばそれを滅すればよかろう。
[目の前に下がる、赤紫の果実らしき物体が侵略者の核であろうと判断し、叩き潰すべく両腕の魔力を高める。
だが、今にも打たんと身構えた目の前に、意外なものが現れた。]
アーデか?
いや、おまえ、ツィーアか?
[どこかロー・シェンに似ている端正な顔も、
惜しげもなく晒される素肌の上にも、魔導の文様が明滅している。
かの太陽王の兄を素体にしたヒトガタを通じ、魔道兵器と交流した時の姿だ。
煮え滾る魔力の渦の中で、一つに溶けた記憶が蘇る。]
『ラーグ、これを壊すのはよくない』
[思念が響く。なじみ深い波動の形で。]
『私とお前が共にあるのに必要なものだ』
[壊すな、と主張するアーデ/ツィーアを眺め、手を伸ばす。
胸板に触れさせた手を、白い両手が包み込むように握った。]
愚かものが。
[瞬間、爆発が起こる。
人形の胸に巨大な風穴が開き、その顔が驚愕に固まった。]
我のツィーアは、我を内包して、
今頃、葡萄の世話などしておるわ。
[驚愕の表情のまま、偽物がほろほろとほどけて散っていく。
青白く散る欠片の中へ一歩踏み込み、赤紫の果実の中央へ、右腕を叩き込んだ。───12(20x1)**]
/*
うむうむ。まずは一発殴ったところで寝よう。
過去村参照しに行って読みふけるから、時間がヤバい。
そして平均値は越した。やったよ、我。
/*
オズを召喚して殴らせると、今ならウサギが出そうな気がする。
などなど言いつつ。お先におやすみー**
[樹が倒れる。
いくつもの猛攻を受けて、萎びるように朽ちていく。
恨みつらみのような声を聞きながら、魔は嘲るように笑った。]
そんなことを考えているから、貴様は負けるのだ。
貴様が負けたのは、己自身の力不足と知れ。
[言ってから、魔にしては珍しくも、ほろ苦い表情を浮かべる。]
我も、人間一人殺せぬ身ではな。
言っても詮無いが。
[ぎし、と音を立てて拳を握った。]
だが我はこのまま終わりはせぬ。
いずれはかつて以上の力を得てみせよう。
[言うだけを言って、踵を返す。
人間共とこれ以上肩を並べる必要はない。
それよりも、早く帰ってこれを見せてやりたい。
扉に向かう魔の手には、木から毟った目玉が握られていた。*]
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