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[地より湧き出した魔物たちもまた、護りの軍勢とぶつかり合い、烈しい戦いを繰り広げていた。
無秩序に攻め寄せる雑多な魔物の群れは、それぞれを補い合い助け合う守護の軍によって容易く打ち崩されていく。
だが、ともかく数が多い。
数に任せて攻め寄せる魔物たちとの間で、均衡状態が生まれる。
凄惨なはずのぶつかり合いがどことなく現実味を欠いているのは、倒れたものたちが消えてしまうからだろうか。]
ほう。
[爆炎を割って一歩進んだ魔は、矢を放ってきた人間を見て片方の眉を上げる。]
我の名を知るとは、何者だ?
我の一撃を止めた記念に、名を聞いてやろう。
[面白い、と不愉快だ、を混ぜ合わせた顔で言い、
それから不意に眉根を寄せた。
喉の奥に小骨が引っかかって不快だ、とばかりの顔をする。*]
/*
グラム3用のメモに呪文詠唱の色とか残っていて、助かったよね。
自分のイメージカラーに苦労したこととか、ちょっと思い出してきた。
ローシェンが太陽の黄金のイメージであるが、こっちはこっちで魔界の太陽のイメージである。(=溶岩)
ロー・シェン、 …?
[烈火のごとき名乗りに、暫し考える目をした。
無意識に胸のあたりを左手が押さえる。
苛立ちが、目の奥に覗いた。
記憶の奥を覗いた時間は、そのまま隙に直結する。
気づいたときには、三矢が目前に迫っていた。]
下らん戯言を!
[両の拳に魔力纏わせ、互いに打ち付けて空気の波を生む。
魔力交じりの颶風は矢を反らし、また威力を減衰させる。
弱まった一矢が頬を掠め、引き攣れるような火傷を残したが、魔は気にも留めなかった。
矢を迎撃する一方で、槍持つ鷲獅子の騎手の攻撃を躱す素振りは無い。
矢をうち落とすことで体勢が崩れているのもある。
また、並の槍などで致命傷を受けるはずはないという慢心もある。
それにもうひとつ]
我が、滅ぶわけなどないだろう。
[極々微かに語尾を上げて、低く唸る。]
貴様……!
我を目の前にして何をしているかっ!!
[相手の攻撃の軌道がわずかに変わる。
それと察知した魔の両眼が、かっと赤熱した。
僅かに身を沈めただけの動作から飛び上がり、宙で身を捻りながらグリフォンの腹をめがけて蹴り上げる。
目を守ろうという意志など、そこには見えない。
純粋な怒りだけがある。*]
/*
全てを思い出した時点で、ロー・シェンとはもう殴り合わない気もしているのだよね。
ツィーア空間でそこそこ満たされてるから早く帰りたいし。
おまえ殴ってる場合じゃない、ってなる(酷
一回死んで、それなりに丸くなったんよ、我。
/*
我を投入した理由が、本編の最終戦で少々消化不良だったからもう一度やり直そうか、という奴だったのだ。
だからちゃんと記憶取り戻してからという気持ちは分かるので、なんとかする所存。
でもこのまおーをまともにエンディング方向に走らせるために、もうちょっと"目"は残しておきたい。
そんな気持ち。
[狙われたと気づいた"目"が、ひゅと縮んだ。
危機が去ればまたじわじわと伸びてくる。
よくよく見れば玉座を盾にするように、じりじり動いていた。
動けるらしい。]
貴様だ。
そうだ。
[羽ばたき戻ってくる男を前に、魔の声は煮え立つような怒りを含む。
"目"が傷ついたことで影響が弱まったか、怒りが記憶を引き出したか。
魔がロー・シェンを見る視線は、先ほどまでと明らかに違う。]
貴様こそ、我を愚弄し、我が道を邪魔だてし、
あまつさえ、 …
[一拍ほど、声が途切れた。
あまつさえ、…なんだったというのか。]
目玉?
意味の分からぬことを言う。
あれは、欲しいというから、
[誰が、欲しいとたたかえ言ったのかたたかえ。
今、自分はなにを考え――たたかえ―]
[考えようとすれば脳裏に響く声が大きくなる。
苛ついて頭を振った空白を突くように、長槍が足元を狙ってきた。
魔の光帯びた槍は、さすがに受けるわけにもいかず、
矢継ぎ早に飛ぶ問いも気を乱す。
執拗な槍裁きに押されている、と気づいた瞬間、一歩前に踏み出した。
右からの一閃が太腿に深々と食い込み、血の代わりに赤黒い溶岩が流れ出す。
それ以上刃が食い破ろうとするのを、魔力纏う小手で受け、弾く。]
語り続けろ。
貴様は、何を知る。
[言葉とは裏腹、さらに一歩踏み込み拳を繰り出した。
掌底からの肘打ちのコンビネーション、さらに手刀で斜め上への薙ぎ払い。
一つ一つの動きが空気を押し潰し衝撃波を発生させるため、見た目よりもリーチは長い。**]
語る言葉を持たぬか?
[飛び下がる姿を目で追い、風の渦を巻いて宙駆け昇る翼を振り仰ぐ。]
ならば、我は
[身を翻すのと同時に腰を沈めた。
床を蹴り、玉座を蹴って身を躍らせる。
突き下ろされる長槍と、その先のロー・シェンの双眸を見据えながら。]
[槍は、魔の胸の中央を貫いた。
突き出される力と飛び上がる力が合わさって、穂先が背から飛び出すほどに深く。
人間であれば心臓を貫かれて絶命するだろう。
だが、魔にそのような器官はない。あるのは、流れる炎だけだ。
それでもこれは間違いなく、深手であった。]
―――貴様を殺し、この世界を滅ぼそう。
[言葉の続きと共に、溶けた炎が口からも零れる。
危うく長槍の先を逃れた"目"の側に炎が滴って、"目"を竦めさせた。]
[身体を貫かせ、左手で柄を握って長槍を封じ、重力に任せて落ちる。
身を貫いた槍を振り回せば、ロー・シェンもまた地に叩きつけられようか。
いずれにせよ、貫く槍はそのままに、右手に魔力を練る。]
貴様がなぜ我を怒らせたかは忘れた。
我がここにいる理由など知らぬ。
ならば両方消してしまえば、問題ない。
[ゆっくりと集まる光が、右手を輝かせる。
目に痛いほどの、魔力の光だ。*]
[投げ出され、叩きつけられたロー・シェンが、なおも不屈の眼差しを向ける。
叩き折ろうと踏みにじろうと、決して折れず挫けず諦める事を知らない人間。忌々しくも興味深い、か弱いくせに時折ひどくしぶとく強くなる生き物。
あれは面白かった、と遠い記憶が囁く。]
[使い手の手を離れ、魔力の加護も尽きた長槍は、脆くも溶け、燃え落ちた。
残骸を振り払い、身軽になって一歩を踏み出す。
明白な死の形を前にして、ロー・シェンの顔に浮かぶのは笑みだ。
虚勢であっても感心すべきもの。
だがこれは、虚勢というよりはむしろ―――]
… 黙れ。
[眉を寄せて、低く呟く。
だが、男の言葉を遮ることはしない。
炯々と輝く右腕をゆるく握りなおし、足を止めている。]
───記憶を奪う、 だと
[自分の内に問うように言葉が落ちる。
額に指を当て、なにか探るような目をしたあとたたかえ]
たたかえ
たたかえ
たたかえたたかえたたかえたたかえたたかえたたかえたたかえたたかえたたかえたたかえたたかえたたかえたたかえたたかえたたかえたたかえたたかえたたかえたたかえたたかえたたかえたたかえたたかえたたかえたたかえたたかえたたかえたたかえたたかえたたかえたたかえたたかえたたかえ
そうだ。
その言葉だ。
[一拍置いて言葉漏らした魔の唇は、笑っていた。]
そうだ。貴様は我を二度ならず三度までも、
そう。三度までも侮り、侮辱するか。
この、我を。
[立ち昇る熱気で空気が歪み、足元の岩が変色し、罅割れる。
腕だけではない。全身が内側から発光し始めていた。]
これは、我の戦いだ。
[その一言で、滲み出しつつあった奇妙な気配が途切れた。
"目"に寄生されていたものなら感じ取るかもしれない、あの気配が。
小さくなっていた"目"をつかみ取り、やおら呑み込む。
やがて、右手の甲に、縦に裂ける"目"が現れた。]
これは、我の戦いだ。
───これで、貴様の目が我より逸れることはあるまい。
[もう一度告げて、凄絶な笑みを浮かべる。]
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