情報 プロローグ 1日目 2日目 エピローグ 終了 / 最新
[特別な開け方だけれど、ワインは開いた。
となるともう1本、テーブルに置いてあるシロウが持ってきたほうを手に取ると……少し考えこんでから、ワインが少し汚しているチェストに置き直した。]
ここまできてこれも普通に開けるのは面白くないわよねぇ。
…――あたしもやってみていい?
シロウのように上手くは斬れないだろうけど。
[鞘を失ったままの長剣を引っ張りだし、肩に担ぎながら片目をつぶってみせた。
そんな剣の技量がありそうな雰囲気は無かった。//]
― 塔 ―
でも練習で斬れたらさー、本番での感動が薄いじゃん?
だからこういうのはぶっつけ本番でやるのがハラハラして楽しいんじゃないのって思うんだけど。
[リスクを考えれば何ら納得できる材料のない回答。
外装で試し斬りという提案は根拠なく完全に突っぱねて]
栓抜き無くても抜けるにしたってさー。
ほら、礼拝堂でやりあったときも、結局一発一発入れあったじゃん?
やっぱここで飲むにしてもさー、一本一本開け合うのが筋ってもんじゃないのってあたしは思うわけ。
あんたを使うのは今でも諦めてないけど……肩を並べるにしたって対等にやれなきゃ資格ないだろうし。
…――と、こいつでいいかな。
[もともと話好きなのだろう、いろいろ喋りながら扉を開けると、隣の部屋から手下が飲み干したあとの空ビンを1本拾ってきた。
空いたワインがあるなら手下がそれを飲むために栓抜きが必要になっていたわけで、当然ながら使用したものが近くに転がっているはずである。
しかしそれを見つからなかったと言い切ったのは、きっと最初からシロウに斬らせて楽しむためについた嘘だろう。]
んー、この辺か。
もーちょい離したほうがいいかなぁ、こうかな?
よーしここだ!
[その空きビンを、シロウが持ってきた酒瓶の隣に――2本の距離をやけにこだわりながら――置いて。
手にしていた長剣を上段に構え……ず、水平にして、シロウの酒瓶の首にあたりに横からカツンカツンと合わせて位置決めのイメージを定める。]
さて……
あたしの名前を言う前に聞かせて。
この酒、どーしても割れるリスクのほうが怖いってならやめるわ。
もうどうなってもいいやっちまえーって言うんなら、どうかなぁ割れるかもねー。
けど……シロウが信じて、斬れるって夢見てくれるんならあたしでもきっと斬れるわ。
――どう?
[鞘を受け取り、提げるための吊具につけてから――確認のためにシロウを見据えた。
シロウがどう答えるか――どの名前を言うべき相手か見極めるために聞き返した。//]
― 塔 ―
真顔で難しいこと言うわねぇ。
それ言われてその通りに斬れるのはあんたぐらいなもんじゃない?
だから先に言っとくけど、あたしの技量じゃどう運が絡んだって斬れないってことぐらい分かってる。
でもね――夢があれば夜明けは訪れるものよ。
味合わせろって言ってくれるというね――
すー……はー……うらぁッ!
[深呼吸の後、横薙ぎ一閃。
しかしシロウでさえ斬り下ろしが必要としたのだ、遥かに技量が劣る彼女が水平に斬って上手く行くはずが無い。
斬りどころを誤れば全体が割れる――そうなるほどの技量すら彼女には無かった。
――よって、斬れぬまま酒瓶は跳ね飛ばされ、チェストから転がり落ち割れてしまい、せっかくの酒が台無しになる――という結末は、それはシロウのときと同じ条件で斬った場合だ。
そうなるのが分かっているからこそ、彼女は空きビンも設置したのだ]
[けたたましい音が一瞬鳴って、酒瓶の頭が激しく回転しながら宙を飛ぶ。
鮮やかな斬り口とは正反対に、ギザギザが激しく首で分かたれた。
彼女自身は斬ると言って斬って、酒瓶の頭を飛ばした――しかし、斬り飛ばしたのではなかった。
彼女の未熟な腕で薙げば、斬れず傷を与えた程度で弾き飛ばされるのは当然で――
勢い良く倒れ込もうとした酒瓶が、隣に置いた空きビンに首の部分が激しく叩きつけられ――剣で傷をつけられ脆弱になったところからヒビが走り、一瞬で折れ飛んだのだ。]
あたしの名は、
――酒の開け方ひとつとってもね。
さ、乾杯と行こうじゃないの。
[実際には斬っていないし、達人の目で見ていれば斬れたのではなく折れたのだということは見切れただろうけれど。
礼拝堂での一戦のように、技量や才能が及ばないからこそのやり方があると示して見せたかったのだろうし、それを卑怯と非難されることなく、認めてもらえたのが嬉しかったのやもしれない。
もしかしたら、そんな相手に対し、単に自分の名前を名乗るためにわざわざこんな大仕掛けを行ったのかもしれない――
酒瓶を掴み、晴れやかな顔で突きつけた。
もちろん、グラスなんて用意してない――//]
/*
キーボードの横っちょからぺしぺしと手が乱入。
ログ打ってる最中に、半角/全角キー、Tabキー、CapsLockキー爆撃は非常に困るw
元気に育ってるし見せびらかしたいほど可愛いんだけどねー。
― 塔 ―
あっははは、いいよいいよ
ここまで来てそういうのこだわらなくなってもさ。
……!
すんげ美味いっ!
なんなのこれ!
[ラッパでの飲み方を気にするシロウがおかしくてたまらない。
雑に折れ飛んで尖った部分が唇に刺さらないように注意しながら、そのままラッパで一口含んでみて――その旨さに舌が痺れるような感覚まで覚えた。
彼女今まで味わってきた酒よりも遥かに進化した味――長年の研究の末の代物を初めて味わったのだ、その衝撃たるや、能弁な彼女でもコメントの言葉が出て来なかった。
もっと堪能しようと二口目を近づけようとしたとき、まさに聞こえる喚声(>>200)
[窓から覗いてみて、その数と、本気の具合を見て取れば――賊を討伐に来た正規軍、というようなどこか牧歌的な図式のレベルではないことはすぐ察知できた。
かつて自分と共にあった、攻城戦に長けた歴戦の将の指揮を思わせる圧力感。
城ひとつを本気で陥とそうとする勢いだ]
にゃろ、これからだってところで……フン、取り返しに来たってかい。
シロウ! 門は任せた!
おい! おまえたち行くよッ!
得物の他に飲んでたワインの瓶携行!
階段じゃない、こっち! ここからッ!
[門を守り、土嚢が積まれるのを防ぎ、火計を阻止する――守備側が為すべきことはいくらでもあるはずである。
彼女は手下を引き連れ――この塔を奪ったときに侵入した裏手の窓から縄を降ろし、次々と出て行った。
防衛をシロウ1人に任せ、残り全員が塔の外に出る奇襲をのっけから選択した。
その即決が正しいとは限らないのだが、猪突決断に迷いがないのは美点だろうか]
おまえたちはあっち周り。
残りはあたしと共にこっち周り。
あっち側に回っても止まらず駆け抜けること。
取り付いてきてる連中をぶちのめしながら、そのまま一周する感じ。
さぁ行くよッ!
度肝を抜いやんなッ!
[釘バットとワイン瓶を携えた手下たち。
二手に分かれ、塔の外周を両方向に駆けて回り込み、挟み撃ちにしようという作戦。
当たれば大きい、外せば大惨事――奇襲とはそういうものであるが果たして。**]
― 塔、正面側 ―
陣形、トゲ三角!
ワイン瓶投げ用ー意!
てっ!
[塔の外周を、左右二手に分かれ裏から廻って来た賊の一党は、まず塔に取り付く前衛部隊を横から急襲するべく、壁伝いに走らせる。
戦らしい戦をするわけではない賊でも、彼女の指揮下ならば多少の陣形は組めるのは――うちのバカたちが『紡錘』だの『錐行』だの難しい単語分かるわけないじゃん――といろいろ苦心した成果だろうか。
地響きと砂塵を巻き上げながら襲いかかった賊の集団は、接敵直前にさっきまで飲んでいたワインの空きビンをそれぞれ手にし、初段の攻撃代わりに投げつけさせた。
本来は釘を打ち込んだ棍棒を投げるのをあえて拾い物の得物を使ったのは、奇襲をかけに来ておいて本命を使うタイミングがここではないことを示していた。
ただそれでも疾走したまま投射するだけなら扱いやすさはほぼ等しく、敵を倒すよりも確実に突破の楔を打ち込む目的には充分だろう。
殺傷力はほとんど無いものの、投げつけられてさすがに痛くないわけはない――怯みを与えてそこを突破口に毒牙のように食らいついた]
さて、敵の本陣は……うゎお、こっち来る!?
あたしの予測より早く動くたぁやっるじゃーん……けどねぇッ!
そのままぐるりと廻るのを続けるんだよッ!
相手するのは進路の邪魔をしている連中だけ、なにより突破!
追ってくるのはどこぞの討伐隊と思ってりゃいい!
逃げ足で負けるんじゃないわよッ!
[本陣の位置を確認すれば、塔の上から見たときとは配置が明らかに異なり、本陣に居たはずの集団がまとめてこちらに向かって来るのが見て取れた。
左右二隊のうち自分がこちら側にいるのが読まれたか、それともかなりの勝負師か――何にしても手が合う相手な感じがして高揚感が止まらなくなってくる。
手下たちに当初の作戦に変更がないことをあらためて指示。
奇襲の一撃目はなによりも切り裂くことのみに徹底――横から食いついてそのまま反対側に出る――これを左右から行うことで敵を混乱に陥れるのが一周目の狙いだ。
敵本陣の参戦はやや想定外だったものの、追い回させれば逆に混乱に拍車がかかると踏んでのものだが――それはあくまで追いつかれない場合の話、どこまで狙い通り進むか。]
― 塔の正面・外 ―
……こいつぁ手強いねぇ。
散るんじゃないッ! 壁際に張りついて廻るんだよッ!
後ろが怖けりゃへばるんじゃないよッ!
[突破すらできないほど堅いわけではないにせよ、与えた混乱の深度が想定より浅い。
狼狽ぶりが足りない歴戦の勇士たち、事態を収拾させる敵将の大喝――練度経験ともにセルベシアでは見なかったレベルだ。
ましてや、略奪される弱者向けへの威圧感とロマンを追求した
彼女の想像よりも難敵であり――この奇襲は想像どおりに行かないことを悟る。
逃亡と追撃で場を荒らし混乱を極めさせようという意図は看破されたか、敵本陣部隊はこちらを攻城兵たちから離させるように追ってくる。
恐怖で四散しかねない状況下で、隊列の維持がより難しいのは正規兵でない苦しい部分だ。
それを何とかまとめようとすれば速度も鈍り、距離はさらに縮まるだろう]
このままぐるっと廻って2周め行くよッ!
追ってきた敵本体は、逆回りで来る連中とすれ違うときに任せて足止めさせるッ!
[乗ってくれたらだけどね――とは言葉に出さず続けた。
状況は不利だが、楽観的に捉えるならば敵本陣部隊を引きずり回せるチャンスでもある。
このまま塔の周りを周回すれば、逆回りで切り裂いてきた残り半分の手下たちと塔の裏側ですれ違うはず――そこで彼らに敵を足止めさせれば、攻城部隊を孤立させることが可能なはず。
ただあの敵将がそこまで追いかけて来てくれるかとなると――]
あたしは最後尾に下がる、あんたたち先に行きなッ!
先頭は、おまえ!
――さぁ、敵さんついて来なッ!
[周回逃亡のペースメーカーを新たに指名し、隊列の中身を入れ替える。
セルベシア高官の姿をした賊の指揮官が最後尾に登場、時折振り返りつつ背中を見せながら逃げる――自ら釣り餌となった。//]
― 塔の裏手 ―
……来たよホントに!
ありゃあ筋金入りのアホだねぇ。
[知らないで罠を踏んでくれるのと、知っていて罠を踏んでくる――知で戦う者にとって、前者ほど楽な相手はいないと同時に、後者ほど厳しい相手もいない。
将を討ち取れば戦況は有利になるのは当たり前にせよ、この状況で露骨に釣ろうとすれば余程の単純バカでなければ躊躇するほうが普通だろう。
敵本陣部隊が全軍で追撃速度を上げて来たのは、そうなることを望んで釣ったのでありながら最も困る事態でもあった。
その指揮を採った敵将に対してアホと評したのは、バカとは違う意味の褒め言葉]
焦んじゃないの! 速度このまま!
最後尾のあたしが声出してる間は大丈夫だってのッ!
[急がせることは可能だが、急いで逃げすぎると逆回りで周回してくる残り半分とすれ違うポイントがずれてしまうことになる。
正面の攻城兵と完全に分断させるためには、塔の真裏で足止めするのが最適なわけだから、急げば急ぐほどこの逃亡劇の効果が下がることになる。
だがあの圧力を背後から受けてペースを保つのは容易な話ではない。
恐怖で逃げ足が速まるのは人間の心情としてやむを得ない話であり、それを押しとどめるべく彼女の叱咤激励が続く]
単騎だァ!?
あンにゃろ……やってくれるじゃない。
後方側面、バット投げ!
決して止まるんじゃないよッ!
[猛追する敵部隊からさらに突出して襲い掛かってくる敵将。
瞬く間に三名が打ち砕かれたのに対し、釘バットを投げつける散発的な応戦で嫌がらせするにとどまった。
単騎で突出する敵将――絶好のチャンスなように思えるのは上辺だけ、その好機は制限時間は後続が追いついてくるまでしかなく、自分たちがその期間中に討ち取れるかとなると否であろう。
だから構わず走り続けることを厳命したのは判断としておそらく正しいが、かと言って弱気な対応ばかりでは被害を無視して逃げる士気が続かない]
くっそ、仕方がないわねぇ……あたしが相手してやんよ。
これでもくらいなッ!
[凄絶な笑みを見せつけてくる敵将の技量からして、彼女がどんな得物を投げつけても体躯には至らずあの六角棒に打ち払われるだろう。
だから彼女は『得物を当てる』という発想を外した。
自分の身分を証明する、セルベシア高官の軍服のボタンを外し、袖を抜き――背を向けて走りながら敵将の正面に出ると、その軍服の上着を広げて空中に飛ばした。
重力で地面に落ちていくより前に、笑みを向けて追ってくる敵将がちょうどそこに突っ込むように。
布ならば打ち払って弾けるものではない――六角棒に巻きつけば振りの動きも鈍るだろうし、本人や馬などの顔にかぶさればそれこそ僥倖だろう。
上半身が薄い肌着一枚になってしまうのまではもうどうしようもない。//]
― 塔の裏手 ―
…あ。
[ラッキーには違いないが。
はためかせた軍服が六角棒に巻きついて阻害したのまでは狙い通り。
ただ敵将がそれを嫌って外そうとしたときに釘バットが当たるのは虫が良すぎる話だろうと思っていた、戦場は何が起こるか分からないものだ]
おしっ!
この隙にずらかるよッ! 全力前進!
[先程はペース維持に努めたけれど、思いがけぬ負傷を与えたことで追撃速度は鈍るだろう。
これならば急いですれ違いポイントがずれたとしても、逆回りの手下たちがぶつかるポイントの方に影響は出ないと思われる。
何よりこれで恐怖から脱することができると安堵の念がよぎる手下を抑えつけるのは不可能に近いのもあり――同時に、これはさらに怖いことになるという新たな恐怖から逃げたくなったのもある。
ここまで走ってきたことの疲労感を忘れなおし、敵将から徐々に距離がとれ始める]
足止め以上のことはしなくていい。
時間稼ぎが無理になったら塔から離れてしまいな、分断されている状況で追い回して来るほどの余裕は無いはずよ。
でも、敵が後ろ向いて戻っていったら追っかけて邪魔するのは当然だからね。
でも言っとく……敵の強さ本物よ。
そうねぇ――テオドールのおっさんのシゴキが倍ドギツくなったようなもん。
[逆回りに周回してきてすれ違う別働隊の手下たちにそう指示した。
恐れ知らずの手下たちがあれだけ本気の悲鳴を挙げていた、フリート村での訓練の日々を思い出してそう告げ――彼らの表情を見てちょっと表現が過ぎたかなとやや後悔。
正直なところ彼らについては見殺しもやむを得ない用兵になってしまうが、救えるとすれば瞬殺される前に正面側の攻城兵を窮地に陥れて救援に向かわせるしかない。
武運が適用されるような稼業ではないが、彼らの無事を願って送り出し、自分たちも2周めに入ろうとしたとき――]
――っ!?
[塔から火の手が上がっていることが見て取れた。
攻城戦を続けながら、自分たちを追い回しながら、そしてこの火計工作――発想力と奇襲好みの自分よりも一手多く動いていた事実は彼女の士気を挫くのにかなり有効打だった。
シロウに消火作業をやっている余裕がある予感はあまりしないし、煙が充満するまでにこの戦いに決着を付けられるかとなるともっと厳しい。
炎上する船から得たおたからを貯蔵している塔を捨てるのは極めて勿体無い話だが、今ならこの戦場を安全に離脱するのは難しいことではない。
この世界に来たばかりの彼女なら、おそらくおたからにこだわって判断を誤ったろう。
何かの声の影響を受けていない、この世界に来る前のように平時の決断力を発揮できる状況なら、おたからに後ろ髪引かれず即時の離脱を選択しただろう。
ただ――今の彼女は、そのどちらでもなかった。]
冗談じゃないわ。
シロウの夢を聞いてもないのに見殺しになんてできるかっての。
[薄い肌着姿で拳を握ると、手下たちに声をかける]
方針このまま!
計一周半回ってから離脱するよ!
そっちは足止めが終わったら自己判断で離れて、あとで破城槌作ってた森で合流。
[この塔の裏手からスタートした周回劇、その終着点は一周半したところ――攻城部隊がいる門がある正面をゴールと定めた。
シロウ救援のためには、門をこじ開けて退却路を確保するしか無い。
残り半周を駆け、敵将が戻って来る前に勝負を決しなければならない。]
― 塔、正面側 ―
[――しかし、武装する敵兵相手に釘バットでは敵陣を切り裂くことはできても突き崩すことができない。
乱戦に持ち込めばいつか勝てるかもしれないが、今回は時間をかけられない。
それをどうにかするための知――1周目で見つけたもの]
全員!
1袋ずつ取って担ぎなッ!
余裕ある奴はもっとたくさんでいい。
陣形、横長宝箱!
いいかい? 戦では兵士は武器を持つ――その発想ごとぶっ飛ばしてやろうじゃないのッ!
おーし行くよッ!
[周回してきて、門が見えてきたところで速度を緩め、いったん隊列を崩して壁際に寄せる。
指示して担がせたのは、侵入部隊が積み上げていた土嚢――手下たちがこれを取り、右肩で担ぐ。
横長の方陣を組み直させると、突撃を指示――
釘バットは手にしても投げる構えは取らない。
腕から先は右肩に担いだ土嚢を落とさないのを再優先にして疾走、シロウの行く手を阻む敵兵に迫る]
ぶっちかませぇぇぇっ!!
[選んだ攻撃方法は――文字通り敵陣を突き崩すもの。
突撃の勢いのまま土嚢を担いだ右肩から体当りし、敵兵を吹き飛ばすショルダータックル。
荒くれ者たちがさらに土嚢を担いだのは、重量が増加し威力を強化させ、また肩から突っ込む際の防御と衝撃吸収も兼ねる。
奇襲に奇襲を重ねた末の手段が、極めてシンプルな肉弾戦――時間と武器が限られた状況下で選んだ無謀な選択は、シロウの前を塞ぐ重歩兵らを弾き飛ばし道を開けさせるだろうか。
夢を求める想いは、至れるだろうか――**]
― 塔の正面 ―
うぉおおおりゃぁ!
[自身もまたひとつの肉弾となって、土嚢を乗せた肩口から勢いと気迫をぶちかまし――重歩兵を弾き飛ばす。
全力を注ぎ込んで残った勢いで一緒に倒れ込んで、逃しきれなかった衝撃から覚めようと数度頭を振る。
激突で陣形を崩しはしたものの、ダウンを奪った重歩兵以外にもまだ残ってる相手は多い。
それに対処しようとすればとどめを刺している余裕は無い……が、そうすぐに起き上がれるようなものではないだろうから緊急を要しない。
それよりも――]
シロウ――!
……ったく、
[斬り結びに来る重歩兵に長剣を合わせ、受け流し、体勢を入れ替える
そのとき、門を塞ぐ鎧の壁が綻んだ隙間に垣間見えた、並び立てる者の姿と、届いた声。
無事を願い、生還を果たした――彼女にとって2人目の相手となるわけだが、喜んでばかりいられる状況でもなく]
…っ!?
このぉ! ……ぅわっぷ!
――にゃろ、砂が滴るいい女とか絵になんないわ。
[弓隊の斉射(>>574)の構えを見れば足元の土嚢を拾い上げ盾にする――が、受け止めるのは成功したものの土嚢が破れて頭から砂をかぶる羽目になったのは、彼女にしては画竜点睛を欠いた。
何かしら気が緩まる要素があったのかもしれない。]
― 塔の正面 ―
にゃろ、もう帰って来たかぃ。
ここで戦線組み直して――って!
おいッこるぁあっ!
シロウ! 戻すとか要らんことするんじゃないの!
――あぁもう!
あんたたちは残った敵を散らせたら離脱しなッ!
あたしはシロウを止めて来る!
[時間そのものはたいして経っていないのだろうけど、激戦を経て再会した男――そのシロウに顔を綻ばせる間もなく行ってしまった。
説得しようとしても立ち止まって聞いてくれそうもなかったので、手下に掃討と離脱を任せ、彼女は砂まみれの姿で追いかけて走りだした]
だからその必要が要らないって言ってんの!
あぁもう、これで夢叶ってくれりゃいいけど……!
[ちゃんと腹を割って説く必要あるなと。
シロウが敵将と斬り結んだ以上はもうどうしようもなく、離れて行方を見守る。
両方の実力を知る以上、彼女にとって最悪なことにはならないはずだが――]
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