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[ゆっくりと、瞼を上げて。
目の前の男に。そこに広がる景色に。
はっきりと輪郭を持つ鮮やかな世界に、大きく目を瞠った。]
私は…パメラ。あの、えぇっと…
『見え』てます。とても良く。でも、どうして…
[深みのあるマルベリー色の瞳を、じっと見上げて。
――見える。見えている。はっきりと。
耳から入る情報と、目から入る情報を上手く融合できず、
暫し混乱するも、やはり最後に頼るのは音の記憶。]
あなたは…ヴァイオリン弾きの…?
[質問を返してから、はたと気付く。]
あれ、私…たしか、両親の形見を探して、外に出て、
後ろから押し倒されて…―――あっ
[刹那的に蘇る、紅の記憶。
咄嗟に喉に触れるも、そこには傷一つなくて。
混乱したように、眼前の音楽家を見上げるのだった。]
[自分が横たわっていたのは談話室のソファー。
目の前に立つ男から、何か説明はあっただろうか。
ゆっくりと、状況を飲み込む。]
そっか…。私、死んだのね…。
[いざ口にしてみると、それはなんと希薄なものだろうか。
夢うつつのうちに聴いた、たくさんの哀しい声。
今ならわかる――自分の死を悼んでくれたものだったと。
生前、視力の弱いがために迷惑をかけることの多かった自分だったけれども、
その死を悲しみ、弔ってくれる人の多いことを、少し嬉しく思ってしまう。
馬鹿ね、人を悲しませておいて…と、こっそり苦笑。]
[目覚めてから『見える』ようになったため、何もかもが新鮮で。
真っ先に確認に行ったのは、みんなの『顔』。
ずっと知りたかった。
触れることでしか認知できない皆の容姿。
その笑顔を、その表情を、ずっと求めていたけれど、
――あぁ、今は皆、悲しみや恐怖、疑惑の色に染まっていて。
初めて見た『顔』がそれだったから。
…少なからず、ショックを受けて。]
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