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計器チェック...OK、魔導装置問題なし、んー、蒸気圧がちょっとまだ安定しないか?気温の影響かな...ここまで上がると、相当寒いし。
ここは大将に...
[ 些かのんびりと、けれど一応は真面目に機体のチェックをしていたところへ、ふいに、ガクンと衝撃が複葉機を揺らす ]
うわっ!なんだ?!
[ 乱気流にでも捕まったか、と、慌てて操縦桿を握る腕に力を込めたが、立て直そうとする努力も虚しく、機体は錐揉み状態で回転を始める ]
な...んだ、よ、これ?!
[ 同時に何かが頭の中に無理やり割り込んでくるような感覚と酷い頭痛を感じ、歯を食いしばる ]
マ...
[ 呼ぼうとした名は、半ばで途切れ ]
[ 記憶と意識が、呑み込まれる一瞬前、青藍の帆を翻す歌う飛行戦艦の姿が、視界を過ぎった気がしたのは気のせいか? ]
― 古戦場/上空 ―
[ 気づけば、一面に朽ちた武器が突き刺さる古戦場のような場所の上空を複葉機は飛んでいた ]
.........ここは?戦場跡?
[ 人の姿は無いのか?と、無意識に辺りの気配を探る。
人が居るなら......排除しなければ。
自分は人とは相容れぬモノ......『魔物』なのだから* ]
[ 「たたかえ」と、囁く声が脳裏に響く ]
(言われるまでもない)
[ 戦うことと、食らうこと、その本能だけが魔物の持ち得る全てなのだから ]
ちがう...
[ 戦わなければ、生き残れない ]
ああでも......腹は、減ってないな......
[ 珍しい、と、ふと、思った* ]
[ 『たたかえ』と、囁く声ならぬ声が、魔物の本能を刺激する ]
ここには、相手が、いない。
[ 他にもいくつかの声が聞こえる気がするが、それらが自分にとって意味を持つとは考えなかった ]
見つけ、ないとな。
[ 戦う相手を探して、上昇する ]
.........
[ 見上げた空の青さが目に痛い気がして、視線を逸らした。
今は蒸気の軌跡を描くこともなく、エンジン音のひとつもたてずに空を横切る複葉機の翼で、大きな目玉が、ぎょろりと動いた* ]
たたかわなきゃ、あいつら、と。
[ 思考は、封じられた人としての記憶と魔物としての本能の間で揺れ動き、ただ戦うのだという目の前の目標に縋りつく ]
(高く...もっと、高く...)
[ 戦いとは別のモノを求める魂には、気づくことなく ]
うおおおおっっ!
[ 蒼穹の高み、見えた巨大な「敵」に向かって、機銃で魔導弾を撃ち込んだ** ]
[ 遥か昔、魔物はひたすらに飢え、渇いていた。
永劫の飢餓は、人の血肉を食らえば僅かばかり和らいだが、真に満たされる事は無く、飢えを満たすこと以外の一切の思考を魔物に許さなかった ]
[ だが、その飢えを、今は何故か感じない ]
[ まるで、空虚であった魔物の内が、何かで満たされてでもいるように ]
[ 複葉機は魔弾を撃ち出しながら上昇していく、近付く『船』の姿は巨大で堅牢に見えたが、それを恐れる気持ちは湧かない ]
......何も、居ないのか?
[ ただ、そこに在るはずの...かつては存在していた筈の何かが足りない、と、封じられた記憶が違和を訴える ]
[ 機銃で船を墜とすことはできない、それは知っている...しかし...守りの『天使』を墜とせば...]
う........
[ 頭痛がする、飢えてはいないのに、何かが足りないと、軋む ]
[ 空を舞う影の天使、その姿には確かに見覚えがあった。かつてもこうして、空で戦った...はず ]
お前は、俺を滅ぼしに来たんだろう?
[ 相手の言葉は殆どが頭の中を素通りしていく。思考は退治されることを拒む魔物のソレだ ]
っ!
[ 上から投じられた影の華を咄嗟に操縦桿を切る事で避ける...翼の「目」に攻撃が当たらぬように旋回すれば、華は、狙いから外れていたはずの操縦席近くで弾けた ]
くあっ!!
[ 幸い直撃には至らず、衝撃にはどうにか耐えたが、操縦が乱れた間に、影の接近を許す事になたかもしれない* ]
天使が、魔を滅ぼすのは...当然、だろう?
[ 弾けた華の衝撃が、多少脳を揺すぶったせいか、今度は影の天使の声が届いたようで、そんな、ある意味当然の認識を口にする ]
怒られるって...なんだ、よ。
[ 口にしながら、しかし、どこかすれ違っている、と、初めて感じた。
この天使は、何を... ]
ちっ!
[ しかし刃を手にした相手の姿が近づいて来たと気づくと、その思考は途切れ、戦うことへと針が振れる ]
このっ!
[ 操縦桿を叩くように倒して、ぐるりと、機体を横方向に回転させ、天使が乗り込むのを阻もうとする。
それでも相手が肉薄してくるなら、腰から抜いた拳銃で至近からの狙撃を試みることになる* ]
くっそ...しつこいな...!
[ 影の天使は、回転する機体から一度離れたが、再び翼を翻して接近してくる ]
何を...言って、
[ 向けた銃口にも天使は怯まず、掠めた弾丸が翼から光を散らす。
その煌めきと「死なれては困る」という天使の言葉が届くと、また頭痛が襲ってきた ]
俺は...魔物で......
『天使は敵だ』
『敵を、コロセ』
『タタカエ』
[ 腕は無意識に操縦桿を操り、天使の刃から翼の「目」を守ろうと機体を旋回させる。しかし、その「目」を視界に映すと、余計に頭痛がひどくなった** ]
/*
陛下とダーフィトの対決になってるw
これはあれか、俺がダーフィトのんびりしてるとか突っ込んだせいか?すまないww
だって温泉羨ましかったんですものー!
[ 天使が、口にしかけた突っ込みは、頭痛に苛まれる男の耳には届かなかった。しかし、その影が大きく羽ばたいて、上空へと昇る気配に、はっと顔を上げる>>211 ]
.........
[ 青空に広がる月白の翼、その手に握られるのは月の欠片の如き刃......恐ろしくも美しい、その姿に魅入られて、瞬時頭痛も忘れて息を呑む ]
告死...天使......
[ 以前にも、この光景を目にしたことがある。死を宣する天使の笑み...閃く月白の刃......その鋭い輝きからは逃げようとも逃げられぬ、そう覚悟したのは一度ならず ]
また、俺を殺しに来たんじゃ、ないのか?
[ 以前は間を置かず、無慈悲な影の刃が襲って来たはずだ......何度目かの違和感に眉を顰めた頭上から降ってくるのは「魔物」にとっては意味不明の、言葉>>213 ]
[ 避ける手は、まだある、エンジンを切り、自由落下、タイミングを外してから、急上昇...けれど、浮かんだ手順の通りに、腕は動かない ]
うわあっ!!
[ 結果、影の蔓に複葉機の胴体を絡め取られ、がくん、と、機体全体が衝撃に揺れる。同じだけの衝撃が天使の側にも伝わったはずだが、それを確かめるだけの余裕も無い。
空中で動きを止めた飛行機は、墜ちる。
墜ちるしか、ない、はずだ。
天使の加護は、もう喪われたのだから... ]
[ ぎょろりと、翼の「目」が動き、次の瞬間、複葉機はぐにゃりと溶けるように姿を失う。
そして、次の瞬間、がしゃり、と奇妙な機械音をたてて、男の背から、鋼の部品をめちゃくちゃに繋ぎ合わせたような骨組みと、赤黒い皮膜を持った、翼が生える ]
ぐ、ああっ!
[ 苦鳴とも咆哮ともつかぬ声を喉から絞り出し、がしゃがしゃと、骨を軋ませながら羽ばたく、その翼の左の付け根で、血走った「目」が、ぎょろりと動いた* ]
[ がしゃり、がしゃり、文字通り機械的にグロテスクとしか言いようのない翼が羽ばたく ]
あ...
[ 複葉機の胴体に絡みついていた影は離れ、その身は一旦自由になったが、男の顔には戸惑いが浮かぶ。
自分は翼を持っていたか?
自分の翼は、こんなものだったか? ]
俺は...
[ その戸惑いを、更に抉るような天使の声>>237に顔を上げる ]
俺の、望み、は...
[ 月白の刃が迫る、手にはいつの間にか握り慣れたサーベルが現れて、刃を受け止めんと体は動く ]
...っ!
[ 翼の付け根を狙う天使の動きに、左腕を広げて「目」を庇う動きをするのも無意識の事、結果振るわれた刃に触れた、上腕から朱の華が散った* ]
[ 影の天使の語る声は、以前にも聞いた...ずきずきと痛む頭の靄は、裂かれた腕の痛みに紛れて、沈んだ記憶を引き上げる ]
...お前は...
[ とことん人の話を聞かなかった天使達の中で唯一、人に「問い」を投げた影の天使......それは、死を宣すると同時の問いという、はた迷惑極まりない形ではあったけれど ]
シメオン...シュネーグレックヒェン......
[ 忘れたことのないその名は、無意識のうちに口から零れ落ちた ]
く、あ...
[ 思い出すと同時に「目」の束縛が強まり、また意思を奪われそうになる ]
『たたかえ』
[ 心を縛る声と ]
「己が信念をもって...」
[ 心を抉る声とに、挟まれて ]
やめ、ろ...やめろ......
[ サーベルを持つ手が上がり、拒絶の声が漏れる ]
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