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[
一握の闇となって黒猫の眼前から消え去った。]
― 地下 ―
[鴉の羽根纏わせて、闇より出づる影が一つ。
黒の偉容に身を包んだ男は、実に愉しげに喉を鳴らした。
本来遊戯の主催に選ばれなかったのを、
些か迂遠にして狡猾な手段を用いて、
無理に捩じ込んだ甲斐があったというもの。
最愛の
痛苦も悲嘆も罪業も、余すところ無く堪能するつもりであった。]
御機嫌麗しゅう。贄殿の姫。
[淑女への挨拶として、まずは深く膝を折る。
叶うならば、その手の甲に接吻を。]
蛇殿、梟殿。
此度の遊戯の参加をお許し頂き、恐悦至極。
[杖を胸に身を折り、慇懃に一礼]
[膝をついたなりにその手を離さず、紅玉の瞳見上げ]
ご謙遜を。
どれほど時を経ようと贄殿の姫の輝きが色褪せることなどあり得べからざる事。
否、時代が過ぎたというのならば、過ぎた時の方が悪い。
[嘯いて、如何なる時も笑みを刻んだままの唇綻ばせた。]
とは申せ、姫御前が任せると仰せなら従いましょう。
尤も、私も客分故、蛇殿梟殿の差配に従う所存ではありますが。
[急速に休眠に落ちゆく白銀の乙女を見守って。
完全に眠りにつくまで傍らに侍った。]
[やがて眠りの深きに落ちたと見るや、くつり、と北叟笑む。
真白き繊手に頬擦りし、
…………
[玉の
[つぷりと牙の先端を押し当て、柔肌を破り。
染み出た甘露を
嗜欲に任せて貪る真似はせぬのは、得難き稀酒と心得ているからで]
――あれはまだ未完の器、
[舐啜の合間に陶然と語るは、最新の血子にして最愛の
他の者なら数年で音を上げて、
真から心酔するようになるか、狂うかするものを。
人として生きた歳月と同じ、29の年を過ぎても未だに耐えて、
心の裡に聖域を抱えて踏み入らせぬ。
故に徹底的に壊したい。
身も心も魂も打ち砕いて、我がものとしたい。
[晴れやかにして艶なる微笑、]
蛇殿、梟殿におかれては、
遊戯の最中には、如何様にもお愉しみいただきたい。
あれが極上の饗しをいたしましょう。
ただ――
[一転、血塗れの唇から溢れるは、うっそりと牙。*]
どれほどの値積まれても、譲れませぬな。
[麗しの贄姫の手を舌と唇で蹂躙しつつ軽やかに微笑]
ふふ。
戯れと承知しても尚、あれを「奪いたくなる」と仰る梟殿の舌を切り取りたくなりますな。
[半ばは本気、半ばは冗句、
物騒な言の葉をさらりと嘯く]
― 廊下>>129 ―
[走るセルウィンの前に現れたは、黒羽根のドミノマスクで顔を覆い隠し、揃いの侍従の装いを纏った漆黒の一団。]
“話が主がお待ちかねです”
[一言のみ告げて、瞬く間に雛仔を取り囲む。
光通さぬ黒布が、素早く獲物の両眼に巻かれ、視界を奪った。
哀れな贄花は暴れるのも構わず引き摺るようにして運ばれ]
― 玄室 ―
[かりり、と繊手に愛おしげに新たな傷をつけ]
梟殿の舌ならば、今すぐにでも戴きたいもの、
[鮮赤の舌閃かせ、わざと水音立てて血蜜を舐める]
深く口接けて噛み千切り、貴方の血潮とともに呑み下したい。
[クク、と喉鳴らした]
――と申せ。
梟殿が我が
まことに光栄の至り。
[はぐらかすよに、ほがらかな笑声を上げた]
― 城上階の小広間>>129>>138 ―
[病犬のごと鎖で四肢を繋がれ、暴れる贄の雛は誠に愛らしく。
健気にも虚空に罵声を放つ様も、無残に手折りたい欲情を誘わずにはおかぬ。
暫くは闇影に紛れ、気配を断って周囲を巡っては可憐な姿を堪能する。
勝ち気な瞳を屈辱の涙で濡らしたい、
それとも最期まできっと睨み据えて抗うだろうか、と
思うさま夢想を味わった後で、
おもむろに背後から忍び寄り、
鮮やかに目を引く首筋に牙を打ち込んだ。]
[巨きな牙を根元まで深々と埋め込んで。
血蜜が瞬く間に口中に溢れ出て満たすのを、喉鳴らし飲み下す。
蜜を奪われた花が叫びもがく、それすら妙なる調べと聞き入って]
活きの良い獲物は私の好物だよ、
[悦にいった濡れた囁きは、雛仔の耳には届くまい。
きっかり獲物の飢えを誘う程度の量だけ蜜を奪うと]
物足りぬが……
遊戯の規則とあっては仕方あるまい。
[血の酔いに仄かに目元を染め、
やさしさの欠片もない眼差しで血贄となった雛仔を眺める。
かなり消耗しているようであったが、雛が上位の者に
[主の無言の意を汲み取り、魂のない木偶の下僕が弱った雛仔を部屋から引き摺り出して連れて行く。
離れた廊下に放り出して捨てるだろうが、男にはどうでもよい些事。 ]
瑞々しい味わいだが……欲を言えば深みがもう少し欲しい。
――そう、慚愧や頽廃といったような。
[一撫で、唇を拭った指先を舐めて。** ]
/*
誤字ってる。「我が」が2回も「話が」になってるなんて…
見なおしたはずなのに何故。
恥ずかちい(/∀\)
― 玄室 ―
旨酒の妙味はそれぞれに異なりましょう。
歳月に嘉された古酒は確かに天上の味わいではありましょうが、
艷麗にして勁烈なる醸酒もまた格別。
[口説の最中も名残惜しげに細指を含んで舐り。
徐ろに贄姫の手を放し、眠れる胸元で組むように整えるは、我慢ではなくの愉しみの先延ばし。
待ちいたる時の長いほど悦びもまた増すが故。]
[立ち上がり、胸に手を添え、微睡む贄姫に一礼。
羽撃きの音とともに黒羽根散らせ――床に舞い落ちた羽根が雪のように溶け去る頃には、漆黒の姿はない。
玄室の外、遥か離れた仄暗い通路を大股で、
楽隊引き連れた指揮者の如く闊歩する。
晴れやかに愉悦のリズム刻んで杖を上下させ、
口遊む旋律は交響曲の一節。]
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