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…可能性の欠片も見られないヤツらだったら、楽だったんだけどな。
[眼下の戦いを見ながら、ふとつぶやくと、するりと砦内部に滑り込んだ。]*
傭兵剣士 ガートルードは、傭兵剣士 ガートルード を投票先に選びました。
―クリーク砦内部―
[クリーク砦は木と土で出来ている分、骨組みとなる柱や梁には、頑丈で太いものも多かった。
高さはあったが、巧みなバランスで、するすると移動しつつ。
人が通った時は伏せて身を潜め、その会話に耳を澄ます。]
…南門は、砦をほぼ横切らなきゃならないのか。
厄介だね。
[また人の気配。
現れたのは、小柄な女性だった。
弓などで武装しているところを見ると、雑用や料理番ではなさそうだ。]
(遊牧民や森の民は、女性でも戦士だったっけ。)
立ち去るのを見届けようとした時、不意にその女性がこちらを見上げた。>>215
[咄嗟に伏せて身を隠す。]
(気付いた…!?
やり過ごせるか…?それとも…)
[気配を消せていないつもりはない。
それでも気付いた相手となると、消耗した現状で、一息に始末出来るか。
手を腰の剣に触れつつ、息を殺す。じっと…]**
―邂逅―
[…じっと、息を殺す。
しかし、運命は別の方向から、近付いて来ていた。>>249]
!?
[まさか、自分以外に天井の梁を歩いている者がいるなどとは、夢にも思わない。
突然感じられた人の気配に、集中が乱れた。]
「――っ、誰っ!!」
[同時に下方より誰何の声。
一瞬にして敵が2人出来る。]
チッ――
[少女の弓に警戒し、咄嗟にそちらを見てしまった。
同時に放られる、何か。>>343]
(飛び道具かっ!?)
[狭い梁の上で体を捻りながら前転し、同時に抜いた剣で弾いたのは…短剣ではなく、小さな金属片、コインだった。]
(!?…しくじった…)
[仕留められたタイミングを完全に失したのを知る。]
[梁から下までの距離を見る。少なくとも3m以上。]
…いいのかい、粗末にして。
大事な小遣いなんだろ?
[言葉で、踏み込みの間をはかりつつ、目前の人物を見る。]
(…若いな。行けるか…)
[焦りもあったのだろうか。
相手を十分に値踏みすることなく、間合いを詰めた。]
…急いでるんだ。
屋根の修理は後にしてくれるかい。
[滑るような動きで、腰から下を狙い、横一文字に薙ぎ払う。斬るよりも、バランスを崩させることを狙った一撃]//
[横なぎを避けようとした相手は、バランスを崩して落下する。
はずだった。
しかしその若者は一瞬早く上へ飛び、更に高く足を蹴り上げてきた。]
(上!?だと…)
[足場の悪い梁の上で、更に上へ跳べる者などそういない。
追撃の余裕などない。
そのまま腰を大きく落とし、極限まで姿勢を低くして、その体技をかわす。]
…やるな!
[本気でやらねばならない。
今度はそう判断し、下から薙ぐようにして剣を突き上げた。]//
[可愛らしいのに妙にザラついた、不思議な声が下方より響く。>>372
下には弓兵がいたはずだ。しかも気配は増えている。]
…くっ
[何人でも、遅れを取るつもりはない。
が、砦内で友軍に何が起こっているのか考えると、常にはない焦燥感がふつふつと湧いてくる。
確かに、遅れは取らないはずであった。
相手が並の兵隊であったならば…]
[短いうめき声と共に、相手が足元に落下する。
それでも梁からは落ちないその身のこなしが、一層警戒心をつのらせた。
油断なく身構え、ふっとその顔を見る。]
(…本当に若い。このような者までが戦に…)
…何者…と問うたな。
ラモーラルを愛する者。
そう、言っておこう。
[一瞬の迷いを打ち払うように、小さくつぶやく。
嘘ではない。
それでも、誰にも語らなかったことを口に出したのは、声に出して、自分自身に確認したかったからだろうか。]
[傷は浅い。
この男が立ち上がれば、更に援軍を呼ぶだろう。]
…命までは取らん。
だが、二度と私の前には立たせん。
[弧を描く刃をス…と、構えた。]//
[弓弦の弾ける音。>>403
目の前の男に集中し過ぎたのは…その男に、知らず何かを感じていたからだったのだろうか。]
なっ…!?
[下からの射撃に対して、咄嗟に身をよじる。]
ドシュッ…
[かわし切れず、青色の羽根の矢が右腕を貫く。
よろけながら見降ろしたそこに。
続けざまに構えられた矢が見えた。]//
命よりも大切なものは、ある。
な、に…っ!?
[右腕の鋭い痛みが、一瞬その言葉にすげ変わる。
胸の奥、遠い遠い過去より響く言葉。]
ギデ、オン…!?
[懐かしい名。優しき、愛しき名…
目の前の若者に、昔日の面影が重なったその時。
再び、輝きが一閃した。]
[並の矢ならば、万全であったならば、己の剣技は矢を弾くことも出来た。
しかし…]
ドシュッ…
…うぐっ!
[負傷し、バランスを崩したその身はかわすことも出来ず、矢が右の脇を貫いた。
…本来ならば、肩当ての届いた場所。
だが、そこを護るはずだった鎧は、捨ててしまっていた。
矢は深々と突き刺さり、先端を肺の奥深くまで埋めた。]
がはっ…
[一瞬にして、気管の奥から血が溢れ、喉を焼く。
致命傷だった。
それは、傷を見ずともわかった。]
カツーンッ…
[剣がはるか下の床に落ち、硬い音を立てる。]
…まだ…まだ、倒れるわけにはいかんっ!
[胸を焼く痛みを押し込め、気力を奮い立たせると。
梁から飛び降り、駆け出す。
それは、重傷を負っているとはとても思えない動き。]
…開かなければ。
せめて…道を…
[なりふり構わず、南門を目指す。]
[どこをどう通ったのか。
途中、誰と出会ったのか。
数人の兵に遭遇するも、剣を持たぬ今、体術を駆使して切り抜ける。]
ハア…ハア…南、門…
[南門の開閉装置に辿り着いた時、果たしてオクタヴィアス、希望を背負った若者の軍は、どうなっていただろうか。
確認する余裕は、既になかった。]
…進め。オクタヴィアス…クロイツ…
力のみでなく、知恵と優しさで、戦い続けろ。
命よりも大切なものの、ために…
[道を開く。
不確かなもの。
でも、それでも希望を感じる者たちのために。]*
―回想・15年前―
[戦いの喧騒が、どこか遠くに聞こえる。]
…街が…燃えてる…
[瞳に映る赤は、鮮血か、それとも…
過ぎ日の炎であったか。]
[街が燃えていた。
父一人、娘一人、慎ましやかな暮らしを送っていた街は、
炎と夕日が溶け合い、世界そのものが紅に包まれる。
鬨の声、怒号、鋼鉄の軋み合う音。]
[「隠れていろ」
そう言われていたのに。
恐怖に追い立てられ、飛び出した街は、まるで巨大な炎そのもののように、少女の目には映った。
おとう、さん――
一度なのか、何度も叫んだのか、わからない。
一瞬なのか、長い間さ迷った末か、思い出せない。
ようやく辿り着いた時。
ホッとして、足が震えた。
目を見開いた父が駆け寄って来る。
鍛冶で鍛えたたくましい腕が、自分に向かって伸びてくる。
そこで、世界は暗転した。]
[目覚めたのは、やわらかいベッドの上だった。
誰かが、何か話しかけてくれている。
でも、体が熱く、痛かった。
だから、何を聞いたのかも、何を叫んだのかも覚えていない。
叫び疲れて、眠り、痛みに起きる。
それを繰り返した。
時折、誰かが傍にいた気もする。
火傷が冷たい何かで包まれるたび、少し楽になった。
何度も繰り返し触れてくれたあの小さな手は、いったい誰だったのだろう。]
[戦火の中、助けてくれた男は、ギデオンという役人だった。
傷の癒えるのを待って、彼は一度、燃え落ちた街へ連れていってくれた。
そして、自分は瓦礫の下で、半分炭になった父親の体に護られていたのだと知った。
一生分の涙は、そこで使い果たした。]
[ギデオンは物静かで優しい男だった。
時折、彼のもとを訪れていた親族たちも、皆温かい人たちだったと思う。多分。
優しいおばさん、騒がしいハゲ、そして小さな男の子。
ただ、心を閉ざしてしまっていた当時の自分には、
家族、というものが、自身が失ったものを目の当たりしているようで、いたたまれなかった。]
[心を支えてくれたのは、ギデオンの教えてくれた剣だった。
力無い自分は、全てを失った。
力があったなら、何が出来たのか―?
それが知りたくて、剣を振った。
そしてずっと…振り続けている。]
何が出来る、か…
命一つ護れたら。
扉一つ開けられたら。
それでいいのかな…
父さん…おじ様…
[やがて、南の扉は、ゆっくりと開き始めた。]**
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