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─城内─
[しばらく息を整えてから、やっと城内を見回す余裕が出来た。
紅榴候はまだ時間があると言っていた。
少しゆっくり眠るのもいいかもしれない。
ここには血親は居ない。我慢というものを悪だと考える彼の、寝る間もない余興に付き合わされることもない。
この試練とやらは不安だけれども、それは救いだった……。
……と思考するアルビンは、まさかその彼がごく傍にいる事を知る由もない]
その為にも……静かな部屋とかあるといいのだけど。
[きょろきょろと周りを見回し、とりあえずは奥へ進み始めた]
[こつこつと足音を立てて、廊下を行く。
詰襟で、裾も袖も長い禁欲的な服がなびく。きちんと折り目のついたズボンももちろん長く、その裾から革靴が覗く。
それら全ては血親と揃いの黒。髪も目も黒。
唯一、肌の色は淡く、30歳手前にしては少々童顔な顔はやや緊張に引き締まっている。
黒き夜の写し身、死の翼、乱鴉の大公、気まぐれで残酷な主……その玩具。
ただ、惜しむらくは森での苦戦により、ところどころ鍵裂きや泥汚れがついてしまっていた。
ちゃんとした吸血鬼なら、視線ひとつで修復してしまえるのだろうが、血親の気まぐれで人間らしさを多く残されたアルビンにはそんな便利な能力はない。
体力も腕力も人間並みか、それ以下だ。
ぎりぎり視覚だけは夜に馴染んで、不自由はしないでいられるが]
─小部屋─
[やがて、扉がいくつか並ぶ場所に来た。
客室か何かだろうか。
扉に手をかけ、ノブを捻ってみると抵抗なく開いた。
……中は2間続きの小部屋だった。
たぶん大きな方が主の客間、小さな方がお付きの従者か何かの部屋だろう。
大きな方は落ち着かないので、小さな方に入り寝台に腰掛けた。
従者用だろうに、柔らかでふかふかだった]
[少し黙って天井を見上げ、耳を澄ましてみる。
生憎と、アルビン程度の力では、気配など読みとれなかった。
ひとつため息をついて、寝台を降り、一度周囲を伺ってから、
そろそろと、寝台に肘を置き指を組む。目を閉じて、そこへ額を当てた。
息をするように出来る、祈りのポーズ。
こんなところを親に見られたら、どんな折檻を受けるか、想像するだに恐ろしいけれど]
……。
[でも、祈りの言葉は声に出来なかった。
ありとあらゆる神を冒涜する言葉を言わされたこの口で、今更何を祈れようか。
ただ、黙って願う。たったひとつのことを]
『どうかもう、これ以上罪を犯さないですみますように』
[ふ、とため息をつくと、寝台に横になった。
人間だった時の眠りとは少し違うけれど、
それでも今だけは人間のように眠りたいと]**
アルビンがウサギさんに会ったらどうするかな、と思ったけど、案外ビクビクはしないかも。
自己評価が低くて自己犠牲精神強いってことは、防御反応あまり出ない気がする。
殺されるなら殺されていい、みたいな。
対上級吸血鬼は、死ぬより酷いことになると思ってるので、ビクビクする、と。
[恐怖の色を浮かべ、声の方向から身を引いたが]
……、……、
あ、貴方は……?
[それがあの恐ろしくも慕わしい「親」ではないと気付いて、震えながらも安堵を息をついた]
……ここは、貴方のお部屋だったのでしょうか?
だとしたらすみません。
すぐに出て行きます。
[混乱しつつも、起こされた原因を考えながら口にした]
[濡れた指を舐める彼の所作は、ただそれだけのことなのにどこかイケナイ物の感じがして、アルビンは目を泳がせた]
悪戯ですか。
[若くて素直そうに見えるのに、あの方のような事をする。
人を助け教え導きたいという、もはや職業病になってる思考で、
そういう事をしてはいけませんよと言いかけて、それから、自分はもう神父ではないという事実に言葉を飲み込む。
先んじて謝られたこともあって]
もうしないで下さいね。
[困ったように微笑うにとどめた]
>パパのメモ
>そうだな。「我が主」がいいかな。いちいち名前を呼ぶたびに前に「話が主」をつけて呼ばれると思うと滾るね。
パパさすが鬼畜。すてきです。
[ジャンの楽しいのにという返答には困り顔をしたが、
その後の言葉には、なんともいえない表情になった。
あんなものは愛じゃないと思う。
少なくともアルビンが知っているような、教えてきたような愛ではない。
……でも、彼がそう感じた、ということを否定することもできない。それは彼の思う愛を否定することにもなりかねない]
[結局、彼の手が離れるまでに返答をすることは叶わなかった]
おかしいですか?
でも俺、話を聞く方が得意なので。
[昔からそうだった]
俺の話なんて、面白くありませんよ。
[対価を要求されてしまった。
困りつつも、静かにジャンの話を聞く。
昔……父の代……人生を終える。
それらのキーワードで、それが彼が人だった頃の話だと予測する。]
"悍ましいもの"?
それは何だったのですか?
[不吉な響きと、しかしそれに反する表情に、胸がざわついた]
しまった。
「愛されている」が、誰からかを推理する過程が飛んでいるね。
まあ、パパ以外碌に会っていないとすれば、
愛されて=即親だと判断するのは、不可能ではないけれど……。
[思考に割り込むように、晴れた空の色が目の前に広がった。
ああ、昼の色。懐かしい。
耳に届く自分の名は、心地よい響き。なんだかとても、心が素直になる]
本当に、俺の話なんて、大したものじゃないのですよ。
元は行商人の家の生まれで。でも両親が商売に失敗して、俺は教会に預けられました。
それからは、信仰の道だけに生きてきた、何の面白みもない人間です。……人間でした。
[何を否定してもいい、という穏やかな誘い。]
俺は愛されてないんです。
愛は与える物です。愛は許す事です。愛は認める事です。
だから、
我が主は、俺を し、て、なん、か
[その一語が、ジャンの瞳の色に酔っていたアルビンに見えない冷水をかけた。
すうと顔色が白くなり、体が震え始める]
いえ、
この場合の、我が主は、違う、
そう いう、 方の ことじゃなくて……、、、
[片手で顔を覆い、呼吸を落ち付けようとする]
申し訳ありません。
やっぱり疲れているみたいです。
俺の方からお喋りを誘ったのに、本当にすみませんが、
少し休ませて貰ってもよろしいでしょうか。
あ、ちなみに、敬語+俺の組み合わせはわざとだよ。
好きなんだよね。
敬語キャラの一人称は「私」とか「僕」とかが多いような気がするんだけど、
そこをあえて崩してるの好き。
[眠れないと思っていたけれど、とろとろとまどろんでいたらしい]
[吸血鬼を「我が主」と呼べという、悪魔の中の悪魔のごとき命令を聞いた時は、耳から狂い死ぬかと思った。
拒否した。拒絶した。
どんな事をされてもそれだけは呼べないと泣き叫んだのに……]
[無駄だった。無力だった]
[どこまで耐えられただろう。何年、彼を楽しませたろう。
最後の最後に口にした。
魔物ごときを「我が主」と呼んだ。
……けれど、雷がこの身を貫く事もなければ、地が割れて地獄に落とされることもなかった。
アルビンの心が本当に折れたのは、
その一語を発した時ではなく、それを知った時だったかもしれない]
─小部屋─
[目覚めた時、ジャンはまだ居ただろうか。
ずっと顔を覆っていた腕を下ろす。
痺れてた。
吸血鬼にあるまじき、ひ弱な体。もしかしたら、今回の参加者の中では最弱かもしれない。
……理性がある間は]
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