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さて、このまま立ち話も無粋なれば、
[堂々と、その立ち話を振った男が言う。]
もし宜しければ、
先の招待お受け致したく思うが、いかがですかな?
あれだけでは、いかにも惜しく思いましてな。
[どうかと問う形に首傾けた//]
年寄りが珍しく働く気になってるってのになあ。
[ぶつぶつと零す調子は、しかし本気のものではない。
張り詰めるほどの緊張の中、宙に張り渡した糸渡るように慎重に空気をかき混ぜていく。
余裕を失ったら終わってしまう。今はそういう時であった。]
ふむ。まあ…、誘ってみるか。
慣れればお前さんの歌も、悪くないしな。
[最後、これはあまり意識した言葉ではない。
それは意識のうちに、”酔ってない”彼の歌が響いているが為でもあったであろうが、やはり、ゲオルグはタクマの歌を”あまり嫌いでは”ないのであった>>1:=10
まあ、それと酔っ払った彼を殴り倒す倒さないはまた別ではあるけど]
おや、気が合いましたな。
[軽く楽しげに笑ってみせる。
見上げる位置にある若き覇者の威風は隠れようもなく。
もし男が、その皇帝の心を知れば肩を竦めただろう。
とんでもないと言わんばかりに>>188]
いかにも。
…もっとも、台風など早く過ぎ去るに越したことはありませんが。
船乗りならば皆、そう言いましょうな。
なに、構いやしませんとも。…おっと。
───おい!こいつを頼む。
[言葉の後半は後背に控えた士官に向けられている。
傍らの戦斧を示し、ついで腰に下げた軍刀をも抜き取った。
ぎょっとした顔の士官がしがみつかんばかりに止めて来る。
それへゲオルグは、息を吐いた。]
向こうにお邪魔するのに、
こんな重いもん持っていけるわけがないだろうが。
[本気だ。]
[なんだかんだと、戦斧と軍刀を押し付けることに成功すれば、ゲオルグは再び帝国皇帝へと向き直った。
戦艦同士の間に、仮の橋が渡される。
巨大な鉄の塊は動く様子を見せないから、これで渡ることは出来そうだった。]
[台風の目。と称された旗艦より僅かに遠く、戦艦アードラーからは戦いの意思が砲撃として撃ち返されている>>192
やや間遠になりつつあるそれは、必死に踏み止まる艦の意地を示すようでもあったし、血を流しながらの最後の抵抗であるかのようにも思われた。
それへ目を遣り、ゲオルグは一旦首を横に振る。
士官が呼ばれ、彼が頷いて後ろへ走った。
やがて掲げられた信号機は『応戦中止せよ』
既に前へと抜けた巡洋艦に追いつけるはずはなく、そして今、アードラーのみで巡洋艦二隻と戦艦一隻の援護射撃に敵うはずもない。ゆえに信号は掲げられた。
やがてアードラーの砲は沈黙する。
ザイヴァルが渦の前方へと突き進むなら、それを追う砲撃はなかった]
[年の割に身軽な動作で、ゲオルグは艦を乗り移る。
その背中を、もうどうにもこうにも諦めたといわんばかりの視線が追った。既に砲撃の音は辺りには響かない。]
ふむ。では珈琲を頂きましょうかな。
[皇帝の誘いにはそう応じて、誘われるまま食堂へと向かう。
出されたカップの香りを楽しみ、少しの間、顎に湯気を当てて楽しんだ。交わされる世間話、潮の話などには気軽に応じて言葉交わしていたものだが]
さて、陛下。
…ただ、これの為にというもんでもないでしょう。
[その場に二人以外に控えるものはあっただろうか。
あろうとも口にする音、それそのものが変わるわけでもないが。]
私としては、ここの潮目…ああ、ここじゃ美味い魚が獲れるんですが、それはひとまずさて置いて。この海峡についてのお話をさせて頂きたいが、構いませんかな?
[微かな音と共に、カップがソーサーの上に置かれる。
無粋な話で申し訳ないがと肩を竦めた。]
どうも元来、無粋な性質でしてなあ。
しかも最近どうも気が短くなったようでいけません。
[そう、年寄りめいたことを口にして]
…。帝国がこのまま、武を背景にグロル海峡を開いては遺恨が残る。海峡の治安は安定せず、貴国は危うい火薬庫を抱え込むこととなるでしょうな。
[脅しめいた未来予測、それをごく冷静な未来予想図として描き]
───陛下。ひとつ、取引をしませんかな?
陛下には一旦、艦隊をお引き願いたい。
我らも同様、一度艦隊を引きましょう。
[ここまでは先の停戦と同じ提案を、まずは置く。
そして、若き皇帝に視線を据えたまま言葉を続けた。++]
軍を引いた後、私はカルボナードへ一度戻るつもりです。
その上で、必ずや政治家に話を通しグロル海峡を貴国に開きましょう。
…そうですな。
ウルケルの
並びに、貴国からの海峡使用料。
これを等しいものとして、貴国と条約を結べるとありがたい。
我らウルケルから差し出せるのは、モルトガット帝国に対する友好的なグロル海峡の使用権、並びに我らが
[それらには傭兵部隊のことも、暗に音に含んで]
無論成るならぬは、
私を信用して貰うより他ないのですがな。
[ここで、男は苦笑して軽く両手を開いてみせた。
まったくもって、信用ならんと言われてしまえばこれで終わりだ。
現に男は、この場において国の代表権を持つわけではないのだ。]
……。このまま無理に進めて事態を泥沼化させるより、
かなえば貴国にもそう悪くない話であろうと思いますが、
─── いかが、ですかな?
[言葉を切り、じっと視線を若き皇帝の上に置いた//]
やだねえ。俺は、そもそも怠け者なんだ。
出来りゃ昼寝でもして過ごしていたい。
[しみじみとした音が落ちる。
誰だ、軍隊では年寄りの方が働かされるなんて言った奴は。
だらけたいと口にする、その真逆に事態は進みつつあるわけなのだが]
扶翼官殿が?
なんだ、お前さん、あの坊ちゃんに歌を聞かせたことなんてあったのか。
[初耳だと、少し驚いた声が返った。]
………、…。タクマ、
[続く素の問いかけには、珍しく少し間が空いて。]
嫌なら、お前さん相手に酒を呑んでるわけがないだろ。
[少し呆れたような声が返った*]
……、艦をお引き願いたい。
[ひとつ、念を押すよう音を繰り返して。]
扶翼官のこと、分かりました。
───が、今は艦をお引き願えませんかな?
このまま彼らがカルボナードに到着すれば、どうしても、
首都にも民衆にも力づくの印象を与えるのが避けられんのです。
それは…、まあ。ちと厄介でしてな。
ウルケルはそれなりに、頑固者の集まりでして。
[つるりと己の頭に手をやった。
それなりに、ゲオルグ自身もウルケルの人間である。]
ふむ。それは困りましたな。
払えぬか───…
それは、 呑めませんな。
[ゲオルグはひとつ息をつく。
その瞳に、鋭い烈気が閃いた]
呑めぬ理由は、我がウルケルが独立した一個の国であり、
グロル海峡が我らが国の領土であるからであります。
………陛下。
陛下は失礼ながら、お幾つまで健在であらせられるつもりですかな?
地上に輝く太陽にも永遠はなく、
我らウルケルがモルトガット帝国と歩みを共にする以上、
時には太陽を覆う嵐と対峙する必要もありましょう。
───そのリスクには、相応の敬意…対価が必要です。
喩えそれが形式の上のものに留まろうとも、
海峡使用料はお支払いを頂きたい。
そうでなくば、呑めぬ。
…これはウルケルの誇りに関わる問題です。
[素っ気無いほどの口調で、そう言い切った。
表情は緩められることなく厳しい顔が皇帝へと向けられる。]
友とは互いに尊敬しあい、
たとえ立つ場所が異なろうとも───…
生死を分かとうとも、強く心に繋がるもの。
[幾つかの、顔が瞼の裏を過ぎる。
親友を喪い泣いていた中尉、大切な人を思い出せずに思い悩む青年の顔、かつて酒を酌み交わした…遠い戦友]
決して一方が一方の上に立つものではありません。
陛下がウルケルの誇りを尊重なさらぬならば、友情は成立しえぬ。
この海は我らが故郷、我らが誇り。
それを、最後まで意地と共に守り貫くこととなるでしょうな。
[そう言い切って、口を閉ざした//]
先に通行した巡洋艦は4、戦艦は1とお見受けしたが、
これをそのまま差し向けずにあるならば、構いはしないが、
[どうかと、これはひとつ確かめる間]
… 残念ながら、意見は分かれたままのようだ。
これが船乗りとの違いでしょうかなあ──…
確かに海は領土にあらず。
なれど、この海峡は我らの故郷。我らの庭。
そう易々と、外の者をただ通すというわけにはいかんのです。
否、誇りは金で購うものには非ず。
なれど誇りを尊重する形のひとつが、金の形を取るのもまた事実
なれば問おう。
モルトガット皇帝、アレクトール・スライ・モルトガットIV殿。
貴殿は我らが故郷、我らが誇り、
これまで誰にも明け渡した事のないその場所を無償で通らんと欲するに、その誇りを購うに何をお示しになりますかな?
…───まさか外洋の通行自由。
などと、つまらんことを仰せにならんかとは思うが。
[挑発するかのように視線を上げた//]
あの見た目に誤魔化されくはないものですが。
…砲をかさに進むというのでないならば、容れましょう。
[肩竦める調子で返す応えは是。
それにつけても思い返すに、彼を優男というのには語弊がありすぎるだろうとは。]
確かに。いかにも商船は自由に出入りをしておりますな。
私も立ち寄ったことがあると…、
さて、陛下にはお話を致しましたかな?
──── 、 やれやれ。
[ふ。と、ゲオルグの肩から力が抜けた。
顔から厳しさが消え、代わって微かな笑みが口元に浮かぶ。]
敵いませんな。
ご存知かな、皇帝陛下。
ウルケルは海軍の国──…更には商業の国でしてな。
ゆえに、誇りは金で売れるのです。
[軽く、先には否定した言葉を悪戯めいた表情でこう告げて]
だが、不平等を仰せになるはご尤も。
──── 承知した。
我らが誇りに帝国の誓いが得られるなら、
…───金を欲しがる連中の口は、塞いで差し上げよう。
[背筋を伸ばし、姿勢を改めて礼をした。
受け入れると、その声と仕草で彼に示して]
はは!
[皇帝の
若者らしい、ゆめだと思った。遠い遥かな夢だろう、今はまだ。
けれど…ひょっとしたら、いつの日か実現してしまうのかも知れないとも思う。この、力強き
いや、失敬失敬。
なあに、陛下。残念ながら、我がウルケルの取引相手も対戦相手も、貴国には限りませんでな。取引は未だ幾つか──…ですが、
[けれど。そうなれば将兵は死にはすまい。
いつかの恋人たちのように、不幸に死に別れることもない。
それは…素敵な未来だとも思えた。]
ですが、いつか。
いつかそんな日が訪れたなら───…
愉快でしょうなあ。**
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