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― 旗艦ヴァンダーファルケ ―
ああ、忙しいところすまんな。
[やって来たシロウへと、まずは労いの声をかける。
シロウは軍医ではないとはいえ、医療を以って将兵を救う男だ。必然的にその仕事は、戦中、そして戦後にもっとも忙しくなる。それを重々承知で、しかしその上にも呼び出した理由があった。]
お前さんにひとつ、頼みがあって来て貰った。
知っての通り、モルトガット帝国皇帝から一時停戦…
まあ、ほんの一時の話だが、停戦の申し入れがあってな。
受け入れることにした。
[端的に告げられるのは、会見の経緯。
枝葉は省かれ、結論を淡々と口にしていく。]
我々としては、帝国艦隊を殴り続けることが可能だったし、殴り続ければ、或いは勝利を収め得たかも知れんとも思う。…が。
その戦術的勝利のみをもって事に臨むより、対話を受け入れ、一度矛を収めて再び臨む方が、求める戦略的勝利…あの皇帝陛下の心へと手の届く可能性が高い。そう考えた。
…ああ、いや。不思議に思ったのじゃないかと思ってな。
何故あの状況で停戦をしたのか、と。
それについて一々全員に説明して回る暇はないが、お前さんには理解しておいて貰う必要がある。お前さんには、一度帝国側へ行って貰いたいんでな。
───シコンへ。
モルトガット帝国より、捕虜交換の申し出があった。
停戦の間を利用して捕虜の交換を行う。
当然、医療の知識ある者が必要でな。
お前さんにその艦に乗ってきて貰いたい。
捕虜の交換と、…可能ならばシコンの様子をそれとなく見てきてはくれないか。ああ、無理はしなくていい。捕虜交換のついでだ。
艦はリオレで用意させているから、戻り次第すぐに移乗し出て貰うことになる。
慌しくなるが、これをお前さんに頼みたい。
…頼めるか。
[じ。と、正面から見つめ、その意思を問う間。]
それとな。
帝国艦隊にはロー・シェン・リーミンがいるそうだから、
[ふ。と、瞳の色が和らいだ。
懐かしい日を共有する者同士の親しみを、淡く漂わせて]
ひょっとしたら顔くらい見れるかも知れん。
俺は行けんが、会えたなら宜しく伝えてくれ。
[用件はここまでだと置きながら、シュテルンの話は出たろうか。
その様子聞ければ頷いて、表情を改めて言葉を続けた。]
タクマが、もうじきこちらに来る。
俺からでも構わんが、会えれば直接伝えてやってくれ。
今、シュテルンの顔を見には行けんが──…、そうか。
[逃げたくはない、と。>>2:273
逃げたら一生後悔すると、言った彼の瞳の色を一度思い]
───逃げずに、向き合ったんだな。
[恐らくそれは、ひどく痛かったのだろう。
一生癒えぬ傷を彼は背負ったのかも知れなかった。
避けさせてやりたかったようにも思う。けれどそんなことが出来なかったことは、男も、恐らく彼自身が一番良く分かっているのだ。]
良く休ませてやってくれ。
配置ついては考えておく。
悪いようにはせんから、安心してくれ。
[そう、どこか医師以上の顔を見せる男へと目を細めた*]
― 旗艦ヴァンダーファルケ ―
[そして。タクマ・ナギ大佐がやって来る。
久しぶりに見た顔を司令官室へと通し、されその話が出たのはいつ頃だったか。]
ウェルシュが──…、怪我をした、だと?
[声では伝えられていない重要事項のうちのひとつ。
それを聞くゲオルグの顔の上に、暗雲が漂った。]
それで、怪我は。
[怪我の程度を軽傷と聞けば、些か安堵はするものの。
前線での戦闘の末と聞けばやはりと思う。
何を考えているのかと、怒鳴りつけたのは記憶にも新しいところだが。]
分かっているのだろうな。
ウェルシュが何を言おうと何を納得させようと、
よりによって最前線の新造艦に乗せる馬鹿がいるか!
ウェルシュはストンプ候だぞ。その意味は承知だろう!!
今、彼をこの局面で失うことが、
将来にとってどれ程の痛手となるか分からん貴様ではあるまい!
[怒鳴りつけ、タクマの襟首を掴む。
握った拳を振り上げて、ぶんと勢いをつけ振り下ろす──]
……っ…、
[だが、その拳が鈍い音を響かせることはなかった。
タクマを殴りつける寸前、その拳は止められている。
ぎりと奥歯を噛み締めて息を吐き、そうして襟首を掴んでいた手も離された。大きく、長い息が吐き出される。]
…───昨日の、
[再び息を吐く。少し、熱は収まるようだった。]
……昨日の会話で帳消しにしてやる。
幸いストンプ候も無事だ。
…お前さんも、分かっているようだしな。
[殴られに来た。といわんばかりの神妙な顔つきを見遣り笑った。
僅かに口の端に笑みを刻めば、更に怒りの熱は引いて行く。]
まったく、無茶をさせる。
───タクマ。ウェルシュはストンプに返すぞ。
何を思ってここまで来たかは知らんが、充分だろう。
現実は見たはずだ。
…その上で彼にはやって貰わねばならんことがある。
この戦いの後、カルボナードを押さえ、戦いを本当に終わらせるために。彼にはまだ、働いて貰わねばならん。
[戻す、と。これを確定事項として断固言い渡す。
反論を聞くつもりはないと、声と表情で告げ]
……。報告を聞こう。
[気持ちを落ち着かせるよう背筋を伸ばし、通常の顔になる。
話が終われば、彼は養い子の元に向かうか。
それへ、そういえばといった調子で言葉を継いだ。
先にシロウから話を聞いた折に考え、ウェルシュの件で形を成した話を]
シュテルン・シエル少尉だが、
[敢えて軍での階級で呼び、]
ウェルシュ・ストンプ候の帰還に辺り、その護衛の任を命じる。
以後は別命あるまで待機。
…もう充分だろう。重すぎる荷物を持ち帰ってきたようだ。
再び空を飛べるまで、少し翼を休めても構わんだろうさ。
[彼の養い親へと穏やかな目を*向けた*]
/*
はーーー、そこのタクマとシュテルンの会話が可愛すぎるんですけど、ほんと、シロウもタクマも素晴らしすぎてダメですね。もう。
/*
ロー・シェンめっちゃいいんだけど、いいんだけど、なんかもうこのルビ遣い見てると何となく笑いがこみ上げてしまって、ギルティ……
ほんとギルティ………
― 旗艦ヴァンダーファルケ:少し前 ―
…、ふむ。純情、か。
そうかも知れんな。
[タクマの皇帝並びに扶翼官への評>>256に、男は微かに笑って頷いた]
どだい、理想家というものは純情なものだ。
一途な理想がなければ、陽の沈まない国など、
ああも無茶な理想を掲げはしない。
とはいえ、まったく……
あれも本気だったのだろうなあ。
[苦笑して示すのは、先の扶翼官の行動>>255、それに対応した皇帝陛下のあの招きだ。]
無茶をなさる。
[そこに篭められる響きは、決して悪感情を伴うものではない。
喩えるなら、少しやんちゃな子どもにでも向けるかのような、どこか微笑ましさを伴う響きで。]
理想家には理想の先を見せねばならん…、か。
ったく、この年には荷の重い話だ。純情なぞ、な。
[冗談めかして、こちらも同じく崩した口調で軽く笑う。
ひらりと手を振ると、返る敬礼ではなく一礼>>257に笑みを深めて、養い親の顔を見せる片腕の背を見送った*]
― 旗艦ヴァンダーファルケにて ―
……ウェルシュ?
[現れた彼は、随分と具合が悪そうだった>>292
兵に付き添われてきた様子に、驚きを浮かべ思わず立ち上がる。
傍らに歩み寄り、まずは大事に座らせたが、]
悪いなら呼びはしなかったものを──…
[自分から向かった、と。
苦い表情で告げて、少し久しぶりに見る若者の顔を見た。
手紙の遣り取りはしていても、顔を合わせるのは久しぶりだ。
先のストンプ候の葬儀以来ではなかろうか。一瞬のうちに、そんな物思いが脳裏を過ぎる。]
痛むのか。…ああ、無理はしなくていい。
楽にしていなさい。
[殴られるとの予想に反して、掛けられたのは気遣いの声だった。
おじさんと呼ばれた時と同じ口調が、つい出ている。]
まったく…。……お前も無茶をする。
[ただ。落ち着いたその後に向けた顔は難しい顔だった。
いかめしい顔がじっと、若きストンプ候へと向けられる。]
済んでいなくても、ここまでだ。
もう充分に分かったろうが、ここは戦場だ。
軍人が、互いに命を賭け己の守るべきものの為に戦う場所だ。
戦場に、軍人以外の者の居場所はない。
…いいか。もしその「場所」があるとしたら、無理に作り出さねばならないものだ。お前を守るために、幾人もがその力を割かねば場所は出来ん。
───時には、お前を守る為に誰かが死ぬ。
戦場とはそうした場所だ。
[見てきたろうと、問う視線は逸れることなく。]
だが…、な。
だが、俺たちはただ殺しあっているんじゃない。
その向こうに…その先にあるものを求めるために戦うんだ。
戦争は、ただ戦って終わりじゃない。その先がある。
だから俺たちが戦って得た結果を、きちんと受け取って、
その先に繋げていく人間が必ず必要になる──…
俺はウェルシュに、そうあって欲しい。
これは戦場にある俺たちではなく、ウェルシュにしか出来ないことだ。
────頼む。俺を戦場の外から助けてくれ。
俺は必ずこの戦いを終わらせてみせよう。
皇帝にウルケルの旗の折れぬところを見せてやろう。
そしてその後に、和平の旗を高く掲げるために。
お前の力を貸してくれ、ウェルシュ。
…───いずれ、グロル海峡は開く。
[それはかつて、男がアンディーヴ卿と交わした言葉。
そしてまた、ファミルがウェルシュへと遺した言葉でもあり]
開かざるをえん。
既に波はやって来た。この上閉ざしては、波に逆らい、やがて防波堤ごと押し流されてしまうだろう。故に海峡の開放は行われねばならん。
だが、「上手く」開かねばならん。
…今のカルボナードにそれが出来るかは、正直、危うい。
もしも戦いの勝利に驕り、帝国に無理を突きつければ、戦いは再び、次こそはウルケルが滅びるまで徹底して行われるだろう。それだけは避けねばならん。……避ける、為の手を尽くす。
お前さんには、その手助けを頼みたいのだ。
[どうだ?と。問いかける瞳の色は真剣で、その内容も子どもに対するではなく、一人前の大人として語りかけるもの。見交わす瞳の色に納得の色が見えれば、少し視線を和らげて。]
───アンディーヴ卿を知っているか?
[問う。ファミルの叔父であるアンディーヴ卿>>1:662、もしも知らぬと返れば彼についての話を簡単にして>>3:248]
今もファミル・アンディーヴの離反に連座していなければ、カルボナードにおいでだろう。彼と連絡を取ってみてくれ。
俺が見るところ、数少ないまともな政治家だ。
[そう端的な人物評を置き、]
なあ。これも戦争のうちだぞ、ウェルシュ・ストンプ。
貴君の健闘と勝利を願う──…
… 頼んだぞ。
[とん。と、大きな掌を彼の肩の上へと*置いた*]
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