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[唇を濡れた真紅に染めて、少女は微笑う]
ふ、は。御馳走様、ガートルート。
[紅色の紗の影絵となって、古老は身を起こす。
仄かな温度を取り戻した両手が、紅榴候の頬を包む。
太古の贄姫が纏う薄絹は、音もなくその肩から滑り落ちる]
さ。次ぐるは其方の番ぞ、紅榴の娘子。
思う様、妾に触れて―興じて、召されるが好い。
[やがて二つの影姿は、そっと重なるかのように寄り添っていくだろう**]
[宙に溶け込んだ高祖に気づく様子もない儘に。
少女は寝台へと歩み、臥し墜ちた。
古代の贄姫は静かに微笑う]
(――夢を魅せてあげましょう)
(――今までお前が見せられる事のなかっただろう夢を)
[無言の聲を送り込んで、透明な躰をふわりと浮かばせた。
空気を震わせもせず、身を寄せる。
四代の"抱擁"を隔てた少女の額に口接けて。
その
>>3:64
―???―
[少女の高祖たる吸血鬼が与えた“接吻”は、奪う為でなく与える為のもの。精神の奥深くに、堕落の種子を蒔く為の。
古老は幽体から実体へと位相を移し、娘のしなやかな両腕に冷たい指先を滑らせる]
――お前は虜なのよ、シルキー。
お前の“父”のでは、なく。
吸血の性の、でもなく、
ただ、人であろうとするが故の。
[繊い躰で乗り掛かり、指先伝いに少女の手首をくるりと巡る。紅い瞳を細めれば、その目に映るは闇色の触手。
その出処は長く艶やかな白銀の髪。
ざわめき、のたうち、裡に隠した暗黒を解き放っていた]
――ふふ。その腕も、目も、脚も。
捕らえて、縛ってしまいましょう。
[眠る少女へ二指を向けて、すい、と横へ一薙ぎ。
同じ黒が現れ出て、碧眼を宿す目蓋を漆黒で覆う。
両脚もまた同様。寝台の下から溢れ出すかの如く伸びた闇色の触手が巻きつき、絡め取り、締め付けていく]
――さ、起きて? 目覚めなさい、シルキー。
連れて行ってあげる。
闇は欲望。闇は生命。闇はお前自身。
そう気づき得る世界へ。快楽と恐怖の中へ。
[わずかに意識を取り戻したか、身じろぎする少女。
微笑んで、その胸元に掌を押し当てる。
贄姫が纏う薄絹の袖口からじわりと暗黒が滴り、侵蝕を始める。程ない内に、二人の姿は黒々とした闇に呑み込まれた]
>>3:65
―少女の
[少女が狼狽した様子は可笑しくて、愛らしい。現実の彼女と同様に漆黒の蔦で絡め取られた肢体を撫で上げて、笑う]
くすくす。
ここは何処でもあって、何処でもない場所。
そして、私は、あなたよ。シルキー。
[言葉を聞き取れぬように暴れる幼子へ、小さく眉を顰める。癒えた傷口が胸にあると見出して、五指で探り弄った。
少女が上げる声に古老が返す声は硬く、しかし熱を帯びる]
叫んでも無駄。いいえ、叫ぶと好いわ。
あなたの悲鳴は私を愉しませるから。
そして私の愉悦は、あなたの悦びになるの。教えてあげる。
[だが――数瞬後。少女の躰から贄姫は手を引き抜いた。
代わって鋭く振られた動作と共に、暗黒の触手が虜囚の口を目がけ飛び込んでいく。
冷たい古老の視線が、闇に絡め取られた継嗣を貫いた]
誰の名を呼ぼうとしたのかしら。シルキー。
ふふ、教えて貰えるかしら?
[ぞろり、と口腔深く呑み込ませた触手を蠢かせて、問う。
明瞭な怒気を含ませて、答えぬ少女に自らの頬を寄せた]
くすくす……きっと、こう聞かされてきたのね。いつも。
『――お前は私のものだ、シルキー。』
――と。
『赦さない。お前が私の元から離れていくなど。』
『お前の心は私のもの。お前の全ては私のもの。』
『居なくなるなど決して赦さない。永遠に私のものだ』
『そうだろうシルキー。さあ、答えなさい』
『誓い、口づけ、捧げなさい。お前の全てを私へと』
[嘯く言葉は何処からか読み取ったもの。
贄姫の中ではとうに消失した感情を演じ、味わうように]
――くすくすくす……あははははは!
素敵ね、素敵な言葉たちだわ。嗚呼。本当に。
[凝った闇で覆われた瞳をじっと見つめ、少女の襟元を爪で広々と切り裂いた。薄っすらと滲んだ血を愛おしむように眺め、笑う]
ふふ、まだ私の“孫の子”は本当に若いのね。
もっと、頂戴な。あなたの中から、私の中へ。
シルキー、あなたも私の血に連なる者なのだから。
[そう口にして。
露わにさせた少女の肌に、深々と吸血の牙を突き立てた。
吸い上げる血潮と共に生贄の精髄をも飲み干す如く]
[遥か昔に忘れられた呪言を贄姫の唇は紡ぐ。
彼女の血統に課せられた、呪いの祝福の言葉を]
――捧げよ。汝こそは我が聖餐。
今宵は吸血の宴なり。
[かくて、聖餐を与える者は。
ここに聖餐を受ける者となった**]
[拳を開き、握り、身じろいだ少女へ、囁きを投げる。
その音が届くことはないと知っていつつも。]
――ふふ。見えないわよ。
私があなたに見せようと、思ったもの以外は、何も。
[ままならぬ五感をそうと受け入れたのか、少女は訝る様子をひとまず収めた。古老は微笑み、静かな聲を送る]
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