情報 プロローグ 1日目 2日目 エピローグ 終了 / 最新
[1] [2] [3] [4] [メモ/メモ履歴] / 発言欄へ
[悦びの極まった果てに、白い歯が噛みついてくる。
小さな痛みさえ愛おしく感じ、笑い声をあげた。
空の高みで一瞬の浮遊感を楽しんだ後、翼を閉じて背から落ちる。
元の湯船に着水する寸前で再び翼を開き、湯の中に滑り込んだ。
そのまま、抱き合ったままで昂ぶりの余韻を確かめる。]
それで
お願い、とはなんだ?
[互いの鼓動が落ち着いた頃を見計らって、そう問いかけた。*]
[堕天使の笑いが、直接、伝わってくる。
そのくすぐったさに焦らされて、休む間もなく、また奥で達してしまう。]
ダメだ、 も、う…
[限界を訴える声は満ち足りて。
堕天使の腰に足を絡めて、滑空に身を任せた。]
[湯はこれまでのこわばりを洗い流し、銀に艶やかな輝きを添える。
この時間がずっと続けばよかった。
けれど、話を促す声に立ち上がり、居住まいを正す。
堕天使が約束を覚えていてくれたことが嬉しくもあり、心苦しくもあった。]
── わたしを、今すぐ魔王に献上してほしい。
[願いを、明かす。*]
[ひとりの天使に恋慕して、天の秩序を乱した者と、
堕天の奸計に嵌められたと知ってなお、その堕天使に心奪われた自分。
悪は、悪であった。
どちらも、罰せられねばならぬ。
それゆえに、死よりもなお、つらいだろう罰を望んだ。]
これは、けじめだ。
[自ら望んでおきながら、堪え難いように顔を背ける。*]
[腕の中から抜け出して、アルジュが立ちあがる。
その顔には、苦い決意の色があった。
殉教者の顔だな、と思う。]
断る。
[願いを聞いて、顔を背けるまでを見届けてから、
ひとことに切って捨てた。]
ひとつ。
俺もおまえも、名を捨て、天との関わりを断った。
天に対するけじめなど必要ない。
ひとつ。
おまえは俺のものにと望み、俺はそれを受けた。
誓約は守られねばならない。
ひとつ。
魔王の元にやれば、おまえの心が死ぬ。
おまえを手放せば、俺の生は無価値となる。
最初の条件通りだ。その願いは聞けない。
[理を挙げて、拒絶の根拠を示す。
その願いは聞き入れられないものだと説得はできるだろう。
或いは、一顧だにせずただ拒否しても良かった。
この天使はもう、己の所有物なのだから。]
[けれども、それでは収まらないものがあることも知っている。
あれは自分の身を捨てて天の正義に殉じようとする目だ。
聞き入れなければ、やがて罪の意識に押しつぶされて、やはり心が壊れていくだろう。
純粋にして一途な魂をそのままに、腕の中に置いておきたいのだ。]
…… それでもけじめが必要なら、
[沈思の後、手に刃を呼び出し、振り上げた。]
―― おまえも。
[右側二翼を自ら落とした堕天使は、己の天使に背を向けるよう促す。
素直に後ろを向いたなら、闇の切っ先は左の翼を根本から断ち切るだろう。*]
[堕天使は、アルジュの願いを却下した。
ひとつひとつと道理を並べる声に苛立ちはなく、
翻意を促すこともなく、
ただ揺るぎない誠意のみを示してみせる。
アルジュとて、わかってはいたのだ。
自分たちが如何に償おうと、天は顧みない。
自己満足に過ぎないのであろう。
そこに、愛しい者を巻き込もうというのだ。
愚かである。
だが、堕天使はアルジュの心を汲んでくれた。]
[次の瞬間、]
── 、 何をする…!
[制止に飛び込むも虚しく、堕天使は自らの翼を半分、斬り捨てて、劫火に帰した。]
そんな、 これでは ── 、
赦すしか ないじゃないか。
[わたしのために、ここまでの代価を…、と胸を激しく揺さぶられ、
動揺のあまり、つれない物言いになってしまう。
本当は殴り、そして、抱きしめたかった。]
[おまえも、と促され、静かに視線を交わすと、
堕天使の前に祈りの形に頭を垂れて、その背の左翼を斬り落とさせた。
天への決別は、誰の目にも明らかとなろう。
これより先は、この堕天使の片翼となりて生きることを祈る。*]
[片翼を失くした天使の背を眺め、背中から抱きしめる。]
アルジュ。
この先、魔界の焔が燃え尽きる時まで、おまえは俺のものだ。
[未来永劫燃え続ける炎のように、いつもおまえを愛する。
契約の言葉に、もう一つの意味をそっと忍ばせる。
そして思い出したように右手を取り、小指に口付けた。
遠い昔の児戯めいた約束を思い出して。]
暫くは飛ぶ練習をしなくてはならないかな。
ふたりでなら飛べるだろう。
だが今は、のぼせない内に出るか。
[楽しいことが待っている、というように笑って、
湯船から出よう、と手を差し出した。*]
[翼を失った痛みは、抱擁に包まれる。
そして、ふたつの魂を結びつける言葉と小指への接吻けが贈られた。]
誓いには、名が必要だろう。
[考えておいた、と、堕天使の顔に手を伸ばし、触れる。]
Igne natura renovatur integra.
(炎によりて全きものへ生まれ変わる)
[我が身に起きたことだ。
緋色の堕天使。 媾合の灼熱。 劫火に投じた償い。 焔に誓う永遠。
その最初の単語を、名の形にして捧げる。
イグニス ── すなわち、”炎”と。]
[湯から上がろうという誘いに頷き、その手を取った。
ふたりでなら飛べる ── その親愛が嬉しい。
次の飛行、あるいは空中で行われる営みは、これまでとは違ったものとなるだろう。]
新鮮だ な。
[立ち上がったところで、身体が傾いで足が縺れた。
片翼を失ってバランスがとれないわけでもあるまいが ──
視界が眩む。*]
[誓いに名を、というアルジュの指が顔に触れる。温かい。
綴られる言葉の響きに、深紅の陽炎が立ち昇った。]
おまえの声でそう呼ばれるのは、とても心地いい。
[熱夢の間に出した宿題を忘れていなかったかと微笑む。
いや、ずっと特別な名で呼びたいと、考えていてくれたのだろう。
捧げられた名を受け取れば、胸に火がともるかのよう。
アルジュ、イグニス、と呼び交わせば、絆がまた一つ結ばれる。]
[手を取り、湯から出ようというところでアルジュがふらついた。
倒れぬようにと背を支え、その熱さに眉を顰める。]
本当にのぼせたのか?
それとも傷から熱が出たか?
しかたがないな。どこか休めるところへ行こう。
[抱え上げて屋内に入り、身体を拭いてやる。
大きな布でアルジュの身体を覆って抱えなおすと、廊下へ出た。]
― 天獄の回廊 ―
[『←露天風呂』と書かれている扉から出てきた堕天使は、腕に白い布で包んだ天使を抱えていた。
よく見ればお互いに片側の翼を無くしているが、今はそれどころではない。]
……瘴気病み?
[魔王の"声"で伝えられた病の名に視線を険しくする。]
アルジュ、体調はどうだ?
苦しいところはないか?
[横抱きにした天使の顔を覗きこむ。*]
[腕の中の体温は、湯を出た時よりもさらに高くなっている。
呼びかけに答えて開いた瞳は、まだ夢の中にいるかのよう。
透明な視線とあどけない問いに、堕天使は立ち止まった。
たっぷりと数秒ほどは絶句したのち、止めていてた息を吐く。]
”おまえの、運命だ”
[符丁のように、言葉を返す。
色褪せない出会いの光景をなぞるように。
あの時よりずっと声は硬いものになったけれど。]
―― こんな時に、冗談ならやめてくれ。
おまえの熱は、どうやら魔界由来らしい。
どこか部屋を借りるから、しばらく大人しくしていろ。
[命じる口調で言ってから、もう一度覗きこむ。]
……それともおまえ、
まさか本当に忘れたのか?
[冗談だと言えよ、の顔で。*]
[無垢な瞳に見上げられて、もう一度喉を詰まらせた。
これは、どうしたものだろう。
どうやら、瘴気病みとやらがアルジュの時を巻き戻したらしい。
半ば以上途方に暮れながら、適当な部屋を借り受ける。]
…側にいる。
だから安心して、今は眠れ。
[ふかふかの羽毛布団の上に横たえて、翼を傷めないようクッションを挟んでやる。その上に軽い毛布を掛けて、寒くないように整えた。
熱持つ額に塗れた布を置いてやれば、あとはできる事がない。
言葉通りに椅子を引き寄せてベッドの側に座り、中指におやすみのキスをしてやって、――期待にきらきらと輝く目に負けた。]
昔々天界で ……ん、まあいい。
ともかくひとりの天使が、小さな天使に出会ったんだ。
そいつはおまえみたいなキラキラした目をしていて、
他のつまらない連中よりも、ずっと輝いていた。
[幼い天使を世話する役目に就いたことなど無い。
だから、彼らを寝かしつける物語など知らなかった。
語るのは――求められるままの、自身の物語。]
一緒に行こう、と小さな天使に約束したその天使は、
神の声を伝えるとか言って偉ぶっている天使に会いに行った。
あの小さな天使が大人になったら、一緒に働きたいと、
わざわざ頭を下げて願い出たんだ。
けれども、その偉い天使は、
「ひとりの天使に執着するのは悪である」なんて言ってな。
おまえ……その小さな天使と絶対に会えないように
ひどいところにやると言いやがった。
だからその天使は、天界を降りたんだ。
[天界のことを語る眼差しは、一瞬、嫌悪と怒りを垣間見せる。
けれどもそれも、横たわる子の髪を撫でているうちに霧散した。]
魔界は居心地が良かった。
多分天界じゃなくて、魔界に生まれるべき魂だったんだろう。
間違って天界に生まれたのは
――いや。その小さな天使に会うためだったんだろうな。
ともかく魔界に行った天使は、小さな天使が大きくなって、
天界の外に出てくるのを、ずっと待っていた。
天使を自分だけのものにしようなんて、天界では許されないが、
魔界なら全て、思うままにできる。
ずっと探しながら、待っていたんだ。
そして、降りた天使はようやく大きくなったあの天使を見つけて、
自分だけのものにすることができたんだ。
それが、アルジュと、イグニスの物語だ。
[幼い心に戻ってしまった愛しい子は、もう眠っただろうか。
額に口付けて、もう一度髪を撫でる。]
目を覚ましたら、物語の続きをしよう。
アルジュ。おまえは俺だけのものだ。
死神にだって近づけさせやしない。
[早く良くなるようにと囁いて、頭をそっと抱いた*]
[1] [2] [3] [4] [メモ/メモ履歴] / 発言欄へ
情報 プロローグ 1日目 2日目 エピローグ 終了 / 最新