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[飄々とした態度から自由人のような印象を醸すダーフィトだが、
その実、後輩のことを気遣う面倒見のよさがある。
ゆえに彼を敬する正規軍兵は多かったし、ツェーザルも頼れる兄貴分のような人だと慕っていた。]
…… は い、
[言葉のひとつひとつが暖かくて。
堪えてきたものが込み上げそうになり視界が滲む――――]
…ッ
[慌てて、ぐじ、と乱暴に瞼を袖で擦った。]
なんでもないッス…!
スミマセン!!!!
ありがとうございまッス!!
[赤くした目元を隠すように、一度頭を下げて]
オクタヴィアスさまの御身をお守りするため、
おいら、精一杯頑張るッス…!
[再度上げた顔はもう、悔恨に囚われたものではない。
ダーフィトの顔を真っ直ぐ見返し、彼からの信に強く頷いた*]
― ベルサリス修道院跡/地下安置所 ―
[修道院の地下――。
所々罅割れた石畳に一基の柩が安置されている>>175。
軍議が終わって、自然と足が向かっていたのが此処だった。
ツェーザルは、雪が敷き詰められた柩の傍で片膝をつく。
空気はしんと冷えていた。
廃墟特有の古びた匂い。安置所特有のもの哀しい気配。
ラモーラルの民を想い15年前に立ち上がった主君は、今、目の前で
道半ばで静かに永遠の眠りについている。]
[15年前の乱から1年も経たずに、宰相に組したツェーザルの父親――ターリスは息を引き取った。脇腹に受けた戦の傷が原因だった。
ラモーラルの明るい未来を願い、宰相を支えることを選んだ男にとって、これから大変さを増す国を支える力になれないことは、さぞ無念だっただろう。
だからツェーザルは、親父の遺志を継ぐことを決めた。
12歳になった時だった。
親父が信じた辺境伯アルブレヒトさまを、息子のオクタヴィアスさまを、
信じて生涯お仕えしようと―――親父の亡骸に誓ったのだ。
なのに…、その片方を。かけがえのない御方を喪ってしまった。]
ごめん…ッ … ――――でも!!
[そう。先程ダーフィトにも告げた。
為すべきことがある今は、もう、後ろを振り向くまい。]
…っ、親父、
アルブレヒトさま、 見ていてくださいッス。
オクタヴィアスさまは、
今度こそは。
……必ず。
[我が身に代えても――。
主君の亡骸と、…その向こうに連なってみえる親父の亡骸の幻に向けて、ツェーザルは親指を折り畳んだ拳を、誓うようにきつく強く握り締めた*]
― ベルサリス修道院跡/軍議中 ―
[クレステッドからの視線>>428がいささか冷たかったので、
アサッテを向いて誤魔化しておく。
今、自分の裡にある(何も出来なかった…)という燻ったもどかしさを加味すると、提案した配置がいちばん適切と考えたのも嘘ではないし。]
へいへい、 分かっているッスよーだ
[忙しい>>429という予告を、こちらも軽い調子で受け取る。
その程度は予測済みだ。
…そして予測できるくらいは、軍で長い付き合いである。
似た気質の彼とは、妙にウマが合った。
2歳という年齢の差が気になったことは一度も無い。寧ろ同年代のような心地で、時に主張をぶつけたり、時に背を預けて戦場で戦ったりした仲だった。]
[笑顔で信を預けてくれる同僚>>430へ
任せろ。と、口にしようとして……
守りきれなかった事実が、心を苦く掠め… ]
……っ…
[しばし口篭った後、]
[ツェーザルは、瞳に浮かべる色を改めてから相手に向き直った。]
クレス、
此処にはまだオクタヴィアスさまがいらっしゃらない。
合流までの間は、おまえが大将ッス。
その分、軍全体のいろんなもんを掌握しなくちゃいけない――…
[もうアルブレヒトさまはいらっしゃらないのだから…という言葉を飲み込んで、後を継ぐ。]
クレスにしか出来ないことをやれるように
おいらがやれる分は受け持つッスよ。
[それは例えば。
この現状に多少なりとも浮き足だった味方兵のため、戦場で隣を走って、目の前で武器をふるうような…歩きの兵に寄った位置での鼓舞とかを、だ。]
まあ、
――――任せろ ッス。
[今はまだ、強がり成分がゼロとは、言えないけれど。
それでも、彼の向けてくれた笑みに信に、応えたくて。
ツェーザルも、けらっと笑った*]
― サクソー川/橋の北側 ―
[相手の先遣隊と此方の一騎が邂逅を果たしている様>>310は、
嵐が気紛れに凪いだかのように静かなものだった。
此方側で、ああいう時、単騎で前に出そうな人物には
だいたい見当がつく。
そしてわざわざ単騎で向かう相手となると――…
パズルのピースを当てはめてゆけば、誰と誰が、くらいの予想はなんとなくついた。]
…まー。ついたところで、別にってやつッスけど。
[戦槌の柄を拳ひとつ分くらい持ち上げてから、振り下ろすような仕草で、そのまま真下へ。ずん、と軽く大地を小突いた。
どうかしたんですか?と周りの歩兵が聞いてきたので
虫が居たッス、と答えておく。]
…。
[誰だって、“彼”には複雑な感情を抱いている。
それはツェーザルとて例外ではない。
だが仰ぐと決めた主君は、
亡きアルブレヒトさまであり、
ラモーラルへ帰還したオクタヴィアスさまだ。
二人の若き英雄たち…其処に仕える自分たち。
違えた道の行く末は、15年前と同じであるようにしか思えなかった。]
[クレステッドの方へ近づけば、別の影>>454をひとつ、示された。]
んー…?
[三白眼を凝らして、兵列から頭ひとつ突き出た人影を捉える。]
うっわ、おっきいッスなあ…!
[遠目でも分かる。
「…熊?」なんて冗談を言いたくなるような勢いの図体だ。]
へーえ、あれがあちらさんの副将ッスか。
なかなか、“楽しそう”な御仁ッスね…
っと、
[熱を孕んだクレステッド>>455の声に、眼差しに。其処で気がついた。]
…………、あー…
[横顔を、しばし眺め。
くしゃり。と表情の舵を諦めに傾けた。
こういう時のコイツは、自分を曲げない。
その代わり相応の成果を残してきたのも…ちゃんとツェーザルの記憶には残っていた。]
――ま、誰かがヤんなきゃならねえ相手ッスからね…
[止めねばならぬ強敵ならば、
誰かが、覚悟を持って挑まねばならぬ。
ラモーラルを彼らの手に渡す訳には、いかないのだから。]
クレス相手に今更どうこうは言わないッスよ。
[だから…――任せた、と。
残りは口にせずに、相手に向ける三白眼に信頼の色を乗せた*]
[遠吠えのような会戦の合図>>475。]
あーらら。あちらさんやる気ッスねえ。
[茶化した口調だが、
内心はなるべくしてなった――としか思っていない。]
退くわけねぇだろ ッス!!
[応じるような号ひとつ。
敵の軽歩兵隊を迎え撃つべく、防衛線を敷くこちらの軽歩兵の先頭に立って戦槌を構えた*]
― サクソー川/橋の北側 ―
おう、言われずともッスよ!
[居並ぶ軽歩兵に声を掛ける。]
正規軍の守りの堅さを見せてやれッス!!
[クレステッドの命>>506を受けて、突き出された槍の合間を埋めるように、わぁああああ!!!!と、後列から歩き組が飛び出した。
弩隊の射程には入らぬよう…槍組の列から離れすぎない位置で、歩き組は丸盾をかざして攻撃を凌ぎながら、打撃の隙間を狙って剣を薙ぐ。
各組の連携が取れた動きは、訓練を重ねてきた正規軍だからこその所作でもあった。]
[だが相手側は怯まない。
斧を構えた巨躯を筆頭に、穴を穿たんとする勢いで横陣の一点に敵の猛攻が集中する。]
っざけんな、
通らせるかッよ …ッス!!!
[視線が、巨躯と交わる>>516。
獰猛な獣と対面した時のような、命を天秤の片側に乗せて挑むしかないと――思わせるような、その烈気。]
(ああ、なるほど…ッス)
[クレスが先程言っていた言葉が、改めて実感として浮かんでくる。
確かに、これは、止めなければいけない相手…だ。]
クレス!!
[名を、呼んだ。これるなら来いと。
視線は巨躯>>517から逸らさない。…そうして、彼が来るまでの足止めにと]
いくぜ、 ッス!!
[戦槌を真っ直ぐ――槍のように構えて、マーティンと名乗った敵副将へと駆ける。
そうして戦槌の先で撃ち叩くように、真っ直ぐ前に突き出した。]
[鉄が重く鳴き合う音が、平原を引っ掻くよう響き渡った>>527。
相手の戦斧が、堅牢な盾のごとく、ツェーザルの攻撃を受け止める。
じ…ん。と柄を握る指先に振動が走った。
遠慮なく戦槌を振るったのだが、まるでびくともしない。巨大な建造物を殴ったような心地だ。]
… っ、 のぉ!!
[その受け止めた戦斧の面が、今度は自分の番とばかりに此方を押し返してくる>>531。]
[じりじりと拮抗した時間は、数瞬。
腕力が敵わないと見るや、ツェーザルは自ら戦槌を引いてそのまま一歩分の距離を下がった。
空いた半身分のスペースに、
ごう…ッ!!!
戦斧が唸りをあげて振り下ろされる。
眼前に生まれた刃の弧。巻き込まれた前髪が数本、ぱらぱらと宙に散った。]
…ははっ、
[一歩距離を見誤れば、酷い致命傷を食らっていた。
我知らず笑みが零れる。]
いーい獲物持ってるッスなあ!
[戦斧を振り下ろした姿勢の、坊主頭の敵副将の右脇腹を狙って、]
そおらぁッ!!!
[今度は、ぶおん。と豪快に戦槌を横薙いだ。//]
…、はッ、
若さが違うんッスよ
[軽口を応酬>>564しながらも、内心では相手の力量に舌を巻いていた。
最初に受け止められた一撃による腕の痺れは、まだ僅かに尾を引いている。だが巨大な戦斧を軽々と扱う敵副将の様子には、そのような名残は微塵もない。
数撃の打ち合いならばいい。
けれど戦いが長引けば、不利になるのがどちらかは――明白だった。]
――…あいつ?
[それがクレステッドのことだという確証は無い。
無いが、なんとなくそんな気がして、
ツェーザルの口の端に小さな笑みが灯った。]
[突如上がった悲鳴>>567に、けれど意識を払う余裕は無かった。
今は目の前の相手を止めることが最優先。
良くも悪くも視野が狭い――…
一点集中、それがツェーザルの性根である。
だから、
戦槌は躊躇を孕むことなく、
敵副将の――割り込んできた右腕へ、
力いっぱい叩きつけられた。
重い鉄の平らな口が、骨と擦れ合い、ごり…といやな音を生む。]
やっ …た ッス!!!
[緊張を緩めた訳ではない。
ただ、それでも敵わぬかもしれぬと感じた猛者を、捕らえた!という感触は、心を僅かに跳ねさせた。
それに――…
片腕を負傷させたというのに、あの巨大な戦斧をまだ軽々と使いこなせるとは思わなかった――という油断も、あっただろう。
生まれた隙を逃さず、
生じた油断を逃さず、
未だ勢いを失わぬ相手の戦斧が、ツェーザルの手元を狙って再び鋭い弧を描いた。]
…… ッス、!!??
[あっ。と思った時には遅かった。
がああああん!!!
再び、鉄と鉄がぶつかる音が騒々しく響く。
がん。と身体を揺すられる衝撃。
痺れの残った指は、柄を握り続けることが出来ず、
戦槌は大きく宙へ跳ねた。//]
― 回想:ベルサリス修道院跡/軍議の直後 ―
いっ、てえ… ッス!?
[なんだか、いい音が鳴った気がする…。
破顔したダーフィト>>464の表情は、此方も嬉しく思ったものの、遠慮ない一発には、ちょっと、大げさに反応してみたりして、
続いたひそひそ話には]
…、―――― あ〜〜っ と…
[ダーフィトの計算までは見透かすことが出来ず、素直にクレステッドのことを心配しての発言だと受け取ったので、(…。それを自分に言うのか?)とちょっぴり思ったのは此処だけの話。
だが頼られたのは、素直に嬉しい。]
――はいッス!
[と、張り切って返事をしたツェーザルだった*]
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