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『永莉斗、いやツヴィンガー!
足元に気を付けろ、あの男がデレた……かも知れないぞ』
[契約主の視線が一点に向けられている。
その分周囲の警戒は契約者が受け持ち、開いた小窓から零れ落ちる魔力の気配に声を発す。>>338
デレるとは。問うよりも先に傾ぐ身体を避けるを優先した。>>339]
ハッ!
[がら空きの背中に鞭をしならせる。一撃。
あがる悲鳴が気持ち悪かった。]
カノ――いや、その刀は切れるのか?
[ドレス姿の女性の姿が見えれば助力を頼み。
四つん這いになり、鞭を受ける度に薔薇色の声をあげて此方を見上げる姿に鳥肌がたった。]
炸け、ギュスターヴ!
[火力に合わせて鞭は形態を変える。
連続発射のマシンガン。
至近ともいえる距離からの魔法攻撃。
しかし――…]
―土産屋―
[対する魔女は3人だというのに、コンスタンツェの魔法で茨の効果が弱まったに過ぎない。]
ああ、勿論。………だが二人とも、下がっていてくれよ?
いざというときに盾に――
[緩慢だからこそ、察するのが遅れた。]
ジェフロイ!
[咄嗟に腕を伸ばして突き飛ばした]
がっ ぅぐ
[ジルが隠したものは、アヴェの姿そのものと、茨に巻き付かれた身を土産屋の天井に強かに打ち付けられた軍服男の姿だった。
手から落ちたマシンガンは乗馬鞭にと姿を戻し、薔薇の花弁に埋もれていく。]
[身体の内側、何かが軋む音がした。
近く、甘い声がした。>>421]
閃緑の巫女コンスタンツェ!
続けて第2撃!
[緩んだとはいえ、茨に巻かれたまま楠の身が降りていく。
近くなる距離。壁に、窓の方に向いたアヴェの顔。]
……おい、俺とやりたくないって?
[『ジェフロイ』と、呼んだ。
いつも呼んでいる名は、物言いたげな、
何かを隠した表情で以て返された。
魔女に変身すると服だけでなく、獣耳や尻尾だけでなく、他の変化もあるのだと拒絶したくなる気持ちを捻じ曲げた。
きっと、従弟からも自分の正体を知られたことだろう。
それでも、それだからこそ――…
腕を伸ばして、突き飛ばした。]
[美形を捕らえられなかった悔しさのまま、窓に飛び付こうとしたアヴェの身がピタリと止まった。
楠はアヴェに舌をチラと見せ、出入り口に目線を遣る。]
……あぁ、俺はツヴィンガーとでも呼んでくれ。
魔法を放つのを躊躇うな。
アヴェを討つのを躊躇うな。
俺たちは何のために試練を受けているんだ?
よくやった、お嬢ちゃん。
[真っ直ぐに飛んできた氷の槍。
檄の必要もない程、真っ直ぐ。>>427
土産屋の床は薔薇の花弁と倒れた棚と商品とで埋まっている。
こんな使い方もアリだろうなと、思い描きながら、小さく呻いた。]
炸け、ギュスターヴ。
/*
アヴェと茨に注意を向けていたではありませんか、従弟さん。
『アヴェの、獣青年への執念が勝ったのだろう?』
……そういうことで…。
[アヴェとの距離はおよそ2(5x1)m。
腕を広げようとすると、棘が肉に食い込んだ。魔女服をも貫いて。
ジェフロイが拾った後にか、鞭は姿を消す。>>429
けれど、楠の手は何も持たぬまま。]
[不意に視界が白に染まる。>>435
デレ過ぎるだろうと文句のひとつでも言ってやりたいが、小窓の方を睨んでも姿は見えず、躊躇うなと言った手前、言えず。]
……
[喉の違和感。魔法を放てるのはきっと1度きり。
アヴェの嬲るような視線が向くのを耐え、
髪が皮膚が凍るのを耐え、タイミングを計る。]
『ツヴィンガー、魔女たちが集まってる。
今が協力の時だ。
誰かの魔法と合わせるといい。
……と言っても、今の主には言葉を発するのが難しいか。』
[アヴが胴体の辺りを掻いていた。
氷ゆく指で。]
こいつを倒すのが試練だ。
ならタイミングを合わせて集中させるしかないだろ?
準備を済ませろ。呼吸を合わせろ。
[縛られていなければ、格好はついたかも知れない。寄るな触るな近付くなと、アヴェを足蹴にした。]
―――3、
――――炸け、ギュスターヴ。
[両の腕が使えずとも、
武器が振るえずとも、策は残されていた。
合図の後、あと唇を開く。
見えた銃身。その口をアヴェに向けた。]
――っ!
[熱い口付けを。
アヴェの顔面で火球が弾けた。]
[アヴェを倒した。
試練を脱した。
喜ぶべき感情すら凍えてしまいそうだった。
茨が消えて自由になった身。
立ち上がり、よろめく脚を叱咤した。]
……こんの、
『氷の槍が主に当たれば、ダメージは深刻だ。
この吹雪がいつもより辛いように。
永莉斗。
我の声は聴こえているか?
動けぬ主は、ほれ、唇も真っ青で今にも凍え死にそうよ。』
……
[唇を噛み、楠が向かう先は白纏う男。]
[『まもってあげて』と影が少年を庇っているのを見た。
氷槍が扉を盾に仕立てたのを見た。]
……
[ジェフロイの肩に手を置き、労う。]
[彼の掴んだ腕は、白く、異様なまでに細く。
人のぬくもりの一切を失ったかのように冷たいものであります。
打てば容易に傾く身体。
きっと、彼にはわかるでしょう。
上背もあり、不自然に痩せているわけでもない。
それなのに、まるで赤子を打ったかのような軽い手応え。
ありえないほど、その体が軽いこと。]
[距離は近くに在ろうとも、
カウンターを隔てたものより遠かろうとも、
ダメージを負った楠がフードの下を確かめる余力はなかった。]
[猫耳萌えの青年魔女は、呆気なく、そう余りにも呆気なく床にたおれた。>>525]
……お前は、なんだ?
[取り押さえた経験の、誰よりも軽い成人男性の身体だった。
誰? ではなく、何? と問いが漏れた。]
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