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14人目、経営者 ディーク が参加しました。
経営者 ディークは、村人 を希望しました(他の人には見えません)。
……、……
[運転手に開けられたドアから
潮の香りが ふわり…… と 差し込んだ。
この匂い。何年ぶりに嗅いだのだろう。
父の会社を飛び出して単身起業をして
殆ど休みなしに事業が軌道に乗るよう
走り続けていたから
学生の時以来だとはわかるが
年数を数えるのは
加齢を自覚してしまいそうなので
やめておくことにした。]
[車から降り、運転手から旅の荷物を受け取る。
余分なものを好まないゆえに
トランクひとつに全て納められていた。]
……すまない。少し寝ていたな
[先まで後部座席の隣に並んで
座っていただろう男に非礼を詫びながら
タラップを目指す背は真っ直ぐに伸びている。
旅立ちの前夜も深夜に及ぶほどの
避けられない社交の席はあった。
音の静かな黒塗りの箱に揺られながら
つい意識を手放してしまったのは
近くにいる男への信頼の表れでもあっただろう。]
今回の旅は
日頃の感謝を込めて誘ってもいる
仕事以外のときは
羽を伸ばして自由に楽しんでくれ
[そんな声を掛けて、船へ乗り込んだだろうか。*]
── 半年前:邂逅 ──
[半ば勢いで興したITベンチャー企業は黒字。
VR配信技術を利用した初の試行で
悪くはない走り出しを決めていた。
目下の悩みは、次なる試みである。
社内に具体的なアイディアを提示していた。
間違いなく「流行る」と思うのだが――、
数を増してきた社員たちの間では
消極的、乃至批判的な意見が目立った。]
[社員を全員退社させたあとの
小さなレンタルオフィスの一部屋で
ひとりごちる。]
……この案は、諦めるべきか?
[己の直感には、自信があった。
反対を押し切ってでも、形にしたい。
――けれど、万が一。
事業を傾かせてしまったら?
最近数を増してきた社員たち……、
彼らを路頭に迷わせる訳には、いかない。]
……む。済まない、直ぐ出る
[答えは出ないまま利用時間が過ぎ
回ってきた警備員に促されオフィスを出た。
考えついた案を成功させたい欲と
会社を大きくしたい欲。
その二つを燻らせながらの帰宅の途。]
[話し掛けてきた目的を察した。
オレを占い、対価を得たいのだろう。
然すれば。
躊躇いなく手を伸ばし、顎を掴み持ち上げた。
ベールが僅かに捲れ、その顔が良く伺える。
ワインにも血液にも見える、緋い宝石も。
……此奴は、衣装と道具で損をしている。]
ふ……良い瞳だ
お前の眼には何が映っている?
オレに何を魅せてくれる?
[堂々たる男は微笑い、問い掛けた。
ひとひらの欺きも見逃す心算はないとばかりに
真っ直ぐに射抜きながら。*]
[己とて――、この目で見て
確かめたものにしか
興味が無い。
今まさに本物かを
見極めようとしている
相手の方からも
己のことは同じ条件で
視て貰おうじゃないか。]
だが、お前の言葉を信じ
オレ自身を今一度信じよう
……これは今回の代金だ
[往来での占いの相場は知らないが
三千ドルも台に置けば十分であったのではないか。
足らないと言われるなら、更に足して。
その日はそれで去った。]
[──── 後日。
サイバー・アディントン社が提供する
新しいタイプのSNSが話題となる。
それは純粋に母性を求める男性が
バブみ溢れる女性にオギャる為のSNS。
如何わしい目的の利用は一切禁止。
女性側はVR映像などをアップロードし
男性側は癒しを得る。サービス名はBabtter。
利用者数は予想を上回り
サーバーが高稼働に耐えられず止まるなど
嬉しいトラブルは起きたものの――、
それこそが成功の証。
……男は幾つになっても母性には勝てないのだ。]
[業績の上昇を確と確認した。
社内でも己を見直す声ばかり。
前途洋々と告げてくれた
占い師の顔は名前は
その間もずぅっと忘れてはいない。]
お前もお前を信じたオレも間違ってなかった
シメオン。オレの専属になって貰うぞ
[雑踏の占い師を迎えに現れそう告げたのは
占われてから二ヶ月後ほどのことだ。
拒否権は与えるはずもなく。
報酬は相手が望むだけ出すとして契約を結んだ。]
[衣服が以前と変わっていない事に気付けば。]
……む
まだそんな衣装を纏っているのか
オレの傍に偽物は要らない
これから新調しに行くぞ
[愛用の店に連れて行き
特注の衣装を仕立てさせ贈った。
上質な召物を纏う占い師は
それからというもの
幾度となく己を導いてくれている。
――今後も手放す気は、ない。*]
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