情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 6日目 7日目 エピローグ 終了 / 最新
【翻】翻訳家 ツィスカ が参加しました。
【翻】翻訳家 ツィスカは、霊能者 を希望しました(他の人には見えません)。
「………………う、んっ?」
不意に、長く伏せられた睫毛が開く。群青色の目は潤んでいた。自然とシルバーフレームの眼鏡を掛け、彼女は顔をあげる。
執務机に突っ伏す体勢で深い眠りに就いていた彼女−−ツィスカは、気怠げな様子で窓の外を眺めた。外は日中と変わらず、じめじめしとしとと雨が降り続いている。室内は茹だるような暑さで、重い湿気に満たされていた。
つ−−と、視線を逸らす。そうして、執務机の上に佇む時計で時間を確認した。
揺らぐことなく真夜中だ。
「あぁああ、寝ちゃってたああああッ!」
思ったことが、声に出た。そこでやっと、眠気に劣っていた意識が覚醒する。
積み上げられた、異国語で綴られた文字列が並ぶ本。愛用している分厚い辞書は開かれたまま時を経て、好んで飲むハーブティーの香りが染み込んでいた。
それでも執着からなのか、つい何時間と就寝してしまおうが、手には大切な仕事道具であるペンが握られたままだった。舟を漕いでいた際に書かれたのだろう。長い時間をかけて翻訳し、執筆途中の原稿には解読不能な文字が踊っている。
締切直前に仕事を放って眠り込んでしまうとは、実に嘆かわしい話だ。
嘘。別に、何も嘆かわしくなかった。
事の発端は、自分なのだ。因果応報というやつである。文句は飲み込み、溜まった仕事に手を付けよう。どうせこの調子じゃあ、無事に終わるなどとは期待できないけれど。
−−−−−−彼女の読む異国書には、こう記されている。
「Ich habe Aufmerksamkeit bestätigt.」
翻訳して、【諸注意を確認しました】と。
【少しだけRP解除】!
まずは村立てさんへの感謝の意から。晴耕雨読村へ参加するに当たって、勧誘のお声を掛け戴き、本当にありがとうございます。そして村の企画や人員整理など、お疲れ様です。
今回は慌ただしい翻訳家のツィスカと共に、勝利を目指して頑張りたいと思います。余り設定は固まっていませんが、議論を交わす内に形になるでしょう。現段階ではとにかく素直で、何かを仕出かしても感情のままに叫べば冷静になれる。責任感は強く、単純で分かり易い子のイメージです。
「あぁ、締切に間に合うかなぁ。あんな蒸し蒸しとした部屋で、どうして寝ちゃったんだろう!最近この村でイヤな噂も聞くしなぁ……ジンロウだっけ?何処かに文献が無かったか、後で探してみようっ」
何処ぞのLW宿主「ハーブティーには睡眠導入効果が期待されるんですもの。ツィスカさんが眠ってしまうのも仕方が無いですわ!」
それでは、どうぞお手柔らかによろしくお願いします!
「はああああ、お仕事終わったぁッ!」
徹夜明けで身体はかなり疲労していた。疲れ果て、それでも空虚な甘い気持ちが胸に押し寄せる。解放の喜びが水の様に溢れ出すのを感じていた。
「無事に終わるなどとは期待できないけれど」−−そんな彼女の悪い予感は当たっていた。異国書には古典的な文法や消滅した単語が至る所に使われており、翻訳家を生業とする身でも、物語を理解するのに苦労した。
それでもツィスカの凝り性で何かに熱中し出すと止まらない性格が功を奏したのだろう。長ったらしい異国文や単語の羅列を、蜘蛛の巣みたいに頭の中に張り巡らせた。そうして浮かんだ考えを整理するかの様に、永遠と文字を書き連ねる。
その作業に意識を集中しているうちに、時間の感覚がどこかで失われてしまったようだ。
すりガラスのような半透明の梅雨時の光線の中で、乾き欠けのインクの文字は輝いていた。あとは、郵便屋にこの原稿を届けて貰うだけなのだ!
昨晩とは打って変わって、出掛けないと損をするような晴天の中。仕事から解放されたことにより、口では言いようのない妙にさっぱりした気持ちを味わっていた彼女だが、頭から水を被ったかの様に表情を一変させた。
ツィスカは翻訳したばかりの異国書に視線を縫い付けていた。そうすると、湿気を含んだ風が向こうから吹きつけてきたかの様に、彼女は顔を曇らせたのだ。
実は驚いていた。どきりとして心臓が止まった心地をしたものだ。
異国書の題名は「Werwolf」。翻訳して、狼男。
−−いや、人狼と読むべきなのだろうか。
「夜な夜なジンロウが現れるらしい」
晴耕雨読が謳われる平和なこの村で、少し前から嫌な噂を耳に挟むようになった。
ジンロウが「人狼」を指すのだと知ったのは、たった今のことだ。村人達のかつて見たことの無い怯懦の目つきから、足元の危ういような焦燥感が胸に迫っていた。そこで、仕事が終われば、ジンロウについての文献を漁ってみようかと考えに耽っていた矢先だった。
不気味さが、稲妻のように電光のように素早く体の中を駆け抜ける。心の中の拭い切れぬ影が、雨雲のように広がった。
「…………ただの噂、だよね」
ツィスカの頭は、雨の様に戦慄が切り無く叩かれていた。
「この手紙を読んだら、3日以内に15人に同じ内容の手紙を送るべし。さもなくばあなたに不幸が訪れる」。
薄い刃物で背をなでられるような不気味さが胸に迫る。彼女には、まさかこんな手紙が届けられるという発想が無かった。
「いつもなら悪戯だって笑い飛ばした後、犯人を見付けてとっちめてやるのに!でも、まさか、このタイミングってことは……人狼の噂と関係があるの?」
心の底でゆっくりと渦を巻きながら濃くなって行く霧の様なものの正体が掴めない。心の一角に悪い衝動が、夏の雲のように立ち現れたかと思うと、みるみる心の空全体に広がっていく。
一人で物思いに耽っても、きっと問題は解決しないままだ。明日は家を出て、村に居る皆と話し合ってみよう。「Werwolf」と題された本を胸に抱いて。
ツィスカは急に瞼が重くなるのを感じたのが最後。その脳を蕩かす様な心地良さに負けて、ゆっくりと深い眠りの海へ沈んでいった。
情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 6日目 7日目 エピローグ 終了 / 最新