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吸血鬼にとっての救いをまだ日の浅い私には語れない。
けれど私の救いは、再び君に逢えた事だ。
この手で君を抱きしめられた。
君のぬくもりを、思い出す事が出来た。
[それが己にとっての救いなのだとジークムントは静かに語る。]
――――。
[血の飢えから解放されたら。
アデルの血を求めてしまう可能性が消えたら。
嗚呼、と声が零れ掛ける。
けれど何も答えられぬまま困ったような吐息だけが伝う。]
[野茨公からの贈り物に触れはするが受け取る事は躊躇われた。
大事な物と思えばこそそれを受け取る資格があるのか悩む。
贈り主からの真心を感じるからこそ――。]
ヴィンセント様。
[名を呼んで、そと貌を上げる。]
受け取る前に――、あなたにこの血を捧げたい。
我が君からの伝言と贈り物を届けて下さったお礼に。
[公弟に血を捧げ、それでもこの命が続くなら
それを運命と受け入れて、主からの心を受け取ろうと、思う。]
[ジークムントは片手で襟首を緩め
ヴィンセントが顔寄せるとは反対に首を傾け首筋を晒す。
戯れのようなシメオンとの約束がちらと過るが
それは再び会う事が出来た時に果たせば良いと思い直した。]
味の保証できぬのが申し訳ありませんが。
[そんな言葉を漏らして少しばかり申し訳なさそうに目を伏せた。**]
教会に居た頃から
私の救いは君だった。
アデルは私にとって希望だよ。
[何も救えないという弟に救いなのだと兄は言う。]
[確認するような響き>>68が耳朶に落ちる。
はい、と一つ返事をし頷くのは決意のあらわれ。]
好ましい行為と思って頂けるなら幸い――、
[己の血が少しでも公弟たる彼の役に立てるなら幸いと思う。
彼が城主の支えとして欠かせぬ存在と思えばなおのこと。
誘われるままに長椅子へと腰を下ろすも、脚閉じる事もできぬ状況に
目許には羞恥の色がありありと浮かぶ。
布を裂く音に思わず眸をきつく瞑った。
日々鍛えるわりに薄い肢体が外気に晒されれば微かに震える。
冷たくも形よい指先に白い咽喉をそらす。]
斯様な戯れをヴィンセント様が私に向けられるとは
[強がる声は「めずらしい」と最後まで続かぬまま。
注がれる視線にふと瞼を持ち上げると
鈍色の煌めきに射竦められるように、息をのむ。
――けれど逃げ出そうと気は、起こらない。]
[下げた視線の先に落ちる影。
野茨公より受けた薔薇をはみながら公弟>>77に血を捧ぐのは
言いようも無い背徳感に襲われる。
繊細な指に銀糸掬われればゾクリと芯に奔るものを感じた。]
――…、ふ 。
[思わず漏れる一音に宛がわれた薔薇滑らせ己の親指を噛み堪えようと試みる。
睦むにも似るその行為を与えられれば彼の触れた箇所が熱帯びるように感じられた。
あたたかく濡れた感触齎すその舌が麗しき公弟のものと思えば羞恥は募るばかり。
触れられるのに慣れぬジークムントは、ひとつひとつに堪えきれぬような音色を奏でるものの、もっとも肌を震わせたのは浅い箇所に脈動ある白き首筋。
それを知る皓い牙が其処に触れれば一瞬おびえるような色を翆の双眸に滲ませる。
突き立てられた牙が肌を裂き埋まりゆくと久しい快楽が身を襲う。]
……ン、…ッ。
[鼻に掛るような甘さが零れた吐息に混じっていた。]
[思わずヴィンセントの胸元へと伸びかけるのは何も持たぬ手。
けれど触れぬまま、拳を握りしめ縋るのを堪える。
公弟の咽喉が上下する間、喘ぐような音色が細く零れる。
慣れぬ快楽と酩酊に眩むような感覚を覚える頃、
引き抜かれる牙がその身に余韻を刻む。
乱れる息を整えるような呼吸を数度くり返し]
――…恐悦至極。
[堅苦しい返答をする双眸はうっすらと潤みを帯びていた。]
贈り物は確かに受け取りました。
近いうち彼の君に感謝を伝えに行こうと思います。
[失血とそれに伴う快楽による気怠さを感じながら
両の手で薔薇の花を包み、ヴィンセントへと頭を垂れた。]
[どうしてか考えるがそれを言葉にできずゆると首を振る。]
常々思っていた事が目を瞑れぬまでにふくらんで
それが弱音として零れてしまったまで。
お聞き苦しいもの、申し訳なく。
[己の身体の欠陥が場違いに繋がるも
血を捧ぐ申し出をし運命を委ねようとしてのには
アデルを傷つけたくないという思いが強くある。]
己の牙で血を啜る事を覚えてしまったから
これまで耐えていた衝動に抗えず
近しい者を傷つけるかもしれない未来にを恐れただけの事。
――己の弱さを思い知ったのです。
[残る余韻に覚束ぬ思考のまま、ぽつりぽつりと公弟に綴り]
少し、休みます。
――――…、
[申し訳ない、と続くはずの声は音にならぬまま
長椅子に座るジークムントは、ふっと意識を手放した。**]
[――眷属を得る事など考えた事はなかった。
眷属としてこれまでの関係が変わるなら
それもジークムントにとっては望めぬ事の一つとなる。]
――…。
[悪夢に魘されるかのように眉間には皺が刻まれた。]
少しのはずが、眠り過ぎたようです。
[失態と思ってか微苦笑を漏らした。
気怠さはまだ残るが動けぬほどではない。
椅子から離れて野茨公の足元で膝を折り
薔薇を手にした腕を胸元にそえ頭を下げる。]
御帰還、お祝い申し上げます。
[野茨公にとって己は子という存在。
親の期待に応えられる子であれない事が心苦しい。]
――いくつになっても。
我が君だけを親と思い続けましょう。
けれど子はいつか親元を離れひとりだちするもの。
そう思えば、――…淋しい関係かもしれませんね。
[人間であった頃の家族への思いはあれど
親と敬うべき存在は野茨公のみと思い肉親の縁を断つような言葉を紡ぐ。]
―サロン―
[野茨公にとって己は子という存在。
親の期待に応えられる子であれない事が心苦しい。]
――いくつになっても。
我が君だけを親と思い続けましょう。
けれど子はいつか親元を離れひとりだちするもの。
そう思えば、――…淋しい関係かもしれませんね。
[人間であった頃の家族への思いはあれど
親と敬うべき存在は野茨公のみと思い肉親の縁を断つような言葉を紡ぐ。]
[肩に添う手にゆっくりと顔を上げた。
野茨公を見上げ、眩しげに目を細める。]
またお逢いできた事何よりも嬉しく思います。
我が君――…、
[感極まるように言葉を詰まらせる。]
置いてゆかれたのだと、思いました。
もう、二度と、そのようなことは――…
[なさらないで下さい、と懇願の音色が密やかに落ちる。]
[己を歪と思う理由。
己を醜いと称した理由。
嫡子であるのに決して家門を継げぬ理由。
半陰陽であったジークムントは
野茨公と通じる事がなくとも
結局は教会から追われる事となったと思う。
だから――、頼れたのは野茨公ただひとりきり。
その頼った彼にさえ、それは隠せていると思っている。]
[覗く眼差しに翆が瞬く。
野茨公の言葉に耳を傾け、それからゆると首を振った。]
――…それは誰にも望めません。
幸せに出来ぬ身で求めるのは、我儘が過ぎるから。
[誰かと共に旅立つ事は考えていない事を明確にしていた。
目の前の美しく気高い吸血鬼の幸せを願う。
大事だからこそ迷惑を掛けたくはない弟を、想う。]
[抱き寄せる腕に引かれ、野茨公の肩に口許が触れる。
野茨公の目に映らぬ騎士の貌がふっと泣きそうな色を過らせた。]
――…アレクシス殿に感謝せねば。
身に余るあなたからの贈り物をヴィンセント様から受け取りました。
……、これが、その手に戻れば、
あなたの望みは、叶いましょうか。
――叶うなら、これは、……あなたが持つべきもの。
[手に包む血色の薔薇を野茨公へと差し出そうとした。]
それを聞いて安心しました。
我が君が健勝であられる事が私の喜びです。
[懲りたと聞けば小さく笑む音を漏らし
柔らかな音色を心地よく聴いた。]
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