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――宿の前――
[背負っていたなら、降ろし。手をつないでいたなら、離す。
宿を出てしまえば、惨劇から少女の視界と記憶を守る大人の仕事は終わった。
切り株にはヴァルターが腰掛けていた。誰か見覚えのない男と話をしていて、声も出せないのに割り込む気もない。
聞こえてくるのは呟きのようでうまく聞き取れない。
――というよりも、随分聴覚もやられているのだ、と薄々理解していた。
話をするくらいならあまり不都合ないが、拾い聞きなんかはどうにもならない。
宿の壁に凭れて空を見る少女に、同じく途方に暮れて空を見ようとしたその時。]
……(ヨアヒム)、
[姿変わるでもない彼の様子に、探し人を見つけたとばかり、軽く手を上げてみせる。
あの姿のパメラを連れているようなのには苦い顔をしかけたが、彼女は記憶に関してだけは失っていない様子だったので、一般的に言う子供とは違うかと、そのまま見送った。]
/*
いやほんとにエンカミスなんてよくあることだと思ってるし全然「ほんなら何しよかなー」くらいのもんなんだけど。
こっちがのんびりだったのがあかんのだしねー
しかし早起きで一日中歩き回ったらもうねむたいぜ
やばいぜ
[とん、と爪先で地面を蹴ってみる。
死んだのにこれほどはっきりと感触があるのもおかしい気がしつつ、喜ばしいこととも思う。
ふらり、と壁に凭れさせていた体を浮かす。何をするでもないけれど、約束がたくさんあったのを、思い出したのだ。]
(場所、聞けないな)
[口がきけないのは案外不便だ。せめて筆談ができればいいのだが、向こう側に置いてきた物に触れられる気がしない。
誰を連れるわけでもないが、誰がついてきても構わず、宿を離れて村の中を歩きはじめる。]
/*ああーいい……スゴイいいですね
こういうの素晴らしい人狼騒動ならではです
憧れます
俺の場合やれるとしたらシモンでしたね シモンどうして霊能者なの
――村を巡りて――
[宿を出て、あの日の足取りをそのままたどる。
教会の十字架はこのさなかにあっても凛としていた。スープを飲むことは叶わなくなった、としばらくそのまま建物を見上げていた。
パン屋も同じだ。明日も来る、と言ったのに。結局のところそれは叶わなかったのだ。破ってしまった約束が、たくさんありすぎた。
ガラス窓の向こう側、片付けられて空っぽの、パンかごを見ながら苦く笑う。]
[そしてそのまま、宿に戻ったのだったか。
今日はそうせず、更に向こうへと歩を進める。
花屋、水車小屋、靴屋と過ぎて、図書館があった。]
(ここか)
[ドアに触れる。感触がない。思い切って手を真っ直ぐに伸ばしたら、そのまますり抜けた。
頭の何処かで、本当にこんなことが起きるのかとどこか感心し。
強烈な違和感を覚えながらも、閉まったドアに向かって足を踏み入れた。]
――図書館――
[ずらりと並ぶ、蔵書を見やる。
背表紙にはタイトル、作者名、それから図書館の貸出を示す記録票だけなのに、自然と心が踊るのが本好きの性か。
思わず手を伸ばしたら、ドアとまったく同じことが起きるだけだったが。
どうしても、ここに来たかった。アルビンと話しているのを聞いたが、ここに自分の著書は並ぶはずだったのだろうか。
アルビン次第だろうが、ぜひ並んでほしいとも思う。
そうでなくとも、新しい司書は入るべきだ。本も、図書館という施設も、よいものだと思うからだ。
蔵書を読むことも出来なかったが、それでも暫くの間ここにいた。]
――そして――
[図書館を出たあとは、微かな羊の鳴き声を辿って、牧場を探すつもりでいたのだが。
羊など、もう殆ど残っておらず。
やはり難しいかと、あの少女が羊飼いの娘とは知らず目を伏せる。
場を離れようと、足の向きを変えた、その先だ。]
――(あ)、
[そこは、あの大雪崩の起きた、村の入口だった。
今はただ白く、うずたかい雪の壁。
一体何人が助かって、一体何人が「雪解け」のあとに出てくるのだろう。
後悔と自責が頭のなかにちらついて、そのままぼんやりと、雪山を眺めている**]
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