情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 6日目 7日目 エピローグ 終了 / 最新
[私が名を名乗ると、ベルは質問>>+5をしてきた。
私が死んでいるのか、どうか。
先ほどの会話と、この質問を聞くに、彼女は自分が死んだと自覚しているようだ。
その彼女と話せている以上、やはり私は死んだのだろう。
僅かだが、顔が曇る。やはり自分が死んだ、と明確に知るのは、齢を重ねた身でも複雑なものがある。
質問には、覚えている限りを答える。]
私は…警報が鳴る前、だったのかな。
まだ、この船が平和だと、多分全員が思っていた頃。
部屋にいて、誰かが来たんだろうね、ノックの音がして…。
部屋の、扉を、開けて…。
…そこから先の、記憶はない、んだよね。
[そのあと、2人とはどれだけ話しただろうか。
不意に、硬いものーガラスか、陶器かーが割れる音>>3:252が響く。
その音に真っ先に反応したのは、ベルだった。すぐさま、メイン・サロンのほうへと飛んでいく。
続いて、アイリが、慌てたようにベルに続くように飛んでいく。
私も、2人に続いて飛んでいく。
自分の、死について考えながら。
そのせいか、メイン・サロンに着くのには少し間が空いてしまった。
私がメイン・サロンに着いたとき、私は、悲しむベルと、それを慰めるアイリ、そして集まったこの船にいる人のほとんどを、部屋の入り口から見る。
私は、嘆くベルに声をかける。私の言葉が、どれ程意味があるかはわからないが、少しでも彼女の心に届けば。]
…ベルが、つらいのは本当にわかるよ。
今は、悲しむときだから。つらいよね…。
だけどさ。きっと、あなたが、あなたの友達が悲しむのを望まないように、きっと、あなたの友達も、あなたに悲しんで欲しくないんじゃないかな?
あなたが笑えば、きっとあなたの友達も笑ってくれるよ。
[その後、ふと気がつくと、周りの人たちの様子が明らかにおかしい。
この船の中にいる人の、ほとんどがいるのだろう。
だが、彼らの顔に、少し前のような明るさを見てとることはできなかった。
それだけならば良い。人が、彼らのよく知る人が死んだのだから。
だが、問題は、疑い。
誰が人狼なのか、探りあうような空気。
その中で、一人の女性の挙動が怪しくなる。]
(確か…あのときの、ドロイドを射ぬいていた凄腕の人?)
[そして、彼女は言い放つ。
「人狼に支配されるのを、望んでいる」ーーーー
その口から語られるのは、科学技術への憎悪、人狼への憧憬。
そして、告げられる名前、鳴る鈴の音。
止めようとさえしない人もいた。
やがて、スノウの宣告と共に、ドロイドが動き出す。]
[何が起きているのかわからず、硬直する私の前で、ドロイドに追い詰められた彼女ーサシャ、と呼ばれていたーは矢を乱射する。
矢は、ドロイドにもあたったが、あとの矢は周りへと飛び、一本は男性ー確か、サシャと一緒にいた、レーザー銃を使っていたーに当たる。
私がそちらに目を奪われている間に、彼女はメイン・サロンを飛び出していった。ドロイドがスノウの指揮を受け追っていく。]
だ、大丈夫ですか!?
[つい慌てて声をかけたが、声が届かないことに気づく。
幸い、血は出ているが、周りにこれだけ人がいる。大事になることは無いだろう。]**
[やがて、怪我をした2人ーレーザー銃の男性と、スープを配っていた女性ーは付き添いの人たちと共に医務室へと向かっていった。
アイリも、顔色を変えて医務室へと向かい、ベルもどこかへ行ったようだ。
私は、暫く呆然としていた。
サシャの語る、科学技術への憎悪に、その一端を担う者としての、責任というものを意識した。
実際、人類の世界は科学技術によって広がった。
造船技術の進歩が、新大陸を発見させたように。
軍事力の進歩が、人類を月にたどり着かせたように。
炭素繊維技術の進歩が、繊維式宇宙エレベーターの開発に繋がったように。
亜空間式ワープ技術の開発が、人類を外宇宙に、他星系文明の存在する地へとたどり着かせたように。
…だが、これらの輝かしい成果の影には、闇もまた存在した。]
[船からもたらされたペストで、村がいくつも滅んだように。
軍事力の進歩が、恐ろしい、地球全てを焼き払うような力を生み出したように。
宇宙エレベーターからもたらされた資源が、世界を巻き込む対戦を起こしかけたように。
外宇宙への進出が、「人狼」のような厄災と人類を対面させたように。
一人の女性の、狂気を生み出したように。
戻りたい、と強く感じる。
せめて、これからこんな悲劇を起こさないようにしたい。]
(よし、行こう)
[無意識に避けていた、自分の死んだであろう…死んだ、場所へ。]
[もしかしたら、自分の身体に、戻ることができるかもしれない。
その一心で、かつての自室へと戻る。
だが、その人が来るとも思えないのに整った部屋には、私の身体らしきものはどこにもなかった。
まあ、あったところで、戻れた可能性は低い。
わかっている、わかっていた。
そう思っていても、落胆は隠せない。
暫く、その部屋の中でただ呆然と浮かんでいた。]
[どれ程の間、そうしていただろうか。
不意に、小さくピアノの音が聞こえて来る。
どこかで聞いたことのある、懐かしいメロディー。
本来防音のしっかりしているだろう個室であったが、何の因果か、その音はしっかりと聞こえた。
望郷の念に駆られる。
あの大学に、平和な場所に戻りたい。
そのためには、ここで立ち止まっているわけにはいかない。]
そうだよね…先ずは、手がかりを見つけないと。
この状態でも、思いの外長く活動できるみたいだし。
一時の夢、って訳でもないんだろうな。
まずは…資料室、かな。
彼女…ベル、が襲われたところ。
[いつの間にか、かすかなピアノの音は止んでいた。
演奏者は誰だったか。
ふと気になったが、今は手がかり…何らかのとっかかりを探すべき時だ。
余計なことを気にしている場合ではない、が。]
…ありがとうございました。
[私を立ち直らせてくれた、姿も知らないー恐らくは知っている誰かなのだろうがー演奏者のいる方角へ、一礼する。
この位の時間を、惜しむこともないだろう。
そして、今度こそ、資料室へと飛んでいく。]
[資料室の場所は、覚えていた。
何度かデータを確認しに行ったから。
やがて、資料室の前にたどり着く。
資料室の中に、目を向けると、そこにいたのは、4人の人間。
乗員らしき男性が2人、サラリーマン風の男性が一人、そしてー浮いている女性。]
べ、ベルさん?
[思わず、声をかける。
部屋の中の空気は、張りつめていた。
そして…やがて、サラリーマン風の男性ー「タイガ」と呼ばれていたかーが、対峙する乗員風の男性の一人に襲いかかる。
その姿が狼に見えたのは、果たして暗い部屋が生み出した錯覚だったか。
私は、ただ呆然と見ていることしかできなかった。]**
情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 6日目 7日目 エピローグ 終了 / 最新