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― 嵐の海岸 ―
[嵐の中を人馬が駆けた。
同時に弩から矢が放たれ、先ずは長虫の右側の砂地に矢が刺さり。
間髪入れずに左側にも矢が飛来する。
左右への進路を一時封じられた長虫は当然中央を進もうとし、そこに中央から牽制の矢が飛んで来て。
一瞬、動きが止まったところに殺到する数多の矢。
胴部を狙ったそれは長虫の動きを刹那止めることに成功した]
─────…………
[その隙に長虫の死角から迫る、三位一体となった人馬。
駆ける軌道はフェリクスに任せたまま、ソマリは短槍を放つことだけを考え長虫との距離を測る]
[馬が濡れた砂を蹴る振動。
一歩一歩、確実に詰められる距離。
その瞬間が訪れる直前、ソマリは腰を最大限に捻り、右手の短槍を後方へと引いた]
───はああああぁああぁ!!
[人馬が接近したのに気付き、長虫が噛み付こうと口を開く。
その一瞬を狙い、穂先を上に向け、下から跳ね上げるように短槍を放った。
気合と共に放たれた短槍は一直線に長虫の口───その奥の何らかの器官に突き刺さる。
その一撃で激痛が走ったか、長虫は胴を仰け反らせてもがき出した]
ッ、 く ぅ ……───!!
[投擲は成功したものの、負荷をかけた身体にも激痛が走る。
身体を支えるべく無手になった右手をフェリクスの胴へと伸ばすが、同じく彼の胴にある左手を掴み損ねて。
馬上で上体が、揺れた]
― 嵐の海岸 ―
[渾身の投擲は右手だけでなく左手からも力を奪い取る。
雨で濡れた手が滑り、身体は、重力に従い崩れて────
「──… ソマリ !!」
名を呼ぶ声が、ソマリの後を追って来た]
───────!
[抱きとめられたまま、濡れた砂地を何度か転がる。
腕の中に収まっていたため、転がる時の衝撃は少なく。
けれど全身の痛みから直ぐには動くことが出来ず。
しばし痛みに耐えるようにフェリクスの腕の中で身を縮めていた]
[口の中を穿たれた長虫はしばらくもがき苦しんだ後、仰向けになるような形で大地へと倒れていく。
幸い、ソマリ達が転がったのは長虫から離れる方向だったため、潰されることはなくて済んだ]
───……ぅ……。
[砂へと落ちる重い音が響いた後、ソマリはようやく呻くような声を零して。
ゆるゆると閉じられていた瞼を持ち上げた]
……フ…リ…………ク………
[紡がれる声は掠れたもの。
相手の名を呼ぼうとしたのだが、上手く声が出て来てはくれなかった。
案じる声は身を包む相手に届いた*だろうか*]
/*
帰って来て一番最初に見えたとか。
呼び名変化は嬉しいのだけど、私の呼び方はまだどちらとも取れる呼び方になっていたり(爆
共通する文字が多かった。
― 嵐の海岸 ―
[呼んでいる。
信を置いた、
薄らと開いた瞳に嵐の曇天とは対照的な明るい色が目に入った。
その時返した声は
───あぁ、良かった。
…すまない、手間をかけた……フェリクス───。
[重なる鼓動に安堵して零れた声に混じる、絆繋いだ者の名。
自然と零れるそれに感謝を乗せる]
[フェリクスの手を借りて起き上がり、足音の近付く方向へと視線を向ける。
栗色の馬が砂地に置いた宝玉に、ソマリはしばし魅入った]
──このようなもの、どこから。
[去来するのは望郷にも似た想い。
手放してはいけないと、理由無くそう、思った]
[宝玉を拾い上げてみると、その輝きは消えることなく淡い波動のように漂って。
どこか安心出来るような心地さえしてくる。
そんな折、離れた地での異変がここまで届いて、注視していた宝玉から視線を外した]
あぁ、そうだね。
何かが起きようとしている。
[伸べられた手に宝玉を持たぬ手を重ねて。
告げられた言葉に一つ頷きを返す]
分かった。
…確かに、これがあると先程より身体が楽だ。
[気の持ちようなのかも知れないけれど、何かしらの作用は感じる。
手にある宝玉は決して落とすまいと、きつく握り締めた]
― 嵐の砂浜 ―
[フェリクスに返される声につい口許が緩む。
彼もまた信を置いてくれているのだと、そう感じることが出来たために]
事は急を要するのだろう?
構わない、私なら……大丈夫だ。
[急ぐとの言葉に、手を借り立ち上がってフェリクスに頷いた]
そこに我らが為すべき役目があるのならば、忌避するものなどない。
征こう。
[流石にまだ万全では無いためフェリクスに肩を借り、彼が向かおうとする場所に倣い願いを乗せる]
― 黄砂の村 ―
[フェリクスに連れられるように辿り着いたのは、一度も目にしたことのない村。
村の入口近くなどは何者かに襲われたような跡があったが、村自体は無事なようだった。
そのままフェリクスについて行くと、その先でエレオノーレとタイガに引き合わされて。
共闘の旨を持ち出され、ソマリは僅かに苦笑を浮かべた]
迷惑をかけたね。
[謝罪の代わりにそう言葉を紡ぐ]
― 黄砂の村 ―
フェリクス、ありがとう。
後は一人でも立てる。
[今まで支えてくれたフェリクスに礼を言い、背を固定された姿でしっかりと地面に立つ。
武器を持って敵に当たるにはまだ少々無理がある。
ならば、やれることは一つ]
私は軍団を以て
フェリクス、君は君のやりたいように。
なに、心配は要らない。
君と言う存在が背に在るならば、私はどこまでも翔けて征こう。
[背を預けるに足る存在。
方向を共にするならば支え合い、そうでなくば互いの背を護り合う。
フェリクスへの信を言葉に乗せて、ソマリは緑の軍団へと向き直った]
[天馬に乗り緑の亜神を護る緑の騎士を見据え、ソマリは軍団を招聘する]
私は空を飛ぶ術を知らないが───。
飛べなければ戦えぬと言うことは無い。
同じ
弩部隊よ、先程はご苦労だった。
君達の腕を信じ今一度願う。
────奴を地面に引き摺り落とせ。
[眼前にずらりと並ぶ弩部隊。
横陣に配置された彼らが放つ矢は上空、天馬の腹や翼を狙い空を舞う───13(20x1)]
[緑の騎士に弩を向けると、それは同時に緑の亜神へむけることとなる。
それに気付いた緑の騎士が、矢を撃ち落とさんとこちらに近付きながら得物を振るって来た]
列毎に時間差射撃!
装填による隙を埋めよ!
[絶え間なく舞う矢は半数以上が撃ち落とされるものの。
捌き切れなかった分は天馬に、緑の騎士自身をも襲い、遂には地面へ墜落するように滑空した。
徒歩となったにも関わらず、緑の騎士に闘志は宿り続けている。
弩部隊は近付かれてしまえば為す術もない]
───放て!
[ならば先程と同じように連射を繰り返すより他無い*だろう*]
[矢を浴びせ続けた緑の騎士は別の標的を見つけたらしく、ソマリの方まで来ることは無かった。
それは限界に近かったソマリにとってありがたく、維持出来なくなった兵を掻き消しながら前線から引いた]
───見事なものだ。
[少し引けば見渡せる、緑の軍団を押し返す者達の姿。
流されるでなく自らの意思で戦う者達、互いの
想いの力がそれぞれの中で光り輝いていた]
[前線から引いた後、後方たる赤の亜神が在る方を見る。
フェリクスが見たことも無いものに乗り、空へと舞い上がるのが見えた]
……あれが、滑空機、か?
何と気持ち良さそうに飛ぶのだ。
[あれが本来彼が指揮する軍団なのだろう。
空を制するその姿に、ソマリはしばし見惚れた]
[途中喇叭の音に頭を痛めたものの、それを打ち破った者達により緑の亜神は羽根を散らせて消え行く。
反対側の赤の亜神も同じ頃、霧となり消えたか。
二つの亜神が消えた後、幾許かの静寂が降りてきた]
あぁ───終わったのだな。
[緊迫した空気が溶けるように消えて、ソマリは安堵の息を吐く。
途端、手の中に握り込んでいた宝玉が震え、ソマリの手を持ち上げるかのように浮力を持った]
なに───ッ
[開かれた掌の中では宝玉が淡い光を放っていて。
掌から浮かぶと、とある方向へと向かい飛んで行ってしまった。
ソマリはただただ、宝玉が飛び行く方向を*見詰める*]
空と共に生きる、君の話を──
[囚われていた自分を解放してくれた彼のことを、空を愛する彼の国のことを。
叶うならば聞いて、心に留めたいと、そう思った*]
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