情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 6日目 7日目 エピローグ 終了 / 最新
[浮いている女性は、振り替えると、はっきりと私を見て、弱々しくだが声を掛け、そして名乗って来た。
私の声に反応し、私を見て、私に話しかける。
それは、おそらく、二人が近い状態にある、ということだからこそなのだろう。]
そういうこと…なんだろうね。
アイリスさん、かあ。アイリさん、って読んでもいいかな?
私、そっちのほうが呼びやすいし。
[怯える彼女に、なるべく優しく声をかける。
もっとも、私にも正直、何がなんだかわかっていないのだが]
[どうやら、少しは落ち着かせることができたようだ。
表情も少し明るくなり、声>>+5も相変わらず小さいが先ほどのような不安定さはなくなっていた。]
そうだね…。こうして話せるだけでも、気が楽になるし。
二人いれば、この状況も何とか出来るんじゃないかな?
[何がどう何とかなるのかはわからないが、励ますように言う。
その言葉は、自分自身にも小さな励ましになった。
移動しましょう、と言われ、部屋を見渡す。
確かにこの歪んだ暗黒の空と、先ほどの乱戦の影響か壊れた照明により、部屋は暗闇に閉ざされている。
お世辞にも、長居したい環境ではない。
明るく頷き、彼女について展望ラウンジを出た。]
[そのまま、メイン・サロンを出て、宙に浮かびながら、どこへいくともなく一緒に移動する。
宇宙開発黎明期の、宇宙船の中のようだ、と、状況には不釣り合いかもしれない他愛もない話をしながら思う。
こんな風に、他の人たちも旅をしたかったはずだ。
人狼なんかに、煩わされることもなくーー。
話を続けながら移動するうちに、アイリの表情も、最初の不安げな様子から、幾分かほぐれて来ただろうか。
「"人狼"の事……知ってますか……?」と、アイリが聞いて来た。
一応、こちらも生物学者であり、入船の時に前の人がやけに時間がかかっていたー弓矢か何かを持ち込もうとしたのだったかー時に読んだ、"うぃき・うぃき"の知識もある。]
確か、脳に寄生して、人間の精神を凶暴化させ、身体能力も向上させる…って話だったかしら。
治療法はまだ確立されてなくて、寄生されたが最後、人狼という人間を襲うことが至上目標となる存在に、なってしまう…。
[そこで、口を閉じる。知識はあったほうが良いが、無用に恐怖を煽ることもない。今の私たちが何をしたところで無駄なのかもしれないのだから。]
ーメイン・サロンー
[そのあとも話を続け、気がついた時には再びメイン・サロンへと戻ってきていた。
先ほどは誰もいなかったが、今は数人の人間がいて、スープを配っている人もいた。
アイリの呟き>>+7が聞こえる。
ほとんど無意識な声だったのだろう、その声はとても小さかったが、なんの拍子にか…の耳に入った。
食べさせてあげたいものだが、この身ではそれもままならない。
その声は、聞こえなかったことにした。彼女自身も、呟いたことにすら気づいていないかもしれない。]
[そのまま、スープを配っている料理人らしき人のところへ行ってみる。
近づいてみると、随分若くみえる、いや本当に若い女性だった。]
この人が、料理人さん?
はー、随分お若い…。
[そんな風に呟きながら、何気なくスープ鍋に目を落とすと、
そこには、黒やら白やらの色の混じった物体…いや液体?が入っていた。]
へ?
[思わず二度見して、さらに三度見してしまったが、そのあからさまに怪しい物体がスープであるようだ。
しかも、そんな見た目であるにも関わらず、周りの人々は気にしていない。]
味は…ふつう、なのかしら、ねえ。
[…は、そう呟くしかなかった。]
[そんなことをしていると、後ろから、アンリの声>>+8が聞こえて来た。
そういえば、私はレストランに行こう、と考えていた時に何者かに襲われたのだった。
あの学生がやたらと推していたレストランだろうか。
もう食べられないのは寂しくもあるが、そこまで食にこだわりがあるほうでもなかったためか、大した未練はない。
その声に、わずかに見えた湿りは聞こえなかったことにして、答える。]
そうだね。私も一度行って見たかったし。
私の知り合いが言うには、「見るだけでその凄さが伝わる」料理を出すレストランがあるって話だったよ。
[努めて、明るい口調にする。
アンリに心配を掛けない為でもあり、自分自身のメンタルを保つ為でもあった。]**
[メイン・サロンを出て、レストランへと向かう。
それにしても、さっきのスープは、何だったのだろうか。
アンリはやけに自然に受け入れていたが、私は断じてあれを食べ物とは思えない。]
(まあ、楽しそうで何よりか)
[相変わらずあまり目は合わせてくれないが、見た限り最初の不安定さは収まって来たように見える。
そうして、レストランに着き、アンリと足を踏み入れたところで、アンリの表情が凍りついた。
その理由は、直後に私も知る。
レストランの中空に、乗員とおぼしき若い女性が、浮かんでいたのだ。]
[「どうして…………あなたが…………」
アイリが呟く。
それに応じるかのように、乗員らしき女性もアイリの名前を呼ぶ。
どうやら、この二人は知人同士であるようだ。
互いの死を悲しみ、互いに謝っている。
この時間は、そっとしてあげるべきだろう。
やがて、会話の中で女性の名前を知る。]
(ベルさん、かあ。)
[どこか、優しげな雰囲気の名前。
この、自分の咎ではないことまで背負ってしまうような女性には、よく似合っていた。
やがて、二人の会話も一区切りついただろうか。
私は声をかける。]
ベルさん、私はオクタヴィア。
まあ、こんな状況だし、協力して頑張ろうね。
情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 6日目 7日目 エピローグ 終了 / 最新