情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 6日目 エピローグ 終了 / 最新
――昨夜のこと――
……早く、眠ってしまったほうがいいですよ。
俺と二人で眠ったとか、あらぬことを言われるのも、あなただって面白くないでしょ――
[毛布をかけて眠りを促そうと、椅子を立ち、クララの元へ向かう。
それが最後で、最期だった。
腕を回されて、心臓が跳ねたのがなんと甘い考えだったことか。
すぐにそこは跳ねる間もないほどに脅かされることとなった。
みしり、めき、と背が嫌な音を立てた。痛い、というよりも圧迫で呼吸ができないほうが苦しい。
クララの声は聞こえてはいたが、反応するには酸素が足りなかった。]
っ、あ"――
[低い呻きが、喉を震わせる。
全身が悲鳴を上げるのが聞こえて、その力に抗うことすらできずに、耳朶に触れる歯の感触に眉を寄せた。
お腹が空いた。ああ、そうか。狼の食欲の前に、ただ無力な餌でしかないのだ。
いまなお頭の芯だけが妙に冷静で、自分のミスを探していた。
部屋に入れたことか。いや、部屋の位置を教えたことか。クララに添い起こしたことか。
――よもや、この村に来たこととは、思いたくない。]
――それから――
[ずっと、眠っていた。
目覚め方を忘れてしまったように、ただ、ずっと。
その眠りを覚ましたのは、"声"だった。]
(――ヨアヒム?)
[そんなばかな。自分はあの時間違いなく死んで、彼も。
夢だ。そう思い込んで、また眠ろうとしたが、しかし。]
(夢も、悪くない、か)
[どうせ夢なら、と思わないでもない。
ゆっくりと立ち上がって、青年の姿を探し始める。]
――、 。
[誰、と問われて、いつも通り答えるはずだった。
見慣れない子だったから、また警戒されないようにと――すでに遅い気もしたが――しゃがみ込み、目線を合わせて、ニコラス、と答えるつもりだったのに。]
[それで、ようやく気づいた。
声を出すことが叶わない、という現状に。
死者なのだから、と言われれば当然かもしれない。
けれど目の前の少女は、話しかけてきた。
それは意思の疎通を図れるということで――自分だけが、制限されているらしいということに、つながる。]
情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 6日目 エピローグ 終了 / 最新