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放て!
[ 号令一下、弓と弩が、頭上の炎の鳥に向けて、放たれる。魔力を纏う鳥を墜とす事はできずとも、下には魔法を使うベリアンやシェットラント、そしてシメオンも控えている。
彼らがその力を揮うための隙を作ること、それが軍勢の役割だった* ]
なん...?!
[ 上空の魔鳥への対処に追われている間に、更なる異変が地に現れていた。
魔法陣から伸びた亀裂と、湧き出す魔物達、更にその先に、力任せに大地を引き裂くかのようにして、姿を現す奇怪な城塞......>>177 ]
.........!
[ その城塞に座す相手の姿が目に映った途端、息も心臓も一瞬止まったように、男は感じた ]
(これは、夢か? だとしたらとびきりの悪夢だ )
[ 夢ではない、と、知らせるように、魔物がシェットラント達に襲いかかる。はっとして、男は声を張り上げた ]
殲滅しろっ!!
[ 男の思考停止と共に、動きを止めていた軍勢が、魔物を屠ろうと、再び一団となって動き出す。
単調な動きではあるが、シメオンの影をなんとか逃れた魔物を取りこぼさぬように屠る助け程にはなったか>>196 ]
[ その間も、男の目は、城塞の上の魔王に釘付けになっていた。
それが幻影ではない、と、未だ信じられぬというように ]
カナン・ディ=ラーグ...
[ やがて、底冷えのするような低い声が、その喉から絞り出され、その手に、長弓と光る矢が現れる ]
蘇ったのか...別の世界の魔王なのかは、知らんが......
[ あれは確かに魔王だと、男の記憶と魔の印が告げる。男は弓を引き絞り、カナンの額に狙いを定めた ]
...何者であろうと...何度でも滅ぼすっ!!
[ 光の矢は、嘗ての対決を再現するように、真っ直ぐに放たれた* ]
[ 渾身の気合いを込めて放った矢は、以前と同じく易々と魔王の手に止められたが、同時に、シェットラントへの致命の一撃を防ぐことともなったらしい。
意図せぬ事とはいえ、仲間の命を救えたことに、ほっと息をつく ]
(熱くなりすぎてる...)
[ 自覚はある、ある、が、血が沸騰するような感覚は容易には鎮められない。と、それを更に煽るような声が耳に届いた>>227 ]
俺を忘れた、と?
[ いや、忘れたのではなく、本当に知らないのか?...そう疑う心も奥底にはあるが、冷静に可能性を検討するには至らない。
そもそも、これが本当にカナン・ディ=ラーグであることが証明された以上、取るべき道は一つしかないのだ ]
忘れたと言うなら、教えてやる。
我が名は、ロー・シェン・アウルム・ド・レオヴィル。
嘗て、貴様を滅ぼし、今また、貴様を滅ぼす男だ!
[ 名乗りを上げると同時に、矢継ぎ早に、光の矢を続けて放つ、三矢を放ったところで、グリフォンを降下させながら長槍を握った。相手の拳は、魔力を物理的な力として放つ、そう知るからの牽制と、攻撃だ* ]
戯言かどうか...試してみろっ!
[ 「目」の挙動は視界に入っていたが、それには一切構わずに、長槍を両腕で揮う、狙うは魔王の首を貫く事だが、その前に、シェットラントの魔法が「目」に命中したのが見えた>>250 ]
シェットラント?!
[ これ以上動けそうにないと伝わるシェットラントのコエに、熱していた頭が少しだけ冷える ]
はああっ!!
[ そして、グリフォンと長槍の軌道は僅かに狙いを変え、震える「目」を完全に潰そうと、上からの突きを繰り出した* ]
[ 長槍が「目」に届くかと思われた、その寸前、怒りに満ちた魔王の蹴りが、グリフォンの腹を蹴り上げ、その勢いで、男はグリフォンの背から跳ね飛ばされる ]
うわっ!!
[ ばさりと、男の背で白い片翼が開き、その羽ばたきによって、城塞の下への落下は免れ、魔王の前へと降り立つ ]
は...目玉如きに取り憑かれていても、相変わらず態度だけは尊大だな、魔王。
[ 槍にシェットラントの
[ 腰を落とし、魔王の足元を払うように、長槍を横薙ぎに揮う ]
お前は、ここで何をしているっ?!
[ 右から左、左から右、時には旋回して同じ方向から二度、相手の足元を狂わせる事ができるまで、何度でも、槍を振り回しながら、声を投げる ]
お前の配下も、お前の城も、ここにはない!支配すべきものも、壊すものすら、本当には存在しない場所で、何をしたいんだ?!
お前は、本当に、自分自身の意思で、ここに居るのか?!
[ 「目」から解放したところで、この魔は、この世界にとって別の脅威であり続けるかもしれない。しかし、コレを操ろうとし、ある程度はそれに成功しているのだとしたら、やはり先に倒すべきは侵略者だ。
今はだいぶ冷えた頭で、男はそう思い決めて動いていた* ]
(思い出した...?)
[ 焔の魔の目が、覚えのある色を浮かべて男を見遣った>>264仇敵を見る魔王の目、その殺意を込めた視線に、何故か笑みが浮かぶ ]
は...!
[ 再び惑乱に囚われかけたらしい相手に、畳み掛けた槍の一閃が、恐れげなく踏み出した敵の足を捉え、次の瞬間、あっさりと籠手に弾き飛ばされる ]
つあっ!!
[ 熱っした溶岩が穂先から、男の上にも散って、浅黒い肌に、点々と、火膨れを散らした ]
俺が...知るの、は...!
[ 火傷の痛みをも振り払うように、頭上で槍を旋回させ、穂先に残る焔を払う。
語り続けろ、と、求める魔王は、しかし容赦の無い魔力を込めた拳を繰り出して、男の声を途切らせた>>266 ]
ぐ...!こんのぉっ...!
[ 身を逸らして掌底から放たれる衝撃を避ければ、連続した肘打ちが直接迫り、顎を掠める。
まともに当たっていたら骨が砕けていたろうと、思う間もなく、斜めに払い上げる手刀が迫り、堪らず翼を広げて飛び下がった ]
ぐあっ!
[ しかし、逃れた先に、手刀から放たれた衝撃波が追って来て、左の腰から右の肩まで、着衣と肌を一緒に切り裂いていく ]
あい、変わらず...!
[ 離れていなければ、裂傷どころではなく、恐らく体を斜めに両断されていただろう。冷たい汗を背に感じながら、しかし、男もまた、動きを止めはしない ]
物は、考えずとも、力だけは...余っているようだなっ!
[ 飛び下がった中空で、風と、襲って来た衝撃波の勢いまで借りて、身を捻り体全体を回転させながら、魔王の頭上へと飛び上がる。
以前にも使った技だが、今の男には翼がある。
ばさりと羽ばたけば、一気に高度は上がり、玉座の背後まで身を運んだ ]
ぬおおっ!!
[ 気合いと共に揮った槍は、玉座の上に伸びる「目」と魔王の背の両方を、一息に纏めて貫かんと狙う* ]
ちっ!
[ 黙って貫かれるような相手ではないのは知っていた。けれど、その動きはやはり人間の常識を遥かに超えている。>>274
「目」を守る事は元より、身を守るなどという考えすら無い、力を叩き返す事だけを目的とした暴虐そのもの ]
くあっ!!
[ 魔槍と化した穂先は、灼熱の中心を深々と貫いたが、それすらも相手を止めるには至らない。傷口から吹き出す炎に、槍の柄も男の腕も灼かれて、ジュウ、と嫌な音をたてた ]
殺して、滅ぼす、だと...?は...!
[ それでも、手を離すことはせず、炎滴らせながら、己が死を宣告する魔の苛烈な眼差しを、金の瞳が睨み据え、無理矢理に唇を歪める ]
笑わせる...なっ!
[ 言い切る前に、槍を掴んで振り回され、堪らず宙に投げ出された末に、城塞の床に叩きつけられた ]
ガ...ハッ!
[ 守るように身を包んだ白い翼が、いくらか衝撃を和らげはしたが、ぼきりと、胸の中で細い骨の折れる音がして、喉奥から鉄の味がせり上がる ]
げほっ!
[ 咳き込んだ唇からは、炎ならぬ赤い血飛沫が散った。
あちらも深手なら、こちらも満身創痍に近い。ここまで来て意識が飛んでいないのが不思議な程だ ]
笑わせる、な...
[ 眩く禍々しい光が、魔の右手を輝かせる。それでも死の恐怖は男の内には無く、唇に笑みを浮かべて、先に途切れた言葉の続きを吐く ]
忘れたんじゃない、お前は記憶を奪われ、唯の破壊の傀儡と成り果てただけだ...魔王...いや、やはりお前は...
レオヴィル王、ロー・シェン・アウルム・ド・レオヴィルの名において...我が友、我が同盟者たる、君たちに願う。
「目」に取り憑かれた残る1人は...人間ではない、俺の世界を一度は滅ぼしかけた魔王と呼ばれた存在だ。
倒したはずだが、何故ここに存在しているのかはわからない。
「目」の支配の元に、アレが力を揮えば、確かに世界は滅ぶだろう...だが、たとえ支配を逃れても、世界を守る意義など感じるやつじゃない。
[ 要するに、どちらに転んでも厄介な存在であるとの警告 ]
最悪でも「目」だけは潰す。だが、その後、俺が動けなくなったら...後は、君らに託す。
出来れば祈ってくれ、俺が、王妃に叱られないように。
[ 声は、僅かに笑みすら乗せて、最後まで、静かに力強く紡がれた ]
消せるものなら、消してみるがいい。
[ ここに、王妃がいたなら、何と言うだろうと、ふと思い浮かんで、笑みに別の色が乗った ]
(大丈夫だ、リー...)
[ 死んでやるつもりはない。命を賭けねばならないとわかっていても ]
お前を滅ぼした、人間の力...もう一度、教えてやる。
お前を滅ぼした、人間の力...もう一度、教えてやる。
[ 唇にこびりつく血を拭い、立ち上がる手に長い柄が握られる。
現れた、新しい自らの得物に目を向けた男の顔に驚きの色が浮かんだ ]
アヴァーンガルデ......?
[ 戦妃と呼ばれる、王妃アイリ・ファタリテートにしか扱えぬ筈の魔の大鎌...それに瓜二つの姿と気配を持ったそれは、一度も持った事は無い筈なのに、何故かしっくりと、男の手に馴染んでいた* ]
[ 唇にこびりつく血を拭い、立ち上がる手に長い柄が握られる。
現れた、新しい自らの得物に目を向けた男の顔に驚きの色が浮かんだ ]
アヴァーンガルデ......?
[ 戦妃と呼ばれる、王妃アイリ・ファタリテートにしか扱えぬ筈の魔の大鎌...それに瓜二つの姿と気配を持ったそれは、一度も持った事は無い筈なのに、何故かしっくりと、男の手に馴染んでいた* ]
/*
あははははw
そうね、ばれたらどっちにしても叱られるわねw
でも、うちの世界からは、まおーさましか来てないから、きっとばれない!(どや!)
[ 男の言葉は、魔王の記憶を今度こそ呼び覚ましたようだった。その端麗と言ってもいい顔に浮かぶのは、まさしく魔の笑み>>329立ち上る熱と力は、空気までも鳴動させ、大鎌を手にした男の足元まで揺れる ]
...侮ってはいないがな。
[ むしろ人間を侮っているのは、カナンの方だろう。だからこそ、男の言葉を、この魔は侮辱と感じるのだ。
だが、それを言ったところで、互いの間に理解が生じることはない。
そんな事は、とっくの昔に身に沁みていた ]
[ カナンがやおら「目」を掴み取り、呑み込んだ時にはさすがに目を瞠ったが、どこかで、それを意外とは思っていない己が居た。
むしろ、それを当然と...そうでなくてはならない、とすら感じる ]
どこまでも非常識な...
[ けれどあくまで声には呆れた響きを乗せ、両手に大鎌の柄を握り直す ]
いいだろう、望み通り、纏めて倒してやる!!
[ 魔の咆哮と共に瘴気混じりの暴風が吹き荒れる。それと相前後して、男は揺れる床を蹴り、暴風を広げた翼に受けて、跳んだ ]
うおおおっ!!
[ 大鎌を下方へと一度振り下ろし、下ろした勢いのまま半円描く形で振り上げる。瘴気の毒は、羽ばたく天使の翼により、いくらか吹き飛ばされ、薄められたが、魔の焔により焼けただれた表皮には、僅かな瘴気に当たっても、痺れるような痛みが走った。
痛みに耐え、魔の起こした風すら利用して、距離を詰め、宙で回転したことによって、勢い増した大鎌を、カナンの首を狩ろうとするかのように、横薙ぎに振り回す* ]
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