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― いつかの出来事 ―
[引き取られたばかりの頃は、何も思い出せない事に不安を感じる事の方が多くて。
特に、一人でいるとそれに囚われて──その結果、発作を起こす事が多々あった。
そんな時は大抵、縋るように括った尻尾髪を引っ張っていた。
実際に縋っていたのは、髪ではなく。
見えない記憶の中の、幼馴染の存在だったのだけれど]
…………?
[息が上手くできなくて、苦しくなってきた頃に、声が聞こえた。
それと共に視界が塞がれ、背が緩く叩かれる。>>162
言われている事の意味は、最初、理解できなかった。
それでも、呼吸を促される内に、少しずつ頭を苛む痛さも、胸の苦しさも鎮まっていって。
いつも通り、息ができるようになった頃、手が離されて問いが投げられた]
……だ……い、じょう、ぶ。
[掠れた声で、ようやく返したのは短い言葉。
そのまま、大きな若葉色の瞳でじい、と見上げる事しばし。
右手に尻尾髪の先をくるりと巻き付けて、ぐ、と引っ張った。
幾度も引っ張ったせいか、髪を括る青いリボンは解けかけて、物凄い有様になっていたが。
その状態で、ぱくぱく、と口を動かす。
声はまだ上手く出せないものの、口の動きは『ありがと』という短い音を象っていた]
[この発作の一件は、シロウと打ち解ける切欠となり。
それ以降は少しずつ、挨拶をしたり、言葉を交わしたりできるようになって。
気が付けば、養い親とはまた違う意味で懐くようになっていた。
飾らない感情の発露ができるのは、その現われ。
そうして、新たな日常の中で積み重ねた一つ一つの事象は。
見えないあかい色の向こうを追う事よりも、この場所で見える青の先を見る事を選ばせて、でも。
……何か足りない、と。
そう、思う気持ちは、棘のように刺さったまま、今でも片隅に残っていた。**]
― 旗艦ヴァンダーファルケ/司令官室 ―
[名を呼ぶ響きは、懐かしさを伴うもの。
それから綴られる言葉たちは、黙って聞いて。
どちらを選びたい、という言葉に、びく、と身体が震えた]
どちら、を。
[軍人として、この場に留まるならば、確かに邂逅は遠くないだろう。
ただ、それは互いの命の交差を伴うもの。
対峙して、感じた事。
あいつは、操縦士として、頭一つか二つは確実に抜きん出ている、という本能的な確信。
だから、対するならば手は抜けない──絶対に]
[対して、もし。
この場から退き、後方に下がるなら。
もしかしたら、平穏に会う事ができるのかも知れない。
でも、それは。
何もしない、というのと同義に思えて、ただ、逃げているだけな気がして]
……俺、は……。
[迷うような響きを帯びた呟きが漏れ、それから]
……俺、は。
……逃げたく……ない。
[空白を経て、零れたのはこんな言葉。
表情の翳りは消えてはいない、けれど。
若葉色の瞳には、意志の光の欠片が浮かぶ]
……ここで、軍人やめて後ろに下がれば。
多分……俺は、ラクなんでしょう、けど。
でも、それ、逃げてるだけ、ですよね?
戦いからも、あいつ、からも。
[伏していた目を少しだけ上げて、途切れがち、言葉を綴る]
……俺、ここまでで、二回、逃げてるから。
逃がして、助けてもらってる、から。
さすがに、三度は……情けない、かな、って。
[言葉と共に浮かぶのは、どこかへにゃり、とした笑み]
……俺。
髪、切ったのは、後ろを見ないために、で。
……でも、それだけじゃ、なくて。
引っ張られる後ろ、断ち切って。
ここで……この場所で、生きたいって、思ったから。
だから……。
だから、ここで、後ろに下がったら。
……逃げだしたら、どんな結果になっても……きっと、一生後悔すると、思うんです。
それは……それだけは、嫌、だから。
俺は、軍人として。
ここで戦う方、選びます。
この海と、空を護りたいって、気持ちは。
俺が、自分で選んで決めた事、だから。
[過去に繋がる髪を切り落としたのは、それへの決意でもあって]
……先、どうなるかとか、全然わかんないですけど。
ちゃんと、飛びたい、から。
そのためなら……覚悟、決めます。
[それは、覚えていないから、思い出せないからこそ言えるものなのかも知れない。
実際に思い出したなら。
遠い日の『約束』、ささやかな想い出たちが蘇ったなら──煩わされない、とは言い切れない、けれど]
……諦めちゃったら、届きっこないです、から。
虹の先、その向こう側なんて。
[子供の頃に語った事を思い出すように言って、小さく笑う。
表情はまだ少し情けなかったけれど。
声音からは、戸惑いの響きは消えていた。**]
/*
[ご飯食べて更新したらとてもとても眼福なものがたくさん見えて机をばしばししたいいきものの数→1]
さて、気合入れて行こう。
― 旗艦ヴァンダーファルケ/司令官室 ―
[途切れがちに伝えた思いの丈。
それにどんな言葉が返るか。
それが怖くない──とは、言えなかった。
だから、笑みと共にその一言>>325が聞こえた時──無意識、は、と大きく息を吐いていた]
[決めたなら、それでいい、と。>>326
自分の選択を肯定してくれる言葉がじわり、内へと染み入る。
虹の向こうを目指したい、という夢を語った頃の事を思い出されているとか、刻まれた笑みの理由は、知る由もないけれど]
……はい。
自分で、飛んで。
自分で、見てきます。
誰かにもらうんじゃない、俺だけのもの、見て、掴んで。
……忘れないように、刻みつけて。
[言葉と共に、右手は自身の左手首に触れる。
きちりと止めた袖の下には、養父の形見である翼を象った細工を通した鎖が巻かれている]
ちゃんと、それ、持ち帰ってきます。
……養い親殿には、話さなきゃいけない事。
他にも、ありますしね。
[無理に作ったものではない笑顔を向けつつ、こう言って]
あ……今のは、内緒ですよ?
[それから、慌ててこう付け加える。
なお、件の歌に関しては聞き及んだ逸話では知っているものの、実体験はないから]
……えーと。
そこは、覚悟しておきます。
[それだけ言うに止めて、それから]
……えっと……あの。
[ほんの少し、戸惑うような間を開けた後]
……ありがと、です。
[小さく小さく付け加えたのは、今一番強く感じている、素の気持ちを表す言葉、ひとつ。**]
― 水上機母艦クラーニヒ ―
[思いも寄らぬ形で、戸惑いは晴れて。
全部が全部割り切れた訳ではないけれど、覚悟は決まった。
出頭した本来の目的──間近で見て取れた敵艦の様子、統制の良さや、やたらと目と腕のいい者が乗艦している事などを伝えるだけ伝えて。
クラーニヒに戻ると、は、と息を吐いて空を見上げた]
……カッコいい事、言ってはみたけど……。
[実際にまた、対した時。
自分はどうするか、彼はどうするか、それは全くの未知数で、でも]
……逃げてたら、何もかわんないもんなぁ。
[あかい色の向こう側と向き合う事。
ずっと避けていたそれ。
久しぶりに起こした発作への恐怖感もあり、容易くはできないかも知れないけれど]
……思い出せるなら。
思い出したい……もん、な。
[シュテ、という短い呼び名が届いた時。
怖さの方が強くなったけれど、でも、確かに嬉しかった。
名前を聞いて、言葉にできないけれど、懐かしい、と思った。
敵対する陣営にいる以上、そして、同じ場所を──空を自分の戦う場としている以上。
それを知る事は、苦痛になるかも知れない……いや、確実になるだろう]
このまま、もやもやしたもの抱えてるよりは。
きっと、その方が、いいし。
[知る事すら叶わない可能性は、今は意識の外に蹴っ飛ばす。
そこまで考えたら、何にもできないから]
……俺は、今、ここで出来る事を、全力でやる。
[居場所と決めた海と空を護るために、出来る事をやる。
それが、目指す所に近づく術と信じて。*]
/*
さて、これでいつでも突っ込める……かな?
うーん、直接話す機会がないと、記憶戻るフラグが立たないんだよなあ。
どっかで海面に誘うとかして、直接話したいんだけど、その流れに持ってけるかしら……。
……てかな、年長保護者組、俺に対して色々盛り過ぎだろうあんたら、って言っていい?w
いや、養い親殿はやってくんだろなあ、とは思ってたけどさあ……!
あいがおもいよ!
― 水上機母艦クラーニヒ ―
[水上機母艦の位置は、陣形後方。
飛び立つ時を待つ翼の間を、忙しなく整備兵や技師が駆けていく]
ええ、俺は対空のみの仕様で。
どーしても持ってけ、っていうんじゃない限り、対艦は他の皆さんにお任せします。
[機体の装備について確認してくる技師に返す、口調は軽いもの]
……こないだの遭遇戦でぶつかったあいつ、速いんですよ、凄く。
重たいの積んでのそのそしてたら、追いつけない。
[それでも、表情は真面目に理由を説明すると、だいぶお熱だな、と揶揄われた]
……それ、どーゆー言い方ですか。
[冗談なのはわかっているが、突っ込み入れてから]
いや、ある意味当たってますけどー。
[敢えて自分でオチをつける。
出撃前の軽口の応酬は、緊張を和らげるための定番。
空に飛び出してしまえば、味方と言葉を交わす事もできない。
編隊を組んで飛んでいても、基本、一人だ。
その重圧に負けないように、他愛もないやり取りを繰り返す。
そうする事で、帰る場所が在る事を改めて感じ取る事ができる……とは、最初に配属された艦で聞いた事]
…………。
[ふ、と意識が横に逸れる。
居心地の良かった最初の艦。
今はもういない──自分に向けて『飛んで生きろ』と叫んだひと。
ああ、と思う。
ここにも、引けない理由があったっけ、と。
それは敵を討つとか、そんな事じゃなくて。
彼らも持っていた、自分と同じ気持ち──この海と空を護りたい、というそれを繋げなきゃ、というささやかな決意]
え?
いや、なーんでもないですよー?
[不意の沈黙を訝る声に、笑って返し]
さて、準備万端整えますか。
出遅れるわけには、行きませんもんねー。
[軽く言った後、前方を、それから、空を見る。
今は遠い幼馴染が抱いた決意は、知る由もないままに。*]
― 水上機母艦クラーニヒ ―
……戦艦と相対する前衛の援護をしつつ、敵空戦戦力を牽制、と。
基本はそれでいいんですね?
[飛んできた指令を確かめるように繰り返す。
妙に愉し気に見える表情に、整備兵が物凄く物言いたげな視線を向けてきた]
……任せてもらいましょうか。
俺、そーゆーの得意ですから。
[に、と笑って返した言葉に、向けられたのはうわー、とでも言いたげな視線だったが、それ以上は何も言う事なく。
海面に下ろされた愛機の操縦席で、呼吸を整える]
……先がどうなるかなんて、わからないけど。
今は、迷わない。
俺は、俺の決めた事を貫いて、飛ぶ。
[目を閉じたまま小さく呟き、息を吐いて。
右手を添えるのは、左の手首]
……よっし。
シュテルン・シエル少尉、出ます!
行きますよ、
[お決まりの文句と共に、海から空へ、碧から蒼へ向けて、飛ぶ。
それに続いて、同じ志を宿した翼が蒼へと舞った。*]
[碧から蒼へと舞い上がった翼は、それぞれの役割に応じて散っていく]
さあて。
……出てきます、かね。
[単機、敢えて目立つ動きで飛びながら探すのは、先に見えた機体。
出てくるなら、自分の所にくるような、そんな気がしていた。
出てきた時にどうするか、どうなるかは文字通りの出たとこ勝負、と割り切って。
今はなすべき事のために、
[飛び立った翼に応じて舞うのは同じく翼。>>455
碧を揺らす砲弾の音に、蒼を裂くガトリングの爆ぜる音が重なり、熱気を齎す]
……ついてこれると思うなら……。
[目立つ動きに引かれた敵機が、回り込もうと上から近づいてくる。
対して浮かべるのは、笑み]
やってみやがれ、ってもんですよ!
[敵機の機動に対し、取るのは旋回による回避──ではなく、前方への加速。
そこから不意を突いて機首を下げ、機体そのものの高度を下げ。
こちらを追い越させた所でその背後へと喰らいつき、舞い踊る銃弾を喰らわせた。
着弾を確認した後、機首を上げて上昇する。
一手誤れば己が危うい機動。
それを制するのは、天性の勘と本能とでも言うべきもの。*]
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