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◇2dイベント
[幻影が紡ぎ出される。
あなたの相方が魔界の瘴気に肌を灼かれ苦悶して死んでゆく姿だ。
頭の中に魔王の声が届く。]
「 その光景は遠からず現実となろう。
おまえがその者と共に在り続けたいと望むならば、その者の魂を半分、我に捧げると誓え。
そうすれば、我が庇護を与えてやろう。 」
[どれほどの時間が経ったのだろうか。
少女が目を開けたのなら、少女を起こそうと寄り添って体を揺する男性が目に入るだろう。
そして彼女を取り囲む歪な空間にも気が付くはずだ。
それは、巣≠ニ形容するのが最もあてはまる空間だった。
枝や蔓で構成された、空っぽの空間。足元は枯草や羽毛が敷き詰められていて柔らかいが、壁ではいくつもの棘が剥き出しになっている。枝や蔦は頭上にまで及び、太陽の光を遮っていた。
人間の姿をとった大鷲は、先ほどまで持っていた荒々しい戦意が消して代わりに蕩けるような不思議な目をしていた。]
おはよう。フレデリカ。
[そう呼ぶことが当然だとでもいうように、名前を呼ぶ。そしてまた、それも当然なだといった態度でフレデリカを抱きしめた。]
従者 ウェルシュは、闇を綴りしもの を投票先に選びました。
[意識の水面を揺らす何者かの声。
優しさに満ち溢れているようで、その実、隠しきれない悪意が感じ取れた。
起きたくない、でも起きなければ―
理性と感情の狭間で揺れ動き―]
…、?
[誰かに揺さぶられ、徐々に意識が覚醒する。
身体に走る痛みは、嵐が直撃した際、全身に裂傷と電流を喰らったせいだろう。
そこまでは把握できたのだが、瞳に映る景色は渓谷の空でも、湿地帯の空でもなかった。]
…ウェル、しゅ、
[人の形を取った従者の瞳には、先程までの殺気も敵意も感じられない。
元に戻ってくれたのだろうか、安堵の息を吐いて―――――固まった。]
……ウェルシュ、あ、貴方本当に、ウェルシュ、なのですか…?
[違う。
彼は、私を姫様と呼ぶ。
どんなときでも、いついかなる時も。
熱い抱擁を受けながらも、底知れぬ恐怖に駆られ逃げようとした…だが、傷ついた体に力は入らず、身じろぐだけになってしまう。]
それに、ここは一体…!
[危険だ、今すぐ逃げないと、キケンだ。
脳内で警報が鳴り響き、手に汗が浮かぶ。*]
そうだよ。ウェルシュ。
忘れちゃうなんて酷いなぁ。
今までずぅっと一緒に居たのに。
ここは、お家。急いで作ったから少し出来が悪いけど、前の家よりもずっといい所だよね。
[抱きしめる手を離して、うんうんと一人で勝手に頷きながら話し出す。
姿こそ人に戻ったけれど、明らかに様子がおかしい。だけども、そのことに本人は気づかない。]
狭いって思う?
これから子供も増えるもんね。
ねぇ、子供の数どうしようか?
こっちは1〜2匹でいいと思ってるんだけどさ。おまえがもっと欲しいんなら、頑張るよ。
[力が入らず動けないのをいいことに、フレデリカの身体に触れ始める。腹の辺りに手が触れると、慈しむように撫でた。]
そりゃあねぇ…。
言わせないでよ恥ずかしいなぁ。
フレデリカ、大丈夫?寒い?
[鳥肌の立ったフレデリカの腕を、温めようと撫でていく。少女の内心の嫌悪や恐怖には気がつかないのか、はたまた知らぬふりを決め込んでいるのか。]
…これから温かくなることしようね。
[腕を掴んだまま、服のボタンに触れる。浮かぶ笑顔は悪意からでは無く、ただ純粋な喜びから湧き上がった。**]
なぜ…何故なのですか!?
何処の誰とも分からない男に身体を開こうとしているのに!
私は…私は姫様が幼い頃より、ずっとお慕い申してきました。
私の方が姫様に相応しい!
[予想外の抵抗に目を見開いて、声を張り上げる。
食いしばった唇から血が滲み、仇敵を見るように睨む。
一度鎮静した闘志が、舞い戻ってきた。
空気中を電流のように敵意が伝う。]
…私と共に生きてください。
私を受け入れれば…、生き延びられるはずです。
この騒動の原因…魔王は…仰っています…。フレデリカが、瘴気で焼かれ、死ぬ…のを。
何故…何故、私ではいけないのですか…?
[搾り出すように掠れた声で訴える。何故、と問う彼の目から涙が零れる。それと同時に空間に張り巡らされていた緊張の糸が切れて、先程までと違う、縋り付いて泣く男だけが残された。]
パリンッ…!
[巣が、二人の世界が破裂する。
光を遮っていた枝が、蔦が、崖の下へと落ちていく。
そこは、先程までいたものと同じあの崖。状況は相変わらずのままで、崖下には湿地が、上には蠢く森がそびえている。]
姫様…、申し訳ありません。
少々悪い夢を見ていたようです。
お乗りください。今度は…、大丈夫です!
[空間が開けると、大鷲の姿へと変化する。羽を大きく広げ、辺りの瘴気を軽く吹き飛ばしながら、主人の指示を待つ。]
[誰かの目に、留まっただろうか。
大鷲が空を翔けていく。ただひたすら南を目指して弾かれたように。
大鷲が通った後の道は、一瞬だけ瘴気が薄くなってまた戻っていく。ただ、それが繰り返されていく。
援軍は果たして見えただろうか。
この状況から逃れる術を見つけたのだろうか。
大鷲の目は、澄んでいて迷いなど無い。今日この日死ぬことも、死なせることも考えていない。
生きる道を模索して、足掻くために飛んでいた。]
…ええと、姫様。
こんな時に言うのはおかしいかもしれませんが……、好きです。
[口にして照れ臭そうに笑った。笑ってしまったけれど、勿論冗談ではない。
気恥ずかしさを誤魔化す為にも、傷付いた彼女の為にも、羽を一振りして速度を上げる。
大鷲と少女は、そのまま南の彼方へと飛び越えて行った。
「 よき執着ぶり。
さらに悶え楽しむがいい。
絶望に泣く姿を晒すのもまた一興。 」
[魔王の声が遠ざかってゆく。
今のところ、直接、手出しをするつもりはないようだ。]
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