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ええ、頼りにしています。
村のことも、パンもね。
また明日。
[雪見に北国を回る理由は、結局話さなかった。
ここにいればいつか話すだろうかと、楽観的にパン屋を離れ。
宿につけばアプフェルブロートにかじりつく。
そこにはアルビン以外にも、見た顔見ない顔いただろうか。
求められれば挨拶も、酒の酌み交わしもしたし、旅の話も、したことだろう*]
――そして――
[旅疲れは思ったより深かったのか、とかくベッドに入るなりよく眠った。
夢を見たかも覚えていないほどだが、幾度も鳴るけたたましい鐘の音が、ついにその眠りを破る。]
っ……!?
[跳ねるように起きて、寝巻き代わりにしているぼろにケープとストールだけを羽織って駆け出た。
何が、と問いかけてもまだ混乱のさなかか、詳しくはわからず。]
[人が続々と集まること、それから村長らしきが現れたことで、ようやく"避難"という行動だけを理解する。
訃報を聞いても、どちらも顔が思い浮かびはしなかった。
少しだけ、旅人という立場を物悲しく思う。]
……俺がここの人たちより先に出るわけにいかないでしょう。
指示さえいただければ、誘導くらいは出来ます。
手伝わせてもらえますか。
[パメラが共に向かうことになった>>46だろうか。
混乱は訃報を受けてさらにひどくなったが、しかし避難誘導をはじめれば徐々に人間は動き出す。
――人が死んで、何から逃げるというのか。
その違和感の答えを、自分自身で出すよりも早く、目の前の大雪の山が――!>>40]
[暴力的な白は、視界を染めて――残された自分はただ、そこに立ち尽くしていた。
現実に引き戻してくれたのは、誰か人を、と叫びだしたひとり。
そうだ。このままではどうしようもない。
ひとまず戻らなければと、宿への道を駆け戻る。
雪に埋もれた者の救助は、残された村人たちに任せた。
どこの誰なのか、どういった状態なのか、自分よりも詳しいのは明らかだからだ。]
――すみません、手を貸してください!
雪崩が! 巻き込まれた人もいます!
[宿の戸を力任せに開けるなり、そう叫んだ。]
――宿・雪崩の後に――
ああ――よかった。
[昨日、パン屋で見かけた少女>>91だ。
幼い彼女が無事だったことに胸を撫で下ろす。
また警戒されないだろうかと思いながらも、視線を合わせるためにしゃがみ込む。]
俺はニコラス。昨日はごめんね。
……村が、大変なんだ。大人の人を呼んでくれるか……いや、誰が無事か、教えて……
[万が一外に呼びに行っての二次災害は避けたい。
ここにいる、無事な人間を問う方がよさそうだと質問を切り替えた、その声を遮るように二度目の轟音!]
――! まず、い
[その音にはっと振り向く。
まさか。一度では済まないと――?]
[男の腕の中抱えられた少女は、またこちらを警戒したろうか。
傷を負っているらしい当の男に雪崩からの救出を頼むつもりは毛頭なかったが、他を探すよりも、第二波のほうが早かった。
舌打ちしたくなるのを抑え込み、改めて彼と少女へ向き直る。]
……お聞きのとおりです。巻き込まれた人もいる。
これ以上の被害は避けたい。無事なら、ここを離れないで。
[目の前の男は、すぐさまに思い出すには雰囲気が変わっていて、今この状況では既知とは思い至れない。
ただ、ひとりでも無事な人間として、頭の中に刷り込んだ。]
シモン……?
[それから告げられた名前を、脳内から探す。
南町で飲んだ兵士。年単位で前というが、南というなら夏頃だ。こうした時系列の整理にもこの渡り鳥は悪くない。]
――ああ、あの。
[思い至ったのは、丁度当たりの進攻にと、一帯の地形、村や街の状況、気候の様子等々を、自身の見聞きでまとめたものを話した兵士。
それだけでなく旅話や愚痴や世間話などで、良い夜を過ごした記憶がある。]
無事、というわけではなさそうだが、無事だったのか。
こんなところで会うとは、再会をゆっくり喜べないのが残念だ。
落ち着いたら、また一杯やろう。
[そう言って笑むのは、一度だけ。]
ここが故郷なのか。それは……ずいぶんと暖かいところで会ったものだな。
ヘマをと言ったって、こうして故郷で娘と暮らす生活を手に入れたんなら、充分じゃないか。
[出会った頃と少女の年齢は釣り合わないが、娘を残し戦地に赴くこともあるだろうと推測する。
教会の神父も戻ってきたようなら、また安堵をひとつ胸に落とした。]
[何人かが宿に戻ってくる。
アルビンが雪崩の状況と、村人の現状を伝えてくれたのはありがたかった。]
……君も、避難にあたってくれていたのか。
無事なのは、どれくらいいる?
ここを出ないにしても――巻き込まれた人たちはどうする。
[顔見知りと、昨日言葉を交わした相手と、緊急事態とが重なって、すっかりと他人行儀な敬語は抜けてしまった。
ただ現状に対する報告と見解を、端的に聞く。]
――宿――
[アルビンの言葉>>184はうまく聞き取れず。
聞き返そうにもクララの挨拶>>179があったので、ちらと視線を向けただけだった。
が、続く本の話>>186には、それはそれは紅茶を口に含んでいなかったことを神に感謝したことだった。]
はは……そうですねえ。
例えばですけど、その本、『ひとつなぎの空の下』とか『ジュブナイル考察』とか、そういうタイトルだったり、しません、よね。
[冷めていく紅茶はこの問いかけにNoが出ないとまだ飲めそうにない。
ちなみに前者は各地の地理や生活などの差を列記したもので、後者は民話や伝記、伝承の地方での変化を考察した一冊だ。]
[いくつかの会話が交わされるのを聞いていた。
自分はこの場において何ができるのかを、考えたりもしていた。
雪崩に巻き込まれたものもいた中、助かった部外者に怒りや憎しみを向けられずにいたことはありがたいと言えた。
人狼、氷漬け、死体。周りが口にする単語はどれも物騒だ。ああ、いや――本の話は、また別件だが。]
……おや。
[駆け込んできた小さな少年>>187もまた、雪崩のある種被害者だろうか。
親を探しているようだったが、しかし該当する人物はいないようだった。
軽く眉を寄せてから、唇を湿す。不甲斐なさを、覚えないでもなかった。]
[――先ほどまで吹雪いていた空は、いつの間にか回復したようだ。
が、こうした土地柄であれば、いつまた吹雪いても可笑しくはないと思えた。
宿に部屋を取るものもいたようだが、ただ、自宅に戻りたいとする意思も理解できないではない。
なので止められはしなかった。何より、その吹雪は推測でしかなく、ここの村人の実体験には遠く及ばないものだったから、判断は彼らの経験に委ねた。]
――……。
[自室そのものがこの宿である。ある意味では他に行く場所もないな、と小さく息をつきながら、村長らしき男の言葉>>227を思い返す。
パメラと話していたことが、まさか本当に現実になるとは思わなかった。
雪解けまでいる、だなどと言ったが、今は胸のうちに言いようもない不安が淀むのを、止められなかった。]
[紅茶のカップを返して、ありがとうと一声告げると、自分も部屋に戻ることにした。
階段を軋ませ、上へ向かう。そろそろ開け慣れた部屋の扉に、鍵を差し込む。
自分の荷物がいくつか置かれた部屋は、この騒ぎの中でも平常を思わせた。
一息つけば、自分が想像以上に緊張していたことを思い知らされる。
そういえば、騒ぎもあって朝食を忘れてしまっていた。
昼食が出るなら、喜んで向かおう。
それまでは集中と鎮静も兼ねて、いつかまた本に載せようと、新雪に洗われた、村の姿を窓から黙々とスケッチしていた。
どこかの部屋ではその本が、アルビンの子守唄――いや、睡眠薬になっているだとかは、知らない**]
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