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[躊躇いながらも甘い言の葉が注がれれば心は揺れる。
我が主、と呼び、忠誠を誓わんとする相手に欲を懐く。
漏れる吐息が熱を帯びるのを知るのは野茨公ただひとり。]
私の心を溶かし乱すのは――貴方だ。
望まれずとも我が心は我が主のもの。
嗚呼、けれど――…
貴方だけしか見えなくなれば
私は、きっと、嫉妬に身を焦がしてしまうでしょう。
[低い囁きに滲む響きを戯れと言う事は出来ず
今明かせる心のうちをひとつ晒して微苦笑を漏らした。]
飲みにくいなら、口移ししても構わないよ?
[血を厭う子の性質は良く知るもの。
戸惑うを見て囁く声は冗談の色を帯びるも、
首肯されれば言葉通りするつもりなのは明らかだ**]
またそのような戯れを。
[囁きに帯びた色から本気とは思えず]
溺れては困るでしょう。
[誰が、とも、誰に、とも言わず曖昧な囁きだけを残して]
[分身が此方に在るということは
野茨公そのひとは歓迎の正餐に居るのだろう。]
逢いに来て下さり有難う御座います。
では、あちらで、再び、……御目に掛かりましょう。
[距離をはかるように言葉選びに僅かの間が空く。
踵から蔓のびる野茨公の分身に礼をしてから]
では、参りますか。
[知らせをくれたヴィンセントを追うように部屋を出る。
その手には飲めぬままのグラスがあった。]
[サロンに向かう道中、
廊下の窓から見える花が赤く染まる事に気付く。
野茨公の趣向なのだろうとその時は深く考えぬまま]
嗚呼。
[一つ声を漏らした。
血のような色だと思うのは手元の“飲み物”から
その香りが漂い鼻腔をくすぐるからだろう。]
―回想/十年前―
[神子の訪れに教会の者は浮足立っていたように思う。
世話役のシスターに紹介したいと言われ神子のいる部屋に向かった。
その途中の曲がり角で、どん、とぶつかる衝撃がある。
驚きに目を瞠り何事かと視線を下げると子供の姿が其処にある。]
――…ん、怪我は無い?
[案じるような響きを伴う声を降らせた。
見上げた子供の眸には大粒の涙と頬に流れる跡。
泣いていたのだと分かれば怖がらせぬよう微かな笑みを見せた。
やわらかな布から伝うのは濡れた感触。
顔を押し付けた子供の名も知らぬまま抱きとめてあやすようにその背を撫で遣る。]
大丈夫、大丈夫。怖くはないよ。
心細いなら傍にいるから……
[ひとりじゃないよ、と囁きをのせて泣きやむまでアデルに声を掛け続けた。**]
おまえの嫉妬に焼き尽くされるなら、それも悪くない。
[戯れる言葉の中に潜むのは熱情。]
この手にしたときから、おまえは私の命だ。
だから―――
[我が子にだけ届くようにと声を押さえた呟きは
重さを振り払うような笑みに途切れる。]
おまえが私に溺れるのは歓迎するのだけれども、
まずは滋養を取るようにしなさい。
心配しているのだよ?おまえが倒れてしまわないかと。
[最後は年若い子を気遣う言葉へと変わった。]
[教会より掛けられし嫌疑。
教会にとっては相容れぬ敵ともいえる吸血鬼との密通。
野茨公と世に名を響かせる者であると知らなかったとはいえ
会っていたという事実はかわらない。
真実を知るまでは冤罪と思い無実を明らかにするために
誰にも何も言えぬまま教会から逃れたが
今は――、罪を犯したのだと自覚している。
弟のように思う存在にだけは言葉を残したかったが
只でさえ親しくあったから余計な迷惑を掛けたくもなく
神子という名にも曇りをつけることを惧れ断念したのだ。
だからこそ、未練が残る。
もうあわせる顔などない事を理解しながらも
アデルの安否が、気がかりだった。
そのアデルが今も無実を信じてくれている>>301とは知らず
目的をもち野茨城を目指しているとは思いもしない。]
[野茨公を善き存在と信じていたがゆえに
教会に足を踏み入れる行為が彼にとってどのような事であったかも知らず
確かな約束もせぬまま訪れる時期は彼の気分によるもので
その気まぐれを何処かで愉しみとしていたのを覚えている。
今にして思えば、彼に力があったからこそなせたこととわかる。
見上げていた存在が目線を同じくするまで
人間にとっては短くはない年月をその身に刻んだ。
教会での新たな出逢いもあり弟と思う存在を得て
教会の中でもそれなりの立場と関係を築けていたように思う。
家族の元に帰る事を希望にしながらも、このまま教会に骨埋める事も考えた。
――そんな矢先、父が危篤という母からの早馬での知らせがあった。
胸を苛む痛みが届いたのか、その夜、野茨公が訪れた。
これまで言われた事の無かった誘いを思わせる言葉>>341に
途惑い心乱れたのは『野茨城』なるその響きに覚えがあったから。
名高き野茨公の居城と噂に聞き及んでいたが
彼がその城の主である吸血鬼なのだと思えなかった。]
[野茨公そのひとであると思えなかったのは
思い込みによるものが大きいが――。
月の精霊、薔薇の化身と信じた存在から告げられた名しか知らず
彼のもう一つの呼称である『ギィ』という名を呼んでいたのも理由の一つ。
無知であったからこそ、子供であったからこその過ち。
敬称さえつけず親しげに呼びかけたその名を
血を受けてからは口にすることを止めて己を戒めている。
知らなかったからこそ無邪気に注いだ情は
血の親として敬うべき存在となった時に封じた。
救いの手を差し伸べた彼に対して
自分が出来る唯一は、忠誠を捧ぐ事と信じて――。]
[自室での囁きに驚いたように眸を瞬かせる。]
あなたを妬き尽す事など出来ない。
麗しきその御身を見られぬようになるのは哀しいし
甘美に響きその声を聴けなくなるのも淋しいから。
[野茨公を慕い敬う限り、彼を害す事はないだろう。
何処かで厭われる事を恐れていた。]
あなたの命、と思ってくれるのなら
この命も粗略には扱えない。
[糧を断ち潰えるを考えていた男は小さな吐息を零した。]
お慕いする我が主にそのように言われては
断ることなど出来ません。
この身を案じて下さるとは身に余る栄光。
――…、わかりました。
滋養をとるよう努力します。
[気遣いを受け入れるように、こくと頷く。
命令であれば、その場でグラスの血を飲み欲し
人としての未練も断ち切れただろうか。
心は声にせぬまま、ひとときの逢瀬に幕をひく。]
―サロンまでの道中―
[先を歩むヴィンセントの背をちらと見る。
野茨公に対してもそうだが公弟である彼に対しても
一歩ひいて後ろを歩くのを常としていた。
部屋で聞いた言葉>>331には驚きはしたが
彼にも魔の理を認められぬ時期があったと思えば
親近感のようなものを抱く。
ヴィンセントの過去を彼の口からきく事が出来れば
それが理を受け入れる扶けと成りえるだろう、とも。
血の香りに息を漏らし、歩みが遅れかけた。
ヴィンセントとの距離が開いたのを薔薇に気をとられたせいと思い
追いつこうと足早に廊下を進む。
餓えによる気怠さはあえて意識の外に追いやった。]
―サロン―
[ヴィンセントの所作は優雅に映る。
流れるようなその動きに見惚れかけるが促しに気付き先にその扉を潜った。]
失礼します。
遅れて申し訳ありません。
[謝罪の言葉を口にし、野茨公に一度視線を送る。
シュトラウス家の令嬢と、その子に恭しく腰を折る。]
ようこそ、歓迎します。
麗しき姫君にお目通り叶い光栄の至り。
ジークムント・ラウエンシュタインと申します。
以後お見知りおきを。
[柔らかな笑みを浮かべ客人に歓迎の言葉と挨拶を向けた。]
[教会には長く居たため教会に所属する者として名簿にも名を連ねていた。
神子を守る騎士としていずれ戦場に赴くという話もあったが
結局それは果たされぬまま姿を晦ましたのだけれど。]
――……。
[ちらと脳裏に過るのは神子アデルの貌。
ゆる、と首を振り、シメオンへと視線を向ける。]
野茨公の導きにより教会よりこの城に移り一年ほど。
至らぬ点も多々あるかと思いますが宜しくお願いします。
[子とその親である客人にそう付け加えた。
慣れぬ挨拶ではあるが口調は滑らかなまま。
教会という言葉にシメオンの表情>>348に揺らぎがみえた気がした。]
[何かに気付き動いた野茨公と公弟。
結界が張られて漸くジークムントも異変に気付く。]
これは――…
[敵襲、とシメオンの声が聞こえ
それにつられるように気を引き締める。]
[何かに気付き動いた野茨公と公弟。
結界が張られて漸くジークムントも異変に気付く。]
一体何が――…
[起こっているのか、と動揺滲む声が漏れる。
敵襲、とシメオンの声が聞こえ
それにつられるように気を引き締めた。]
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