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[宿の女主人は、珍しいものを見るような目でこちらを見ていたが、快く部屋を貸してくれた。
しばらく滞在するつもりだと伝えたら、村長の家や広場の場所を聞くこともできて、それだけで気さくなひとなのだとすぐに分かった。
2階の部屋の鍵を受け取り、荷物を抱えて部屋を確認する。]
――いい村だな。
[わずかに軋む階段を上った先、部屋の窓から雪の村を見た。
手帳とペンを取り出して、風景をメモしようとして――やめた。
少し先に十字架と人影が見える。あれが教会なのだろうと思えば、見て書き留めるより向かって触れることを選んだのだ。
荷物をまとめると、手帳と路銀袋と、それから鍵を小さな腰かばんに入れて、毛織のケープとストールを羽織って宿を出る。]
[教会への道すがら、時折こちらに視線を感じ。
余程他所からの旅人は少ないのだな、と伺えた。
どこかで遠く羊の鳴き声が聞こえた気もしたが――人の多い方に向かっているのに、羊飼いもないだろう。
逃げ羊がいるとは知らないから、空耳だろうと思い込む。]
――こんにちは。
暖かそうだな。
[教会と思われる建物の前では、炊き出しのスープが湯気を立てている。
神父服を来た男と何人かの村人。慕われているのかと、自然笑みが浮かんだ。]
[教会にいた村人が、驚きか物珍しさかでこちらを見ているようなら、しまったと慌てて咳払いをし。]
――すみません、ニコラスと言います。
雪の村を旅している最中で、ここへ。
しばらくレジーナさんのお宿に厄介になる予定でして、皆様にご挨拶をと出向きました。
[軽く頭を下げれば、視線は笑顔に変わっただろうか、それとも**]
はは、先程も別の男性にそう言われました。
けれどどうにも冬は、寒いところに来たくなってしまう性分なのです。
冬にしか見られないものですから、存分に雪を堪能しようかと。
[珍しい、と神父に言われてしまえば、少し弱ったように。
やはり真逆の渡り鳥は人目を引くらしい。
炊き出しのスープが渡されて、ゆるりと目を細めた。]
ああ、ありがとうございます、いただきます。
このような旅暮らしにまで、すみません。
[あたたかなスープは雪の中いっそう白い湯気を立てて、その香りごと胃を刺激してくる。
冷えた身体に染みるようだ。]
それと……人狼?
良ければ、少し詳しく聞かせてもらいたい。
[スープの器が早く空にならないのが口惜しい。
今にも手帳とペンを出して、話を書き留めたいのに*]
そうですね、きっと珍しがる方が、珍しいのでしょう。
だけれどこの村の人たちは皆あたたかそうでよかった。
この寒い中追い返されでもしたらどうしようかと思いましたよ。
[冗談めいていうが、実際そうなったら冗談どころではない。
暑いところに放り出されるならまだしも、寒いところは過酷がすぎる。]
面白い。こうした話は似たものを時折聞きますが……生き物が凍りつく、だなんていうのは、初めて聞いた。
冬に限る話なのですね。
満月の大猿――はまた、違う話のようですが。
[少し前の会話>>164>>166が聞こえていたのも含めて、神父の話を脳内で受け止め。
広く伝わるものと似通った伝承でないことに、関心は強くなる。
具体的かつ、他と違うことが語られているということは、単なる言い伝えの変化系とは言い切れない、ということだ。]
へえ……本にも。ますます、行かなければなりませんね。
[図書館の位置も後で宿の女主人に聞こうと胸に誓った。]
酔狂も時には、悪くはないもので。
それに取り憑かれてしまったのが、俺。
しばらくはお節介になるつもりでしたし、閉じ込められてしまったら、いつかの雪解けまで滞在が伸びるだけの話です。
毎日、毎日、毎日雪でも、この村の皆さんがいますから。
きっと飽きたり、嫌気が差すことはなかなかないでしょう。
[パメラの様子>>186には、苦笑しかなく。
酔狂には違いないので、自重も含んだものになっただろうか。]
……さて、先ほど紹介を頂いたので、俺はパン屋に向かってみることにします。
贅沢な胃が、スープにはパンをつけたいというもので。
[そうして軽く一礼すると、きょろ、と辺りを見。
あの時教わった方角を頭の中から引っ張り出して、教会を離れた。]
酔狂も時には、悪くはないもので。
それに取り憑かれてしまったのが、俺。
しばらくはお節介になるつもりでしたし、閉じ込められてしまったら、いつかの雪解けまで滞在が伸びるだけの話です。
毎日、毎日、毎日雪でも、この村の皆さんがいますから。
きっと飽きたり、嫌気が差すことはなかなかないでしょう。
[パメラの様子>>186には、苦笑しかなく。
酔狂には違いないので、自重も含んだものになっただろうか。]
……さて、先ほど紹介を頂いたので、俺はパン屋に向かおうと思うのですが……どちら側かわかります?
贅沢な胃が、スープにはパンをつけたいというもので。
[宿から見えた景色から、真っ直ぐ教会を目指してきてしまったので。
あの時教わった方角が、脳内の地図と噛み合わなくて、周りに助けを求めた。]
[神父が片付けを始める頃か。
改めてパン屋の方角を聞くことに成功して、ほぅと内心胸をなでた。]
ありがとうございます。
着いたばかりでなにぶん方向感覚もなくて。
[指された方向を確認すれば、通りを真っ直ぐと言う。
頷いて心得たと示し、また礼をした。
おじい様とおばあ様とパパに会いに、というパメラの言葉は、家族構成を知らぬために単なる訪問としか捉えられず。
身寄りのない身として微かに愛おしむような視線を向けたか。]
さて、俺も行きます。凍って、狼に食われてしまう前に。
[そう言って離れたのは、下手な冗談のつもりで。]
……おや、あなたも旅の方なのだと見受けたのですが。
[自分を旅人かと聞き、その上パン屋の主人を知るような口ぶり。
定期的に訪れる行商なのだろうかと、まだはっきりとした答えには行き着けないまま、疑問を口にする。]
雪見に訪れたと旅の目的を話したら、あちらこちらから物好きだと言われている次第です。
けれど、空腹には物好きも負けるものでして。
帰りが遅くなりそうだと、弱ったな。
[配達だというなら村中回るのだろう。
歩き回っても自分では見つけられないだろうし、すぐに戻るとも思えなかった。]
ここの方だったんですか。
それでも行商とはいえ帰ってくるのですから、故郷だと思いますよ。
すぐに発たれるので? それとも何処かに泊まられるのですか。
[行商人の足取りというのも興味があった。
自分の知らない土地の話も聞ければいいと、彼が滞在するのならば思うのだが。]
淋しいだなんて。よい村に見えますよ。皆一様に助け合って生きている。
人の営みのあるのに、どうして淋しいだなんて。
[そんなことが言えようかと、軽く首を振った。]
そう、ちょうどその教会に行ったんですがね。
スープにはパンだと、俺の腹が言うもので。
宿の料理も楽しみですが、まずはパン屋を勧められたものですから、来たはずだったんです、けどね。
[彼の勧めた選択肢は、ひとつは済み、ひとつは保留だった。
神父も勧めたパンだったので、残念な話だ。
羊の声に行商人も反応したようなら、軽く瞬いた。]
ああ、やはり空耳ではないのですか。
先ほども聞いたんですが、こんな人通りの所に羊の声がするものかと思って、気のせいだと思い込んでいたんです。
逃げ羊じゃあ、追った方がいいですかね。
――ああ、すみません。すぐに名乗るのを忘れてしまうんです。
ニコラスと。生まれはここから比べたら、ずっと南になります。
と言っても、暑すぎるような場所ではなく。果物のよく採れる、のどかな村でした。
[でした、と過去形で語ったのは、もう帰る場所ではないからだ。
だから帰る場所はあるか>>248と聞かれれば、静かに首を振っただけ。]
あの宿に。俺もしばらく厄介になります。
ご主人の料理は二人で楽しむことにしましょうか。
脆く崩れてしまうもの、ですか。
[その言葉は冷たい氷のように、一瞬脳の奥を冷やした。
きっと彼にも何かがあったのだろうが、邪推するでもなくその経験は自分の体験に重なって落ちてくる。]
はは、娯楽なんて。
雪見の物好きには、ここに辿り着いたことでも充分なくらいですよ。
けれど――もし本当に退屈したら、根無し草ですから、わかりませんね?
[次の瞬間にはその冷えを感じさせもしないで、冗談めいて笑う。
羊飼いの娘はよく羊を逃がすのだろうか。焦るようでもない行商人の様子に、騒動ではないと理解はしたが。]
そうですね、うまく捕まればよいのですが。
土地勘もありませんから、捕まえたところで俺は帰ってこれなさそうだ。
娘さんの無事を祈るばかりです。
[そして、そのうちに帰ってきたパン屋の主人。
アルビンと呼ばれる行商人とのやり取りに、故郷に戻ることのあたたかさを思う。]
仲がよろしいんですね。
[パン屋――オットーと呼ばれていた――とアルビンのやり取りに、耐えられずくつくつと笑った。
香辛料のパンは楽しみだが、しかし端から客観的に見れば、悪徳商人と良いカモ、といった構図にも見える。
何処までが彼らの"普段"かはわからないが、すっかり買う気のオットーはたしかにおっとりとした様子に見えた。]
パン屋さん。俺にもパンを売っていただけますか?
[店に入れば彼の持つ以外もパンも手に入るだろうか。
いくつか店の外からも見えるパンを見やりながら。]
[他の二人が少女を呼んでいるらしい姿に、もしか知らぬ姿の自分は怯えさせてしまっているだろうかと、はたと瞬き。
雪よけの帽子を脱ぎ、ケープとストールを引き下ろして、しゃがみ込む。
視線を合わせれば、少しは警戒を解けるだろうかと。]
またね。
[すっかり警戒されてしまったようだ。
しゃがんだままで見送っていたが、小さな挨拶一つもらえただけだった。
軽く手を振ったところで、パンが差し出された。]
ああ、ありがとうございます。失礼しました。
やっぱり物好きは珍しいんですかねえ。
熱々のパンですか。それに適うものはないですから、是非。
弱ったな、この村で行きたいところがいくつもある。
[けして広くはないような村、何処をそんなにと、村に住むものには思われるか、どうか。]
みたいですね。
他にももっと物好きがいてくれると、仲間が増えていいんですけど。
[訪れる人の少なさと、人見知りをする子供。
けれどここに留まるなら、折角ならばもう少し近く話が出来るようになろうと、静かに心に決め。
羽織りを元通り着込みながら、パンの香りを楽しんだ。]
ニコラスと言います。呼び名なんて、雪見の物好き、でも充分ですけどね。
行く場所ならいくらでもありますよ。明日もこのパン屋には来なくちゃあいけないし、今度こそスープとパンの取り合わせを楽しまなくちゃもったいないでしょう。
それから図書館にも用がありますし、羊飼いがいると聞いたので、そちらの様子も少し。
ほら、たくさん。
[いくつかは一度二度の訪問で事足りるかもしれないが、例えばこのパン屋には毎日通うかもしれないし、図書館の本も一朝一夕で読み終わりはしない。]
[そう話すうちに、アルビンは事を済ませたようだ。]
ええ、また後で。
……そうだ、宿の料理も食べる予定があるんですよ。
[ただ、毎日パンを買うとしたら、宿の料理を食べる日には、その日のパンを少し控えなければならないなと、苦笑した。]
宿の食事と美味しいパンは、俺にとっては充分娯楽ですから。
折角なので、戻って味わうことにします。宿の料理も本当に楽しみだ。
ありがとう。また、明日。
[そうして、パン屋を後にする**]
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