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僕たちのことは、覚えているんですね。
[それには、ひとまず安堵。
そして、続けられた言葉に息をのむ。]
記憶が飛ぶのが……初めてじゃない?
[それはつまり、記憶を封じないとならない経験を、積み重ねて来ているわけで。
いくら記憶がないからと言って、その時に感じる悲しさや苦しさは……変わらない。
いつでも殺せるよと、簡単に言うが、どれだけの葛藤を伴うのだろう。
以前それに頼り、安堵までしてしまった自分が悔しくて、情けなくて。
擦ってピリピリと痛い目に、再びジワリと涙が浮かんだが、唇を噛み、耐えた。]
ダーフィトを、Nルームに運びたいんですが、手伝って貰えますか?
[カークにそう言う。
記憶を失くしたとはいえ、一緒に来て、別れを言ってほしかったのだ。*]
……は?
[カークの言葉に>>45対し、あまりに間抜けな声が出た。
しかし、決してとぼけているようでも、誤魔化すようでもなく、逆にこちらが困惑してしまう。]
え、そこからだったんですか?
ダーフィトの首の傷、『人狼』によるものでしょう?
仲間割れで殺されたとかいう可能性を見るなら、話は別ですが。
[カークにそう伝え、横たわるダーフィトの顎をソッと持ち上げて傷を見せた。
それで、納得したのかは定かではないが。
Nルームへ運ぶという提案には、頷いて手伝おうとしてくれたため、ホッとして礼を述べる。
そして、その段になり、はじめてシメオンの義足がダーフィトによって撃たれ、故障していたことを思い出した。]
あ、そうだった……シメオン、歩けますか?
担架よびましょうか?
……あれ?
[その問いに返答はなかった。
何故なら、その姿はもうその場には無かったから。
そして同時に、医務室から若干距離のあるここへ、あの足で歩いてきたのかと僅かに驚いた。
ふと、ダーフィトの傍らに控えるスノウ>>6:182に、尋ねる。]
ねぇ、スノウ。
……ダーフィトがここにいるって、昨日皆に伝えましたか?
もしそうなら、そのとき、……皆はどこにいましたか?
[白い猫からの答えはなかったかもしれない。
しかし、ダーフィトから連絡が入りそうなカークはまだしも、シメオンが自分とほぼタイムラグなくこの場所にいたことに、疑問を抱く。
あの足で、歩くのならば、……時間がかかるはずなのに。
それはほんの一欠けらの疑念。
ダーフィトを連れてゆく間に、溶けて消
あ、そうだった……シメオン、歩けますか?
担架よびましょうか?
……あれ?
[その問いに返答はなかった。
何故なら、その姿はもうその場には無かったから。
そして同時に、医務室から若干距離のあるここへ、あの足で歩いてきたのかと僅かに驚いた。
ふと、ダーフィトの傍らに控えるスノウ>>6:182に、尋ねる。]
ねぇ、スノウ。
……ダーフィトがここにいるって、昨日皆に伝えましたか?
もしそうなら、そのとき、……皆はどこにいましたか?
[白い猫からの答えはなかったかもしれない。
しかし、ダーフィトから連絡が入りそうなカークはまだしも、シメオンが自分とほぼタイムラグなくこの場所にいたことに、疑問を抱く。
あの足で、歩くのならば、……時間がかかるはずなのに。
それはほんの一欠けらの疑念。
ダーフィトを連れてゆく間に、溶けて消えるほどの。*]
[何かを発した際、シメオンの白い顔から、更に色が消える。
ポツリと零れるように、吐き出された言葉は、音としては届いたものの、内容を聞き取ることは適わなかった。>>54
カークとシメオンの会話の"音"に、二人とも、言葉には言い表せられないような悲しみと懺悔が含まれるような気がして、ぎゅうっと胸が痛くなる。
彼らに、かける言葉を持たない自分が、何ともちっぽけで、無力で。
お互いに何かを吐露するような、その会話に入ることすら、できず、ただただ眺めていることしか出来なかった。
この船には、……もうこの三人しか、いない。
ハダリーが、仮に人狼だったら、ダーフィトを襲い、そして脱出船で逃げたのだろうか。
あれだけ、警戒していたダーフィトが、みすみすとそれを許したのだろうか。
ピアノの音源が入ったチップ。
ポケットに入れて持ってきていたそれを、無意識に撫でる。]
ダーフィト、……貴方を襲ったのは、誰だったんですか?
[その呟きは、彼らには届かなかっただろう。
……教えてくださいよ。
彼にも、決して届かない言葉を、一つ飲み込んで。]
[カークがシメオンを見送っているとは>>71知らず、間抜けにも声を掛けた後。>>51
カークが思案し、発した言葉に耳を傾ける。>>72
基本的に、仲間は殺せないと聞き、カークが人狼ではないと、ほぼ、確信した。
(変異種……だったら、仕方ないですよね。)
もしそうなら、カークを襲ったタイガも変異種ということになる。
タイガに始まり、カークに加えダーフィトもが『人狼』なんて……ウルトラミラクルアンハッピーな確率な訳で。
カークに手伝ってもらいながら、ダーフィトの身体をNルームへと運ぶ途中、ふと気になっていたことを尋ねることにした。]
……一つ、聞いてもいいですか?
その徽章と……記憶がなくなることは、関係しているんですか?
[上着の襟についた徽章に視線を向けて、尋ねた。
船医にしては、身分の高いそれを見て「それと引き換えに何かを犠牲にしてきたのだろうか。」と、以前にもぼんやりと思ったことを思い出しながら。>>4:215>>4:216
答えがどうであれ、彼への信頼は揺るがなかっただろう。]
―Nルーム―
[Nルームに並ぶ装置に、彼を横たえ、顔まで飛び散った血を、ごしごしと些か乱暴に拭く。
それはそうでもしないと、また涙が落ちて、彼の顔を汚しそうだったから。
手早く拭いて、エレにしたときと同様に、隈のひどい、血の気の失せた頬を撫でた。]
……あのときのチップ、……結局受け取ってくれませんでしたね……。
……酷い、人だ。
[そう呟いて、自分は怒っているのだと、泣いてやるものか、と唇を噛みしめた。
声は震えていたかもしれないが。
もはや、お決まりになった演奏に、見送った人間の多さを改めて自覚する。
ハーモニカを取り出して、すうっと一息。]
[ダーフィトは嫌がっていたが、構うものか、
勝手に死んだ彼への、ささやかな趣向返しに、やさしく奏でる、子守唄。
澄んだ高音が響き、シンプルな構成の中で、穏やかに、穏やかに繰り返されるフレーズ。
滲んでは溶け、滲んでは溶け……まるで砂浜に打ち寄せる波のように。
緩やかに眠りへと誘う、子守唄……。]
……おやすみなさい、ダーフィト。
[(そして、さよなら、ハダリー……。)
もう戻ることがないであろう彼にも、心の中で、そっと呟く。
両者とも、直接本人には言えなかった言葉を。*]
―Nルーム―
[カークが、自分の肩の状態を覚えていて、医務室に連行しようしていることには、気付きもせず。>>81
「関係があるといえば、ある」と、些か遠回しの表現に、うん?と一瞬首を傾げ、うんと頷く。
それ以上言うつもりもないような響きを持ちながらも、隠そうという雰囲気も伝わらなかったので、暫くは黙って後を続いた。
ダーフィトに処置を施す様子を見ながら>>83、ハーモニカを吹いた。その手はとても的確に、淡々と動く。
それはまるで、"単なる医師"の、それだった。
しかし、その曲も、終盤に差し掛かったそのとき。
いままで、どんなに悲痛な顔をしても、零れたことのない彼の淡い色をした両目から、ポロリと涙が零れる。
"……ああ。"
"よっぽど、大事なやつだったんだな…。"
そう呟くカークに>>84、ああ、そうだよ……と、柔らかい音色で宥めるように包みつつ、いつだったか、シメオンと、音は記憶を蘇らせると話したことを思い出す>>5:10
(見てるか、ダーフィト……さよならって、言ってるぞ。)
高音は、清く高らかに響く。
その反響とともに、ぽろりぽろりと零れる涙は……そっと見ない振りをした。]
[その後、カークは、少し赤くなった目をそのままに、ポツ、ポツ、と自分のことを語る。
"罪"を犯したと真摯な目をして告白する様に>>85、ごくりと唾を飲み込んだ。
"300年以上前" "ネオ・カナン" "風土病" "全滅" "寄生生物利用の治療"
それは、自分が思っていた以上に、壮絶で。
何の言葉もかけられず、ただただ息をのむことばかり。
しかし話が進むにつれて、まず自分で試したという部分には、盛大に眉を寄せ、口を開く。]
……貴方は、なんともないんですか?
[言葉だけを聞けば、不審に思っているように聞こえただろうか。
どこに行っても、いつのことでも、まず自分を犠牲にして他を顧みる姿勢に、呆れていただけなのだが。
回復力は、傷の治りが早かったことをみれば、納得できたし、あの徽章の意味も頷ける。
あまり喜ばしい内容ではなかったが。
記憶を失くす理由を聞いて>>86、ぐぐっと顔をしかめた。
つまるところ、彼の頭の中には、『ガルー』とは異なるが寄生生物がいるということで。
それには大きな動揺を感じたものの、恐怖や、不信感は、不思議と湧いてこなかった。]
"ただ、目の前の患者を…大切な友人を、"
"救いたかっただけだったのにな…"
"どうして、こんなことになっちまったんだろうな…"
[その呟きは、彼の心の底からの言葉だった。
酷くくたびれたように、俯いて、言葉をこぼすカークに、ペチンと軽く頭を叩き、ぐしゃぐしゃと掻き混ぜる。]
貴方の悲しみや、苦しみは、……僕は想像することしか出来ません。
きっと、想像でなんて、到底そんなものじゃないんだろうけど。でも……。
……でも、……この船で見た貴方は、……人のために駆けずり回って、人もために怒って、泣いて。
僕は、過去がどうであっても、とびきり優しい貴方しか知らないんですよ……。
[きっと、それが彼の本質だ。全部、全部、自分でしょい込む。
へらりと笑う、あの笑顔の下に、ぎゅうぎゅうと、押し殺してしまうのだ。
それが、当たり前で、ごくごく自然なことのように。
そして、誰かに責められるのを待っている。
自分は、それだけのことをしたのだから、と。]
……過去に貴方のしたことが、間違ってるって……僕には言えません。
責められたいなら……「なんて酷いことを」……って詰ってもいいけれど、僕がそこにいたら、やっぱり同じことをしたと思うから。
医者でも何でもない、僕がそう思うんだ。
助かるかもしれない可能性に賭けるのが、賭けたいと願うのが……お医者さんでしょう? それに……。
[そこで、一旦言葉を切った。
思考をよぎるのは、今までに装置に入った人たちの顔。]
毎晩、誰かを選んできた僕が、……何かを言う資格なんてない。
でも、もし不安なら……。
カークが人狼化したら、……僕が何としてでも、殺してあげますね。
[それは、いつだったか、彼の言葉に安堵した自分>>2:78に対する戒めの言葉。
手が汚れたら、ピアノが弾けない?だから大人しく殺される?
バカ言うな。
(そんなことよりも、彼が悲しむ方が、ずっとずっと辛いに決まってる。)]
それが、嫌なら、頑張って"闘って"ください。
[自分は、笑ってそういっただろう。
間違いを犯した手で、優しい音楽は綴れない。
……でも、悲しい記憶を封じられ、そこに立っている彼を思えば……それは間違いではなく、正解なのかもしれないし。
この場に場違いなくらい、にっこりと笑い、抵抗されなければ、随分先輩であるらしい、カークの髪の毛を再度、ぐしゃぐしゃと掻き混ぜただろう。
貴方を疑ってなんてないよと、伝えるために。
その後、信頼していると、言外に伝えられた言葉に、内心でありがとうと返し、肩を気遣ってくれるカークにこくりと頷く。]
……じゃあ、お願いします。
[たしかに、痛いことは痛かったので、ありがたく提案を受けた。
医務室に向かいながらも、何かポツリポツリと話しただろうか。
暫くし、到着した医務室で、カークの手当てを受ける。>>93
手際よく施される治療に、流石と賞賛の声をひっそりと上げつつ。
そして、カークから、差し出された紙を受け取った。>>93 *]
[治療を終え、グーパーと手を開け閉め。
心なしか、痛みが和らいだように思う。>>98]
ありがとう、カーク。
……何だか、肩も腕も、……すごく楽になりました。
[流石医者だなぁと、ほぅ……と感嘆の息を漏らす。
そして、差し出された紙に、さっと目を走らせた。
急いで書かれたものなのか、さらさらと走り書きされたそれは楽譜。
書かれた音符を、目で追う内に、その顔が不思議そうに歪んだ。]
……これは、あのときの……?
[以前通路で耳にした、あの曲の楽譜だろうか。>>0:132
自分でアレンジし、ハダリーに渡した、曲の原曲。>>0:158
それをシメオンが書置きする意味はなんだろう。
(……呼んでる、のか?)
一瞬、ざわりと背中に走ったものはなんだったか。
医務室で待つことなく、動きづらい足で歩き、……走書きを残す意味。]
[それは、なにやら直感めいたものだったのかもしれないが、すぐに意識から消え、以前、セッションしたいと話した会話を思い出す。>>2:85>>2:86]
以前、これと同じ曲を聴いたことがあります。
第二エリアの……ホテル近くで。>>0:149
それは、バイオリンの音で……多分シメオンが弾いてたんだと思います。
……よくわからないけど、呼んでるのかも。
だから、行ってみます。
[ピアノを持って運ぶことはできないので、医務室に置きっぱなしになっていたエレキギターを手に取って。
カークにそう伝えれば、彼は一緒に来ると言っただろうか。**]
―アミューズメント・エリア/ホテル前―
[第二エリアの通路を歩く。
歩きながら、不思議と、シメオンがいるだろうという確信を帯びていた。
なんでこんなまどろっこしい真似をしたのかは、ひとまず置いておいて、何かに急かされるように、足がどんどんと歩みを速める。
そして、たどり着いた先には……彼がいて>>102、バイオリンを持っている姿に、やはりと思っただろう。
ああ、呼び出して悪いな、という彼に、不思議そうな顔を浮かべたかもしれないが、続く言葉に、にやりと笑う。]
シメオンだって、怪我してるのに、弾こうとしてるじゃないですか。
[広げられたバイオリンケースを横目に、笑う。
本来ならば、諫めるのが正しいと分かっているが、お互い様だ。
多少は目を瞑ろうじゃないか。
そういってにやりと悪い顔をして笑えば、彼はどういう顔をしただろう。
"記憶の、横流し"
という言葉>>103に、蘇るのは、メイン・サロンで交わした会話のことで。>>5:203]
……勿論、歌付きでお願いしますよ。
[そういえば、伝わっただろうか。
いつもより、どこか固い顔で、それでもにやりと楽しそうに笑う彼に、たまに音の飛ぶギターも忘れずに……と添えて。
心配した相手に、何故?とでも言いたげに見せたぽかん顔。>>1:491
"ああ、暖かかった"と、どこか寂しそうに笑った顔。>>4:201
不服そうな顔を隠しもせずに、ありがとうと呟いた言葉。>>4:200
音痴だから、絶対忘れられないこと請け合いと、くしゃりと笑った幼い笑顔>>4:203]
全部……忘れたくない大事な記憶ですからね。
[手に持っていたギターを肩からかけて、一本の弦を弾きつつ、そう答える。]
[怪我は大したことない、という彼に、またかと、ため息を吐くのもつかの間。
歌は勘弁してくれといわれ、むすーっと顔を膨らます。]
……次、絶対ですよ?
[昔、自分も歌い方を知らず、音痴であったことは棚に上げ。
こんな状況で、"次"の約束が出来たことに、ひそかに口元を緩めた。
澄み切ったバイオリンの、最初の一音が響く。
激しさを見せたかと思えば、ゆっくりと、そしてアップテンポに。
ダイナミックで、なのに繊細で。
(山賊の宴会だなんて、誰が言ったんだか。)
時折、胸が締め付けられるように、切ない音を響かせるのは、彼自身の歩んできた道なのだろうか。
呼吸すら、奪われるように、その演奏を聞き入った。
そして、その演奏を邪魔しないよう、そっとギターを抱えなおす。]
[そうっと、ギターの音を鳴らせば、シメオンは気づいたように、音を合わせてくれるだろうか。
バイオリンとよく似た、けれど全く異なる音が、絡み合って、交じる……。
彼の音が、その軌跡をたどるのに、付き合いながら、自分の軌跡も混ぜながら。
音が無くなり嘆いたことも、少女と会って救われたことも、自分の歌を笑われたことも、かじかんだ指先を温めつつ、ピアノを弾いた時のことを。
時折、音が飛ぶのはご愛嬌だ。
くすくすと笑って、彼にバチンと目を瞑る。
不意に彼の音が、冷たさを帯びる。
切ない音と、どこか冷たい暗い音が、消えては現れ、消えては現れ。
なら、それに寄り添うように、温かい音を。
焚火がパチパチとはぜるように、誰かにだきしめてもらったときの温度を……。]
[彼の音は、いつも気高い、孤高の音で。
それが人を惹きつける。
寂しさと、哀愁を帯びるから……。
だから、笑った音も、泣いた音も、怒った音も全部音に乗せて伝えよう。
もしこの音を聴けば、彼がクスリと笑ってしまうように。
贅沢をいうなら、……たまに一緒に弾いてほしいかな。
そんなことを思いながら、柔らかくビブラートを震わせて、彼の音に、寄り添った。
しかし、鋭い一音を皮切りに、唐突にその音が止まる。]
……シメオン?
[自分もギターを弾く手を止め、訝しげに彼を見ただろう。
苦痛を押えるかのように、彼の両手が、頭をつかむ。
その目に宿った赤い光に、ひゅっと、息をのんだのも刹那、一気に距離を詰められて、首筋を抑え込まれた。]
っ、く……しめ、おん……?
[その手を外そうと、必死にもがく。]
[バァン!と、大きな銃声が響いたかと思えば、押えこまれていた手が若干緩む。
逃げ出そうと、そして、何より空気を吸い込もうと、盛大にむせた。]
っ、げほっ……
[そう咳き込んだのもつかの間、再びぎりぎりと込められる力に、再度息を詰める羽目に。
もうだめだと、思った瞬間、彼の目の色が……揺れた。]
げほっ……げほっ……
"貴方"は、……
[首への重みが無くなって、"シメオンではない彼"が飛び退くのに、咳き込みながら、声を出す。]
[駆け寄ったカークに大丈夫だと返し、"彼"に向き直る。
さてね、と半ば、諦めたような、それでいて、状況を静かに見守るような声色に、ぐっと眉を寄せた。
"彼"が語る言葉は、カークに向けてのことだったのだろうか。
それとも、"シメオン"に向けての言葉だったのだろうか。
エレとダーフィトを殺したと告白する"彼"は、まるで、カークに殺されるのを望むような響きだった。
カークに"シメオン"を殺させようとするかの響き。
それに気づいた瞬間、ぎゅうっと、心臓が、張り裂けそうに痛む。]
……それだけは……ダメだ!
[考えている間も無かった。
おおきく一歩、シメオンに、近づいて、にこりと笑う。
引き攣るような、不格好な笑みだったかもしれないが、それでも。]
ばかだなぁ……そう言ったって、心配するんだって、言ったじゃないですか。
[その言葉は、"彼"ではなくて"シメオン"に……いや、それは"彼"なのだろうか。]
記憶は、音を鳴らすと、蘇るんですよ?
[ギターを鳴らし、もう一歩。
優しい音色に、別れを告げたとは知らず、ニコリと笑って指を動かす。
そうすれば、"忘れっぽいな、お前"と、ポロリと零れる言葉。
それに彼自身、驚いたような、困ったようにくしゃりと笑う。]
シメオン……
[そう"二人"を呼んだ。
視線が合ったと思ったときには、通路の入り口まで跳躍し……。
一瞬で姿が見えなくなる。]
……待って、くださいよ。
[あの視線が合わさった一瞬、ハダリーと同じような覚悟を決めた目をみれば……。
彼が、ここから離れ、何をするのか分かってしまった。]
自分だけ、死ぬ……つもりですか。
"次"だなんて、期待を持たせたくせに。
……約束、守る気なんて、なかったくせに……
[もう間に合わないと知り、両手で目を覆うように頭を抱える。
喉から漏れ出したのは、悲しみの咆哮に似た叫びだった。]
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