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[城主ギィが自身の魔血を附与して作った輝石。
拡散し散逸しつつあった意識がそれによって繋ぎとめられ、それを核として凝集してゆく。
やがて、寄り集まったものがひとつの意識体を為すと、薄蒼の霊体の世界にぼんやりと人影が浮かび上がった。]
[影の世界にあっても薄く儚い影は、死の直前の姿そのままに、血に汚れ、砕け破れた鎧を纏う。
死した男は虚ろに宙空を見つめて、呆と立ち尽くしていた。]
[肉体という桎梏から解き放たれた精神は、
今の男は、修道騎士であった己も、一度破壊され創造の血を受けて後に修復された己も、幼い魔であった己も、記憶の全てを器の中に収めて一になった。
それ故に。]
[修道会の厳しい鍛錬に疲弊した少年の日のあの夜、
剣を抱き、凍えながら石の床に跪いた。
救いを求めて祈るのではない、
与えられた定めを、ただ受諾するのではなく、
自ら選び取ったものとして生きると誓った時、
その時に、神が自分をお召しになったと知った。
“剣として生きよ”と。
剣を振るうことが男にとっての祈りだった。
剣として作られた男は、ひたすらに自らを剣と為し、
剣として生きた。]
[あの少年の日から続く剣の生涯だけでない、
壊されて生まれ、
母にも等しきひとから血を与えられてようやくに存在を繋いだ、
あの幼子も自らのうちにある。
血色の闇で教え導いてくれた哀しい声の主や、
畏怖の対象であったあのおおきなものとの出会いも、己のうちに尊きものとして刻まれていて]
――私は、何だ。
どうやって在ればいい?
[友誼のために右腕を賭けたソマリの為にも、涙を流してくれた少女の為にも、あの場で消滅すべきだったと思えど、それを願えば神への、そして何より彼らへの冒涜となる。
……それに、ああ、幸福を願ってくれた母にも等しきひとにも。]
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