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[光を紡いだような綺麗な髪のヴァイオリン弾きの指先から生まれる音色は奇麗だった。
美しい弓と四弦が奏でる洗礼された機能美。弦を引く力を秘めた音に弦の解放される一瞬の激しさ。
何故だろう。何故だか分からないけれども、
哀しい、とは表現するには何かが違う。
彼の奏でる曲は、何故だか、酷く、懐かしい。
弦の震えて消えゆく余韻の音は、少女の心を揺さぶった。]
― 銀嵐の白原 ―
[もし、もし近いものがあるというなら、
吹く凍てつくような風。大事な何かを大きく激しくも揺らす吹雪。
そう、現在、少女を取り巻く凍てつく雪風に似ているのかもしれない。
奇麗で、美して、切なくて、哀しくて。]
わたしは、 ここに ここに 居るよ ――
[無音の中で唯一聴こえる彼の聲。
「そこに居ろ、今迎えに行く」という声に小さな少女は縋った。]
[自分の名を呼ぶ聲にこくりと頷いて、
少女もまた腕を伸ばして良いのかどうか悩みに悩みながら、
祈る様に胸もとで両手を握ったまま、純黒の彼を見つめる。]
うん、見える。わたしを迎えにきた腕が見える。
うん、聴こえる。ずっと待ってた聲がようやく聴こえた。
貴方は――、誰?
わたしを、迎えに、来て くれたの?
[少女は目の前の純黒の男に見覚えがあった。
けれどもヴァイオリン弾きが自分を迎えに来た理由に覚えはなく。少女は驚きを隠せないようだった。
ただ、彼から発せられる聲から導き出される答えに少女は。
ふと、全て凍てつかせる白の世界である筈なのに、
少女はぱちぱちと火のはぜる音を聞いた気がした。]
……?
貴方は怒っているの?
[彼の手を取ろうと恐る恐る手を伸ばしなら少女は純黒の彼に問いかけた。**]
― 数年前の回想・森の中 ―
[数年前での森の中で聞いた声を少女は覚えている。
ヴァイオリン弾きが弓で四弦を震わせれば、
木製の楽器から音となって溢れ出す優しい音色。
翼を有するものを惹き付ける音色。
野鳥達が騒ぎ出し少女の心臓も高鳴るようだった。
森のなかはひっそりとしていて鬱蒼と暗く木々が茂っていた。
少女が頭上を仰ぐと、音色に誘われて、
葉の影から数羽の小鳥が飛び立っていくのが見えた。
木々の枝から零れ落ちる僅かな太陽の光を鳥影が一瞬遮る。]
[少女からはヴァイオリン弾きの姿が見えなかった。
彼が生やした大きな翼を見る事も無かったけれど、
少女は確かに聲を聞き、羽毛舞い散る森の片隅で少女は、]
(……俺は、お前と同じもの?)
てんし …… さま?
[聴こえて来る音色に呼掛ける優しい聲。空を飛んで行く翼の影、
悪魔や蝙蝠とは全く逆の天使の姿を少女は思い浮かべてしまった。]
[否。どちらかといえば少女は、
いつの日か絵本で見た、自分と同様に翼に生やした天使様の姿を見て、
自分が"人ならざるもの"であるならば天使だと良いと思っていた。]
わたしは天使様に捨てられたのかしら。
空に行くにはどうすれば良いんだろう、
[背中に生える翼が育てば、天使様の様な清らかな羽にならない事なんて簡単に想像はついたけれど、
少女は人間の彼等とすごす為には良い子で居たかった。
自分が悪魔や死神だなんて、そんな。
自分の生えた翼に彼等が気付いたら、それが白くないとは彼等が知ってしまったら、
どんな目を向けられるか少女は怖くて仕方なかった。]
[幸いにも少女の背中に生えた翼はとても小さく衣服で隠し通せるものだったから。
教会に託した男の願い通りに、石を投げられる事も無く神の加護の下で愛情を受けて少女は育った。
結局、儚い命が紡ぐ五線譜にピリオドは打たれてしまったのだけども。*]
/*
ラ神が酷い(笑)
うーん、狼泣かせだよね。
昨日は来れなくてごめんなさい〜レスが溜ってるのとペタジムも拾いたいんだよぅ。
ニコラスのを読んでるんだけどレスが上手く拾えない。
のと、今までの設定との擦り合わせで悩み中です。
天使さま云々は初めは自分が天使だと勘違いしてる痛い子で
空に昇る為に首つりをするというのをやりたかったの(さよ教)
― 少女が卵のなかにいた頃の話し。 ―
[愛してるが故に怯え疑い間違え短い生を終えた少女。
少女が殻の中に閉じこもっていたのは、
悲しみに溢れる生を知っていたせいかもしれない。
少女はなかなか孵ろうとせず。
ずっと長い間、男の腕の中に抱かれたままだった。
けれども男の優しい指先に、暖かなまなざしに、
愛を知る為に少女は孵ったのだろうか。]
(ひとり……に?
あなたは……、さみしいの……?)
[辛いことなんて一つもない殻の中。
降って落ちて来る願いに少女は目蓋を起こす。]
わたしも、あなたに、あいたい。
― 銀嵐の白原 ―
[ずっと、ずっと、待っていたよ。
まるで、喪服のような黒装束。白い世界で彼の存在が際立つ。
神に祈るように手を組み二つの瞳で男をじっと見つめる。
どうして死んでしまったのかと訊かれれば少女は押し黙り、
天魔に人狼が鋭い牙を翳そうとも命を奪えない。
だからといって、少女は処刑された訳ではない。
少女は神父に正体を視られ、]
……っ。
[少女は全てを奪われた感覚を取り戻す。
視覚を失った少女の目に映るのは、
色を失った白い世界。
聴覚を奪われて、静かな場所にただひとり、
体温を奪われて、寒さに震えた。
白、
白だ。
少年……は、白い雪が黒い羽なんて
覆い隠してくれると言ったけれども。
白の中では黒は際立って見える。
白は全てを晒して暴き全てを見せる。
リズは、良い子なんかじゃない。
怖くて、怖くて仕方なくって、
大好きな人達を疑って、
優しい人にも酷いこと言って、
見たくない、見せないでほしい。]
[何処までも続く銀世界。
舞い踊る風花の中、
男の両肩から広がった2枚の羽根が、
白い雪から少女を隠すように広げられて、
少女のなかで全ての輪郭が曖昧になり、]
…… あい たかっ た。*
[彼女は彼の抱える思いを全てを察する事は出来なかったけれど、
少女の細い体躯を抱き上げて、漆黒のマントの内側へ包み、
あやすように、温度を与えるように、抱きしめてくれるその人が、
何時かの聲の持ち主だと分かり、自分の幸せを願っていたのだと、
少女から謝罪の言葉が溢れる。]
ううん、謝らないで。
わたしこそ、ごめんね、
[彼が望む白い翼は生えて来なかった。そして無垢な魂のまま死ぬ事も出来なかった。
けれども、最期こそ少女は幸せな終わり方を迎える事は出来なかったが、]
でもね、リーザは幸せだった よ。
[少女は寄り添うように彼の腕に抱かれる。]
[彼の腕に抱かれたまま男と少女は雪道を歩き続ける。
止まない銀嵐を眺めながら少女は薄らと唇を開いた。]
あのね……。
[弱々しい少女の言葉は吹雪に掻き消されてしまいそうだった。]
さっきは、言えなかったんだけどね、
リーザが消えてしまったのはね、
…………。
視られてしまったからなの。
神父様は、視える人だったの。
それで、リズは溶けて消えてしまったの。*
[アルビンの声が聴こえない。>+29
また聴覚がどうにかしてしまったのかと思うけれども、
どうやら違うらしい。彼が声を無くしてしまったようだ。
少女は彼が何を伝えようとしているのか理解しようと、
じっと口元を見つめる。口の動きから言葉を読み取ろとして、]
そのこを かえして?
かなしむ ひとが ……
[少女の脳裏に今まで一緒に過して来た人々の顔が浮かんだ。
次いでの彼の言葉には二重の意味で問いかける。>>+30]
なにを言っているの?
つれていくならかわりにぼくを、と言っているの。
何故、貴方まで、自分を犠牲にして他人を助けようとするの。
[ニコラスがアルビンの首を締めようとするのに、
少女は血のひいた顔を一層蒼白とさせた。
掴んだ首に爪を立てられてアルビンの表情は苦しそうだ。
なのに、少女を気遣うアルビン。
止めて欲しいと自分を抱える黒衣の男に抗議するも、
アルビンの首を掴む手は離されなかっただろうか。
代わりに、少女を抱く腕の力が弱められて少女は自由になる。]
守れな……?待ってるのは、たしか?
……アルビン、ありがとう。
[アルビンが必死に紡ごうとする言葉を懸命に聞き取ろうとする。
アルビンも解放されればほっと息をついた。
彼から毛布を受け取り、少女は感謝の気持ちを伝える。
その際に触れた彼の手が冷たかったのに少女は何とも言えない表情をした。]
/*
ようやくお返事出来たけど〜酷い〜。
アルビンさんのクッキーを食べたかったよう。凄く嬉しかったんだ、心配してくれてるのが、ありがとう!
もぐもぐしたかったなあ〜。
ニコラスも上手く拾えずにごめんなさい。
何より、ぺったん。反応出来ずにごめんなさい。
[少女はニコラスの手から離れて雪原を歩き始める。
冷たい空気に晒されて少女の声は白く霞んで消えていく。]
ニコラス、ごめんね
リーザは行かなくちゃ。 だって、ジムゾンがひとりで悲しんでるもの。
[ジムゾンの過去についてリーザは聞いた事は無い。
神父の居た最果ての村について少女は何も知らない。
けれども、神父が暗く冷たい過去を抱いているのに、
長い間一緒に暮らしてて居た少女は気付いてしまった。
彼もひとりぼっちなんだ――、
聲を同朋を呼び続けるのを止めてしまった。
初めは同朋に会いたいと願い生まれてきて、
ずっとずっと少女は会いたいと願い続けて来たのに。
彼との幸せな日々が続くなら構わないと思ってしまった。]
[背に生える翼で同朋のもとへ飛んで行けたとしても少女は選べなかった。
鳥籠は開いていても少女は神父のまわりを飛び回るのを止めなかっただろう。
でも、彼の姿は見当たらない。]
ジムゾンにも……、
会いたいひとがいたのかな。
[ジムゾンにも焦がれる相手が居たのではないかと
はたと少女は思い当たって。]
……。
[少女は神父のもとへと駆け寄る。
羽織っていたブランケットが風で飛ばされ少女の背中の羽が露になる。
肩甲骨から根を伸ばし横に広がっていく黒い翼。人には無いなそれ。
少女はつま先で立って神父の頬へと手を伸ばす。
もしも神父が屈んでくれたら彼の首へと腕を回して抱きしめようとした。]
ジムゾン、此処に居たんだね。
泣いて……いたの?
[頬に流れる涙は拭い取られた後だったが少女は確信を持った声で訊ねた。]
[リーザはジムゾンの頭を抱え、
歌う様に囁く。]
ジムゾン、わたしは、
あなたと過せてー―、 幸せだったの。
ねえ、人と人ならざるものが一緒になるなんて無理だって分かってても、
貴方の娘にわたしはなりたかった。
リズはジムゾンと過す毎日が大切で壊したくなくて、貴方と紡ぐ夢を護りたかった。
ごめんね、ジムゾン。
でも、これからは――、
[そして、彼女は思い出す。
大切な聖霊さまのこと。]
わたしが雪になっても、
また遊べると思っていたけれど。
聖霊さまは何処にいるのかな?
まだ会えない――、のかな。
[ペーターが少女を見つけるまで時間が掛かるなら待っていようと思った。
10年でも20年でも、雪の中で歌っていようって。]
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