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―東寮・かつての自室―
[>>+3:48隣にあった気配は、ふいに消えた。
ひとつ息を吐いて、その場を離れる]
…………。
[自分はもう、大事な人たちと戦わなくていいのだと、シェットラントに語った。
けれど、それは自分が逃れただけだ。
今もなお、彼らは互いに向かって剣を振るい、銃の引き金を引いている。
かつてのように互いを高め合うためでなく、殺し合うために]
[そして、
今の自分には、もう何もできない]
[今できることは、せめて]
……紅茶を、探しにきたんだっけ。
[ここへ来てしまった人々に、少しでも安らいでもらうこと]
[ヒンメルが中心になって開設した「ねこうさぎスイーツカフェ」。
自分も時折、甘い物を楽しみに足を運んだものだ。
購買の焼き菓子も良いものだが、その場で盛りつけるパフェ、焼きたてのホットケーキなどはやはり格別だった。
ヒンメルに頼んで、紅茶の淹れ方教室や、珈琲の銘柄当てゲームを開催させてもらったこともあったから、厨房の様子もわかっていた。
この世界でも――そこはあの頃のままだったが>>3:+53]
あれ?紅茶、これだけしかなかったっけ?
[不思議に思いながら、残っていた茶葉から何種類かを選び出す。
東寮で確保した珈琲と合わせて袋に入れ、ティーセットを探しにかかったところで、ようやく誰かが先に持ち出した可能性に思い当たった]
[中庭へ戻ってくると、何やらいい匂いがする]
……鶏肉?
[香りの漂ってくる方向を見遣れば、小さな生き物たちに埋もれるシロウの姿があった>>+79]
[一瞬、あれが食材か、と思いかけたのを打ち消した]
[いや、そんなことよりも]
[新たに二人増えていることの方が問題だ]
……トール先輩。
…………リエヴル、先輩。
[口にするのは、学生時代の呼び名。
今の彼らの立場を考えれば、そうとしか呼べなかった]
[リエヴル・ド・トゥーレーヌ。
帝国貴族、トゥーレーヌ公爵家の当主。
シュヴァルベ戦線での指揮官であったことは知らないが、軍でも上の地位にあったことは推測できた。
そして、トルステン・フォン・ラウツェニング大佐とは、かつてのルームメイトでありながら、敵対する軍の幹部同士、という間柄――のはずだ。
>>+104その彼が、何のわだかまりもない様子でラウツェニング大佐の側に立ち、屈託無く自分に声を掛けてくる。
戸惑いを隠せない視線をトールへ向ければ、そちらからはいくらか陰りのある表情が返ってきた>>+106]
……つい、さっき……
[>>+108数十分か、数時間か。時間の感覚はよくわからなくなっていた。
答えてから、訪ねられているのはそれではないと気付く]
ええと、わからない……んです。
撃たれてから、意識を失ってたらしくて、トール先輩やディーク先輩が来て下さったのは、何となく思い出したんですけれど。
あれからどのくらい経ったのか……
[自分の胸に手を当てて、一度言葉を切って]
はっきり、死んだ自覚が無いんです。
[>>+109リエヴルは犬を抱いたまま、トールを見つめていた。
どこか幼く見えるその表情と、
>>+112頭を撫でるトールの仕草に何かを合点して]
……珈琲も持ってきましたけど、まずは紅茶にしましょうか。
ミルクたっぷりのアッサムティーなんてどうでしょう?
[あの頃のように返事をした]
東寮の厨房に、珈琲がありました。
スイーツカフェにも寄ったんですけど、教官が先に行ってらしたんですね。
[>>+116シロウの声に答え、もう一度リエヴルの顔と見比べたりする]
えっと、お湯を……あ、ポットとカップまで暖めてて下さったんですね。
じゃあ、すぐにお茶淹れます。
[>>+117リエヴルからのリクエストには頷いて]
いいですね、僕も甘いのが欲しい気分です。
[慣れた手つきで茶葉を計ってポットへ入れる。
紅茶を口にするのは、どのくらいぶりなのだろう]
はい、もちろん。皆さんの分も用意してますよ。
[中庭にいた全員分のカップに熱い紅茶を注ぎ、テーブルに置いた。
>>+121トールに答えながら、いつか聞いた言葉が脳裏に蘇る]
『また……お前の淹れた紅茶、飲みたいな』
[朧気な記憶の中の、暖かな声>>0:462]
『ああ、出来れば、俺とお前とだけじゃなくて。
……生徒会長さまとも一緒に』
[そう願ってくれたことが、こんな形で叶うとは思わなかった]
……苦しまなかったのだから、良かったんでしょう、きっと。
[声をひそめて伝えるのは、先ほどの言葉>>+118への返事]
何年か後……?
[>>+124シロウの言葉に、軽く目を瞠る。
そんな時間差があるなどと、考えてもいなかった。
改めて、他の人々の顔を眺めてみる。
歳をとったように見える人はいないようだ]
……そうですか。
どうせなら、うんとよぼよぼになってから来てくれるといいですね。
それとも、ここへ来るときには若返ったりするんでしょうか……。
[でもそれなら学生の頃の年齢まで戻りそうな気がするし、などとぶつぶつ呟いている]
[――リエヴルの心は、おそらく「戻って」いるのだろうとステファンは思う。
死した今、現世のしがらみを捨てて過去の友情を大切にしている……と考えるには、あまりにも屈託がなさ過ぎる]
(……友情?)
[>>+122トールを相手に頬を染めていたのを今さら思い出して、ミルクティーを口元から零しかけた]
[学生時代のふたりが、とても親しかったのは知っている。
「できている」との噂を耳にしたことはあったが、下品な冗談でしかないと思っていた]
(……愛?)
[>>+127その言葉へ、トールはやたらきっぱりと反応していなかったか。
>>+129ふたりのやりとりを、ついじーっと観察してしまう]
[ついついじっと見ていたら、やはり不審に思われたらしく>>+134>>+136
慌てて誤魔化した]
あ、いえいえ。
トール先輩が前に、えっと、ゆっくりこうやってお茶飲みたいって言ってくださってたから、実現できてよかったなって。
[けれど、彼が本当に願ってくれたであろうもう一つのこと>>+131は叶えられずに――]
ところで少なくともシロウ教官はこの場にいるのに「3人」って言い切ってる人達
カーク先輩とシェットラントはしばらく発言ないのかー
[心のどこかで、もしかしたら、と思ってしまうことがある。
死の瞬間を認識していないがゆえに、]
[もしかしたら自分はまだ生きていて、意識がいわゆる生死の境を彷徨っているのではないか、などと**]
[懐かしい人々とテーブルを囲み、甘い紅茶を飲みながら語り合う。
そんな当たり前の時間が戻ってきたのは、
この人たちが命を落としてからのこと。
切ないような気持ちになりながら皆の顔を見ていると、そっと頬を擦るようなリエヴルの仕草が視界に入った>>+165
――全て忘れているのでは、ないのかも知れない]
……やっぱり、紅茶に焼き鳥は合いませんね。
[けれど、どうするのが一番いいのか、わからなかったから、
何も気付かないそぶりで、立ち上がった]
カーク先輩、ひとりで大丈夫かな。
手伝ってきましょうか……
[腰を浮かせて振り返ったときには、プレートを手にしたカークの姿がすぐ近くにあった>>+176]
わ、ありがとうございます!
[滑らかな白に、果実の色が映える。
爽やかなミントの緑が、印象を上品に引き締めていた]
じゃあ、切り分けましょうか。
カーク先輩も、座って下さい。
[彼の前にも紅茶のカップを置いてから、ケーキをカットしようと]
ええと、いま何人……
[数えながら、また増えるかも、と考えてぞくりとする。
どうしても、何もかも忘れて楽しむわけにはいかないようだ]
[そして、やはり。
ささやかな茶会に、新たな参加者が到着してしまったようだ]
……カレル先輩。
[リエヴルとの噛み合わぬ会話>>+187の末、
何かを悟った様子の彼>>+190には、そっと目礼して]
よかったら、一緒にお茶をどうですか?
ミルクティーはお好きでしたっけ。
ちょうど、カーク先輩のケーキを切るところですよ。
[にこやかに、席を勧めた]
……7等分って、難しいですね。
[真剣な顔でケーキを切り分けて、皆に配った]
じゃあ、カーク先輩、いただきます。
[作り手に頭を下げながら、傍らに立てかけられた杖にちら、と目をやった。
先ほど、食材を探しに行くときに現れたものだ>>+146]
[椅子とテーブルは、望めば現れた。
松葉杖も、カークが必要と感じたから現れたものだろう。
それでも彼の右脚が現れるわけではなかったし、
自分が欲しがっていた紅茶も、東寮の厨房に現れることはなかった。
おそらくは、願望の力を記憶の力が押さえ込むのだ。
東寮の食堂に紅茶は置いていない、という強い思い込み。
右脚を失った、というカーク自身の強い印象――。
ならば、リエヴルの記憶を押さえ込んでいるものは、何なのだろう]
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