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[――最後の一閃。]
フゥゥゥゥ……
[蔓の腸断ち切って砕く銀刃が、茨の群を今度こそバラバラに解体した。
後は、突き立つ棘もそのままに、血塗れの修道騎士が佇む。]
修道騎士 バルタザールは、野茨公 ギィ を投票先に選びました。
バルコニー
[全身を朱に染め、大剣を握り締めて佇む姿は、まさしく戦鬼。
到底本人の自称した修道士の姿ではあり得ぬ。
聖女が見れば、怯えと懐疑を呼び起こすかも知れぬ、あまりに苛烈な姿だった。
暫し呼吸を整えていた男は、やがて犬のようにぶるりと身を震わせる。
ずるりと傷口から滑り出て行く感触があり、見れば棘が押し出されるところだった。
再生の過程で、身体から異物が押し出されているのだ。]
[塞がり切らぬ傷痕から血を流しながら、先行したオズワルドの後を追って、城主のものと思しい血の痕を追跡する。
戦闘中のことで、意識を割く余裕がなかったが、二度ほどあった城を揺るがす震動は、敵の攻撃でなければソマリの風撃の可能性が高い。
であれば、よほどの強敵と対面している思われた。
城主を討ち果たす前に、ソマリの加勢に向かうなどは露ほども考えない。……が。]
[ふと、眉を顰める。
――痕跡が交錯している。
バルタザールの感知能力は決して高くはない。
自分を中心とした狭い範囲の、聖邪の気と魔力を感知できるくらいだ。
リヴエルなどの使徒や精霊力を帯びたソマリのように、広範囲の魔力探知などはできない。
敵を察知するのは、戦士としての直感によるものが大きい。
躊躇は一瞬。
これと見定めた痕を辿って走る。
いずれにせよ、この先に城主がいるという確信があった。**]
[派手に板金の打ち合い擦れる音は、石段を踏み切る跳躍の。
踊り場まで、十数段を一息に飛んだ男は、アデルを腕の中に抱いた赤髪の吸血鬼に、躊躇なく剣を振り下ろす。]
[その剣筋は、アデルを巻き込むか巻き込まないかのギリギリの線を描く。
それは、その攻撃に身を晒し、尚且つ優れた使い手でなければ分からぬほどの……]
[繰り出された攻撃に、アデルを害する意思がないことには、気づいている。
気づいたうえでの、揺さぶる言葉。]
[左右に大きく振り斬るには階段の空間は狭いと判断したか。
素早く刃を引き戻し、担ぐように構え直す。
男から揺らめき立つ気は、チリチリと灼けつく感触を皮膚に感じ取れそうなほど。
酷く熱く、同時におそろしく冷たい。
笑み含んですら見える吸血鬼を、じっと睨め付ける。]
私は神の力、剣の一振り。
何を斬るに躊躇いなどない。
[底冷えのする低音。
額から鼻梁を通り顎まで染める血赤と相俟って、神の懲罰天使、どころか地獄の悪鬼にすら見える。]
――アデル。
[吸血鬼を睨み据え、神子に背を向けたまま名を呼ぶ。
低く囁くようでありながら、鋭く険しく。]
行け。聖女を守れ。
[短くそれだけを命じた。]
[吸血鬼を見据えたまま視線は逸らさず。
だが、研ぎ澄まされて殆ど全方位に張り巡らされた気が、視界にない茨の動きを捉える。]
――甘言を弄して虜となすか。
実に悪魔らしい遣り口だ。
[何を、とは言わない。
相手がこちらにあわせて微妙に位置を変えたのを見定め、意図を読み取る。
だが敢えて――真っ向からの一撃必殺の構えを。]
[派手な見かけほど、修道騎士の傷は重傷ではない。
ただ、強力な再生力は生命を削る。
未来を切り売りし、現在の生を繋ぐ業だ。
速やかで自動的な再生の代償に、大量のエネルギーを必要とするこのクルースニクは、補給する薬剤を摂取しないままここまで戦ってきた。]
[バルタザールは今、消耗戦を決意をしていた。
防御を捨て、再生力だけを頼みに城主に挑む。
自分が斃れる前に倒す。
血の魔力の全てを使わせて、殺し切る。
最後に立っていた者が勝つのだ。]
……ここが命の使いどころだ、と貴様なら言うだろう。
ソマリ。
[脳裏に浮かぶは、悪びれず正義の使徒の仮面を被る癖に、いつも張り詰めて思い詰めた――]
シャッ!!
[短く息を吐き、銀閃。
担ぎ振り下ろす斬撃は、人にあらざる速度の更にその上を行き、茨の城主を両断せんと伸びる。]
[だがそれすらもフェイント。
強引に腕を返し、下へと振り落とす刃を途中で止め、掻い潜って迫る相手に向かって突き上げる。
腕の細かい筋肉が断裂し、血管が弾ける。
血の飛沫が石畳に降り注ぐ。]
[肉を裂き、血管に突き刺さり、瞬く間に増殖する血脈の蔓。]
……………
[喘ぐ唇は何かの言葉を紡ごうとしたようでもあり]
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