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[どうやらあくまで隊の戦力を削ぐ為の奇襲だったらしく、
隊以外の人間、この周りの他の民家等には
被害がなかったようで、ホッと一息つく。
『これからどうしますか?』
そんなハーマンの声が聞こえれば、
暫し考え込んだ後、重く口を開き――――。]
…――隊を二つに分ける。
一つはここにある武器や物資を
オプティモにある王府の直属の軍基地の一つに運ぶ本隊。
もう一つは反乱軍に攻撃を仕掛ける遊撃隊だ。
[ここを守る為にとどまっているばかりでは、
いずれは攻略されてしまうだろう。
ならばと、そう提案するのであった。**]
苦労をかけることになるが、
本隊はオプティマまで陸路で向かってくれ。
海の上では襲われた際に逃げ場がないからな。
[南島の人間の大半が反乱軍側についている中、
無防備に港から逃げ場のない海に出ることは自殺行為であった。
ましてや、港で南島の人間に荷物を取り調べでもされれば、
目の色を変えて彼らは襲い掛かってくるだろう。
それならば王府軍の通ってきた陸路の方か、
時間がかかるものの、いくらか安全だ。]
…くれぐれも気をつけてくれ。
道中、万が一の時は王府の軍か騎士団を頼るといいだろう。
[本隊を率いるハーマンにそう伝えれば、
彼らは北へと向かう準備を整える。
反乱軍の目を欺く為に、兵達は武装をせず、
工廠内の非戦闘員の開発部員や、
北島への避難、帰還を願う住民達と協力し、
オプティマへと向かう為、火山の方角へと目指す。
―――もちろん、妻も一緒である。
軍施設が周りに多い為、こんなところに住んでいれば、
いつ被害が飛んでくるかはわからない。
それならば、自分の実家のあるブラバンドに避難して、
身を寄せてもらった方が安全と考えたのだ。]
なに、あの辺りの地理なら北と何回か行き来している俺達の方が詳しいし、
実質兵より一般市民が多いから連中も手を出しにくいだろう。
…じゃあ、後のことはよろしく頼む。
こっちが落ち着いたら後から俺達もそっちへ行くから心配するなって。
信頼してるから、お前らに全てを託してるんだ。
[そう少し不安げな眼差しを向けてくるハーマン他、兵士達に告げれば。
『ハッ!!行ってきます!!』
と、彼らが右手をピッと指先を伸ばして頭の方へと向けてあげれば、
こちらも同じようにして答礼した。]
[そんな中、最後まで自分を案じていたのは妻だった。
武器や物資を一緒に隠し乗せた貨物馬車の中から、
こちらを真っ直ぐ見ている。]
…悪い。こんな時に無茶させて。
俺も生まれる時は立会いたかったんだが。
生まれてくる子が安心して生きていける世界―――。
そんな平和を必ず取り戻してみせるから。
[すれば、少し悲しそうな表情を浮かべて彼女は言った。
『私はあなたやこの子がいれば、どんな世界でも生きて行けるわ。
―――だから必ずまた無事に帰ってきて、その顔を見せて。』
できればこんな危険な真似は自分にしてほしくなかったのだろう。
だからといって、守りたいという気持ちを否定はできず、
ただ見送ることしかできないと。]
―――よし、俺達も行くぞ。
[本隊が北へと出発すれば、残った武器を片手に、
数人程の人間を工廠に残して、
遊撃隊はシュビトの方へと向かう。
自分が本隊と共に行かなかったのは、
危険が伴う遊撃隊に腕がたつ者が居た方がいいというのもあるが、
こちらを本隊を思わせる狙いもあった。
マーティンは恐らく学館側へとつくだろう。
かつ、自分は隊へ戻ると告げた。
もしその情報が反乱軍に行っているのだとすれば、
こちらに攻撃の矛先が向かう可能性は高い。]
目的は学館だ。
今は会合や各地に向かってるやらで、人が手薄な筈。
あそこをたたけば反乱軍の意気は多少なりとも沈めれる。
…――手がつけられなくなる前に何としても叩かねば。
[恐らく会合は上手く成立はしないだろう。
するならば、とっくにこんなことにはなっていないのだ。]
ここまでは順調に来れたな。
…ここが恐らく街の中へと入るには、
一番手薄な場所だろう。
[この街には何度も来ている為、
流石に人が手薄になりそうな場所というのは、
何となく把握していた。]
よし、合図をしたら一気に駆け抜ける。
この人数でもあの警備体勢なら押し切れるだろう。
[が、彼らがここへいるということは、
本隊が北の方へ抜けることは成功したと見ていいだろう。
そのことに胸を撫で下ろせば、
後はやるべき事をやって、
待ち人のところへと帰るだけである。]
…戦場では会いたくなかったんだがな。
[予測していたこととはいえ、
少し前まで共に話していた友人と対峙するのは心が痛かった。
だが、これも大切なものを守る為である。
合図を出せば、兵達は皆武器を構える―――。]
[―――キィン!!
槍や剣のぶつかり合う金属音が鳴り響く。
先方の槍兵が襲撃隊とやりあってる中、
続いて剣兵が前へと踊りでる。
更に、後ろへ待機していた数名の弓兵に指示を出し、
襲撃隊が槍兵や剣兵と戦っている間に、
この場を見下ろせる高台の上まで走らせれば、
そこから一気に敵兵を狙い打つ。]
今だ!あいつは俺が直接相手をする!
一筋縄で行く相手ではない!
[やや後ろで号令を出しているマーティンがいる場所まで、
一気に駆け抜ければ、剣を思い切り突き出す。
すれば、距離がある為、防ぐのには充分な時間があっただろうか。]
[乱戦になったことで、弓兵はまともに的を狙い
定めることができなかった。
一流の弓兵ならともかく、やはり戦い慣れしていない弓兵だと、
戦いの中から弾かれた兵にトドメを刺すくらいでやっとだ。]
…くっ!!
[マーティンに向かって突き出した剣は、
それが彼の皮膚を掠めることもなく、
剣で抑えられる。
軍を離れてから何年も経つのに、
未だにこれほどの腕力を持ってることに、
思わず目を見張る。]
…―――ぐぁっ…!!!!
[そのまま腕を狙って剣先を突き出されれば、
ずぶりと、その腕に剣が突き刺さる。
その痛さに思わず苦渋と苦痛の声を上げる。
―――――が。]
だが…これでお前も動けないな。
[口端をニヤリと釣り上げれば、
剣が刺さってない方の腕で、
そのまま首元を狙って剣を突き上げる―――。]
[乱戦で疲労した、双方の隊の者達は、
それぞれ二人に駆け寄れば、
大丈夫ですか、しっかりしてください、と、
叫ぶ様に訴えかける。]
……作戦は成功だ。
何せ敵戦力の一番強い奴…を、討ったのだからな。
お前達は……騎士団の元へと降れ…
な…に、俺も……すぐ行く…か、ら。
[辺りが徐々に霞んで見える。
駆け寄ってきた残った兵達にそう伝えれば、
その手を振り祓うように、そう告げる。]
[自分の言葉を聞けば、兵達は首を縦に頷かせ、
敬礼をすれば、その場を離れていく。
それが臨時だったとはいえ、
その言葉がこの隊の隊長の遺言と取り、
残存兵達は会見でまだこの近くに居るであろう、
騎士団達の元へと下る。
その際にここであった出来事は騎士団長並びに、
その近くにまだ巫女姫が入れば、
おのずとそれは伝わるだろう。]
…そ、う…俺は、
[――――一刻も早く妻と、まだ見ぬ子供の元へと帰らねば。]
……ぁ………っ……
[もう、敵兵の姿は見えない。
近くに居るのかもしれないが、
出血を抑える為に剣を胸に刺したままとはいえ、
臓器は致命的に破壊されている為、
既に意識が朦朧としている。
一歩、また一歩とゆっくりと家族が待つ場所へと。
交わした約束を果たす為に帰ろうと足を動かす。]
[
―――もう自分は生きてはいられないのは
ぼんやりとした頭ではわかっていた。
それでも、生まれてくる子供が。
妻を始めとする大切な人達が。
今時代が動いているこの国が、どういう結末を向かおうと、
幸せで平和である未来をもたらさんことを――――。]
…――――ドサッ
[やがて僅かながらに動いていた足はとうとう止まり、
音を立てて中身を失った骸は地へと崩れ倒れる。
未来への希望を願い、そこで意識は完全に失われた。]
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