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− 温泉 −
雲じゃなくて湯煙だったんだ?
[とりあえず服は脱ぐ。
かけ湯をして湯溜まりに入る。]
んん、いい湯加減だな。
錆びたら困るけど。
[眺める左手は特殊合金の義手。その掌には目がひとつ。*]
この温泉、けっこう広そうだな…
[たぶん湯煙の向こう(?)から届く声音の種類に、そんなことを思ったりしていた。**]
− 温泉 −
[温泉空間(?)を、剥き出しの闘争心が飛び交う。
父王亡き後の政争を思い出させた。
まとめて粛正できたら、国の立て直しも楽だろうなぁなどと、柄でもない考えが止まない。
そこに、]
あ、何? 援軍要請?
はいはい。
[ちょうど、気分転換を ── あるいは身体を動かしたくなっていたところだ。
元より遊軍気質のダーフィトは、姿なき声に応じて湯から上がった。]
[近くの岩の上には、脱ぎ散らかしたままの服。]
んー…、
[本来なら、誰か畳んでくれるんじゃなかったっけ。
でも、結婚した覚えはない。
何か足りないと感じつつ、袖に”目”の宿る手を通した。]
− 宇宙船 −
[都合のよいことに、扉(来たときにはなかった気もするが)を開くと、そこは船内だった。]
《シュトルツフェア》じゃなさそうだけども。
どちらかといえば《カルカリアス》に近いか。
[滑らかな金属で覆われた操舵室(?)とおぼしきそこには、
艦長であろう風格の若い男と、双子(?)の近侍がいた。
ただし、”同類”はひとりだけだ。
ダーフィトは、胸元をはだけさせて胸の上の”目”を見せている双子の片方に、軽く義手をあげてアイコントクトした。]
はぁい。 お邪魔するぜ。
君を攫いにきた、お尋ね者だ。
ダーフィトって呼んでくれていいぞ。
[にこりと笑いかけたのは、排除対象のルートヴィヒへ。*]
[風呂上がりの濡れた髪のまま、颯爽と乗り込んでみれば、艦はどうやら交戦中の様子。
黒煙が流れ込んできてこそいないが、そこそこ深刻な破壊を受けたらしい。
かてて加えて、排除対象はつれなかった。まあ当然か。
いきなり撃ってくるほど攻撃性が高いのは予想外だったが、こいつも何かの衝動に突き動かされているのかもしれない。]
[こんな時、自動的に庇ってくれる加護が自分にはあったような気がしたのだが、無い物ねだりの現実逃避は命に関わる。
殺意を察知した瞬間に横ざまに飛び退ったが、銃弾は脇腹を掠めて熱い烙印を残していった。
受け身をとりながら、左義手のワイヤーランチャーを発射する。
欲しいと思ってたんだよ、この機構。うちの
投げ縄よろしく搦め捕って、引き倒してやろう。*]
おう、釣れた。
[目の前の男の趣味など知るよしもないが、嬉々としてワイヤーランチャーを巻き取る。
抵抗もまた釣りの醍醐味だよな。
が、味方と考えていた残り二人のうち、双子でない方が、所有権を主張して飛び込んでくる。]
ちょ、おま…
[援軍要請したろ? と文句を言う間もあらばこそ、殴り掛かられた。
ワイヤーを伸ばして飛び退ろうにも、そのラインを抑えられている以上、限界がある。]
マズ…
[腕でカバーできない左側から、こめかみを殴られて、床に沈んだ。
拳骨など、久しぶりに食らった。コンラートとの約束を果たした時以来である。
かすむ目で男を見上げる。
本気で殴りやがった、この野郎。 おまえの手も痛かろうに。*]
[艦橋に新しい声が増えた。
援軍その2か、と思いきや、いきなり訛りのある口調で誰何された。>>217]
誰かはともあれ、この状況見たら手ぇ貸せや!
[つられて地方語になりつつ、打開策を求めれば、金髪男は恬淡とした顔をして白刃を抜き放つ。
援軍を殴った裏切り者(?)を斬るのかと思いきや、深く身を沈めた切っ先はこちらを向いていた。]
良くねぇ!
[あっさり了見しすぎだと、抗議の叫びも虚しく、擦り上げられた切っ先が左手を薙ぎ払う。
見慣れぬ様式の太刀は、特殊合金の義手を、飴でも斬るかのように切断した。]
── っ!!
[力任せに見えて、その実、相当な手練れである。
この男に斬られれば、眠るように死ねるだろうと思った。*]
[大丈夫と言われても、全っ然、安心していられる状況ではなかったが、その実、金髪男の腕は確かであった。
合金の義手を斬り飛ばし、弧を描いた刃のもとへワイヤーの先の手首を手繰り寄せると、据え物を斬るようにして、その掌に開いた”目”を両断する。]
── な…に、
[迸ったのは血ならぬ瘴気であった。
黒々と渦巻いて、末期の力をもってして、ゲルトに取り憑き直そうと雪崩れ込む。*]
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