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……
[2頭の狼がどんなやり取りをしているか、それが人型の姿で交わされたものであるならば理解することもできたかもしれない。
両者が死力を尽くした争いを始めれば、ただおろおろと見守るしかなく。]
あ……
[青い狼の額が割れ、流れる血には顔を背けつつも恐々と不安気な眼差しをおくる。
この狼はどうやらはぐれものの狼らしい。
俺の獲物という言葉に眉を下げた?]
[眉を下げて恐々としているのは、目前の戦いへの恐れか。
見るからに荒事とは無縁そうな顔をしていれば
さもありなん、という所ではある]
なんだ。
[返答のない事を訝って、低い問いを再度繰り返す]
[なんでもない、といったふうに首をふりかえす。]
獲物….だもの。
[小さく独りごちた。
人間達から自分や守ってくれたように感じてしまったとしても、それは自分が獲物だからという理由にすぎず、この場を過ぎれば、]
[おもむろに手を伸ばしたのは紫色の髪だ。
沼で引き上げた時には、赤いフードからこぼれた
これは、胴に張り付く程に長くはなかったか。]
……
[一房を指で握る。
そのまま滑り下ろすと新しい切り口の、
少しつんとした感触が指先に残った]
……
[肩の辺りで、紫はするりと手から逃げた。
また掴む。同じように滑らせて、やはりすぐに
手の中から逃げ出す長さだ]
[視線を一度落とす、添うようにぼたりと紅が落ちる]
また逃げるか?
[声は淡い揺らぎを含んで問う]
……?
[幾度か髪に指を滑らせる狼に、何をしているのだろうかとその顔を眺めていた。
落ちる赤に痛々しそうに眉を寄せ、自分の身体を一度見下ろす。
小さく首を傾けると、指を伸ばし指で狼の目を拭った。]
……――ッツ
[べったりと色濃い血が張り付いているせいで
状態が見えにくくなっているが、
右目は瞼から切れて血を滲ませていた。
瞼の中身に関しては、残念ながら不明だ]
やめろ
[痛みを抑えて制止する声は幾分重い]
[制止する声に一旦指を離すが、そのまま手を引くことはせず、しばらく迷う様に指先は宙に留まる。]
ごめんなさい。
[狼が許すようならば再び指をのばすと切れた目の際から瞼を覆う様に手をかざし、ぶつぶつと唇を動かすだろう。
それは女が仕えている神を崇めたて祀る言葉。
徐々に狼の痛みは和らぎ、傷は塞がるだろう。
かわりに女の右目には鈍い痛みが走る。]
………
[狼の迷いの無い肯定。
結局は言葉を返せぬまま、痛む右目を閉じて俯いた。
癒した者の痛みを請け負う、その痛みは本人のものに比べ小さくそのうちに消えてしまうが、それがただの人間でありながら癒しの力を行使する為の代償だった。]
[ぬるりと濡れた半顔に、柔らかい感触が
触れるかどうかのよう、そうっと翳された。
か細く織り成される祝詞のほとんどは、狼にとって
意味を知らぬ音の川であったが、
それらは不思議と、眼の痛みを和らげた]
…………?
[目の前で、獲物が自分の真似のように目を閉じるのが
今は両眼で見えそうな気がした。
血が流れたために右の視界は大分霞んだ感じがするが
不自由な視野の不快を除こうと、
手の甲でぐいと右目を拭う]
痛くない
[先程は獲物の指が掠めただけで刺激があったのに。
痛くない、と自己の状態を認識するが、
どうにも、不思議で仕方がない顔をする]
よかった。
[痛くないと言う狼に小さな声で返す。
変わらず、目を閉じて俯いたままではあったが。]
[自分で自分の顔は見えないが、
この目の前の獲物が瞼に触り、何かを唱えると
痛みがひいた、という一連の結果だけが残った。
それを、『よかった』と表す小さな声に]
ありがとう…
そうね… あなたには助けるだなんて考えは無いだろうけど
[獲物の奪い合いの延長のようなものだろうと思っていて、]
少なくとも、あの人達に連れて行かれるよりはマシだもの。
[右目の痛みは少しづつ薄れてきている。]
む
……助けるは分かる
[ぱたりと不満げに尻尾を振った。
実際、助けてと聞いたからここに来て、
(他の語であったとしても
声を聞き分ければ同じ事をした筈だが)
頷いたから手を出したのだと思っている。
(拒否されたら手を退いたか、と言うと
それも否なのだろう)]
なぜ?
[傷だらけの姿を見遣る。
マシだと思う理由が解らないことの他に、
違和感が生まれるものの、言葉にならずにいる]
[背景の声が煩くなると苛立たしげに耳を揺らし
腕を伸ばして獲物の身体を抱え上げた]
そうなの…ごめんね。
私の事食べるつもりみたいだったから…
[実際にも食べるつもりなのだろう、食べるつもりの相手を助けたつもりらしい狼におやと小首を傾げる。]
なぜ…
だって、連れていかれたら食べられるよりももっと苦しい思いをしそうな気がしたから。
[右目の痛みが違和感程度に収まり、ようやく顔をあげた。]
…っ、ちょっと、わ、
[揺れる視界に動揺し、身体をばたつかせる。
安定した位置へとおさまればぽかんと口を開けていただろう、抱き上げられた記憶も覚えているうちでは無く、落ち着かなかった。]
…重いよね。
[霧の沼地での事を思い出すと気まずそうに。]
― 記憶の書庫 ―
[闘技場とはうってかわり、その場所は静けさに包まれていた。
見渡す限り一面の本棚に隙間無く詰められた本。]
……
[ここが自分の死に場所かと思えば、表情は暗い。**]
?
[喰らうつもりの相手を助けたつもりである事の違和に
本狼が気付いている訳もなく。
小首を傾げられたら、やっぱり傾げ返すだけだった]
喰われるより苦しいこと、とはなんだ
[狼の頭の中に、それは思い浮かばない。]
む
[担ぎ上げた体の位置は安定した。
獲物は暴れるでもなく、自律してバランスを取っている。
そうなれば、気絶した人間を運ぶのとは負荷が大分違う。
そんな非力じゃない。弱く見えるのだろうか]
重くない
[沼地での文句を、幽体に聞かれていたとは知らないから
もしかしたら残念なニュアンスになったかも。]
[逃げるを諦めさせたのは自分ではなく
何の関係もない魔界の王が仕掛けた気紛れだと思えば]
…………
[ふるる、と耳を揺らした
全身の傷は薄く血を纏う、
狼にとっては匂やかな香水のようで、
身の内に熱を誘った]
[逃がさぬように、棚と己の腕の間に囲い込んで
頬の擦過に舌を這わせる]
ン
[やっぱり、甘い。
乾きかけた傷口を舌先で擦る、
華奢な顎に掌を滑らせて項へ辿って、
短くなった髪をくしゃりと指に絡めた]
甘い
[澄んだ甘露にゆらゆらと尻尾が踊る、
もっと、と強請る思いは新しい傷を探す、
頬から肩、腕、指、加減のない衝動で手繰り
雪解けの瞳が痛みに揺らぐ度、
滲む蜜を嗅ぎ付けては執拗に。]
[時折、半端に霞む視野が不快で瞼を擦る。
痛む表情を、
己に食まれる事を感じる貌をもっと見たくなったから
五指を絡めた手を視界の高さに持ち上げて、
眼をを合わせたまま白く薄い甲の皮膚を啄んだ]
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