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はは。
気合でどうにかならない、物理の範囲もあるんじゃないですかね。
[虫を炙り出したところで、潰しきれなければ意味がない。
あるいは、工作員が物理的な破壊行動に移ったら――]
……その辺は、どうでしょうね。
退艦する連中のなかでとなると、信用できる人手は流石に。
[応じながら、試作の携帯型通信機に向かって、言葉を紡ぐ]
――電測室より、副長。
通信長より意見具申。
退艦者のなかでも、信用できる者を選び、監視の必要があるとのこと。
[そう、端境で伝えることしか出来ない]
ああ、それと――、
[思い出したように、ひとつ]
あの、ちびっこ少佐殿……、
あれは、退艦させてやるわけにはいきませんか?
話す機会があったんですが、どうも――こんなとこで失うには惜しい。
[半分は嘘だった。逃がせという理由は、ほぼ、歳若いからで]
――関連して。
[これは、カサンドラには命じられていないことだが]
陸戦装備を、通信科に配布願えませんか。
私も、通信長も、体力には自信がないほうですから。
[銃器の装備を許可してもらえるよう、副長に]
電測室に―ーですか?
はい、了解しました。
今なら、通信長もいるので、是非に。
[フットワークが軽い上官だなと思いつつも、そう]
え、ああ、はい……、
[手元の通信機に、何事か喋ってから]
――通信長、伝言ですよ。
どこにもいかずにそこにいてくれ、今から会いに行く――とか。
[一部は曲解したが、割と指示通りである]
……、へえ。
[カサンドラが次席指揮官と聞いて、軽く驚く。
砲術長より先任(同階級の場合、先にその階級になった側が上扱いになる)だったのか、この人。
まあ、言動はともかく、有能な士官ではあるには間違いないから大丈夫だろう。
その他、説明を聞き終えて。一応、言っておこうかと]
――あの、ひとつ。
機関の修理中ってことですが、まず通信を復旧したほうが良くありませんかね?
そりゃま、機関が動くに越したことはありませんが……、
通信が回復すれば、曳航用の艦艇やら工作艦やら、呼べるでしょうし。
[自分が通信科だからというわけではないが、通信を優先したほうがいいような気もする。
まあ、音信不通が長ければ、本国のほうで疑問に思って捜索機なり飛ばしてくるかもしれないが]
――……さて、さっきの話は聞いてたな?
お前たちは退艦命令に従え。
この段階まで、任務を果たし続けた諸君を誇りに思う。
[ジャンが去ったあと、部下らに告げる。
麦の山。自分の部下に虫がいるとは思いたくないが]
ああ、上甲板に出る前に、サンドイッチをつまんでいけ。
暫く、まともなものは食べれんだろうからな。
[とは最後に付け足して。電測室から出て行く部下らを見送った]
……人がいなくなると、広いもんだ。
[部下が皆、出て行ったあと。小さく呟いて]
しかし――……銃、か。
[自分で要請しておきながら、忌まわしいものを眺めるように、拳銃とライフルを見遣った]
これが嫌で、海軍に入ったはずなんだがなぁ……、
[拳銃を手にとってみて。その金属質の重みに、溜息を吐く。
陸軍に入れば、よほどの上級士官にならないかぎり、己も銃を握ることになる。
徴兵されて、小銃を握って泥の中に這い蹲るのは論外だったし、
小隊だの中隊だのを指揮して、率先躬行をやらされるのも嫌だった。
撃ったり撃たれたりは御免だった。
どこかの戦場で、敵弾を浴びて苦しんで死ぬのは御免だった。
海軍なら、陸戦隊に配属されないかぎり、そんな機会はない。
通信科なら、上手くすれば、陸上配置という可能性だってある。
艦艇に配属されても、砲員や機銃員として危険な甲板上に配置されることもない。
電探を扱っていれば、敵も味方もただの光点でしかない。
戦争≪現実≫を目にしなくて済む。
だから、いまの道を選んだというのに――、
逃げ続け、目を逸らし続けていたものが。銃のカタチをして、手の中にあった]
……外部との遮断、動力の破壊、混乱の誘発……と。
今のところ手際良くやられてますが、本国との通信さえ回復すれば、全部引っ繰り返せますからね。
[とはいえ、通信に関係する機器は数多い。
電力系統やアンテナ類などが、艦内のあちこちに散らばっている。
その、どこをやられているのかを探し出すのは、この混乱のなかでは難しいだろう。
正直、そういう作業の専門である工作科員は残しておいてほしかったものだ]
しかし……小銃なんて触るの、士官学校の射撃訓練以来ですよ。
まあ、成績のほうは、可もなく不可もなくでしたが……。
[ジャンが置いていった騎兵銃を、掲げるようにして眺める。
銃身の短い騎兵銃とはいえ、やはり、それなりの長さはある。
狭い艦内では、取り回しに不便なことがあるかもしれない。
こういうものは、大方、乗員から陸戦隊を編成するようなときに使用されるものだろうし。
もし実際に使うとなれば、拳銃のほうが便利かもしれない。艦内では、射程の優位もなにもあったものではないだろうし]
……うーん。
故障箇所を探すにしても……これ、携行しますか?
[4kgほどの重さもある騎兵銃を背負って、場所によっては垂直ラッタルもある艦内を動き回るのはぞっとしない。
とはいえ、銃器を無造作においておくわけにいかないのも確かではある。それこそ、工作員に回収されでもしたら、大変なことになってしまう。
置いていくなら置いていくで、どこかに隠匿するか施錠できる場所に封印するかしなければいけないだろう]
――……?
あ、はい。電波妨害……?
[ジャンからの連絡を受けて、カサンドラに報告する]
……なんでも、電波妨害が行われているとかで、通信の復旧は困難と。
機械故障だけならまだしも、妨害電波とは……。
……どうします、通信長。
外部から妨害されているなら、どうにもなりません。
もしかしたら、艦内に妨害機器があるのかもしれませんが……、
[あるかもしれない、というのに賭けて捜索するかどうか。
それとも、より建設的な選択肢があるのかどうか]
……自信云々というか、どうも苦手で。
[合法的な暴力組織である軍隊に所属しながら、暴力の象徴たる銃が苦手というのも何だが]
……通信長の部屋ですか?
個室なら、確かに……工作員が、そんなところまで調べるとは思えませんしね。
[安全ではあるだろうと、同意した]
……まあ、ですかね。
[妨害電波については、同意して]
……虫を捕まえる、ですか。
しかし……、これだけの準備をしている連中を……となると。
[声には、不安が滲んでしまったろうが]
――子供の頃の、夏の休みみたいに。
虫取り網を振り回して――というほど、楽ではないんでしょうな。
[どうにか、引き攣った笑みを浮かべてみせた]
……スペアキー?
ああ、まあ、そうですね。
施錠後、通信長と別行動中に、もし小銃が必要になったときには確かに。
[そう、応じたあとで。はたと]
……ん?
[私室の鍵を預かるというのは、えっと]
や、いや、あの……!
……あの、自分は現在の状況から、そのほうがと判断しただけですよ!?
[言わずもがな]
……いや、しかし、でもですね……、
[ごにょごにょと言ったが――ああ、なにか色々と見透かされている気がする。
それでも、差し出されたキーを受け取ってしまうのは――なんというか、なんだろうね?]
こ……この騒動が終わったら、ちゃんとお返ししますから!
[一応、それは言っておくべきだと思った]
いや……自分が持ってたら、色々とまずいでしょう!?
[なにが良いのか構わないのか。
判らないし理解できないし、しちゃいけない気がする。
けれど、約束と。
この状況で、そう口にされた意味を察せないほどには、愚鈍でないつもりだった]
……ええ、約束です。
必ず、返しますんで……必ず、直に受け取ってくださいよ。
[幾らか緊張を孕みながら、そう]
……ああ。
通信指揮室にも、明確に退艦命令を発した方がいいんじゃ?
自分が先に話したときは、かなり不安そうでしたよ、あっちは。
[何かを誤魔化すように、そう言って]
ですよ、そうしましょう。
通信指揮室の連中を上甲板にやって、それから、その。
あの、通信長の私室に小銃を置いて……、で、どうでしょう。
物置とか、そういう問題じゃないんですよ……、
[溜息を吐きながら]
……ですよ。
[通信指揮室の状況は、想像するに余りある。
騒動が始まった頃から、指揮官の姿は見えなくて。
彼らの職務たる通信は死んでいるし、何の情報も入らないしとくれば]
……ああ、待ってくださいって。
[二丁の小銃を抱えながら、上官のあとを追った]
―通信指揮室:下士官兵の退室後―
……いや、通信長って有能なんだなと、今更ながらに思いましたね。
[あっという間に、部下の全員に秩序を失わせずに――なんてことは、自分には無理だったろう]
しかし……、サンちゃん?
[兵のひとりが口にしていた愛称らしきものを呟いて、首を傾げた]
……いやまあ。
通信長が親しみ易いのは、否定しませんが。
[――サンちゃんか、ドラりん。
そう呼べと言われて、通信指揮室の下士官兵らは、そう呼んでいるのか]
いや……まあ、そうですね。
可愛いかどうかは、まあ、知りませんけど。
[そう、曖昧に応じて]
ただまあ……もし自分が呼ぶなら、やはり。
あー……キャシーと、そう呼ばせていただきたいですね。
……いや、その。
かわゆいかどうかは、ともかくですが……、
[別に、キャシーというのに、拘りがあるわけではない。
ただ、自分の場合は。
そう呼べと言われたのが、サンちゃんだのドラりんだのじゃなく、偶々自分が例えに出した、それだっただけで]
――べふっ!?
[咳き込んだ。完膚なきまでに咳き込んだ]
げ、けふっ……、
そ、それは――百歩譲ってんですかね!?
むしろ百歩踏み込んでませんかね、それっ!?
[たぶん掌で転がされてる]
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