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…… ぁ、
[静寂を保っていた森。
見上げれば、深い木々の間より微かに青白い月が覗いただろうか。
夜、森に入る事、それが何を意味するかは幼子でもわかるだろう、闇の中で普段のそれよりも彩度を落として見える赤いローブの下、小さな感嘆をあげた女の息は僅かにあがっていた。]
あった、よかったぁ…… っ、きゃ、
[探し回っていたものを見つけ気が抜けたのか、次の瞬間地にしっかりと張った木の根に脚をとられ、女は転がった。
周知に響く鈍い音、そして地を伝わる振動。
"餌"としての情報を与えるには十分だっただろう、その事に女はまだ気付いていない。]
[神に仕える巫女は、普段運動をする機会などほぼ無いと言っていい。
受け身も満足にとれず、無様に転べば身体が痛んだ。]
いた… こんなだから、怒られるのよね…
[身体を起こそうと地面についた右腕に鋭い痛みがはしり、女は溜息をついた。
反対の腕をつき身体を起こすとローブを払う。
転ぶ際に地面についた右腕を捻ってしまったらしい。
小さな小石や枝で引っ掻かれたのだろう、肘近くの擦り傷からは薄く血が滲んでいた。]
[赤いローブの下、緩く首を振る。
夜の深い森であっても目立つその色は、彼女が仕える神、それを象徴する色。]
でも、これを持ち帰れば、きっと、
私だって、認めてもらえる…
[きっと、ともう一度続けながら、女は数歩歩みを進め、地面にしゃがんだ。]
…… なんて綺麗なんだろう。
[深く被ったフードの下、笑みと嘆息が零れた。
ゆっくりと女が手を伸ばす先には、薄く青白い光を纏う鈴蘭と良く似た花。
森の深い場所には、この月夜白草が咲き乱れる花畑があるらしい。
月の光を浴びて微かに光を纏う、その草があつまり光の絨毯のように見えると、そう言い伝えられている。
けれど、今彼女の目の前にあるのは、迷子になったかのように心細く咲く一輪のみ。
それでも女はそれで満足らしい、宝物に触れるように、その白い花を人差し指の背で撫でると、その花を丁寧な仕草で摘み取った。]
帰ろう。
これでもう、馬鹿になんてさせない。
[摘み取った花を腕にさげた小さな花籠に大切そうに入れる。
花を見つけた喜びと高揚で、ひり、と痛む肘の傷の事はもう女の頭から抜けてしまっていた。
僅かな人の血の匂いに闇に蠢きだす影は、一つだけでは無かった。**]
ひっ
[背後で草木が揺れた音に思わず声が漏れ、女は口を塞ぐように手をあて、音のした方へと視線を向けた。
じっと目を凝らし、耳を済ませる。
風で草木が揺れたか、小さな小動物が背後を横切った事を願うが、徐々に近くなる気配、そして僅かに耳に捉えた唸り声がその希望を砕いた。]
……
[塞いだ口の奥で小さく悲鳴が漏れた。
じりじりと後退りするが、地を這う草木が容易にそれをさせてはくれなかった。]
[確実に距離を詰めてくるそれの姿は、彼女の目に捉えることは叶わなかった。
狼の青い毛並みは、月夜の森では完全に周囲にその姿を溶かしてしまっていた。
鋭い眼光を持つ捕食者の瞳、それと目があった瞬間、
短く高い悲鳴をあげて女は逃げ出した。]
[女の足はお世辞にも早いとは言えず、ましてや闇に包まれた森を行くには足元はおぼつかない。
森に住む獣ならば、簡単に追いつけた筈だろう、けれど獣はそれをしなかった。
それが何を意味しているのか。
獣の気配が背後で無く足を向けた先に移っても、女にはその意味を考える余裕も無かった。
途中、予期せぬ段差に女は再度転んだ。
軽い音をたてて花籠が転がる。
地面に放り出された花を掴み、女はなお逃げた。
狼の狙い通り、先に行き場の無い崖下へ。]
[木々が途切れ、視界が晴れた。
森の外へ出れた、そう女は安堵の息をつくがそれも一瞬の事。
目の前に広がる景色は見慣れた集落近くのものでは無く、切り立った壁。]
そんな…
[荒く肩を上下させながら、女は壁を見上げた。
その壁は女を絶望の底に叩き落す程度には高く、登るための足場すらなかった。
足場があったからとて、女の筋力では、壁を登ることは叶わなかっただろうが。]
[身体に強い衝撃が響く。
次の瞬間、地面から足が浮いた。
ぐるりと回る視界の中で、女は視界の端に落ちてゆく微かな光を捉えた。
開かれた手を伸ばすが、それは虚空を掴んだ。]
[自らの身体を支えるがっしりとした異形の手。
恐怖に身体は震えていた。
その手の持ち主の姿を確認しようと、血の気の引いた顔をあげ、そして。]
[耳を劈くような悲鳴は、横穴へと吸い込まれていった。
直前に上がった怒りに満ちた吠え。
青色の毛並みを持つ狼の姿を目に捉えたのは一瞬だけで、次の瞬間、視界は一面の岩肌へと変じ、すぐに光の無い真黒の世界へと。]
[恐ろしさに女の両の瞳は、かたく閉じられていた。
ようやくその薄い色の瞳が次に開かれたのは、頬に受ける風が穏やかなものになったため。]
……ここ、は…?
[眼下には、見たことのない景色が広がっていた。
何処まで続いているのかもわからない程の、広大な世界。
けれど、自分達の棲む世界では無い、その事だけははっきりと感じ取ることができた。]
[がくんと視界が揺れる。
自分を捉えている魔物が移動を始めたらしい、人の様に走って移動するわけでも無く飛び跳ねながら移動するその動きに吐き気に襲われるまでには時間はかからなかった。]
離して…!
離してよこの化け物!
[このままでは自分はどうなってしまうのか、考えの行き着く先に明るいものなどはありはしない。
声を荒げながら身体が動く範囲で暴れまくる。
どれ程の間そうしていたか、魔物が面倒になったのか、興味が失せたのか、取り落としたのか、どれかはわからないが、その身体は宙に放り出された。]
[長い悲鳴に続いてあがったのは派手な水音。
水温の冷たさに、身体にしびれが走る。
何とか水面にあがろうとするが、身体に纏わり付くローブのせいで身体は沈んでゆく。
ようやくローブを脱ぎ、腕に巻きつけると必死に水面へとあがる。
岸が近かったことは幸いだった。
重い身体を引き上げると、げほげほと暫くの間咳き込んだ。]
………
[地面についた手が白く霞む。
それ程までに濃い霧の中、女はしばらく動けないでいた。]
…… 寒い。
[小さく泣き声をあげながら震えた肩を抱く。
青くなった唇から、白い息がこぼれた。**]
■第1イベント発生時(1d開始直後に投下)のあなたの状態について
以下のいずれかを選択してください。両方のミックスでもOKです。
1) あなたは、意識or記憶が、混乱しor操られており、相方の「救出者」を敵だと認識する。
2) あなたは、幽体離脱状態にあり、肉体は魔界のどこか(任意)にあって、相方の「救出者」と会うのは精神体である。
アレンジはご自由にどうぞ。
この状況になった原因も好きに決めていいです。(事故にあった、自分の魔法でそうした等)
もし、考えていた設定と齟齬が生じて困るなら、通常状態のままでも差し支えありません。
1d開始後、相方の「救出者」と会った後の好きなタイミングで正常に戻ってOKです。
また、正常に戻るのに必要な条件も好きに決めてくださってOKです。
[時間が経てば晴れるでもなく、視界の全てを奪ってしまいそうな程に濃い霧はそれが含むひやりと冷たい水気で容赦無く女の体力と体温を奪う。]
温かい場所を探さなきゃ…
[水気を含み滑る地面から何とか立ち上がり、重い体を引きずるようにして歩いた。]
……こわい… 帰りたい…
[深い霧の中は不気味だった。
今まで耳にしたことの無いような不気味な泣き声をや水の中から何かがは跳ねたような音、何か長いものが泥の上をずるずると這うような音。
それら全てが自分の方へと近づいてくるような予感がして、女はただ恐怖で震えていた。
魔物に関して知識があるわけでもない。
だから"それ"にも、気付く事は無かった。]
[白の中に薄く、黄が混ざった。
何かの見間違いだろうかと目をこするが、近寄ってみればそれは大きく、色を濃くし、揺らめき始めた。]
……火?
[問いかけるような声を発すると、女は足を早めた。
暫く走ると、そこには沼の岸に焚かれた火があった。]
誰が…?
あの… 誰か… いるの?
[周囲を伺うが返事はかえってこない。
あたたかな光の誘惑に負け、炎の前にしゃがみ、手をかざした。
微かに花のような甘い匂いがしたような気がした。
いや、正確にはその匂いは随分前からしていたのだ、彼女が気付けなかっただけで、彼女が霧の中に火の明かりを見た時から。]
あったかい………
[毒は幻覚だけでは無く感覚器官をも狂わせる。
そして深度が深くなれば、その魂にも影響を及ぼす。]
[いつの間にか女は眠りに落ちていた。
魔物の発する毒のせいだけでは無く、疲れのせいでもあるが、目を覚ました女が見た光景は、少し離れた場所で足に絡まる何かに自分が沼に引き摺り込まれようかとしているものだった。]
………えっ、えっ、 なに!?
[慌てて自分の身体を見下ろす。
見下ろした自分の身体は僅かに透けているように見えた。
地面に落ちたローブに触れるが、そこには何の感覚も無い。]
ちょ…いやいやいやいやいやいやダメだってば
だめだってだめだめだめだめだめ
[沼に引きずられんとしている自分の身体に縋る自分(霊体)は容赦の無い程に軽かった。
近くで見ると足に絡みついているのは美しい金色の髪の束だった。
髪が伸びる先…本体の方へと目を向ける。
そこには美しい女性の姿…は無く、スライムのように身体が半透明のゼリー状になっている女性の姿をした魔物の姿があった。]
何あれ気持ち悪い……… いや、うそ、うそうそうそだからやめて食べるのはやめて美味しくない、美味しくないから!
[こんなところで地縛霊等には絶対になりたくない。
けれども幽体の身では何もできず、ただおろおろとしていると、更に何かが近付く気配を感じた。
何かの助けかと、期待を込めた目で目を向けると、醜い鳴き声と共に現れたのは自分を攫った小鬼のようで、、、]
………
[しばし言葉を失っていれば、2匹の魔物は自分の身体をかけて喧嘩をし始めたらしい。]
[2匹の魔物の争いが白熱する一方、女は沼の淵でそれを見ているしかなかった。
時間が経つにつれ魔物は場所を移し始めるかもしれないが、女にそれを追わんとする気力が戻るまでには時間がかかっただろう。**]
[一方魔物はというと、聖なる光に怯みはしたものの幽体ではやはり力を十分に発揮できないのか払うまでにはいかないらしい。
逆に此方へと注意を向けつつあるようにも見え、幽体でありながら背に冷えた感覚が走る。]
ありがとうございます。
あの… 失礼ですが、司祭様でしょうか…?
[柔らかな笑みにほっとしたような表情を浮かべる。
目が熱くなるような感覚を覚えるが、幽体故に涙は出てこなかった。]
…… はい、私の身体です。
魔物の力のせいか、身体と魂が解離してしまったようで。
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